フォード・モーター、音楽メディアPitchforkと組んで新車PRを展開
自動車メーカーの音楽マーケティングが面白い:米フォード・モーター、音楽メディアPitchforkと組んで新車PRを展開中
米フォード・モーター・カンパニーといえばアメリカの大手自動車メーカー。彼らが新車を売る時には、大規模なマーケティングや広告がマスメディア中を占領するが、今回彼らはターゲットに知ってほしい情報を音楽と連動する形で届けようとするマーケティングを実施しています。
フォード・モーターは2014年にリリースする新車「2014 Transit Connect」の主要ターゲット層を「impassionated indie」(熱のある独立志向の強い人)と設定、趣味や好みがメインストリームに流されない独自固有のスタイルを求める若者を狙ったプロモーション活動に音楽を使ってプロモーションを行います。ただ、今回はMTVやグラミー賞など人気の番組で大々的な広告を流すような大掛かりなプロモーションは行いません。フォード・モーターはプロモーションの第一弾として、音楽メディアPitchforkとロサンゼルスのインディーズレーベルIamsound Recordsと組み、プロモーション活動「Artist Connect」を実施します。
「Artist Connect」は、数々のライブ動画やドキュメンタリー映像作ってきた実績あるPitchforkの動画部門Pitchfork TVが制作を担当、Iamsound所属のインディーズアーティストが小規模な会場で行うライブ動画シリーズです。IamsoundからはMS MR, Classixx、Guardsが登場しました。
通常自動車会社が新車を売りたい時には、日本でもアメリカでも有名なアーティストをフィーチャーすることが一般的でした(アメリカは日本ほど露骨ではないですが)。ですが、フィーチャーされるのは話題性の少ない(大物と比べればの話)インディーズアーティストで、しかもアップされるのはYouTube動画という、とても小さい規模でのマーケティング展開です。しかし、Pitchforkの知名度や映像クオリティの高さ、インディーズレーベルというコアなファンを抱えるコミュニティ性を考えた場合、大掛かりなマーケティング・キャンペーンよりも、よりエンゲージメント率の高いコミュニケーションが実現できるのではないでしょうか?
動画では、ミュージシャンが車に乗ってライブ会場まで移動する様子も見せ、大人数での同乗が可能な点、リアビューカメラ機能、MyFord Touchのアプリ連携など、クルマのフィーチャーを取り入れています。
こういう感じの音楽をコンテクストにした広告のほうが、派手な広告よりも見ている人に共感がもたれやすい気がします。「クルマがほしい」人にダイレクトに情報を届けるのではなく、音楽を通じてクルマを知ってもらうことは、ハードルは高いと思いますが、メッセージ性あるコンテンツが作れれば、共感する人は増えていきそう。そういう意味でPitchforkって企画も動画制作もすごく上手いしカッコイイなあ。
米フォード・モーターは、ライブプロモーション企業ライブ・ネイションで6番目に大きなスポンサー企業で、ボナルー・フェスティバルなど野外フェスもサポートしています。
また2013年にはリンカーン(フォードのブランド)のブランディングで、ベックがデヴィッド・ボウイの名曲「サウンド・アンド・ヴィジョン」をアコースティックでカバーするライブ動画が製作されました。今では再生回数を100万回を超え、日本でも話題になりましたが、あの動画は、リンカーンの90周年を記念する広告キャンペーン「Hello Again」の一環で、音楽を使った自動車マーケティングでした。
http://www.hello-again.com/beck360
自動車メーカーだろうがどんなに大きな企業や業界でも、メッセージを届けるには相当のマーケティングパワーが必要になり、しかも今の時代には消費者に共感されるメッセージを作ることは難しくなっています。フォード・モーターのケースで言えば、企業が直接発信するのではなく、アーティストとライブミュージック、高品質なライブ動画を使ってメッセージを発信している点がユニークな取り組みです。Iamsoundの場合もベックの場合も大きくクルマをフィーチャーするわけでもありませんが、アーティストの存在や生き方がストーリーとなって、企業ブランドのメッセージを訴求してくれています。
これは逆のことを考えれば、音楽サービスが音楽コンテンツや音楽アプリの機能をプロモーションにフィーチャーしようとしても、メッセージは届かないことと同じで、コンテンツを見た人に想起して欲しいメッセージや実行してほしいアクションをストーリーでユーザーに届けなければ、実際の行動に結びつくことは少ないと思います。
企業のマーケティングにおいて、大物アーティストだけがブランドメッセージを伝えるための手段ではないことをフォード・モーターは示そうとしています。
■記事元:http://jaykogami.com/2014/03/6368.html
記事提供:All Digital Music
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