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「ニュース」を最適化した音楽プレイリストが登場、Spotifyが拡大する音楽アルゴリズムの活用法

コラム All Digital Music

サブスクリプション型音楽ストリーミングサービス最大手のSpotifyは、新しいプレイリストの実験を拡大させているようです。

Spotifyは、「Your Daily Drive」プレイリストを、イギリスとアイルランドで始めました。「Your Daily Drive」プレイリストはアメリカで2019年からすでに利用が始まっている比較的新しいプレイリストです。

プレイリストの特徴

「Your Daily Drive」プレイリストの特性は、名前の通り、運転や移動時間中の再生に最適化されたプレイリストになります。そして最大の特徴は、音楽だけでなく、ニュースメディアが制作したニュースポッドキャスト番組がプレイリストで配信されることです。

音楽やポッドキャストの選択には、Spotifyアルゴリズムが用いられます。Spotifyのアルゴリズムがリスナーに最適化した楽曲とニュースポッドキャストを選択し、パーソナライズされたプレイリストがユーザー個別に毎日生成されます。

プレイリストを使うリスナーは、自分の好きな音楽と、関心あるニュースが、自動で流れてくるという、音楽と情報を一度に取得できる聴き方で利用できます。

もちろん、運転していない時や、通勤時間以外に聴くことも可能ですし、朝だけでなく昼や夜に聴いても、最適化されたコンテンツがプレイリストには揃います。

ニュースポッドキャストは、新聞社やメディア、ラジオ、ジャーナリストが制作するポッドキャスト番組から、最新情報やスポーツニュースなど、その日のニュースが配信されてきます。

配信元となるのは、「タイムズ」フィナンシャル・タイムズ」「TalkSport」「エコノミスト」「イブニング・スタンダード」「The Smart 7」など、すでにポッドキャストを配信しているメディアやジャーナリストがイギリスの「Your Daily Drive」のローンチパートナーに選ばれています。

アーティストへの影響

もう一つの特徴は、配信ニュースが音楽ニュースではないことも、特徴として挙げられます。アーティストの最新情報や、楽曲のリリース情報を流すプロモーション目的での活用は、現状はこのプレイリストでは出来ません。

そして、新しいプレイリストでSpotifyが優先させたいのは、更に音楽をレコメンドすることより、政治やビジネス、スポーツのニュースであることは、音楽の未来を考えるアーティストや音楽業界関係者にとっては、気になるポイントであるはずです。

Spotifyの特出したテクノロジーの強みは、コンテンツを最適化して、ユーザーにマッチングさせる強力なアルゴリズムです。この場合、最適化されるコンテンツでは音楽が優先されるとも限りません。ポッドキャストや音声コンテンツであっても問題ないのです。

「Your Daily Drive」のように、音楽とポッドキャストを組み合わせたプレイリストは、コンテンツの最適化を象徴する新しいプレイリストの流れと言えるでしょう。

仮に、もしもSpotifyでポッドキャストユーザーが増え、ニュース再生時間が伸びるのであれば、Spotifyは迷わずポッドキャストをレコメンドする動きに徐々にシフトしていくでしょう。

音楽を聴くリスナーのレコメンデーションにも、ポッドキャストが流れてきて、ニュースを聴く時間が増えるということは、音楽を聴く時間や、接触機会が奪われることにも繋がる可能性があります。つまり、音楽再生が減っていくという、音楽を配信する立場の人間にとってのリスクも、想定できるのではないでしょうか?

Spotifyで楽曲をストリーミング配信するインディーアーティストやレーベル、ディストリビューターであれば、近い将来は、こうしたアルゴリズム系プレイリストを理解することと、共存していくことが、大切になっていきます。

まず前提として、Spotifyで今後、重要になっていくのは、アルゴリズム系プレイリストの影響力です。

ここでのアルゴリズム系プレイリストは、「Discover Weekly」や「Release Rader」などが代表的ですが、こうしたプレイリストの種類や、レコメンドされる頻度は、年々増加傾向にあります。

特に、アーティストが楽曲をリリースしていく時や、ファンを獲得していく時には、アルゴリズムからプッシュされるアプローチが、中長期でファンへリーチする意味では重要な手法になっていきます。

ですので、プレイリストを強化したいアーティストやレーベルは、リアルなリスナーと親和性が高めやすいアルゴリズム系プレイリストへの取り組みを強化して、ファン化を目指すことをまずはオススメします。

Spotify UKのマネージングディレクター、トム・コナフトン(Tom Connaughton)は、「Spotifyでは、ユーザーが強い関心を持つパーソナライズされたコンテンツへ、アクセスを提供することに注力しています。イギリスとアイルランドで、人々の日常の視聴体験に革命をもたらす、新しい機能をローンチできることを嬉しく思います。この新しいプレイリストは、リスナーが知りたい最新ニュースを、好きな音楽とシームレスに融合して届けます」と説明します。

リスナーが知りたい最新ニュースを、好きな音楽とシームレスに融合して届けます

Spotify独自のリサーチによれば、新型コロナウィルス感染拡大以降に、人々の視聴行動は、新たな日常、いわゆるニューノーマルに最適化が始まっているとも言います。

COVID-19以降、通勤や通学が世界的に無くなったことによって、日課だった通勤時間での音楽再生時間が大幅減少したり、朝の音楽再生時間が日中にシフトしたり、視聴行動に変化が起きていることは、音楽業界でもすでに知られています。

Spotifyによると、毎日の通勤に変化が起こった人のうち、76%は音楽再生とポッドキャストを聴くための新しい日課を始めたと言います。その中では、自宅での再生が増えたり、調理や勉強、エクササイズ中に音楽やポッドキャストを聴く時間が増えています。

ラジオ市場への挑戦

このプレイリストから見えてくるのは、Spotifyが、既存のラジオ市場とリスナー獲得で競争しようとする動きが読み取れます。

特にアメリカでは、通勤中のラジオ再生は、現在も巨大なメディアビジネス市場で、SiriusXM / Pandoraや、iHeartMediaなど、オンラインラジオ企業大手が広告から大きな売上を上げています。

COVID-19の影響もあり、自宅での生活スタイルにどれだけラジオ視聴が入り込めるかが、ラジオ企業にとっての懸念材料となります。

例えばAmazon Fire TVやAlexaなど、ホームデバイスとの連携をすでに始めているSpotifyが、自宅生活用に料理やフィットネス、瞑想に関するカテゴリーのレコメンデーションや、オンデマンドな音声コンテンツの拡充を強化することは、容易に想像ができます。オンデマンドの音声コンテンツでも、広告出稿が可能なため、広告主にとって、Spotifyは音声広告の予算を最適活用できるプラットフォームとして高い関心が集まるはずです。

参考記事:Spotify、関心ベースの「ターゲティング広告」を強化へ:セルフサービスの「Ad Studio」で(DIGIDAY[日本版])

昨年、アメリカでは18歳以上は、毎週12時間近く、ラジオ視聴を行ったというニールセンのデータがあります。カテゴリー別では、ニュース/トーク番組の視聴が最も人気です(アメリカでは同カテゴリーが伝統的に人気)。今年の大統領選挙に合わせて、人気がより高まると予想されるため、需要が高まるラジオの最新情報をいかにパーソナライズさせ、高度にレコメンドできるかが、Spotifyがラジオと差別化する一つの可能性と言えるでしょう。

Source:
Spotify brings news to the UK(Complete Music Update)
Spotify combines music and news podcasts in personalised playlist(Music Week)
Tops of 2019:Radio(Nielsen)

jaykogami 記事提供元All Digital Music
Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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