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チケットは「音声AI」で買う時代に。サムスンとチケットマスターが実用化へ

コラム All Digital Music

 

世界最大のチケットサービス会社であるチケットマスターは、サムスンのAIアシスタントを活用して、音声によるライブイベントのチケット検索と購入機能を開始した。

先日発表されたサムスンの最新スマートフォン「Samsung Galaxy Note9」で既に音声によるイベント検索が実装された。チケットマスターのAPIとサムスンの音声AIアシスタント「Bixby」の連携によって、ユーザーは音声でアーティストのライブやスポーツチームの試合、近くの会場の情報やスケジュールを検索することができる。

ユーザーは「Bixby、ロサンゼルスのライブ情報を探して」「Bixby、今週末ニューヨークで開催されるスポーツイベントは?」などを音声で訪ねて情報を探すことが可能になる。イベント情報だけでなく、チケットの購入確認も簡単にできるとされる。

チケットマスターは世界最大のイベント・プロモーション企業ライブ・ネイション傘下のチケット販売会社で、ライブ・コンサートや音楽フェス以外にも、スポーツ関連の試合、ミュージカルなどあらゆるイベントのチケットを取り扱う。

チケットマスターにとってサムスンとの連携は、チケット購入を増加させるための実験的取り組みの意味合いが強い。サムスンが独自開発するBixbyは、「音声AI」領域ではすでに後発だ。しかし現段階でチケット検索や購入機能は、AlexaやGoogle Assistant、Siriには実装されていない。そのため、サムスンとチケットマスターは、他社に先駆けスマートフォンで導入に踏み切ったと考えられる。

また、すでに発表された通り、サムスンはスマートスピーカーの領域に進出する。「Samsung Galaxy Note9」発表会で、同社初のスマートスピーカー「Galaxy Home」が発表され、アップルのHomePodやグーグルのGoogle Home Maxなど、ハイエンドなモデルと今後は競合となっていく。Galaxy HomeにはBixbyが実装されるため、モバイルユーザーだけでなく、ファミリーユーザーなどからのチケット購入の増加が期待できる。

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音声AIでのチケット購入は、ライブビジネスにとって将来性が高い。

例えば、家族やカップルでチケットを買うユーザー、音楽好き、スポーツファンにとって、チケット情報の検索が簡単に済ませられるため、チケットマスターのサービス利用増加へつながる可能性がある。

また、今後は音声AIからイベントをレコメンドすることもユーザーデータの最適化によって可能になっていく。

さらに将来的には、車や家電に搭載されるはずの音声AIアシスタント経由でチケット購入ができるようになっていくはずだ。運転中に思い立った時や、ビルボードで見つけたライブイベントのチケットを車中から音声で購入できるといったプロセスは、ライブイベント体験の一部に組み込まれていくだろう。

その一方で、課題も山積している。

座席の位置や異なる位置での比較は、音声だけで処理するにはハードルが高い。また、スマートスピーカーから音声でチケットの支払いに抵抗を感じる人は多いはずだ。

音声でチケットの予約や仮押さえだけしかできないのであれば、スマートフォンかPCでチケットマスターのサイトにアクセスし購入を承認するプロセスが生じる。デバイスをまたいだ購入体験は手間がかかるだけにチケット購入の機会を失いかねないはずだ。

世界のチケット販売サービスは、すでに音声AIを見据えたユーザー体験の開発に入ったと言える。国や文化の違いでライブイベントの価値観も異なるが、ライブビジネスが巨大産業として世界的に拡大している昨今、チケット購入の環境整備を加速させることは、すなわちあらゆる国や地域、業種に関係なくライブイベント市場の利益拡大に直結する。

ちなみにサムスンはオリンピックやパラリンピックの公式スポンサーでもあり、その他にもNBAやPGA、スペインのラ・リーガのスポンサーも務めるなど、世界各地でスポーツやイベント事業に進出している。Galaxy Home経由でチケットマスターから購入したイベントのスポンサーがサムスンという場合も十分にあり得る。したがってサムスンとチケットマスターの連携はWin-Winな関係になのだ。

日本は「チケット購入のIT化」がなかなか整備されずに世界から遅れているというイメージもあるが、チケット販売といった一部のプロセスをIT化/現代化させるだけなく、俯瞰的にライブビジネスを利益化させつつ、ユーザー体験を一元化する仕組みを改善することに注力するべきだろう。


 

jaykogami
記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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