世界の38%のユーザーがストリームリッピングで著作権を侵害か、IFPI報告
Featured image by Steve Parkinson (CC by 2.0).
数カ月前、YouTubeは月額9.99ドルでサブスクライブすることができる新しい音楽ストリーミングサービス「YouTube Music Premium」を発表した。
音楽を広告なしで聴いたり、バックグラウンドで再生したり、オフラインで聴けるようダウンロードしたりすることが可能だ。ただし、月額利用料金を支払っているにもかかわらず、ミュージックビデオに関しては、いまだに広告を見なければならない。また、動画をダウンロードしたり、バックグラウンドで再生したり、オリジナル動画を視聴したりすることはできない。
しかし、月額11.99ドルを支払うと、「YouTube Premium」にアクセスできる。この機能には、オフラインでの音楽の再生、ダウンロードへのアクセス、完全な広告なしでの体験が含まれる。
YouTubeの役員があらかじめ回答していない質問が、ただひとつある。
YouTubeがすでに何百万もの楽曲や動画を無料で提供しているのに、なぜ月額利用料を支払うべきなのか?
今や、有料ストリーミングサービスへの入会を、YouTubeが妨げているという新しい報告もある。
では、なぜ人々は音楽ストリーミングサービスを契約しないのか?すでにYouTubeによって、無料で音楽を聴くことができるからだ。
10月9日に、国際レコード産業連盟(IFPI)が音楽消費者の動向を分析した報告書の2018年版を発表した。
音楽ストリーミングが世界中で上昇傾向にあることに注目するだけでなく、IFPIは興味深いレポートを発表した。
オンデマンドの音楽鑑賞において52%を動画ストリーミングが占めており、そのうち47%をYouTubeが占めている。有料の音声ストリーミングの割合は28%とかなり低く、その後に広告サポートによるストリーミングの20%と続く。
YouTubeは、競合他社である主要な音楽ストリーミングよりも著作権使用料の負担が少ない。Spotifyは、ユーザー1人あたり年間約20ドルを支払う一方で、YouTubeは1ドル以下となっている。
なぜ有料の音声ストリーミングサービスを通じて音楽を聴く人がほとんどいないのだろうか?
「定額制の音声データ配信サービスを利用していない人の35%が、主な理由として聴きたい音楽がYouTubeにあるからだと答えている」
要するに、人々はストリーミングサービスをサブスクライブする必要がないのだ。彼らの聴きたい楽曲は、すでにYouTubeで無料視聴することができるのだから。
このことはYouTubeが運営している音楽ストリーミングサービスにも害を及ぼしている。13年間、無料で動画を観たり音楽を聴いたりしてきた後に、なぜ突然、利用料を支払わなければならないのか?YouTubeは全世界の消費者に対して、自身の習慣を変えて契約をすべき理由をまだ提供していない。結局のところ、動画や音楽は、このサービス上では無料のままだ。もちろん、時折30秒間の広告を見なければならないが、毎月何も支払わないで済むことに勝るものはない。
だが、YouTubeが音楽業界に与えている損害は、ストリーミング契約や著作権使用料の支払いを減らしていることだけではない。この動画プラットフォームは、ストリームリッピングを通じた著作権侵害行為の増加も助長している。
世界の38%のユーザーがストリームリッピングで著作権侵害行為をしている
YouTube-to-MP3.orgやMP3Fiberといった有名なサイトが閉鎖されたにもかかわらず、ストリームリッピングサイトの流行により著作権侵害はいまなお頻発している。
しかし、ストリームリッピングサイトはどのような仕組みになっているのだろうか?いたって簡単だ。
URLをコピーし、ストリームリッピングサイトにアクセスしてリンクを貼り付け、スタートボタンをクリックするだけで、ストリームリッパーが指定したリンクをMP3またはMP4ファイルに変換してくれる。そして、ダウンロードボタンをクリックすれば、無料で楽曲にアクセスすることができるようになり、もはやアーティストは自分の作品への対価を受け取ることができなくなる。
長年にわたってYouTubeがアルゴリズムを更新していないため、ストリームリッパーは簡単に著作権法の網をかいくぐりつづけることができている。そのため、これらのサイトは、いまだ全世界のユーザーに驚くほど人気があるのだ。
IFPIによると、世界で1/3以上の38%のユーザーが、ストリームリッパーを通じて音楽を消費しているという。事実、ストリームリッピングは、著作権侵害で今もっとも一般的に使用されている形式だ。
世界中にいる消費者の32%がストリームリッピングで音楽をダウンロードしており、23%がサイバーロッカーとP2Pプログラムを利用してダウンロードしている。くわえて、17%が侵害コンテンツの検索に検索エンジンを使用している。そして、もっとも多くストリームリップに使われているのがYouTubeだ。
実際にYouTubeは、ストリーミングの会員数や著作権使用料の支払いを減らしていることについて、再び非難を浴びている。
IFPIは以下のように説明する。
「ストリームリッピングのユーザーは、オフラインで音楽を聴くためリッピングすると言う傾向がある。これは、プレミアムストリーミング会費の支払いが避けられるということを意味している。」
では、YouTubeはこの問題を解決するためになにをしてきたのだろうか?いや、まったくなにもしていない。ストリームリッパーたちがGoogleの収益に損害を与えるまで、あきらかに成長を続けているこの問題に対して、Googleが取り組んでいくことに期待はできない。
(翻訳:Izumi Sakamoto)
【記事提供元】
DIGITAL MUSIC NEWS
https://www.digitalmusicnews.com/
翻訳:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
大学を卒業後、カナダの日系情報誌とオーストラリアの日系PR会社にて勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の記事執筆や編集、撮影などを行う。現在は日本を拠点にフリーランスフォトジャーナリスト/エディター/ライターとして活動。
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