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ドクター・ドレーの新作、7日間でストリーミング再生2500万回を記録

コラム All Digital Music

ドクター・ドレーの新作「Compton」、7日でストリーミング再生2500万回を記録。初のApple Music中心のプロモーションは結果を示せたか?
ドクター・ドレーの新作「Compton」、7日でストリーミング再生2500万回を記録

ドクター・ドレーの最新アルバム「Compton」が、リリースから7日間でApple Musicで2500万回ストリーミング再生され、さらにiTunesストアでは50万ダウンロードを記録したことがアップル幹部の証言で明らかになりました。ニューヨーク・タイムズが伝えています。

ドレーが8月7日にリリースした16年ぶりとなる新作は、ドレーの元ヒップホップ・グループ「NWA」の伝記映画『Straight Outta Compton』のリリースに合わせて発表されました。ドレーはまずApple Musicの24時間ラジオBeats 1の自身の番組「Pharmacy」で、アルバムのリリースを突如発表。さらにiTunesストアでの先行配信が始まる24時間前には、Apple Musicでストリーミング配信を開始しました。そしてリリースから2週間はApple MusicとiTunesストア限定で配信し、21日から世界でCDおよび他社ストアでのダウンロード販売を開始します。

アップルのジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)はComptonのパフォーマンスについて、「世界中のファンに音楽を届けると同時にアーティストを支援することに関して、我々ができることを徐々に示し始めている」とニューヨーク・タイムズに答えています。

音楽売上データを集計するNielsen Musicによれば、「Compton」は米国の週間アルバムチャートで2位でデビューし、米国だけで295,000ダウンロードを記録しました。1位に輝いたのはカントリー歌手ルーク・ブライアン (Luke Bryan)の新作「Kill The Lights」(初週345,000枚)。

この数字もドレーの「Compton」が現在iTunesのみで先行配信されているため、その他のストアでもリリースするアーティストと比べると少ない数字になる可能性があります。

ニューヨーク・タイムズは米国内での「Compton」ストリーミング再生回数は1100万回だと述べています。つまり残る1400万回は海外ユーザーによるストリーミング再生となり、これはApple Musicが一部の国に限定されない、国際的にユーザーを獲得しているサービスである証拠です。

しかし、数字の上では現代のアーティストをドレーが上回ることはできませんでした。今年3月、ケンドリック・ラマーは最新作「To Pimp A Butterfly」のSpotifyでのストリーミング再生がリリースから7日間で3900万回に達しました。またドレイクは「If You’re Reading This It’s Too Late」のストリーミング再生が4800万回に上り、ドレーの2500万回はまだまだ低い結果でした。

ケンドリック・ラマーもドレイクもSpotify以外にも複数のストリーミングサービスを使って配信し、さらに既にSNSで巨大なファンベースを築いています。

ドレイクの「If You’re Reading This It’s Too Late」はデビュー週の売上が535,000ユニットで2015年最高記録、ケンドリック・ラマーの「To Pimp A Butterfly」は363,000ユニットで2位と、2015年売上で最も成功したアルバムデビューは、2作とも音楽ストリーミングで強い人気を放つ2作となったことは、偶然とはいえないでしょう。

しかしドレーの「Compton」は、Apple Music(とiTunes)のみを使った完全にアップルのプラットフォーム中心のプロモーション戦略になります。このアプローチはアップルにとって初のチャレンジで、「Beats 1」「独占配信」「ストリーミング」「iTunes」とApple Music全ての機能を使った新しい音楽プロモーションの形を一つ作りました。

各機能の役割をまとめるとこのようになります。

Beats 1:発表、SNSで告知
Connect:Beats 1スタジオ動画配信、カウントダウンミックス配信
Apple Music:24時間先行ストリーミング配信、2週間独占配信
iTunesストア:2週間独占先行販売

今回のプロモーションで特筆すべき点は、事前にアルバムがリークされなかったことです。つまりアルバムが先行配信されるまで、一切外部にも漏れず、Apple Musicユーザーが文字通り最初のリスナーになることができたのです。想像ですが、このリークを防ぐ体制も、アップルは独占配信のために強固にしたと思われます。Apple Musicでのプロモーションの成功は、レコード会社に向けたデモンストレーションでもあるため、音楽業界で問題視されている課題への解決法をアップルが示し、強力なビジネスパートナーであることを証明する必要があったからと想像できます。

Apple Musicが獲得した1100万人ユーザー

アップルのインターネット・ソフトウェア&サービス担当上級副社長エディ・キュー (Eddy Cue)は、今月Apple Musicのトライアル利用者数が1100万人に達したことを発表しています。無制限での利用が可能な90日間の無料トライアル期間が終われば、月額980円(ファミリープランが1480円)と有料プランに切り替えて利用することができます。

Apple Musicのライバルと言われるSpotifyは有料会員2000万人をすでに有しています。またフランスのDeezerは有料会員600万人、アクティブユーザー1600万人とSpotifyの後を追いかけます。

現状ではApple Musicが音楽シーンに与える影響はまだまだ小さいと言えます。ニューヨーク・タイムズによれば、Apple Musicで配信される複数のアルバムが米国チャートで10〜20%という結果につながりました。例えば、テイラー・スウィフトの「1989」は、Apple Musicの再生データが米国アルバムチャートに合算された週には、週間ストリーミングが5,000回から240万回に急増しました。しかし、「1989」は限られた成功例で、その他のアルバムの中には週が変わったら数字はフラットまたは減少という結果に終わったということでした。

Apple Musicを見守る業界関係者が気にしているのは、ストリーミング再生のダウンロード売上促進力です。アップルはiTunesのダウンロード売上が近年低迷していることを受けて、Apple Musicのストリーミングが新たな収益源となる一方、ダウンロード購入を促すキッカケになることも期待しています。

アップルは今後も屋外広告やテレビコマーシャルでApple Musicを大プッシュし、SpotifyやTidalなど競合の音楽配信と競うため、サービス自体の認知度の向上を目指す予定です。

■記事元http://jaykogami.com/2015/08/11865.html


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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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