音楽ストリーミングサービス、アーティストへのロイヤリティ支払い巡り議論過熱
アーティストへのロイヤリティ支払い問題議論が過熱、新たにグラミー賞受賞者から非難の声
世界では音楽ストリーミングサービスからのアーティストへの支払いについての議論が巻き起こっています。そして今回、グラミー賞を4度受賞している音楽界の大御所ベット・ミドラーが、音楽ストリーミングサービスPandoraを非難する声をネットで上げました。
ベット・ミドラーは、米国最大の音楽サービスPandoraで3ヶ月間楽曲が400万回以上再生されたにもかかわらず、受け取ったロイヤリティ額はわずか114ドル強だったとツイートし、音楽ストリーミングの現状に対して不満を伝えています。
.@Spotify and @Pandora have made it impossible for songwriters to earn a living: three months streaming on Pandora, 4,175,149 plays=$114.11.
— Bette Midler (@BetteMidler) April 4, 2014
Pandoraのスポークスパーソンは、このツイートに対し
「私たちはベット・ミドラーの音楽は大好きです。そしてアーティストへの公平な支払いを擁護する彼女に経緯を評します。しかし、Pandoraはすでに公表されている2014年の支払いレートに応じて、400万回以上再生されたアーティストに対して6400ドル以上を支払ってきました。クリエイティブなコミュニティに対する対価支払いに関して言えば、Pandoraはラジオ分野では最も多くの支払いをしている企業です。Pandoraは衛星ラジオに比べ、高額の収益の割合をソングライターに支払っています。2013年、Pandoraはパフォーマンス・ロイヤリティからの収益の48%を権利保有者に支払いました。これは3億ドル以上に上ります。一方で、衛星ラジオは何も支払う義務がありません。」
とPandoraの貢献を主張します。
音楽ストリーミングサービスは世界的に急成長をしている新しい音楽ビジネスモデルとなっています。またストリーミングは、音楽業界からも新たな収入源として注目を集めています。しかし 2013年にはいって、大物アーティストの中から、音楽ストリーミングサービスの少額なロイヤリティ分配や音楽の価値低減に苦言を呈する人が現れ始めました。トム・ヨーク、ナイジェル・ゴッドリッジ、デヴィッド・バーン、スティーブン・タイラーなどが、これまで公の場で音楽ストリーミングサービスに反対する声を上げてきました。
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デジタル音楽サービスのアーティストへのロイヤリティ支払いが少ないことは、最近になって大きな問題の対象になっています。先月Pandoraとソングライターを代表する音楽業界団体ASCAPのロイヤリティレートを巡る訴訟で、権利保有者に対してデジタルラジオサービスは現状とほぼ同じレート(収益の1.85%)を支払うだけで良いとの判決が連邦裁判所から下されたことで、さらなる議論を引き起こしています。業界最大手の音楽出版企業Sony/ATV PublishingのCEOマーティン・バンディアー (Martin Bandier)はこの判決を、「ソングライターにとって明らかな敗北で、適切さを欠いている」と非難しています。
Pandoraは音楽サービスとしてすでに2億人以上の登録ユーザーを抱える上場企業です。これまでPandoraは機会がある度に、同社が支払わなければならないロイヤリティ支払レートの高さに対する不満を声に出し、支払額を低く抑えるためのルール改正を求めてきました。これには、米国の法律上衛星ラジオはロイヤリティを支払うことなくラジオ事業を運営することができることが背景にあります。
Pandoraは2013年度に前年同月比12%増となる6億3890万ドルの収益を計上しました。同年にはPandoraは、総収益の約54%となる3億4290万ドルをライセンス料として権利保有者に支払いました。2012年にPandoraが支払ったライセンス料は総収益の60.6%だったことを考慮すれば、これは大幅な改善です。
一方2013年度Pandoraは純損失4070万ドルを計上、2012年度の純損失3560万ドルから業績はさらに悪化しています。
音楽ストリーミングサービスによるロイヤリティ支払いについての議論は、多くの音楽サービスが分配に関する情報やメカニズムを不透明にしていることから、アーティストにとって不公平と見なされる場合が多く、レコード会社とアーティストそして音楽サービスの間で満足のいく解決策には辿り着いていません。
しかし中にはSpotifyのようにアーティストや権利保有者への分配に関する情報をを一般公開するサービスも現れました。
またCDが減少しダウンロード売上も伸び悩む中、急成長を続ける音楽ストリーミングサービスが一部のアーティストの収益源となって行く可能性も出てきました。
このように音楽を取り巻く環境は世界中で急激に変化して来ています。この中でアーティストが音楽を作り続ける環境をこれからも作れるようにするために必要なことは、もっと多くのアーティスト自身が声を上げ、音楽ビジネスへの意見を出し議論をし問題提議して行くことが大事だと思います。ですのでベット・ミドラーのような人までも音楽サービスに関心を持ち発言することはとても大きな意味があります。このような意見から、これまで見えなかった何かが見えてくるかもしれません。
■記事元:http://jaykogami.com/2014/04/6943.html
記事提供:All Digital Music
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