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繰り広げられる、SoundCloudとクリエイターの関係の論争

コラム All Digital Music

SoundCloudは誰の味方? クリエイターコミュニティの舞台裏

SoundCloudとクリエイターの関係についての論争が繰り広げられています。

SoundCloudはアーティストが自由に作った音楽を投稿でき、プロモーションができるプラットフォームとして世界中のあらゆるクリエイターから支持されてきました。SoundCloudは設立以来、自社の売り上げを追求する以前に、アーティストやレーベル、リスナーが使える便利な機能 (エンベッド、解析、Repostなど)を拡充させることで、オーディエンスへのリーチを広げコミュニティ構築に貢献しています。

その一方でSoundCloudはレーベルやパブリッシャーに楽曲利用のロイヤリティを支払っていません。また著作権に違法する楽曲に対する対応も明確ではありませんでした。トラックメイカーが独自にリミックスしたメジャーレーベルの楽曲でも自由に投稿しているSoundCloudと、レーベルとの関係性はYouTubeなどに比べると大きなグレイゾーンで、クリエイターや音楽業界関係者にとってもはっきり言ってどのように著作権違法のコンテンツに対応されるのかが分かっていませんでした。

そんな中、Do Android Dance?が公開した記事によれば、SoundCloudはユニバーサルミュージックには著作権に違反するコンテンツを削除するために、プラットフォーム内で自由にアクセスできる権利を与えていることが明らかになりました。

このアクセス権は、あるコンテンツをオンエアしたラジオ番組のDJ、Greg Morris (aka Mr Brainz) と、SoundCloudとのメールのやり取りがリークされたことによって発覚しました。SoundCloudはMorrisにメールで、次のように伝えています。

「コンテンツ削除の管理は、完全にユニバーサルミュージックにあります。ですので、なぜ他のコンテンツではなくあなたのコンテンツだけが削除された理由をお伝えすることはできかねます。削除の説明はユニバーサルミュージック側にお聞きください」

SoundCloudは誰の味方? クリエイターコミュニティの舞台裏

SoundCloudは誰の味方? クリエイターコミュニティの舞台裏

SoundCloudは誰の味方? クリエイターコミュニティの舞台裏

このメールの内容からは、SoundCloudがユニバーサルミュージックにレーベルの意向でコンテンツを削除できるアクセス権を供与していることが推測されます。またこのことから恐らく他のメジャーレーベル (ソニーミュージック、ワーナーミュージック)にも同じく「裏口アクセス権」が供与されている可能性も考えられてきました。

内情を知る情報ソースは、

「仕組みはYouTubeと同じです。リクエストを送り、コンテンツが削除されるか、または削除申請の正当性によっては再投稿されるかが決まってきます。SoundCloudはユーザーに理由とその背景にあるプロセスを説明するべきです。この件は企業の透明性の問題で悪循環に陥っています」

と、情報ソースはSoundCloudと彼らのビジネスの不透明さが騒動を巻き起こしている理由だと言います。

SoundCloudのスポークスパーソンは

「特定の場合や特定の権利関係者に関することには、コメント出来ません。ですが、私たちは自社のプロセスを継続的かつ公平に適用しています。例えば、もしユーザーがユニバーサルミュージックから許諾を得ているにも関わらずコンテンツを間違って削除されたと信じているなら、削除に意義を唱えるのは自由です。」

と述べています。

SoundCloudは長年収益化に注力することなく(有料アカウントは運営している)、クリエイターやレコード会社のためのサービスの向上に務めてきました。多くのクリエイターにとってSoundCloudは自由に音源を投稿しシェアできるプロモーション用のプラットフォームであり、またレーベルの音楽マーケティングのツールとしても活用されています。

しかしSoundCloudは2007年の設立以来1億2330万ドル(約126億円)の資金を調達し、企業価値は20億ドル以上(約2000億円)にまで上がっています。そして最近ではグローバル戦略を強める一方で、マネタイゼーションのテストを実施していると伝えられています。

【関連記事】
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今回発覚したSoundCloud上でのコンテンツ削除は、レーベルと楽曲使用のライセンスで合意間近ではないかとも考えられます。ライセンス契約で合意した場合、レーベルが望めば著作権違法とみなされたコンテンツに彼らがアクセスして削除することも実現するかもしれません(YouTubeのように)。ライセンス契約が実現するかどうかはわかりませんが、レーベルとの契約が変わればSoundCloudにおいてリミックスやマッシュアップ、リエディット、ブートレッグ、カバーなどの投稿のルールが大きく変わるでしょう。

SoundCloudが望まなくても、それがレーベルの意向である限り、現在クリエイターが持つ自由は奪われることになります。

SoundCloudがクリエイターをサポートするためのプラットフォームであり続けるためには、まず今回のコンテンツ削除のプロセスを透明性を持って明らかにして行く必要があります。音楽サービスは新しいビジネスモデルであるために、ビジネスに対するアプローチや、ユーザーとステークホルダーへの影響についてどう考えているのかを、ビジネス運営者と当事者がコミュニケーションしていかなければ、お互いの信頼関係は構築できません。YouTubeもSpotifyもユーザーと権利関係者にとってメリットとなる最高のビジネスモデルを探しながらコミュニケーションを行なっています。SoundCloudにも今後必要になるのはコミュニケーションと言えます。

音楽ストリーミングが急成長する現代の音楽シーンにおいて多くの音楽サービスと同様に、SoundCloudのビジネスは今後もどんどん拡張し、ニーズもますます広がるでしょう。そして規模が拡大すれば将来の収益性についての議論も増えるに違いありません。企業の成長スピードレベルと見合うようにクリエイター中心のプラットフォームであることを維持していかなければなりません。ビジネス中心のサービスと思われてしまえば、多くのクリエイターは当然のように離れていくでしょう。

■記事元http://jaykogami.com/2014/07/8181.html


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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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