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テイラー・スウィフトにスクーター・ブラウンから公開状

コラム 高橋裕二の洋楽天国

テイラー・スウィフトは11月14日、テイラー・スウィフトの過去の原盤権を保有する音楽マネージャーのスクーター・ブラウンが過去の作品を番組で歌うことを妨害しているとして非難した。

テイラー・スウィフトは11月24日に行われるABCテレビの特番「アメリカン・ミュージック・アワード」で、過去のヒット曲をメドレーで歌う予定だったという。しかし、ブラウンと彼女が以前所属していたビッグ・マシーン・レコードのスコット・ボルチェッタ会長が、最新アルバムの「ラヴァー」以前に発売した全ての楽曲を番組で歌うことを阻止しようとしていると、テイラー・スウィフトはSNSを通じてファンに訴えた。

これに対し、スクーター・ブラウンとスコット・ボルチェッタ会長は声明を出した。「私達にはテイラー・スウィフトが番組で歌う事を止めさせる権利なんてあるわけが無い」

そして先週末、スクーター・ブラウンはインスタグラムで、テイラー・スウィフトに公開状(オープン・レター)を送った。

「先週のあなたのSNSへの投稿以来、私の家族に直接向けられた、殺すぞという沢山の脅しがありました。今朝、私はソーシャル・メディア戦争には参加しないと公言しました。この1週間の詳細は説明しません。私は迷っています。妻と子供たち、私のチームとその家族のことを考えて、私はこれに対処する方法について、さまざまな感情がわきました。私は今、深呼吸と多くの熟考の後、これを書きます。誰かの安全を危険にさらすに値する状況では決してないと確信しています。

これはテイラー・スウィフト、あなたの意図ではないと思いますが、しかしあなたの言葉には非常に大きな重みがあります。

私たちは無意味な暴力の時代に生きており、夫として父として、家族に対して私は心配しています。人々は直接会話するのではなく、ソーシャル・メディアで意見を表明します。私はそれに参加したくない。率直に言って、私はビッグ・マシン・レコードとの契約で、私の存在が、私とあなたが実際に出会ったほんの一握りの時間で、あなたが苦痛を引き起こしたと聞いてショックを受け、落胆しました。過去6ヶ月間、私とあなたとオープンな議論をしようとする試みはすべて拒否されました。あなたのチームの何人かと私たちの共通の友人の多くはあなたをテーブルに連れてこようとしましたが、出来ませんでした。あなたは紛争を解決することに関心がないかのように感じます。私はあなたの代理人を通して解決策を達成するために繰り返し試みました」

ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデのマネージャーであるスクーター・ブラウンは自身のファンド、イサカ・ホールディングスを通じて、ビッグ・マシーン・レコードから今年6月、テイラー・スウィフトの過去の6枚のアルバムの原盤権を獲得した。買収金額は330億円(1$110円換算)だった。これに対してテイラー・スウィフトは、自分が買うつもりだったと言い、「最悪なシナリオ」と吠えた。そして6枚のアルバムを全て再レコーディングすると宣言した。

歌手がいる。レコード会社と契約をする。CDが1枚売れたらアーティスト印税がいくら貰えるかを決める。レコードの権利である原盤(マスター)の権利は当然レコード会社が持つ。そうでなかったらレコード会社は成り立たない。

アメリカのレコード業界で、アーティストとレコード会社が結ぶ契約書には必ず、「再レコーディングの制限」という項目がある。皮肉にもテイラー・スウィフトの弁護士ドナルド・パスマンが書いた音楽ビジネスのハウツー本である「音楽ビジネス成功の條件」にこう書いてある。

「どの契約書にも、契約期間中にレコーディングした曲は契約が切れた後しばらくは再レコーディングが出来ない。これは「再レコーディングの制限」とよばれるものだ。よく考えてみれば全く論理的な規定だ。もしこれがないと、契約が終わった後、アーティストは別のレコード会社で前と全く同じアルバムを作ることができる。最低期限として契約終了から3年から5年は禁止される」

この条項で、テイラー・スウィフトは再レコーディングがすぐには出来なくなった。

しかし特例があって、ドナルド・パスマン曰く、この条項は「番組のレコーディングを規制するものではない」という。ならばABCテレビの「アメリカン・ミュージック・アワード」で歌ってレコーディングしたらまずいのかと。

テイラー・スウィフトはSNS(彼女の場合はタンブラー)を使って、音楽ビジネスの仕組みをしらない一般ファンに呼びかけ、あおる。音楽業界関係者には、テイラー・スウィフトが一人で犠牲者ぶっているとみる人達もいる。

まもなくテレビ番組「アメリカン・ミュージック・アワード」が始まる。

高橋裕二の洋楽天国

記事提供元:洋楽天国
高橋裕二(たかはし・ゆうじ)
インタビュー

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