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長時間オーディオコンテンツを配信できるMixcloud、46%の売上成長達成。ニッチな音楽ストリーミングが大手と差別化する領域とは?

コラム All Digital Music

長時間の音楽コンテンツを配信するオーディオストリーミングサービス「Mixcloud」が、2018年度の業績が244万UKポンド(約3億4000万円)で前年比46%増加したことが明らかとなった。同社の2017年度の売上高は168万UKポンド(2億3000万円)だった。

2018年は売上が増加した一方で、純損失も拡大した。2018年度の損失は304万UKポンド(4億3000万円円)。2017年の88.5万UKポンド(1億2000万円)からさらに拡大した。大きな出費となったのは運営費で402万UKポンド(5億6000万円)の支出が要因だった。

そして、MixCloudのビジネスは未だ成長期にあると言える。

同社は、DJミックスやミックステープ、コミュニティラジオ番組、ポッドキャストなど、長時間のオーディオコンテンツを低コストでスピーディーに配信したいインディーズアーティストやクリエイター、メディアにとって貴重なプラットフォームであり、Apple MusicやSpotifyなど大手ストリーミングサービスとは全く異なる領域を開拓している。

サービス開始当初からMixcloudが支援してきたのは、中小規模のラジオ局やクラブDJ、ダンスミュージック・プロデューサー、レコード会社とユーザーコミュニティの根幹は今も変わらない。大きく変化し出したのは、ユーザーがマネタイズできる仕組み作りだった。

2017年には、ワーナーミュージック・グループが楽曲配信に関する包括的ライセンス契約を結び、2018年にはユニバーサルミュージックや、世界最大のインディーズレーベルの権利エージェントであるMerlinともライセンス契約を締結している。レコード会社と直接ライセンス契約を結ぶことで、プラットフォーム上で使用可能な楽曲に膨大なカタログが揃い、使用された楽曲に応じて支払われるアーティストへのロイヤリティの仕組みも始まり、マネタイズにも寄与することができるようになった。

ロンドンとニューヨークを拠点にするMixCloudは、2008年に創業して以降、自社の資金で運営しながらコンスタントにユーザーを獲得してきたが、2018年4月にアメリカの投資会社WndrCoから1150万ドルを調達しており、初めて外部からの資金調達を行った。

世界的にサブスクリプションで拡大している音楽ストリーミングサービス市場は、Spotifyやアップル、アマゾン、グーグル/YouTubeといった大手がグローバル規模で事業展開を強めており、中小規模なストリーミングサービスがビジネスを継続することは益々困難な時代になってきた。

しかしながら、20名弱で運営されるMixcloudのように、小さなオペレーションでニッチな領域で強みを発揮し続けるサービスは現在も存在感を発揮している(Spotifyは全世界で従業員数4000人以上を抱える)。

同様のことは、AudiomackMixTape MonkeyPrimephonicIdagioのような、ニッチなジャンルで人気のストリーミングにも当てはまる。

Mixcloudが今、強化する領域はリスナー向けとアーティスト/クリエイター向けのサブスクリプションサービスの拡充だ。

2019年7月に「Mixcloudプレミアム」を開始した。これによってサブスクリプションのユーザーは、Mixcloud上のコンテンツを広告や制限なく楽しむことができる。サブスクリプションのユーザーが聴いた楽曲に支払われるロイヤリティは、フリーのユーザーよりも比率が高い。そのため、Mixcloudプレミアムでの楽曲再生はアーティストやレーベル、作曲家の収益源に繋がっている。

また一方で、ユーザーが好きなアーティストやDJ、レーベル、ポッドキャスト、ラジオを選んで課金する、パトロン型サブスクリプション「Mixcloudセレクト」も2018年11月から開始した。聴き放題モデルのストリーミングとは異なるユニークなサブスクリプションで、ファンは直接アーティストやクリエイターたちに課金できる。

Mixcloud

Mixcloudのサブスクリプションモデルでは、面倒な著作権処理はMixcloudが導入するIDフィンガープリントシステムが対応する。そのため参加するアーティストやレーベルは権利処理やロイヤリティ徴収と分配といった手間を気にすること無く、コンテンツを配信することが可能になっているのもメリットとしては大きい。

アーティストやポッドキャスター、ラジオ局向けには、容量制限無しのクラウドストレージや、再生データの分析ツール、Mixcloudセレクトへのアクセスをまとめて使用できる「Mixcloudプロ」アカウントを有償で提供している。

jaykogami
記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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