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アップルが「有料」音楽配信でレーベルと価格設定の交渉、Spotifyら定額制にも影響の可能性?

コラム All Digital Music

アップルが「有料」音楽配信でレーベルと価格設定の交渉、Spotifyら定額制にも影響の可能性?

アップルが今週開催した新製品発表会では発表はありませんでしたが、彼らが新しい定額制の音楽ストリーミングサービスを準備していることは公然の事実となっています。現在アップルはレコード会社とライセンス契約で交渉中と言われています。しかし、どうやら懸念の一つである料金プランの設定は、レコード会社の提案が通るかもしれません。

アップルは目指していた月額7.99ドルの料金でのサービス提供を諦めたと見られます。Spotifyに代表される世界のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスは、月額9.99ドルの有料プランを提供しており、これが業界スタンダードになっています。もしアップルが低い定額制の料金プランを実現させることができれば、世界の音楽業界が注目する定額制音楽配信のビジネスモデルに、大きな議論を投げかけることは必至と見られます。

アップルがもし9.99ドル以下の料金でサービス提供を実現させた場合、発生する損失はアップル側が吸収する必要が出てくるようです。

レコード会社との交渉の現状
アップルとレコード会社は、アーティストの「エクスクルーシブ」な音楽配信を交渉中とレポートされています。アルバムの独占配信では、過去にアップルはiTunesでビヨンセのアルバム「Beyonce」を先行配信して収めた大きな成功実績と自信で、他社と差別化するつもりです。

レコード会社関係者によれば、アップルは未だに新しい音楽ストリーミングサービスの機能の説明を受けるどころか、デモも見ていないと言います。新サービスはBeats Musicがベースになるものの、iTunesと統合され、さらにブランドもiTunesに刷新されると噂されています。

最も大きな焦点は、アップルの定額制音楽ストリーミングサービスは、完全に有料だという点です。Spotifyなど競合のサービスは、フリーサービスと有料サービスを合わせた「フリーミアム」モデルで展開しています。このモデルの利点はフリーサービスで新規ユーザーを獲得して、機能を追加した有料サービスに誘導させることができることです。通常フリーサービスは広告モデルで運用されます。

アップルはこのフリーサービスを放棄して、完全に有料サービスのみでの運用を計画しています。Beats Musicも同様に有料サービスのみを提供しています。

フリーミアムか、有料か

フリーミアムモデルのSpotifyか、有料モデルのアップルか。アップルの新サービスの登場は、デジタル音楽サービスの価格設定に関する議論を引き起こすでしょう。

アップル Spotify

世界の音楽市場では、音楽ストリーミングを利用するリスナーが増え、その一方でダウンロードの売上が低下し始めています。そのトレンドに気が付いた大手レコード会社や音楽産業は、音楽ストリーミングを各国の音楽市場で相次いで開始させて、CDやダウンロードで減少する売上を食い止め、新しい収益化の道を確立させるために、動いています。

しかし音楽ストリーミングはCDやダウンロードと比べて短期的な売上(ロイヤリティ分配)が少ないという課題が存在します。アーティストの中にはテイラー・スウィフトやトム・ヨークのように、アーティストやプロデューサー、ソングライターへの分配が少ない点と、見えにくい支払いのメカニズムを指摘する少数派も現れ始めました。

例えばSpotifyがより多くの有料会員を獲得できれば、状況が変わるかもしれません。Spotifyが世界で獲得している有料会員は現在1,500万人ですが、平均で有料会員5人の内の4人がフリーサービスから乗り換えたユーザーと高いコンバージョンを誇っています。

アップル

(有料サービスのみで運営していたBeats Musicを取り込んだ)アップルの新サービスがもし無料の音楽視聴無しで、大規模な有料会員を獲得できれば、音楽業界の無料配信に対する見方が大きく変化する可能性があります。

フリーサービスの利点が必ずしもアーティストやソングライター、レコード会社に疑問を投げかけている今、有料サービスが生み出すであろう利点からの収益化や戦略を検討する機会が世界的に起ころうとしていると言っても過言ではありません。

日本では定額制音楽サービスの定着が未だに実現していない一因には、日本という音楽マーケットが本格的な「フリー」サービスを受け入れた実績が乏しいことが挙げられます。Spotifyが提案するフリーミアム・モデルの音楽サービスを提案することの利点(違法ダウンロードの削減、収益チャンネルの拡大)が日本で支持されずに、サービスの開始が遅れているのは、世界売上トップクラスの音楽市場を見渡しても日本くらいになってしまいました。

しかしアップルがこの有料サービスのみを提供するというなら、むしろそれは日本の業界にとってその追い風と言えるのかもしれません。

・アップルの新型定額制音楽ストリーミング、6月のWWDC発表の可能性が浮上。Beats MusicとiTunes連携、Androidアプリも提供
・アップル、iTunesで「編集プロデューサー」を募集中。次期配信サーヴィス向けに体制強化か

■記事元http://jaykogami.com/2015/03/10838.html


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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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