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米業界誌ヒッツがアデル「21」の1週間の売上予測を65万枚に上方修正

コラム 高橋裕二の洋楽天国

アデル110712

ラジオ・音楽業界誌ヒッツと音楽業界誌ビルボードが、アデルのアルバム「21」について、今週ものすごいセールスを記録しそうだと伝えている。

当ブログでも昨日、業界誌ヒッツが仰天の40万枚のセールスを予測と書いたが、今日ヒッツは予測を65万枚に上方修正した。またビルボード誌も50万枚から60万枚のレンジにセールスが収まるだろうと伝えた。アルバム「21」は昨年(2011年)2月22日にアメリカで発売された。発売からもう1年になる。両誌の予測が正しければ、アルバム「21」は今週の日曜日夜までの累計で730万枚を売ることになる。またファースト・アルバム「19」もセールスが伸びて、ビルボード・アルバム・チャートの5位以内に入るそうだ。

爆発的なセールスは全てはグラミー賞の効果と火曜日のバレンタインデーによるものだという。

先週日曜日(2月12日)、CBSテレビが生中継をした「第54回グラミー賞」は、1984年にマイケル・ジャクソンがアルバム「スリラー」で8部門のグラミー賞を獲得した時の視聴者数5167万人以来の高視聴率で、視聴率調査会社ニールセンによると4160万人が視聴し、去年に比べて実に45%もアップした。前日のホイットニー・ヒューストンの突然の死がこの高視聴率をもたらした。

毎週ビルボード誌のチャートは現地時間で水曜日の午前中に出る。今年のグラミー賞で受賞したアーティストやステージで演奏したアーティストのアルバムやシングルがどのくらいセールスに影響を与え伸ばしたか、来週のチャートは大変興味深いものになるはずだ。

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新人賞のボン・イヴェール、ロック賞を総なめにしたフー・ファイターズ、キャリー・アンダーウッドとデュエットしたトニー・ベネット、ひょうきんで明るいステージだったブルーノ・マーズ、そして御大ポール・マッカートニー。

ホイットニー・ヒューストンが持っていた20週間1位の記録を来週アデルはあっさりと塗り替える。「21」で21週間の1位だ。しかしどうしてこんなにロング・セラーを続けられるのか。その答えはグラミー賞の壇上でアデルがスピーチした中にある。「ラジオの皆さん、ありがとうございました」と。

アデルのシングル「ローリング・イン・ザ・ディープ」のサンプルがアメリカのラジオ局に届けられたのはおととしの2010年11月半ば。アルバム「21」が発売される3ヶ月前だ。最初はあまりラジオでかからなかった。しかしアルバムのセールスを見て、ラジオ局の選曲を決めるミュージカル・ディレクターが動き出した。アメリカでレコードを売ろうとしたら「TOP40」と呼ばれる、ヒット曲を専門にかけるラジオ局に売り込みをする。簡単ではない。

通常「TOP40」と呼ばれるラジオ局の選曲表には文字通り40曲ほどの曲がリストされている。これらの中から毎日曲をかける。選曲表に入っていなければかけない。レコード会社は選曲表に何が何でも入れたい。でも1週間で新たに選曲表に入れるのは僅かに2曲か3曲。この枠を全レコード会社で取り合う。選曲表に入った事を「add」という。加わったという意味だ。

「add」されてから「ライト」というローテーションに組み込まれる。軽めに曲がかかるという意味だ。1週間に10回以下程度しかかからない。その後リスナーからの曲の評判やリクエストが増え始めると徐々にかける回数を増やしていく。「ミディアム」と呼ばれるローテーションは1週間に50回前後。リクエストが増えなければ「ライト」から「ミディアム」へ昇れず、選曲表から消えて行く。力のある曲は、最後は「ミディアム」から「へヴィー」のローテーションに組み込まれ、1週間で100回以上かけられる事になる。1日に15回も曲が流れる。勿論「ミディアム」で力尽きる曲が大半だ。

いろいろなケースがあるが、普通「ライト」から「へヴィー」に行くまでに3ヶ月がかかる。日本のように頭から「へヴィー・ローテーション」なんて事は100%無い。日本のFMラジオ局がやっている「へヴィー・ローテーション」や「パワー・ローテーション」というシステムは、名前はアメリカから貰ったものだが、全く似て非なるもの。固定している「ローテーション」なんて普通はないだろう。

アメリカのラジオ局のやり方はリスナーに依存する。日本のように間違っても自分たちの意志でローテーションを決めないし決められない。決めた結果聴取率が落ちれば選曲責任者のミュージカル・ディレクターや編成部長はクビになる。音楽専門局だから。日本でクビになった話は聞いたことがない。

アデルの3枚のシングル、「ローリング・イン・ザ・ディープ」、「サムワン・ライク・ユー」、「セット・ファイヤー・トゥ・ザ・レイン」はそうやってラジオ局での生き残り戦争に勝ってきた。ラジオ局のローテーションはリスナーの反応が決めることになるが、リスナーにどのくらいこの曲が素晴らしいかを言えるのは局のパーソナリティーだ。

ビルボード・シングル・チャートで1位になった「セット・ファイヤー・トゥ・ザ・レイン」には音楽ビデオがない。ラジオ局でのオン・エアーだけで1位になった。アメリカの人達、朝も夕方も、通勤通学の車の中でラジオを聴く。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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