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宇多田ヒカル、12年ぶりのツアー終了「この先も続けられるようにがんばる」

コラム Izumi Sakamoto

 

宇多田ヒカルの国内ツアー「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」が、デビュー20周年記念日である12月9日の千葉・幕張メッセ公演にてファイナルを迎えた。

今回のツアーは11月6日の神奈川・横浜アリーナ公演を皮切りに、6都市12公演が行なわれた。国内ツアーとしては12年ぶり、ライブとしては2010年12月の神奈川・横浜アリーナでの活動休止前最後のライブ「WILD LIFE」以来、8年ぶりの開催となる。

ここでは、12月4日に開催された埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演1日目の様子をもとにレポートしていく。

顔認証システムとグッズの事前申込(決済)を導入

本ツアーでは入場時に顔認証システムによる本人確認が実施された。スマートフォンなどのデバイスに表示した顔写真情報入りのデジタルチケット(QRコード)を読み取り機にかざすと、設置されているカメラにより顔認証が行われるもので、NECとテイパーズが共同開発した顔認証システムが採用されている。

顔認証システムの導入による入場口での混雑が懸念されたものの、埼玉スーパーアリーナ公演1日目の様子では、目立った混乱もなく、むしろ顔写真付き身分証明書を用いた目視での本人確認などと比べて、入場にかかる時間が短縮されている印象であった。関係者によると「これまでの公演で、システムによるトラブルはとくに起きていない」とのこと(12月4日時点)。

また、グッズ販売においては、会場で販売されている商品を事前に購入できる「事前申込(決済)コンサート会場引き換え」が取り入れられた。あらかじめ欲しいものをインターネット上で申し込んでクレジットカードで決済しておくことで、グッズ販売の列に並ばずにすみ、また、商品を必ず確保することができるメリットがある。会場には、当日購入のグッズ売り場とは別に、事前申込(決済)会場引換用のテントが設けられ、スムーズなグッズの引き渡しが行なわれていた。

さらに、本公演では、携帯・スマートフォン・タブレットを用いたフラッシュなしでの撮影が許可されており、宇多田本人もMCのなかで「撮るの(撮影)OKになっているんだけど、まわりの人が気にならないように、よろしくです!」と周囲への配慮を呼びかけていた。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

「はじめてライブを楽しんでいる自分がいます」

交差するピンスポットの白い光が、ステージ中央に宇多田の姿を浮かび上がらせると、観客は大きな歓声と拍手で彼女を迎えた。最初の曲「あなた」で宇多田が歌声を発した瞬間、会場の空気が一変。儚げながらも力強い歌声に、観客はじっと耳を傾け、ただ彼女の姿を見つめていた。「みんな、ながらくお待たせしてごめんね! 」と呼びかけはじまった「traveling」では、大サビの前で「埼玉スーパーアリーナ」と歌詞の一部を替えながら観客に呼びかけ、「もっとおもいっきり、声を聴かせてちょうだい!」と叫んで大サビへと突入。「traveling」の大合唱が響いた。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

最初のMCで宇多田は「こんばんは!」とあいさつ。「テレビとかライブ映像で見るお客さんみたいだって思っちゃった(笑)」と観客の笑いを誘いながら、「本当なんだよね、これは」と、目の前の光景を噛みしめている様子だった。「今日はいままでで一番の大人数なんだけど、意外と大勢って感じがしないかもしれない。みんなが優しいからかな?」と話し、「お客さんの数が倍なら、私も倍ぐらいのパワーでがんばりましょうか!」と意気込んだ。

バンド編成はギター、キーボード、ピアノ、ベース、ドラム、ストリングスで、今回のツアーならではのアレンジも。「Kiss & Cry」で曲の途中に「Can You Keep A Secret?」がマッシュアップされたり、「SAKURAドロップス」で曲の終わりに宇多田がアナログシンセサイザー・Prophet-6を演奏されたりする場面も見られた。また、照明インスタレーションが、まるでステージが絵画のような世界観を演出。総合的なアート空間が広がっていた。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

「ともだち」では「Forevermore」のミュージックビデオの振り付けを担当した高瀬譜希子がステージで、歌詞の心情を表現したダンスを舞う。つづく「Too Proud」では、バンドメンバーが一旦退場し、宇多田と高瀬のふたりがダンスを織り交ぜながらパフォーマンス。ラップパートで宇多田が披露した日本語のリリックでのラップに、会場が興奮に包まれた。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

中盤では、又吉直樹が脚本を担当した、笑いあり、シリアスありのショートムービーが流れた。そのなかで宇多田は今回のツアー「Laughter in the Dark Tour」のテーマである「絶望とユーモア(希望)」について、「ユーモアがあれば、どんなに絶望的な状況でも、見方や考え方を切り替えられる」と話している。映像が終わると、衣装チェンジをした宇多田がセンターステージにあらわれ、「誓い」「真夏の通り雨」「花束を君に」をしっとりと歌い上げた。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

宇多田は今回のツアーがデビュー20周年を記念したものであることにふれ、「20年続けられると思っていなかったので、いまこうやって20周年記念のライブをこんなにたくさんの人と、こんなにあったかい環境でやれているというのが本当にありがたいです」「大変な顔認証もあるのに(チケットを)申し込んでくれて、この日の予定を空けておいてくれて、本当にありがとうございます」と観客に感謝を述べた。客席からは「おかえり!」と声がかかり、宇多田が笑いながら「ただいま」と答える場面も。
 

宇多田ヒカル「Hikaru Utada Laughther in the Dark Tour 2018」

終盤には、「なんでこんなに多くの人がこんなに真剣に私の歌を聴いてくれているんだろうと感動しています」「本当に今回のツアーではじめてライブを楽しんでいる自分がいます」と話し、会場から大きな拍手が舞い起こった。観客の気持ちに応えるように「この先も続けられるようにがんばる」これからの活動への意欲を語り、本編最後となる曲「Play A Love Song」へ。アンコールでは、「呼んでくれてありがとー!」と、「俺の彼女」「Automatic」「Goodbye Happiness」の3曲を披露。最後の曲のアウトロではステージの端から端へと移動して観客に深々と頭を下げ、ステージを後にした。

なお、今回のツアーは、BSスカパー!にて2019年1月27日21時よりオンエアされることが決定。さらに3月10日20時からはMUSIC ON! TVでツアードキュメンタリーも加えた完全版が放送される予定。

“Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour”セットリスト
M1 あなた
M2 道
M3 traveling
M4 COLORS
M5 Prisoner Of Love
M6 Kiss & Cry
M7 SAKURAドロップス
M8 光
M9 ともだち
M10 Too Proud
M11 誓い
M12 真夏の通り雨
M13 花束を君に
M14 Forevermore
M15 First Love
M16 初恋
M17 Play A Love Song
EN1 俺の彼女
EN2 Automatic
EN3 Goodbye Happiness
 


 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

ロンドン在住、フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。

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