アデルの近未来コンサート・ビジネス・モデル その2
アデルのドイツ・ミュンヘンの国際見本市会場での長期コンサート。関係各社の思惑。
見本市を運営する会社は、まさか音楽で大きな収入を得られるとは思っても見なかった。大勢の観客が訪れ、ミュンヘンの町も潤う。興行を担当するライブ・ネイションも、まさか見本市会場がコンサート会場になるとは思わなかった。世界中に見本市の会場がある。
アデルは移動する必要がなくなる。家族と過ごせ、創作活動に時間が割ける。何よりもツアー経費が削減できる。
以下はアデルの敏腕マネージャー、ジョナサン・ディキンズ。
スーパースターの裏方には優秀なマネージャーがいる。古くはエルヴィス・プレスリーのトム・パーカー大佐。ビートルズのブライアン・エプスタイン。イーグルスのアーヴィン・エイゾフ。新しいところでは、レディー・ガガのトロイ・カーター、ワン・ダイレクションのリチャード・グリフィス、ジャスティン・ビーバーのスクーター・ブラウン。無名のアーティストをスーパースターへ育て上げる。音楽業界の全てに精通していなければならない。日本で、音楽業界でマネージャーと呼べば、殆どが「付き人」だ。欧米のマネージャーはアーティストの才能を見抜き、成功への青写真を描く。
アデルのマネージャーはジョナサン・ディキンズ。イギリスの音楽関連業界の中で育った。おじいさんのパーシー・ディキンズはイギリスを代表する音楽誌NME(ニュー・ミュージカル・エキスプレス)を1952年に親友と共同で創刊した。父のバリー・ディキンズはイギリスの代表的な音楽ブッキング・エージェンシーITBの共同経営者だ。アーティストをコンサート会場にブッキングする。ボブ・ディランやニール・ヤングやダイアナ・ロスといった大物をブッキングしている。ジョナサンの叔父、ロブ・ディキンズは長い間、イギリスのワーナーミュージックの会長だった。エンヤやコアーズを育てた人物だ。
ジョナサン・ディキンズは最初ワーナーミュージックの制作マン(A&R)としてスタートしたが実績は残せなかった。アーティスト・マネージメントの方が得意かもしれないと、2006年、自宅の寝室が本社の「セプテンバー・マネージメント」を設立した。ここでアデルと出逢う。アデルはこの年の5月、ブリット(BRIT)スクールという専門学校を卒業したばかりだった。アデルのデモ・テープに興味を持ったインディーズのXLレコーディングスの制作マン(A&R)であるニック・フゲットが親友のジョナサン・ディキンズにマネージャーをやらないかと持ちかける。アデルの卒業1ヶ月後の6月、セプテンバー・マネージメントは第1号のアーティストとしてアデルと契約した。
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