Spotify、ポッドキャスト配信ツールを無償提供。急成長の音声コンテンツ市場に参入、リスナー拡大を狙う
音楽ストリーミングサービス最大手のSpotifyは、世界的に急成長するポッドキャスト市場においても、音声コンテンツ・クリエイターを支援する様子だ。
Spotifyは、ポッドキャスト・クリエイター向けの新プラットフォーム「Spotify for Podcasters」のベータ版を発表した。
ユーザーは、Spotify独自のポッドキャスト配信管理ツールを利用して、世界で1億8000万人以上のユーザーを誇るSpotify上でコンテンツの配信が行える。この機能では、ポッドキャスト制作会社やクリエイターは、ポッドキャスト専門のアグリゲーターやディストリビューターを経由してSpotifyでの配信を設定する必要がなくなる点が大きい。
SpotifyでRSSを直接登録して、カテゴリーを選び、申請すれば、最新コンテンツを公開できるようになる。Spotifyでポッドキャスト配信を行うには、クリエイターはSpotifyのアカウント登録が必要となる。
Spotifyとポッドキャスト市場
さらにSpotifyは配信者向けにリスナーのデモグラフィックや都市、エンゲージメントなどパフォーマンスを分析するためのポッドキャストデータ解析ツールを提供する。Spotifyは、すでにアーティストやレーベル、マネジメント向けにリスナーデータの分析ツール郡「Spotify for Artists」を提供して、クリエイターを支援し続けている。
Spotifyは数千万曲以上の音楽カタログを配信してきた一方で、約3年前からポッドキャストなど音声コンテンツの配信も強化してきた。しかし、ポッドキャストをSpotify内で配信できるのは、大手メディアやトークショー、人気ポッドキャスターなど、一部のメディアに限定されてきた。
ポッドキャスト・クリエイターにとっても、世界で1億8000万人以上のユーザーを誇る世界最大の音楽ストリーミングプラットフォームで、容易にコンテンツが配信できるようになることは、リスナーにリーチする可能性の一つとなるだろう。
一方でポッドキャスト・クリエイターは、数多くのアーティストやレーベルが新規リスナーの開拓とプロモーションに四苦八苦するというSpotifyで配信する上での共通の課題に直面するだろう。アーティストやレーベルは、人気の公式Spotifyプレイリストに入ることで新曲をマーケティングするといった施策を行っているが、ポッドキャストの分野ではSpotifyがどのようにリスナーへコンテンツをレコメンドし提供するか興味が高まる。
これでSpotifyは、アップルのiTunesや、SoundCloudなどと音楽ストリーミングサービス以外でも競合することとなった。
アップルは独自のポッドキャストアプリを強化し、マーケティングのハウツウをポッドキャスト制作会社に提供するなど、2018年に入り、ポッドキャスト市場におけるアップルの市場リーダーとしての存在感を強めている。
またアップルにはApple Musicと同様の価格9.99ドルで、ポッドキャストのサブスクリプションサービスを開始するという噂も浮上している。サブスクリプションを導入することで、ポッドキャスト・クリエイターや制作会社に収益をもたらす代わりに、良質な配信者を集めようという狙いだ。
SoundCloudもポッドキャスト・クリエイター向けの配信ツールを公開している。
その他にもOverDriveやStitcher、Google Podcasts、Pocket Castsなど、ポッドキャスト視聴アプリは充実している。
ポッドキャスト市場は、巨大な音声コンテンツの領域で新しいビジネスチャンスと見られている存在だ。特に、急速に普及するスマートスピーカーやIoT、音声AIと連携したポッドキャスト消費は今後さらに拡大する可能性がある。また車載システムのアプリ連携が進化することによって、移動中のポッドキャスト利用も増えるだろう。
米国で調査会社Edison researchが行った調査では、ポッドキャストのリスナー層は18-34歳が最もアクティブというデータが示されている。
こうしたポッドキャスト市場は、Spotifyなどプラットフォームにとっても可能性が大きいが、若年層のデモグラフィックを狙う広告業界にとっても魅力的な市場となっている。ちなみに、Edison researchによれば2017年の平均ポッドキャスト視聴時間は45分。平均ポッドキャスト広告は90秒だった。
記事提供:All Digital Music