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ジョン・メイヤー ソロ来日公演の様子をポップギタリスト「Kenta」がリアルにお届け!〜John Mayer Solo BlueNote Tokyo 2023.12/30 1stレポート

コラム

世界的アーティストで、現代の3大ギタリストの一人、ジョン・メイヤーが昨年末、来日を果たした。突然のビッグニュースを知ったのは昨年10月のことだった。会場がキャパシティ300人以下のBlueNote Tokyoであったことに、自身の目を疑った。それだけならまだしも、今回はシートが44席で、チケットは発売と同時に即完となった。ビッグアーティストのクラブ公演は世界的にも非常に稀少で、彼の公式SNSからもアナウンスがあり、世界中のファンを興奮させた。

日程は12月29日・30日・31日となっており、各日2ステージ、1セットずつの入れ替え制。大晦日の夜の部では、ファンとシャンパンを片手にカウントダウンを行うという豪華な内容だ。ジョンは兼ねてからBlueNote Tokyoで演奏することが「夢」だったと語っており、目の前で彼のプレイを観てみたいというファンの夢も同時に叶えてくれたのだ。

私が参加したのは12月30日17:00の部で、会場に到着したのは16:30頃であった。入り口横で記念撮影をする人々で賑わっていたが、何やら奥の方にカメラを向けた人だかりが出来ている。これは!?と様子を覗きに行くと、1台の白い車が会場横に停車しており、姿こそ確認できなかったものの、彼の会場入りがあったのであろう。もしそれが本当だとすると、意外にギリギリのタイミングで楽屋に戻るのだなぁとミュージシャン目線で感じたのであった。

会場内に案内されると、ボブディランの「All Along The Watchtower」が流れていた。ジョンのセレクトかは謎だが、やはりこのような選曲は胸を躍らせずにはいられない。観客の年齢層は少し高めの30から40代程度で、海外の方も多く見られた。

ステージには1台のアコースティックピアノに小さめのTwo-Rockのキャビネットが2台。ファンとして彼の機材はちょくちょくチェックするが、このキャビネットを目にするのは初めてだ。ヘッドアンプは彼のメンターであるテキサスのブルースギタリストSRV(スティービーレイボーン)も使用していた幻のアンプと呼ばれるDumble OverDrive Specialと、Two-Rock(おそらく彼のシグネチャーモデル?)が置かれていた。ステージ上手にはPRSと共同開発したシグネチャーモデル「Silver Sky」とアコースティックギターが数本ずつ置かれていた。

ほどなくして、会場が暗転。遂にジョンが姿を現した。落ち着いた拍手を浴びながら、ステージへ上がるジョン。グレーのTシャツに黒いジャケット、リラックスな黒いパンツというラフな衣装を身に纏い、胸にはお気に入りのgoro’sのネックレスがキラリと光っていた。

1曲目は最新アルバム「Sob Rock」から「Last Train Home」を披露。TOTOの名曲を彷彿とさせる作品だが、イントロの「ジャッジャーン」が鳴り響いた瞬間、会場が一気に沸いた。Martin 00サイズの12弦ギターを使用し、より空間的な広がりを感じる大人な雰囲気のアレンジとなっていた。

続いて、ギターをMartin OMJMに持ち替え、「Battle Studies」に収録されている「Who Says」を披露。It’s been a long night in Tokyo tooに歌詞を言い換える所は萌えポイント! リラックスした彼のパフォーマンスは会場の緊張した空気を徐々に柔らかくし、オーディエンスをどんどん引き込んでいった。

ここで給水しMCが入る。日本に留学経験のあるジョンはフレンドリーで得意の?日本語で「ようこそ」と挨拶。オペレーターに対する細かな指示まで聴こえる程距離が近く、モニターの音量?に関するジェスチャーを交わしていたのが印象的であった。

続いて、「Sob Rock」から「Shouldn’t Matter But It Does」、グラミー賞2部門を受賞した「Daughters」をしっとりと披露。最後のコードで少しミスをしたジョンはニヤリと表情を変え舌を出した。Solo Liveにおいてギタリストがソロパートをどのように演出するかは悩ましい所だが、美しいハミングを聴くことができた。どちらも女性がテーマになっている楽曲で、テイラースウィフトやケイティ・ペリーなど数々の女性との交際遍歴の中で感じた彼の恋愛観や女性への想い、考えを垣間見ることができる。

そして、Martinのカッタウェイギターに持ち替え、「The Age Of Worry」を演奏。この楽曲が収録されているアルバム「Born And Raised」では、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、デヴィッド・クロスビー、スティーヴン・スティルスと言ったカントリー・ミュージックのレジェンド達に傾倒した作品を楽しむことができ、カラッとしたギターそのものが持つ個性的なサウンドが楽しめた。余談だが、当アルバム制作中にジョンは喉の手術を行なっており、色々な体験を乗り越えて歌う「The Age Of Worry」は自分や周囲の人々に対しての激励ソングへと進化しているように思え、より歌詞の深みを感じた。

MCでは乾燥しているせいか、多めに水を口に含む姿が見られ、英語で話すジョンは時々オーディエンスに対し「英語でわかりますか?」と日本語で気遣いをみせた。

お恥ずかしながら次の楽曲はタイトル不明なのだが、オーディエンスとリクエストのようなやりとりがあり最後に「ニール・ヤング」という言葉だけ聞き取ることができたのでカバーソングだったのかもしれない。(※情報提供がありCover of Brown Eyes Womenであった事が判明!Grateful Deadのカバー)。

この曲でルーパーというリアルタイムに自分の演奏を録音し再生できるエフェクターを使用し、ブルージーで渋いギタープレイを披露。次のMCで会場が爆笑に包まれる。ジョンは来日してからビックカメラに行った様子で、あの「テーマソング」が頭の中をループしていると言う。次の曲はなんとビックカメラのテーマソングのカバーであった。

お茶目なジョンの人柄にどんどん引き込まれる。なんというネイティブ発音の「Bic Bic Bic Bic Camera」(笑)それにしてもこれほど豪華なカバー且つ宣伝があるだろうか…ビックカメラの広報に報告したい程の出来事である。

LIVEは中盤に差し掛かり、ここで彼の最強アンセム「Slow Dancing In A Burning Room」が飛び出す。イントロがプレイされた瞬間、会場から声が上がった。この楽曲はボーカルや詞はもちろんのこと、ギターソロを堪能したい。期待を裏切ることなくルーパーを使用し、たっぷりと情感がこもった安定感抜群の演奏を聴かせてくれた。

次に、自身も気になっていたMartin社がJohn Mayerシグネチャーモデル発売「20」周年を記念したアニバーサリーモデルの1台であるOM-45 John Mayer 20th Anniversaryにギターを持ち替え、「Born and Raised」収録のQueen Of Californiaを演奏。これまでのギターと違い、明らかに高域に特徴があり艶やかなサウンドで大きく体を揺らしリズムを取る姿が印象的だった。

そのまま舞台下手のピアノに座ると、「Search For Everything」に収録されている「You’re Gonna Live Forever in Me」のイントロを紡ぎ始めた。「Oh…」とメロディを失敗し、一度演奏を止め仕切り直した。優しく繊細且つ力強さを感じるピアノと口笛によるイントロはもう堪らない。圧倒的な大自然を目の前にした時のような感動で無条件で涙が頬を伝うようなメロディだ。

ついに最も気になっていた詳細不明のMartin製ダブルネックギターが登場する。上部が12弦、下部が6弦となっておりインパクト抜群だ。身長190cm以上のジョンにとってはちょうど良いサイズにも感じられる。このギター入手の経緯だが、2010年のNAMMショーで出品するために制作された「ワンオフ」物をローンで購入したという…もちろん世界に一本しかなく極めて希少性が高い。

ハーモニカを首からかけた武装状態のジョンがジャケットを脱ぎ、次に演奏した曲は「Dear Marie」(Battle Studies)。Martinらしい硬めの音で、最も印象的だったのはシールドが2本に分かれていたことだ。どのような機材を経由しアウトプットしているか。システムはどうなっているのか分からなかった。

間髪入れず、「If I Ever Get Around To Living」(Born And Raised)が演奏される。この楽曲はチャプターが分かれており、ロックバンドのクイーンやクラシックミュージックほどではないものの、1曲の中で3曲分、楽しめるような構成で非常にユニークだ。ダブルネックのギターはまさにこの楽曲をソロで演奏するために出会ったのでは?と思うほど、この曲を表現するのに相性が良い。12弦ギターで収録したコード進行をループし、6弦ギターでギターソロを演奏する姿はどれをとっても完璧だったと言える。

ギアが入ったジョンメイヤーをもう誰も止められない…。これまで演奏中、常に椅子に腰掛けていた彼が遂に立ち上がった。お馴染みのMartin OM JM(ピックガード横が削れた本人のお気に入りの個体)を肩にかけると、ドロップCチューニングの重厚でリッチな低音が会場にドシッと響き渡る。ファンはこの一音で次の楽曲が「Neon」である事を察知し声を上げた。色気たっぷりの声、超絶テクニックのギターリフでオーディエンスを圧倒した。

会場のボルテージは最高潮に達し、このままエレキギターは使用しないのかと思っていたが
、ローディーから彼の手にPRS Silver Skyが渡った。時間的にも最後の楽曲かと予想していたが、正にその象徴となる「Gravity」が演奏された。バンド編成では白玉のコードと丁寧なアルペジオ奏法を使い、しっとりとLIVEの最後を飾る楽曲だが、ソロではリズムを「ジャッジャッジャッジャッ」とテンポ良く刻みポップなアレンジとなっていた。

ニッチな情報だが、ピックアップはリアを使用し、ややブリッジ寄りのフォームによる彼のサウンドは固め。このような場合、大抵耳に痛いサウンドとなってしまいがちだが、驚くほど高音が抑えられており中音、低音が前に出てくるようなラグジュアリーなサウンドだ。アコースティックギターと同様でルーパーを使い豪華なエレキギターソロを披露。オーディエンスを魅了し幕を閉じた。

終演後のSEはエリック・クラプトンの「It’s in the Way That You Use It」。心の高揚感を保ったまま会場を後にすることが出来た。

合計6公演あった訳だが、どれもセットリストが異なっており、それぞれのLIVEを楽しんだファンの様子がSNSを賑わせた。強調するが、今回のようなショウは世界的に非常に稀なことであり、至近距離で彼の演奏を目にする機会は二度とないかもしれない。ファンにとっては「どの席でもアリーナ」であったことは間違いないだろう。今回のショーを企画してくれたジョン・メイヤーとBlueNote Tokyoには感謝しかない。

そして、彼のソロツアーの旅はまだまだ終わらない。3月にスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、イギリスでの公演を控えている。また新しい音楽を携えて日本に戻ってきてくれる事を心から願っている。

文:Kenta
撮影:古賀 恒雄
※ライブ写真は、本記事公演と異なる2023年12月29日2nd公演のセット素材となります。

セットリスト

※()内は楽曲が収録されているアルバム名

  1. Last Train Home(Sob Rock)
  2. Who Says(Battle Studies)
  3. Shouldn’t Matter But It Does(Sob Rock)
  4. Daughters(Continuum)
  5. The Age Of Worry(Born And Rased)
  6. Brown-Eyed Women(Grateful Dead)
  7. ビックカメラのテーマソングをカバー

  8. SLow Dancing In A Burning Room(Continuum)
  9. Queen Of California(Born And Rased)
  10. You’re Gonna Live Forever In Me(Search For Everything)
  11. Dear Marie(Battle Studies)
  12. If I Ever Get Around To Living(Born And Rased)
  13. Neon(Room For Sqares)
  14. Gravity(Continuum)