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中国専門の音楽マーケティング会社「East Goes Global」に高まる需要…100万ドルの資金調達、アーティストをSNSで成長させる戦略に注力

コラム All Digital Music

中国の音楽エンタテインメント市場に特化したマーケティングサービスを提供する「East Goes Global」は、100万ドル(1億4,500万円、1ドル145円換算)の資金調達を行いました。

East Goes Global

このシードラウンドは、募集枠を大きく上回る応募超過となり、招待された投資家のみが参加しました。資金調達時の評価額は1000万ドル(約14億5,000万円)でした。

East Goes Globalは、中国の巨大な音楽市場に参入したい欧米のアーティストや、ファンベースを広げたい音楽業界を支援することで知られるエージェンシーです。

同社がこれまで支援してきたアーティストやクリエイターには、バックストリート・ボーイズ、ジョン・レジェンド、カーリー・レイ・ジェプセン、ブリトニー・スピアーズ、ケイシー・マスグレイヴス、Clairo、ショーン・メンデス、The Chainsmokers、YUNGBLUD、ジェシー・J、Imagine Dragons、トロイ・シヴァン、Omar Apollo、DJ Snake、Nicky Jam、Dillon Francisなどがおり、SNSでファン獲得するため中国戦略に携わってきました。

音楽以外にもウィル・スミスやジェシカ・チャステイン、Cloud9 Esports、ゲイリー・ヴェイナチャックなど、俳優やインフルエンサー、スポーツ団体の中国におけるSNSプロモーションも行ってきました。

アーティストマネージャーが起業

East Goes Globalは、CEOで創業者のアンドリュー・スパルター(Andrew Spalter)が2018年に設立。

スパルターは起業する前、アーティストマネジメント会社「MDDN」(ロックバンドGood Charlotteのメンバーで、起業家のベンジー・マッデンとジョエル・マッデンが設立したマネジメント会社)で働いていた時、イギリス人ポップアーティストでシンガーソングライターのジェシー・J(Jessie J)のマネージャーとして、初めて中国で音楽ビジネスを体験します。

2018年にジェシー・Jが参加した中国の音楽番組「Singer」(歌手)に、マネージャーとしてスパルターも同行し、中国に短期滞在します。

番組では、ジェシー・Jが優勝する快挙を達成した一方、スパルターはWeiboやDouyin、Biliili、Xiaohongshu(小紅書)といった、欧米からはアクセスできない現地のプラットフォームの存在を知ることとなり、これらを活用したエンタテインメント市場向けのビジネスアイデアにたどり着きました。

フォロワー1億人を獲得

East Goes Globalを設立したスパルターは、欧米のアーティストが中国進出したり、中国でファン獲得を行うための専門のマーケティングサービスを提供し始めました。

East Goes Globalはロサンゼルスと中国を拠点に、中国現地に特化したSNSマーケティングや、音楽ストリーミング・マーケティングやプレイリスト・ピッチング、インフルエンサー・マーケティング、ブランディングなど、多岐に渡るサービスに拡大してきました。

同社では、音楽プラットフォームのTencent MusicのQQ MusicとKugouとKuwo、NetEase Cloud Musicのプロモーションやピッチング、WeChat、Douyin、Weibo、Bilibili、Xiaohongshuなどを活用したマーケティングキャンペーン、アカウントを提供しており、中国に特化したDSPやSNSを中心にアーティストのファン獲得を持続的に行うことができます。

2021年には、CryptoArt.aiと提携し、中国初となるNFTアートのオークションを上海で開催。中国で規制によってアクセスできないNFTマーケットプレイスが多い中、欧米のクリエイターのアジアNFT市場への参入の支援も始めました。

現在では、East Goes Globalが支援するクライアントのフォロワー総数は中国で1億人以上を有するまで、成長させてきました。

スパルターは今回の資金調達について、次のようにコメントしています「4年前に思いつきで始めた事業が、今では業界をリードする垂直統合型のエージェンシーに成長し、未開拓の市場で、クライアントに数百万ドルの収益を生み出しています。クライアントは、世界最大の市場で1億人以上のフォロワーにリーチできます。私たちはこの市場のニッチを見つけ、参入し、今回の資金調達でさらに一歩先を行きます」

East Goes Globalは、調達した資金で、ベータテスト中のSaaSプラットフォームの開発と、チーム拡大を目指します。

今回のラウンドには、アーティストやシンガーソングライター、アーティストマネージャーが投資家として参加しました。

FLETCHER(アーティスト)
イングリッド・アンドレス(アーティスト)
ジェシー・J(アーティスト)
ジェシー・レイエズ(アーティスト)
アルフレッド・ティラド(マネジメント)
ジェームズ・ダイ(マネジメント)
ラリー・ルドルフ(マネジメント)
1916 Enterprises(マネジメント)
rogue(マネジメント)

中国の音楽市場、とりわけ中国のSNSやDSPには、日本からも未だにアクセスが制限されているのが現状です。そのためなのか、日本人アーティストの多くは、他の海外市場と同様、中国市場に注力するグローバル戦略開発はそれほど盛んでは有りません。

日本が中国の音楽市場を捉える際には、中国でライブをするためチケット販売を見越したプロモーションや、アニソンのタイアップによるプロモーションが今でも多く見られます。中には、中国のテレビ番組に出演する日本人アーティストの動画再生数が際立つ稀なケースもあります。

しかし、日本人アーティストがQQ MusicやNetEase Cloud Musicなど、現地のDSPで聴かれ成長することは未だに多くありません。

これは、日本人アーティストが中国のSNSと音楽サービスを横断して人気を持続的に獲得する戦略が不足しているとも言えます。

日本人アーティストが期待する現地でのライブ出演や、アニソンのタイアップやテレビ出演など一過性で短期的な露出では、持続的にファンベースを獲得するまでの取り組みや時間が十分に取れずに終わってしまうパターンが今でも多いかと思います。

また、現地のSNSで急に話題になったり、バイラル・コンテンツに繋がった時、その勢いを殺す事無く、最大化するためのコンテンツ戦略が無いケースも見られるため、機会を逃してしまったという話も聞きます。

国境を超えたSNS戦略や音楽配信戦略がアーティスト活動と収益化の重要な一部になりつつある昨今、「East Goes Global」のようなエージェンシーの存在は、世界展開したいレコード会社やマネジメント会社にとってますます重要性が高まるパートナー企業となっていくと感じます。

特に、中国に特化したアーティスト戦略を最新の市場動向やトレンドで構築できる企業は、変化の激しい音楽市場において、時代性を反映できる最適なサービスの選択肢になりつつあります。

2022年に入ってレコード会社も中国市場に注力する動きを見せています。ユニバーサルミュージックはキャピトル・レコード・チャイナを立ち上げ、ソニーミュージックがRCAレコードの中国オフィスを開設。いずれも、グローバルレーベルのネットワークやサービスを連携させて、中国現地からアーティストの契約や配信を始めました。

Source:
East Goes Global raises $1m funding for its work in China(Music Ally)

jaykogami 記事提供元All Digital Music
Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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