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エイジア、ライブ映像作品「エイジア・イン・エイジア〜ライヴ・アット・武道館 1983」発売

コラム 高橋裕二の洋楽天国

5月27日、ロック・バンド、エイジアのライブ映像「エイジア・イン・エイジア〜ライヴ・アット・武道館 1983」がブルーレイやDVDで発売になる。

昔、菅直人総理が記者会見で、原稿を読むのに下を向かず、正面に向かって抑揚無く話す。テレビの画面では見づらいが、右と左に斜めの透明の板がある。菅総理の足元からその透明な板に原稿が送られ、あたかも原稿を読まないで話すように見える。この装置がテレプロンプターというもの。アメリカではテレビの報道番組でアンカーマンが、記者が取材したものをこのテレプロンプターに写して、よどみなく話せた。

日本でテレプロンプターを始めて使ったのはCBSソニー(現ソニーミュージック)だろう。アメリカの音楽専門ケーブル・テレビ局MTVがスタートしたのは1981年8月。エイジアは翌1982年にデビューする。アメリカではゲフィン・レコードだが、日本ではCBSソニーが販売を担当した。メンバーは以下だ。

ジョン・ウェットン(ボーカル・ベース 元キング・クリムゾン/ロキシー・ミュージック)
スティーヴ・ハウ(ギター 元イエス)
カール・パーマー(ドラムス 元エマーソン・レイク・アンド・パーマー)
ジェフリー・ダウンズ(キーボード 元バグルス/イエス)

デビュー・アルバム「詠時感~時へのロマン」はビルボード・アルバム・チャートで9週間1位になった。

1983年、エイジアは日本からワールド・ツアーをスタートさせる。この時米MTVが特別番組「エイジア・イン・エイジア」を企画した。12月7日の武道館公演を衛星でアメリカに生中継放送をするというもの。ところが直前になって、アルバムを全曲書いているボーカルのジョン・ウェットンがグループ脱退という事件が起きる。そしてジョン・ウェットンの代役として、元 エマーソン・レイク&パーマーのグレッグ・レイク が起用された。TV番組用のコンサート(生中継の為、番組の尺/長さ)とグレッグ・レイクがボーカルになれていない為、リハーサルが必要で、早めに日本にやって来た。ヤマハの合歓の郷(三重県志摩市)で合宿が始まった。

ゲネプロ中に米MTVのスタッフから難問が飛び出した。ボーカルのグレッグ・レイクの為に「テレプロンプター」を用意してほしいという要望だ。グレッグ・レイクがいくらリハーサルをしても生中継で歌詞が歌えない状況が発生する可能性がある。事故になる。MTVのスタッフはCBSソニー(現ソニーミュージック)の親会社であるソニーは、アメリカのテレビ局に業務用のカメラを収めているから対応できると強調した。MTVの言うとおり、ソニーはすぐ理解し、ステージの真ん中のグレッグ・レイクの前にテレプロンプターを設置した。グレッグ・レイクの前には、斜めのガラス傾斜板があり、下から歌詞が映し出される。グレッグの足下にはペダルがあり、描写の速度が調整できる。観客からテレプロンプターは透明で全く見えない。

レコード会社のCBSソニーやプロモーターのウドー音楽は中継の為の衛星回線の使用申請が出来ない。当時CBSソニーの洋楽部にいた当ブログの筆者は、懇意にしている住友利行プロデューサーがいるテレビ神奈川と、これまた懇意にしている佐藤哲也プロデューサーがいるテレビ東京に、回線の使用申請をお願いした。

高橋裕二の洋楽天国記事提供元:洋楽天国
高橋裕二(たかはし・ゆうじ)
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