テイラー・スウィフトはいかにアップルの考えを1日で変えたか
テイラー・スウィフトはいかにアップルの考えを1日で変えたか? レーベルオーナーが初めて語ったApple Music交渉の裏話
アップルがApple Musicの3カ月無料試用期間中はアーティストやクリエイターに一銭もロイヤリティが支払われないとするルールに、テイラー・スウィフトが苦言を呈するオープンレターをブログで公開したことによって、アップルが無料期間中にもアーティストへロイヤリティ料が分配されるように方針を即座に変えたドラマは、「アーティストの勝利」、「ありがとうテイラー」、「PR企画」など様々な意見が飛び交いネットで騒がれ議論を巻き起こしました。
この一連のやり取りの裏側では、実際に何が起きていたのか?テイラー・スウィフトが所属するインディーズレーベル「Big Machine Records」のCEOスコット・ボルチェッタ(Scott Borchetta)によれば、アップルとBig Machine Recordsはテイラー・スウィフトのブログがアップされる以前から交渉を開始していたと、舞台裏について初めて語ってくれました。
ボルチェッタは、経済メディアフォーチュン主催のカンファレンス「Fortune Brainstorm Tech」にゲストスピーカーとして登壇し、その中でアップル幹部とレーベルとの間ではテイラー・スウィフトのオープンレターを公開する数日前から話し合いを進めていましたが、平行線をたどったまま配信の同意にはいたっていませんでした。
ボルチェッタはレーベルオーナーの立場からアップルの経営陣に対して「(無料期間にアーティストやレーベルにはロイヤリティを支払わない)あなた達の方針は支持できない。ストリーミングサービス開始から支払ってもらわないと」とテイラー・スウィフトがブログを更新する前の週に話を進めていたと言います。その間、ボルチェッタとテイラーは会話をしていなかったとのこと。
テイラー:「怒らないでね」
そしてテイラーが6月21日(日)にブログを突然更新、アーティストにロイヤリティが支払われないのは不公平だと彼女の考えを示しました。ブログでは「shocking, disappointing, and completely unlike this historically progressive and generous company」(ショックで、失望、歴史上革新的で寛大な企業のすることとは全く思えない)と落胆と不満を爆発させたほど力のこもったメッセージを発信しました。
このブログは瞬く間にネット上で話題となり、拡散されていきます。ボルチェッタにはヨーロッパに滞在中の彼女本人から「Don’t be mad」(怒らないでね)と、テキストとリンクが届いた時初めて記事について知り驚きを隠せなかったそうです。
記事を読んだボルチェッタはテイラーに「君のタイミングは素晴らしすぎる」と返信したそうです。そしてそのリンクをアップルの幹部にも即座に送ります。
22日(月)、ボルチェッタはアップルの上級副社長エディ・キュー(Eddy Cue)とジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)と行った電話会議では、「君たちはまだサービスを立ち上げていない。正しいことができるはずだ。正しいことをすれば、世界中のアーティスト・コミュニティーが君たちにいい印象を持つはずだ」と伝えたといいます。
そして22日の夜にアップルは、テイラー・スウィフトの意見に従い、Apple Musicの無料試用期間もアーティストにロイヤリティを支払うことを決めたと発表しました。
Brainstorm Techのパネルにボルチェッタと共に登場したのは、ジャスティン・ビーバーのマネージャーで音楽マーケティング会社SB Projectsのトップを努めるスクーター・ブラウン(Scooter Braun)。彼は、「みんながこの件に関してアップルと戦っていた」ことを強調し、テイラー・スウィフトのスタンスがアップルに無料試用期間でもアーティストに支払うという「一線を越える」キッカケを作ったと言います。
スクーター・ブラウンは「アーティストの言い分を聞くことが大事だとテイラーが教えてくれた。会社の重役との話が全てじゃない。テイラーが発言したことで、アップルは全てのアーティスト・コミュニティが意見を持っていることを認識できた。ジミー(・アイオヴィン)のBeats 1での哲学はアーティスト・フレンドリーで、アーティスト中心であること。もし彼らが行動を起こさなかったら、アップルは窮地に立たされていただろうね」と答えました。
Apple Musicは交渉の1週間後6月30日に世界100カ国以上で開始しました。もちろんテイラー・スウィフトの最新アルバム「1989」も配信されていますが、開始1週間前の時点では配信される予定もありませんでした。
スコット・ボルチェッタやスクーター・ブラウンの話を振り返ると、重要なことはアーティストの意見に対してどれだけオープンになれるか、そしてアーティストを支えるレーベルやマネジメントが一緒に音楽の価値を守るために戦うことが、あたりまえで王道すぎるかもしれないですが、音楽サービスでwin-winの関係を作るための推進力になると感じますし、なによりも音楽配信がまだ定着しきれていない日本にも必要な要素ではないでしょうか?AWAやLINE MUSIC、Apple Musicが始まり、多くの人の注目が集まっている今のこの機会にアーティストやレーベル、サービス側が音楽の価値について語り議論し一般の人にその姿を知ってもらう場面が増えてくれることに期待したいです。
■記事元:http://jaykogami.com/2015/07/11726.html
記事提供:All Digital Music
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