【3万字】2025年、世界の音楽産業のビジネス・トレンドを音楽業界誌Musicman編集長が語ってゆく 連載第81回
2025年に入った。だから何だ、と休み明けで冷めた人もいるかもしれないが、世界の音楽業界をウォッチしてきた経験から言うと、やはり年末・年始にはビジネス・トレンドが出てくる。
理由はシンプルで、グローバル企業がたいてい12月の年度末に向けて1年の成果をニュース化していき、1月に入れば当年の目標を出すからだ。たとえば昨年、グローバルメジャーが「今年はスーパーファン、グローバルサウス、AIに注力する」などと述べていた。
そして、2024年はだいたいそういう流れになった。裏を返せば「ライブとサブスクを今年もがんばる」という風には彼らは強調しなかった。
実はそれで今、正月休みに戻りたい気分になっている。「スマホやサブスク以来の結構な節目が来ているけど、伝えるには新書1冊分ぐらい必要だぞ」と気づいてしまったからだ。
とはいえ音楽業界誌の編集長としては飛ばせないし、作家としては他に書きたい本もある。という訳で今回から駆け足で解説して行くが、ご容赦願いたい。
テーマはもちろん「昨年の世界のトレンドを振り返り、今年以降の音楽産業の動向を予測していく」だ。
サブスクが先進国で頭打ちに
まずクリスマス開けに出したこのニュース。「米国、ストリーミングサービス加入者数が減少傾向」(12/26)だ。
これが何を意味するのか、ここ数十年の音楽産業のテクノロジー史を振り返ると分かる。
・1982年 CDが誕生
・1993年 ネットの普及が始まる
・1998年 ファイル共有誕生
・1999年 CD売上がピーク
・2001年 音楽サブスク誕生
・21世紀 ライブが音楽売上の成長ドライバーに
・2007年 iPhone誕生
・2008年 Spotifyサービスイン
・2011年 Spotify米上陸。サブスクが音楽ソフトの成長ドライバーに
ここで歴史に下記が加わるとしたらどう見えるか?
・2023年 音楽で生成AIブーム始まる
・2024年 先進国でサブスクとライブがピーク
たいていの人は「これから次の時代が始まるのだろうな」と感じるだろう。CDの誕生からピークまで18年。サブスクの誕生から今年で24年が、Spotifyの誕生から17年が経つ。
「サブスクもCD同様にイノベーションのジレンマを迎えつつあるかもしれない」という著名コンサルの分析があったほどだ(「ストリーミングにおける『イノベーションのジレンマ』」12/6)。これは次回、扱う。
音楽サブスクの成長鈍化は日本を除く先進国で3年前から囁かれていた。2023年の年初挨拶の連載で筆者も取り上げた(「2022年、世界の音楽産業に起きた5大トレンド」)。
元々、音楽サブスクは「定額」であるがゆえ一定の普及率を迎えたら成長が止まる。だから10年に渡って「サブスクへの移行も大事ですが、サブスクの次も考えていきましょう」と本や連載で訴えてきた。
しかしニュースにあるように、本丸アメリカでSpotifyの個人会員が減少に入ったのは「いよいよか」という感覚がある。だから、ともいえよう。昨年は年初からグローバルメジャーが「グローバルサウスやスーパーファンに注力する」と言うようになった。
グローバルサウスとはインド、タイ、インドネシア、ブラジル、南アフリカなどを指す(「グローバルサウス台頭、波及効果は? 世界のストリーミング・トレンド」12/2)。
スーパーファンはWeverseのような月額制を基本としたアーティスト別のデジタル・ファンクラブが代表的。
ユニバーサルミュージックなどはそれらの収益化を昨年、年初に目標と設定したが半年でしっかり売上に繋げてきた(「音楽売上世界一のUMG、第3四半期も増収増益 COO職を新設」11/6)。
4年前に出した拙著「音楽が未来を連れてくる」で予測した通りの流れだが、グローバル企業が収益化するところまで来た訳であり「ポスト・サブスク」は予測ではなくもはや現実になった印象だ。
ただこれは世界の話で、サブスクの普及が他の先進国より遅れた日本は「もう少し先かな」と思っていたのだが、「予想より早いかも」と考え直したのが下記のニュースだ。
これは日本のレコード協会が出したデータで、音楽サブスクは前年同期比4%増だった。前年つまり2023年の同じ第3四半期の日本の音楽サブスク売上は16%増。成長率がかなり下がっている。
もう少し見守りたいが、ここから今年以降、グローバルメジャーで起きた方向転換が日本のレーベルでも始まりそうなことが分かるだろう。それが本連載再開の理由でもある。
ライブが先進国で成長鈍化
先の著書(2021年刊)でも「先進国でライブ売上の成長率は緩やかだが近年、チケット単価の値上げに依拠しているので、ライブが成長ドライバーではなくなる日は近い」という趣旨のことを書いた。
当時はコロナ禍の真っ只中で、その収束に連れて売上も回復していったが、同時に世界的なインフレが進行。若者の財布がチケットの値上げに対応し切れなくなり昨年、いよいよ音楽フェスも勝ち組と負け組が別れる傾向が見えた。
「英国、2024年は72のフェスがキャンセル」(12/11)
この記事につけたコメントを再掲しよう。
「英国のフェス中止は2023年に36件、2024年に72件とここ二年で急増。コロナ禍のときと違い、今回はインフレによるチケット高騰で客を失ったのが主な原因。米国のデータだがPollstarによるとTOP100興行の平均チケット単価は2019年の$92.42から2024Q3には $126.55へと37%高騰・フェスバブル崩壊が懸念されているという記事がバズった。日本のインフレは弱めとはいえ、イベント関係者の感想を聞いていると対岸の火事ではない」
そのバズった記事がこれ。こちらはアメリカの調査だ。
「音楽フェス市場、バブル崩壊か? 米調査結果」(8/16)
ここまでなら私の予測どおりだったのだが「予想以上に早い」と感じたのが以下のニュース。
「コーチェラ、チケット販売なおも低調」(12/16)
コーチェラが世界最大級の音楽フェスであることを考えると「勝ち組にすら影が忍び寄っているかもしれない」と感覚を修正した次第だ。
今年の日本はどうかというと、元々長期的なデフレだったこともあり、相対的にインフレも緩やかだったので、ライブ関連はすぐ他の先進国と同じようにはならないかもしれない。
だが「今後、日本の物価が下がることはない」と経済アナリストではない私でさえ言い切れる国際環境なので、その時期は意外と近くに迫っているかもしれない。
地球規模でいえば音楽産業の成長は続く
では世界の音楽ソフト売上は昨年、曲がり角に来たのか?
というとそれも違う。音楽関連上場企業の主要20銘柄で構成される株価指数で「ビルボード・グローバル・ミュージック・インデックス(BGMI)」というのがあるが昨年、史上最高額を更新した。
音楽株価指数は年初からの上昇率が22.2%に達し、ナスダック総合株価指数とS&P500(共にプラス19.6%)をも上回った(「音楽関連企業の株価指数、過去最高を更新」10/3)。
昨年を通しての音楽ソフト世界売上はIFPIからまだ発表されていないが、2024年の上半期、ストリーミング売上は米国が3.8%と低いものの、イタリアが18.1%増、スペインが19.1%増、ブラジルが21.1%増だった(「録音原盤市場、イタリア・スペイン・ブラジルが好調 米国は伸び鈍化」9/17)。
他にゴールドマン・サックス社も「世界の音楽産業の売上高は、2024年に前年比8%増の1,000億ドル(約14兆8,500億円)に達する見通し」と分析している。
ただし「先進国ではなく新興市場が成長を牽引する」という予測で、世界のストリーミングの年成長率については下方修正している。新興市場とは具体的には先に触れたグローバルサウス諸国のことだ。
この記事に付けたコメントも再掲しよう。
「音楽サブスクは日本を除く先進国で低成長に入りつつあるが、インド、タイ、インドネシア、ブラジル、南アフリカなどグローバルサウス諸国が替わって牽引していく。ただ、月額が先進国と比べてかなり低いこと、現地の音楽の聴取比率が高くなることから、今後高まるグローバルサウスの影響力を先進国のレーベルが売上に繋げるには、現地の楽曲の権利の確保など創意工夫が必要になる。グローバルメジャーによる現地レーベルの買収や共同経営は既に始まっている。日本でかつて起こったことでもある」
音楽カタログの資産価値も過去最高に到達しつつある。「世界の音楽著作権の価値、映画産業の興行収入を大きく上回る」(12/2)に付けたコメントを再掲。
「音楽著作権(隣接権の録音を含む)の価値がここ十年で倍増。世界の映画興行売上を38%上回った。これは歴史的な出来事で、インターネットの普及時にはオワコン扱いされていた音楽産業がスマホの登場を機に他のエンタメに先駆けてサブスク、SNS、動画共有、グローバル化などあらゆる面で、権利関係でも対応できたことが大きい」
具体例を挙げよう。ソニーミュージックは2022年にボブ・ディランのカタログを推定2億ドル(約310億円)で、2024年にはマイケル・ジャクソンのカタログ半分を6億ドル以上(約1,000億円)で買収。さらにクイーンのカタログを10億ドル(約1,550億円)で、ピンク・フロイドを5億ドル(約780億円)で買収交渉。
超一流ミュージシャンのカタログは家賃収入が保証された大規模ビル投資に等しい存在になった。
ライブ関連の株価はどうかというと、世界最大の音楽コンサート会社であるライブネーションの株価は年初からは50%近く急騰した。ただしサウジの政府系ファンドが同社の株売却を決めるなど「ライブは今がピーク」と判断した投資ファンドもある。
実際、ライブネーションは大規模な転換社債を発行し、南アフリカなどグローバルサウスへの投資を行い、次の時代へ備えつつある(「ライブネーション、1,500億円規模の転換社債を発行 年初から株価5割増し」12/16)。
ただし、やはり「ライブ市場は成長が鈍化。ライブネーション・エンターテインメントとCTSイベンティムを合わせた成長率は8.2%と、2021年第2四半期以降で初めての一桁台となった。 MIDiAは、さらに高額化するライブ体験に対する需要は、今後数年で飽和すると予想している」(「主要音楽会社15社、総売上が9.6%増加 MIDiAが音楽市場の指標レポート公表」10/4)。
2025年以降、先進国の音楽産業の成長ドライバーは?
「なるほど次はグローバルサウスか。って日本、関係ないじゃん!ソニーみたいにカタログを買収する大金も無いし、ライブもサブスクもピークアウトならどうすればいいの?」
ここまで読んでそんな気分になった読者も少なくないだろう。
「だからポスト・サブスクの話をずっとしてたんですよ」
というのが私の答えなのだが、2024年は具体的にそうしたニュースが世界でたくさん出た年だった。次回から「2025年以降、先進国の音楽産業の成長ドライバーは?」というテーマで解説に入る予定だ。
そこでスーパーファン、生成AI、有望な音楽アプリ、フリーミアムモデルの終焉の可能性、ディストリビューターの席巻とレーベル・サービスの登場、若年層に起きたメタバースの普及、UMGやSpotifyなど主要企業の戦略動向、TikTokなどデジタルプロモーションの動向、サブスクに起きつつあるイノヴェーションのジレンマ、AIも関わる詐欺ストリーミングの損失額、音楽業界を変えそうなプロモーションAIの登場、オーディオブックなどノンミュージック音声コンテンツが音楽に与える影響、SaaS型PFの可能性、音楽ハードの新動向、音楽サブスクでの高価格帯プラン、ローカルコンテンツのグローバル展開などを、扱える限り扱っていく。
語るべきテーマがありすぎて、年初に頭を抱えた筆者の姿をご想像いただきたい…。
Musicman榎本編集長のコメントまとめ 26,000字
すべて書き終えるまで待てないせっかちな方もいらっしゃると思うので昨年、記事に付けた私のコメントを選んでまとめて掲載しておく。そこに大体、考えが出ている。ただ、26,000万字を超えたので「読みきれない!」という方は、次回をお待ちいただければ幸いだ。
「2023年の夏から新潮で1年連載したコラムのまとめ回。音楽とAIについて、世間の見解とはちょっと異なる私なりのトレンド予測となっている。とりあえずTextFXを紹介した連載第9回と、Sandboxを紹介した連載第10回、音楽産業側でAIを牽引するUMGのグレンジCEOについてまとめた連載第8回をお読みいただければ、何が一味違うのか分かっていただけると思う」
「ここ1年のSoundCloudの変革は目を見張るものがある。TuneCoreのようにSpotifyなどへ配信を可能にするArtist Plan(月額8.25ドル)を始めたほか、アーティスト向けの生成AIをミキシング、マスタリング等で拡充。音楽配信時代の最大の課題である膨大な楽曲のなかでの埋没に対して注目すべき楽曲をプッシュするアセンディングも始めたが今回、セミ・プロ向けに月額3.25ドルでサブスクへの配信やプロモーションを2曲やってくれる「Artist」プランを発表した。今年はSoundCloudが化けると思うので注目してほしい」
「アメリカ10代の73%が毎日YouTubeを使っている。TikTokは57%、インスタ50%、スナチャ48%で、FBとXは利用率が10年で激減。以下は別件だが日本の15〜65歳で音楽が聴かれた場所は1位YouTube(26.4万pt)で、Spotify(20.8万pt)、Apple Music(12.8万pt)、DL(9.7万pt)、YouTube Music(9.5万pt)、CD等(6.8万pt)、テレビ(2.2万pt)、ラジオ等(1.4万pt)、TikTok(0.8万pt)となっている。18年前、誕生して1年のYouTubeをGoogleが2,000億円で買収したときは「高すぎる」と批判を受けたが同社は「YouTubeは次世代のテレビになる」と強気を崩さなかった。」
「フォートナイトで音楽の勢いが止まらない。先日、エミネムやスヌープ・ドッグが登場した『リミックス: ザ・フィナーレ』で同接1,430万人を達成したが、ザ・ウィークエンド、レディー・ガガ、ビリー・アイリッシュが再登場した『オールアクセスウィークエンド』では236組のアーティストの楽曲で36億回のジャムがプレイされた。ジャムとはボーカルやギター、ベース、ドラムのループ。シーズンパスを購入したユーザーに提供されるほか、別途購入もできる。4年前、『ポストサブスクは音楽を聴くから音楽で遊ぶがテーマになる』と本で書いたが、TikTokやオンラインカラオケ、そしてフォートナイトのようなメタバースでどんどん現実になっていく」
「フォートナイトのバーチャルコンサートが同接1,430万人を達成。これまで米津玄師、星野源、トラヴィス・スコットやアリアナ・グランデ、レディー・ガガ、ビリー・アイリッシュなどが開催しているが、今回はエミネム、スヌープ・ドッグやアイス・スパイス、亡きジュースワールドが登場。フォートナイトの月間ユーザー数は1.1億人(日間は6千万人)。日本でも500万人(日間200万人以上?)はいる。ゲーム空間→雑談の場→メタバースと進化してきたことから分かるように、スマートグラスやNFTは必須の物ではない」
「生成AIブームが始まったとき、『これ使ったらAIで選曲してAIが司会してAIがコメントする番組をその人向けにいずれ生成できるんじゃない?』と私はまず考えたがSpotifyがもう実現してしまった。英語版のみだが、あなたが今年一年に聴いた音楽をAIでポッドキャストの番組にしてくれる。GoogleのAIを活用しており、SpotifyはAPIを制限して無断でAIに学習されることを防ぐ一方で、透明性の確保できるAIとの協業は積極的に進めている」
「Appleが今年の最高のiPadアプリに音楽AIアプリ「Moises(モーゼ)」を選出。曲からボーカルや楽器のトラックを分離する生成AIが手軽に使えるアプリで、キーを下げたりも出来る。元はプロユースの技術だったがその優れたUIで、カラオケや演奏を楽しみたい音楽ファンにも広がった。中国の音楽サブスク・アプリにはこうした技術がかなり前から盛り込まれていて、投げ銭と絡めてサブスク以上の売上を叩き出している」
「先日、反響も大きかった『生成AIで今後、音楽クリエーター側の収入が5年で総額100億ユーロ(約1兆6,000万円)減少するかも』というレポート。じゃあどうすればいいの?というところで、調査したCISAC(著作権協会国際連合)の幹部4人から示唆的なコメントが出ている。法律でAIサービスの透明性を確保することが、今後AIの発展をクリエーターのプラスに繋げていくキーポイントになっている」
「音楽クリエーターの収入は5年間で約1兆6,000万円(100億ユーロ)減少する可能性があるとCISAC(著作権協会国際連合)の調査結果。「盛り過ぎ」とお感じになるかもしれないが、以前記事化したようにBeatdappの調査では音楽のストリーム総再生回数の少なくとも1割が詐欺で、生成AI等でなりすました詐欺グループが年間3,000億〜4,500億円(20億〜30億ドル)を掠め取っている。最近も14億円を生成AIでサブスクから詐取した音楽プロデューサーが出て騒ぎになった。音楽産業はただ取り締まるだけでなくユニバーサルミュージックのグレンジCEOを筆頭に、生成AIがアーティストへ貢献する環境の整備を急いでいる」
「4年前、AIがいずれ楽器のようなUIを持つときロックやヒップホップ級のメガトレンドを起こし、スマホ登場に匹敵するインパクトを音楽産業にもたらすと拙著執筆時に予測。まだ生成AIブームは起きていなかったが、それは100年の音楽産業史を振り返っての結論だった。今月、ユニバーサルミュージックのAI担当上級副社長も同様の見解を出した。正直、現実味を持つのは10年以上かかると当時見ていたがもはや世界の音楽産業のトップ層の共通見解になりつつある。昨年の春、『みなさんの体感より速く来ます』とクライアントには伝えたがニュース記事でこうして伝えるまでに至った」
「今年、米ビルボード1位の13曲と英オフィシャル1位の10曲がTikTokのトレンドと同一だったとバイトダンス社が発表。TikTokが史上、音楽に最も適したSNSであることは間違いない。TikTokの再生ランキングで1位だったのはチリ出身FloyyMenorとCris MJによるレゲトン「Gata Only」、アーティストランキングはメキシコのイェリ・ムア、トップ10の7組が韓国出身とグローバル化している。今年はドイツのチャートの4分の1がTikTok経由、TikTok使用曲の世界トップ10、半数超がインディーズ配信と影響力が強かった。TikTokが禁止されても、代替サービスがこの流れを継ぐだろう」
「TikTokで世界TOP10人気曲のうち6曲がインディーズ配信。TuneCoreなどディストリビューターの力がますます強くなっている。課題は楽曲のみが認知されて消費されてしまうケースが多いこと。バズ起こしの段階からアーティストの認知へ繋がる工夫が腕の見せどころになりつつあるようだ」
「アーティストが新譜のリスニングパーティを開き、音楽は各自使っているサブスクで同時に聴けるStationheadが今年、テイラー・スウィフトやビリー/アイリッシュが使用して注目を浴びたが、Tuned Global社が同様の機能を音楽アプリやラジオ・アプリで展開できるSDKを発表。同社はユニバーサルミュージックと音源仕様拡大の提携を発表していたがこれのためだったかもしれない。音源を聴くというより楽しむ方向で利用拡大を目指すのはポスト・サブスクの大きな流れのひとつでもあり、注目している」
「NVIDIAから音楽生成AI、Fugatto(フガート)登場。動画を見てもらえば分かるが、プロンプトでSFXやシンセパッドのような音を未知の混ざり具合で作れるだけでなく、楽曲からボーカルを抜き出し、そこに新たなプロンプトで別のトラックを添えたり、メロディラインをボーカルに変えたり、あるいはせりふのトーンを怒ったふうにとか、幸せな感じになど応用力が高い。楽曲自体を生成するというより、創作をサポートするツールで実用的だ。連載でも語ったが生成AIはそちらの方でまず開花するだろう。それが新しい楽器の領域に到達すれば新たなメガトレンドを音楽にもたらすこともありえる」
「米上院でAI開発者に透明性を求める「TRAIN法案」 提出。米レコ協(RIAA)や三大メジャーも支持しているが、これまでもいくつかAI法案が提出されるも議会を通過していない。著作権関連の法案は超党派で進むことが多いが、そうは言ってもサクサク進む話題でもないので、大統領・上院・下院が共和党一色となる第二次トランプ政権でどうなるか。かつてデジタル著作権法改正が米国で進んだときは、人類にかなりの影響があったが(拙著参照)、おそらくAI関連法案もそうなるだろう」
Spotifyに続き、Amazon Musicもオーディオブックをバンドル化。日本は車通勤が弱いためラジオ→ポッドキャスト→オーディオブックの流れが弱かった&日本語圏は後回しにされがちなのでピンとこないかもしれないが近年、Spotifyなどで音楽以外のコンテンツを聴く消費時間がかなりの比率&ずっと上昇トレンドにあり、場合によっては音楽側への支払いが減る懸念もある。実際、アメリカの全米音楽出版社協会はオーディオブック関連でSpotifyを提訴しているが、Amazonに関しては楽観視している。詳細は記事を参照されたい」
「音楽サブスクが誕生した2001年末(誤記ではない。拙著参照)から四半世紀が迫ろうとしている。これはCD誕生の1982年から売上ピークの2000年までの18年より既に長い。Spotifyの本格展開が始まった2009年からも15年が過ぎている。かつて音楽産業は高収益なCDを捨てきれず、音楽配信への移行が遅れた。CD発祥の国であり最も成功した日本が特にこのイノベーションのジレンマが酷かったが、スーパーファンや高音質を対象に月額の高価格化を狙っている音楽ストリーミングも同様の現象が起きかねないと英MIDiA社の著名音楽コンサルタントが指摘。新たな流れはSNS系から出てくるかもと彼は予測している。」
「米テレビ総消費量、1位はディズニー(複数の放送局と動画配信を持つ)で11.7%、2位にYouTube TVの10.6%が迫る。3位から5位にオールドメディアが並んで、6位Netflix(7.5%)、8位アマゾン(3.6%)、Apple TV+は共に掲載なし(シェア1%未満)となった。スマホ視聴などを含めればYouTubeは事実上、ナンバーワン・ステーションだろう。ポッドキャストの首位はAppleからSpotify、YouTubeと変遷。Vodcast(目を切って耳だけでも楽しめる動画)の流行が大きいだろう」
「Disney+の契約者の30%が広告付きプランと分かった。音楽ではSpotifyやYouTubeなど、広告が付くと基本無料(フリーミアムモデル)になるのが常識だった。これは拙著で詳しく追ったようにmp3が席巻したため、大量の違法ユーザーを合法へ取り込むためにそうなったのだが、少なくとも先進国では違法で無料に聴くリスナーは少数となった。年初前後からソニーミュージックのCEOも、音楽でも基本無料から広告付きライトプランへの移行を目指すべきだと提言している。ひとつ時代が進んだ印象だ。」
「AIで大量に生成したらしき音楽を流すYouTubeチャンネルが人気を集めつつある。これがプロも驚く品質で話題となったSunoの〝作風〟にそっくりとのことで、同様の音楽がYouTubeやTikTokなどにあふれる可能性が懸念されている。Sunoは米レコ協(RIAA)に著作権のある楽曲を学習素材にしていると訴えられており、告訴の内容をほぼ認めている。ヒップホップのトラックや今回のチル系などは生成AIが得意としている音楽ジャンル。音楽業界はAIの学習材料になった曲に売上が還流するよう、環境の整備を急いでいる」
「ワーナー・ミュージックの通期の決算発表が出た。収益は緩やかに上昇したものの、利益は予想を下回り株価は下落。しかしストリーミング売上の成長力が継続すると投資家は見て下げ止まっている。ユニバーサルミュージックの株価は上昇。ソニーミュージックは単体で上場してないが、株価があれば上昇している決算内容だった。音楽サブスクは日本を除き先進国で頭打ちが近づいているが、世界的には力強い上昇がグローバルサウスを中心に続くというのが市場のコンセンサスだ」
「TikTokは最短で来年からアメリカで禁止される法案が通っているが、TikTokのCEOから支援を受けたトランプ氏が当選し、さらにイーロン・マスク氏が高官に就くことでいっそう不透明になってきた。記事にある通り、TikTok周受資CEOはマスク氏に何度も接触。一方で国務長官と国防長官には、対中国タカ派のルビオ上院議員とヘグセス氏が就任予定。バイデン政権では、主に国防上の理由からTikTokの禁止法案が通っている。TikTok禁止法案はトランプ氏が前回の任期中に言い出した」
「SoundCloudで新たに6つのAIツールを使えるように。Tuney: 音楽のリミックス、編集、新曲生成が可能なツール。Tuttii: ライセンス済み楽曲向けのシンプルなAIリミックスプラットフォーム。AlBeatz: プロのようにビートを生成・カスタマイズできるツール。TwoShot: オリジナルサンプル作成のためのAI協調ツール。Starmony: 歌手やラッパー向けに特化し、ファンの音楽制作をサポート。ACE Studio: MIDIと歌詞からスタジオ品質のAIボーカルを生成。これまでもSouncCloudで使えたAIはFadr:経験レベルに関係なく、誰でも好きな曲のマッシュアップやリミックスを作成できる機能を提供。Soundful AI:クリエイター向けに、独特なスタジオ品質の音楽を生成。Voice-Swap:ミュージシャンがライセンスされたアーティストの声のスタイルに合わせて、生成AIを使用してボーカルステムを変換することが可能」
「生成AIで全曲まるっと作るのは驚きがあるけど大きな商売にするには現実的ではない。じゃあ生成AIで音楽会社はどう稼ぐか?テンセントミュージックは中国の会社らしく着々と稼げる方向で具体化しつつある。歌唱AIでバイラルを起こす、歌抜きの生成に活用するソーシャルカラオケで稼ぐ、読み上げに活用するオーディオブックで音楽以外に進出、当たりそうな曲をAIで精選してマーケティングに活かす等々がそうだ。AIをポスト・サブスクに活かすという方向は、本や連載で私も書いてきた」
「音楽共有のSoundCloudでアップロードするとTuneCoreのように、Spotifyほか様々な音楽サブスクへ配信・集金されるように(Next Proユーザー限定)。他にスーパーファン・プラットフォームを意識した機能も。ミュージシャンに絶大な支持を得つつもビジネスモデルが弱かったSoundCloudが一躍、最前線に躍り出た印象だ」
「長年赤字体質だったSpotifyだが粗利益率も31.1%と改善し、総売上高も19%増加。エクCEOは決算説明会で生成AI、スーパーファン、動画事業について言及した。動画事業については昨日お伝えした通り来年1月からYouTubeやTikTokのようにクリエイターへの還元が始まり、コメント機能のほか、他プラットフォームに投稿した動画も載せられるようになる」
「中国最大の音楽会社テンセント・ミュージックがQ3の業績を発表。スーパーファンを意識した高価格帯プラン『スーパーVIP』が1000万人突破。音楽サブスクの有料会員の8.4%に。他に月額会員売上を超えるカラオケのギフティング売上など、中国はポスト・サブスクでは先に行っており、株主であるSpotifyも予想通り高価格帯プランを踏襲しようとしている」
「SpotifyでYouTuber/TikToker的な活動が可能に。来年1月から動画とオーディオのクリエーターが広告・サブスク売上の再生量に応じた収益を得られるSpotify Partner Programが開始。TikTokなどに上げた動画もアップできるようになり、コメントも有効化。Spotifyでのビデオポッドキャスト(耳だけでも楽しめる流行の動画形式) の視聴者は既に2億5,000万人超で、ポッドキャストの流行らなかった国でも強くなりそうで、これでポストTikTokの本命候補に躍り出た。」
「ソニーミュージック(SME)のQ2売上高が前年同期比10%増の4,482億円に。鬼滅などのアニメ売上やFGOなどスマホゲーム売上が好調な日本のSMEも貢献している。昨日からソニーによるカドカワ買収の噂も流れているが、プレステ部門のSIEだけでなく、アニメ・スマホゲームを持つ日本のSMEにも相乗効果が期待される。同じく音楽・ゲームに強い中国テンセントとソニーのどちらがカドカワを獲るかということも話題になっている」
「十代を中心に月間3.8億人のMAUを誇るメタバースRobloxがTikTokに似たショート動画アプリClip Itを始めたが、既にMAU800万人、総再生数10億回を突破した。SNSの歴史を振り返ると、若者が使いだし、大人が便乗し、そして若者が新しいSNSへ逃げて行くことを繰り返しているのでTikTokの時代が未来永劫続く保証はない。どうなるか注目したい」
「Chartmetricを使う音楽会社が日本でも増えてきたが、同社がデータ分析で新進アーティスト特定するツールを発表。今やTikTokやYouTubeの急上昇を追うのは常識で、それだけは先読みにもならなくなってきており、高度なシグナル発見ツールが必要になってきたのに応えた形だ。ストリーミング時代は音楽が大量に動いていて埋没への対処が最大の課題になっている」
「ドイツ音楽著作権協会が「AI憲章」を発表。ユニバーサルミュージックなど多数の音楽企業が参加した「AIによる音楽創造のための原則」等々、音楽業界では著作権被害を防ぐだけでなく、責任ある使用、公正な報酬モデル、開発の透明性といった積極的なAI利用の土台作りが世界的な流れになっている」
「SpotifyやApple Musicから『TikTokで共有』が直接できるようになった。DMでも音楽が共有できる。昨月、期待されていたTikTokの音楽サブスク(アメリカ・日本には未上陸)が撤退したが、代わりに既存の音楽サブスクとの連携を深めつつある。InstagramもSpotifyとのシームレスな連携を進めている。アーティストの再生売上に直結するよい施策だ」
「ユニバーサルミュージックがディストリビューター最大手のbelieveと子会社のTuneCoreを著作権侵害で提訴。「有名アーティストのオリジナル楽曲の『スピードアップ』または『リミックス』バージョンの配布」を幇助したとして最低5億ドル(約771億円)の損害賠償を求めている。believeは争う意向。同社は今や国によってはメジャーに匹敵する売上シェアを持つ。今年春にワーナーミュージックが買収を試みている」
「YouTubeの年間売上(過去4x四半期)は初めて500億ドル(7.5兆円)を突破。YouTube Musicの好調が貢献した。ここのところ世界の音楽サブスクはSpotifyとYouTube Musicが勝ち組になりつつある。YouTube Premiumの廉価版が再登場の噂もあるが音楽サブスクが含まれるかは不明だ」
「ユニバーサルミュージックは数カ月以内に「人々の音楽に対する考え方に革命を起こし、新しい直感的な音楽体験を提供する」製品を発表する予定ということでなかなかの煽り文句だ。同社グレンジCEOは生成AIをSpotify級の革新と公言してきた。提携先のKLAY社には音楽業界人やDeepMindを率いた人物も多数関わっているので期待して良さそうだ。」
「先月末、アメリカで音楽産業がGDPに占める割合は0.9%とRIAA(米レコ協)が発表。2020年のデータなのでコロナ禍から回復した現在、どうなっているか気になる。約32兆5,400万円というのは日本の音楽ソフト売上(卸値)の100倍に当たるが、音楽ソフトだけでなくコンサート、教育、機材、配信事業、DIYなども含まれているので詳細はPDFの The US Music Industries – Jobs & Benefits: The 2024 Reportを読んでほしい」
「世界の音楽シェア1位のユニバーサルミュージック、Q3は好調で前年同期比4.9%増の28億7,000万ユーロ(約4,757億1,700万円)。グレンジCEOはサブスク収入の成長やスーパーファンの収益化などの戦略的イニシアチブが進展と総括。年初の戦略を確実に形にしてきており、ディストリビューション系以外は穴が無い印象だ」
世界の音楽著作権の売上が過去最高に。JASRACも加盟するCISAC(著作権協会国際連合、シサック)の音楽売上は117億5,000万ユーロ(約2兆円)で前年比7.6%増、コロナ禍以前の水準も超えた。音楽ソフトで音楽出版が最も成長率がいいのと呼応している。ライブ、BGMが回復したのに加え、TikTokやInstagramなど非DSPでの音楽使用料が入るようになったのと、かつてコピー天国だった途上国も配信の普及で課金できるようになったのが大きい」
「日本のGDPを超えたインドの音楽産業はどうなっているか?スタッツのまとめ記事があったので紹介。総売上は日本の6分の1だが成長率は10%超。映画スターのサントラが強く、A級スターのサウンドトラックは24〜45億円ほどでレーベルが買い取る。メジャーレーベルと並んでTuneCoreの親会社believeが売上シェア3位に入っている。課題はサブスクの有料会員比率が低いこと。とにかくYouTubeが強い国という印象がある」
「InstagramでタップするだけでSpotifyへ曲を保存できるようになった。TikTokにも同様の機能が最近備わったが、InstagramがSpotifyとのシームレスな統合を進めてきたのは歴史的経緯もある。ファイル共有Napsterの創業者であり、facebookの初代社長だったショーン・パーカーはSpotifyの執行役員になったが、その関係でパーカーを私淑するザッカーバーグにいちはやく初期のSpotifyを紹介。facebookが音楽サブスクを立ち上げるという噂もあったが、緊密な提携を選んだ」
「音楽のマーチャンダイジング市場は案外巨大で、世界的にはストリーミング売上とほぼ同じくらい。昨年の世界の音楽ソフト売上(卸値ベース)が286億ドル、うちストリーミング売上がその半分ぐらいで、世界の音楽マーチャンダイジングは2024年にはほぼ同等の140億ドルに。英MIDiAは2030年に音楽マーチャンダイジング売上は163億ドルになり、そこから停滞すると予想している。」
「ソニー・ミュージックがスーパーファン・アプリのSongwhipとFansifterを買収。ユニバーサルミュージックはBTSを擁するHYBEのWeverseに出資。ワーナーは独自でスーパーファン・アプリを開発中だ。国内企業のものだとエムアップのFanplus、スペシャSKIYAKIのbit.fan、THECOOのfaniconが有名だ」
「Spotifyがオーディオブックに注力しているが、今月から英語圏に加えフランス語圏にオーディオブックを拡大。2023年、世界の音楽ストリーミング売上は286億ドルだったが、ポッドキャストは127億ドル、オーディオブックは53億ドル。伸び率はオーディオブック、ポッドキャスト、音楽ストリーミングの順」
「TuneCoreを傘下に持つディストリビューター最大手believe。今や国によってはメジャーレーベルに匹敵する売上シェアを持つが、楽曲を単に配信するだけでなく、アーティストの制作・宣伝・マネジメントをレーベルのように提供するするサービスと音楽出版を活用して世界戦略を進めると再宣言。春先、ヴィヴィアン氏にインタビューしたがターゲットのひとつが日本だ」
「YouTubeの有料が高い!からもっと安いのも用意してくれという要望は多いが、YouTube Premium Liteのプランが再登場(日本はそもそも無かったけど)するかも。オーストラリアで「月額11.99豪ドル(約1,210円、標準のPremiumプランは22.99豪ドル)と表示されているのを見た」と証言するユーザーも。日本に当てはめると680円ぐらい?」
「SpotifyにMVがあるとリスナーは翌週も音楽を再生してくれる率に34%高い。また、動画付だと保存・シェアされる可能性が24%高い。先週から日本を含め97カ国でミュージックビデオがSpotifyで見られるようになった。ただしアメリカを除く。あと無料会員は見られない(使用料を権利者に払うということだと思う)。クリップ(短尺動画)やキャンバス(背景のループ動画)も。」
「今のメジャー・レーベルは大規模なディストリビューターになっているだけで、タレントを育てずに確保していると、U2などを輩出した名門アイランド・レコードのダーカス・ビーズ元CEOが指摘。メジャーレーベル崩壊論はCDの衰退が見えた2000年前後から取り沙汰されてきたが、今回は、レーベルがストリーミング時代に相応しい育成やプロモーションでアーティストの価値を高めていないという危機感のようだ。アイランドにはアリアナ・グランデやTHE WEEKNDも所属」
「じぶんのコピーを作る音楽生成AI、SoundworldsがDELPHOSから登場。じぶんの楽曲を学習させることで作曲、リミックスをサポートできるし、生成物をじぶんの曲として世に出すことも出来る。アーティストAIについては連載でずっと書いてきたが、その具体化のひとつといえる。」
「日本を除く先進国では音楽サブスクが普及・安定成長に入り、既にポスト・サブスクへ視線を移している。それがWeverseなどスーパーファン・アプリであり、今回の『拡張権利』ビジネスのようなファンダムの経済圏構築だが、それらは日本がファン・クラブ等で行ってきたことのDXといえる」
「iTunes Music StoreやSpotifyの立ち上げを積極的に助け、直近ではテクノロジーに果敢なグランジCEOのもとYouTubeと生成AI関連のプロジェクトを進めるUMGだが、自身を音楽産業の頂点に導いたスーパーアーティスト主導・先進国主導型の戦略が成長鈍化の壁に当たろうとしている。一方、アジア・南米・アフリカなどに注力してきたBelieveなどディストリビューターが急成長エリアでシェアを確保しつつある」
「AppleのiOS18.1ベータ6版から、TikTokでApple Musicのお気に入り曲を簡単にシェアできるように。TikTok禁止法案が通ったアメリカでどうするのか気になるが、すでにその後のことも社内では計画されているのだろう」
「中国最大の音楽会社テンセント・ミュージック・エンタテインメントが昨年までに2,564件の特許と4,295件の商標を国内外で登録。かつて著作権意識の薄かった中国だが2008年に国家知的財産権戦略綱要を公布、2021年の第14次五ヵ年計画では知的財産権強国建設綱要(2021-2035)を交付し、知財大国を目指してきた。近年、日本のプラットフォームもIPの充実をテーマにしている」
「米津玄師のワールドツアーを世界最大の音楽イベント会社ライブ・ネーションが来年開催。2025年3月から4月にかけて、米国、欧州、アジアの全7都市で10公演が行われる。アリーナクラスの大規模公演が相当数含まれており、邦楽アーティストのワールドツアーとしては最大級となる」
「韓国のIT業界は国内企業保護の色合いが強く、iPhoneの普及率が著しく低いことは有名だが、音楽配信もそうでSpotifyの基本無料を拒むことで、Apple MusicとSpotifyの二大巨頭を実質、抑え込んで国内系サブスクを保護してきた。韓国でSpotifiyの無料ティアが今さらながら始まるというのは、韓国の音楽ファンだけでなくIT業界にとっても特別な意味合いがあり、黒船襲来のような騒ぎが業界で起きていると聞いている」
「ゴールドマン・サックスはときどき音楽産業の予測を出しているが、音楽サブスクは予測成長率を下方修正。今後、新興国中心に伸び、2030年までに新興国が70%を占めると予測し、IFPI(レコ協も参加する世界的な音楽ソフト産業連盟)や我々音楽業界報道などの現状報告に近づけてきた。ゴールドマン・サックスの音楽産業の予測はトレンド後追いのことが多く、逆に言うとトレンド転換の確定の指標になると思って見ている」
「Apple Music Classicalは5万冊を超えるアルバムブックレットを追加、多言語に対応した。音楽を聴きながらアルバムブックレットを読むのは音楽趣味を深め、広げてくれる。CDとともに衰退したが、サブスクの利用も音楽への深い愛情があってこそ続くものだ。Spotifyにもアーティストがアルバム曲を音楽付きで自己解説するLiner Voice+という企画がある。」
「エド・シーラン、U2、グリーン・デイ、ビョークなど数々のトップアーティストを手掛けてきたサウンド・エンジニアのスパイク・ステントが、自己を学習させたミキシング・ツール「Spike AI」を発表。 チャットを重ねながらミックスを微調整できる。今後、アーティストAIが隆盛すると連載で述べたが、エンジニアAIもだ。AIは自らの感性を写すメディアであり、作品になってゆく」
「AIを使った音楽マーケティング。Fanbaseは、ストリーミングのリスナーからスーパーファンの候補を割り出し、彼らに向け宣伝・広告を打てるようにする。マーケティングは集客と収益化の二段階があるが、このAIは後者に有効なものだ」
「TikTokが南米などで始めた音楽サブスクTikTok Musicは開始時、いずれSpotifyの強力なライバルになると予想されていたが、アメリカでTikTok自体が法で禁じられて以降、雲行きがあやしくなっていた。TikTok禁止法はは日本や西欧など同盟国に広がるリスクもあったが結局、全面的な閉鎖を決断した。うまくいけばプロモーションと売上を兼ねた最強の音楽サービスになったかもしれないので、音楽業界的には残念な部分もあるだろう」
「レーベルとTuneCoreなどディストリビューターの違いについて整理した記事をピックアップ。大きく言うとレーベルは宣伝してくれるが楽曲の権利の大部分を持っていく。ディストリビューターは手数料が安く楽曲の権利は100%アーティストに残る一方、宣伝などは受けられない。ただレーベルも配信の手配やデジタルマーケティングなどにディストリビューターを利用しているし、ソニーなどディストリビューターを傘下に持つレーベルもある。ディストリビューターでもbeleiveのように宣伝・MV制作・マネジメントなどを『レーベル・サービス(アーティスト・サービス)』として提供しているところもあるので両者の境界は曖昧になってきた」
「TuneCoreで色々な音楽配信に曲を出してみたけど、なかなか再生されない…。そんなインディー・アーティストに朗報なのが『TuneCoreアクセラレーター』。年1,000再生未満の『スタート』から登録でき、12組のうち1組が1万未満、99万、1億回以上のステージに上がる毎に更にTuneCoreからプッシュを受けられる。参加者の音楽売上は平均2倍以上、『スタート』は5倍以上の売上アップ(前年比)につながっている。レコメンデーション・エンジンのコールドスタート問題を解決する、時代に合った素晴らしい取り組みだ。SoundCloudも『アセンド』という似た取り組みをしている」
「TikTokでバイラルを起こしてチャートインを狙うのはもはや定番の手法になったが、昨年ドイツのチャートの1/4の曲がそうだったというニュース。ドイツは日本と同じCD大国だったがデジタル化が日本より急速に進行し昨年、音楽売上のデジタル比率は81.5%に。日本は昨年34.5%でまだまだ伸びるので、これからますますデジタルマーケが強くなっていくの実感することになるだろう」
「ユニバーサルミュージックが『スーパーファンに注力する』と年初に発表したが、DTC(消費者への直接販売)売上高の年平均成長率が33%に。さらにSpotifyの高価格帯プランの開発を協力中とのことで、10年前に連載で『お手頃サブスク+プレミアム・サブスク+アーティスト単位の個別課金』が望ましいと書いたのがようやく現実化してきた。10年後の目標も既に新連載で書いているので興味あればお読みいただきたい」
「インディーズアーティストは機材を買いたがるが、そのお金を宣伝に使ったほうがいいよというアドバイス。Spotifyのバナー広告は100ドルから出せる(日本は未対応)。YouTubeだったらチャンネル登録者1人を40円で獲得なら、40万円で1万人だ。DAWとディストリビューターで音楽の制作費と流通費はかつてなく落ちている。その分を機材より宣伝に回した方がいいと思っていたのでこの記事をピックアップした」
「ワーナー・ミュージックの韓国法人が、英語音楽に特化したレーベルを設立。韓国のローカルレーベルが英語圏に進出したこれまでと違い、グローバル・メジャーのローカル法人が本国のある英語圏へ逆上陸していく形なので、ちょっとした掟破りになる。今後、グローバル・メジャーの日本法人から同じ動きが出るか注目したい。」
「中国最大の音楽会社テンセント・ミュージック(TME)が中国のアーティストを世界へ発信するプロジェクトを発足。人民日報と提携しているので国策と見てよいだろう。親会社はユニバーサルミュージックの株を10%、テンセント・ミュージックはSpotifyの株17%弱を以前、取得している」
「YouTubeが新機能を続々投入。うちアーティストに関わるのは動画のBBSで足りなかったCH専用のコミュニティースペースの用意、縦型ライブ配信でのギフト機能、イイネを強化して音楽チャートに反映されるハイプ、ショート作成を生成AIでサポート(透かし付き)など。スーパファンPFや生成AIのトレンドを意識した更新だ。日本への導入時期は未定」
「音楽以外の音声コンテンツが次は伸びるとここ数年、伝えてきたがアメリカでは十年で音声コンテンツの聴取時間で音楽以外が占める割合が13~34歳が11%から23%に、35~54歳が22%から28%にと急増している。動画だが耳だけでも楽しめるVodcastも伸びておりMusicmanでも実験中(Nusicman)だ。なおSpotifyはPodcastのPFで首位を取った後、昨年からオーディオブックに注力している」
「アメリカの音楽プロデューサーが生成AIを悪用し、詐欺ストリーミングで約14億円を詐取して起訴された事件。Spotifyの被害額はその0.6%にとどまった。同社がリソースを割いて詐欺ストリーミングを自動・手動で取り締まってきた成果。サイバーテロと同じで、攻撃を上回る人的リソースとテクノロジーで対抗するしかない」
「アメリカの音楽プロデューサーがAI音楽生成プラットフォームBoomyのCEO、音楽プロモーション・プラットフォームIndiehitmakerの創業者と結託して詐欺ストリームで1000万ドル(約14億円)の印税を得ていたとして起訴。氷山の一角で音楽業界は年30億ドル年(約4300億円)が詐欺ストリームに搾取されている」
「コラボ作品でファンを融通し合うのはSpotifyやYouTubeで王道になっているが、「アーティスト・プレイリストでコラボしたらどうなるだろう?」と米インディーズ・アーティスト5組が共同実験。結果はかなり良好でアルゴリズムとも好相性。広告予算的にも効率的にフォロワーを増やせたという実験結果が出た。実践的なチャレンジだ」
「アメリカの有料音楽配信が飽和状態。有料アカウントは前年比2.7%増に留まった。ここ数年話しているがサブスクとライブに支えられた音楽景気は終了し、拙著で強く語ったポスト・サブスクがいよいよ現実的な目標となってきた。残念ながら日本は周回遅れだが、だからこそリープフロッグを仕掛けられる位置にある。業界の気概に期待したい」
「サブスクで配信しただけじゃ充分稼げないし、そろそろウチもスーパーファン向けのサービスをやらないと。でもプラットフォームに入るんじゃなくて自分たちで自由にカスタマイズして作りたいと考え中のアーティストや事務所はFanCirclesのようなSaaS型も選択肢だ」
「ソニーグループがパブリックブロックチェーンSoneium(ソニューム)を発表。いわゆるNFTネタにとどまらずアプリやサービスのインフラとしての公開を目指す。ソニーはゲーム・映画・アニメ・音楽のエンタメ財閥でもあり、その強みを生かしたトークンなどが出てくると面白いと思っている」
「SoundCloudがアーティストを発掘し、世界に広めるAscending(アセンディング)を稼働。Next Proの契約者でありプロモーション時に新曲をリリースが条件 。昨年には投稿した楽曲に100人のリスナーを自動的につけるFirst Fansも稼働。いくらいい曲でも再生数の無い曲は一生おすすめされず埋もれるコールドスタート問題の解決を真剣にやっているのに好感」
「Spotifyが日本のポップカルチャーを発信するプレイリストGacha Popが38万件登録突破。YOASOBIや藤井風、Ado、新しい学校のリーダーズなどが米国、メキシコ、英国、フランス、インドネシアのZ世代に人気。VTuber星街すいせい「ビビデバ」はここから3,000万回以上再生を達成。10年前に連載で予測した通りの現象が進んでいる」
「米ソニー・ミュージック傘下のマスターワークスがブラックスカイ・クリエイティブを買収。マスターワークスはハンス・ジマーやヨーヨー・マ、故坂本龍一などが所属する。ブラックスカイは一人称視点のドローン撮影などで没入型コンテンツを開発するのが得意。ブリトニー・スピアーズやAC/DCで実績がある。サブスクとライブが一段落して、メジャーレーベルは新たなプロパティの拡張に投資を始めている」
「新しいラジオの形、誕生か? Twitchが全メジャーレーベルと提携して人気楽曲をDJ配信できるように。AIが楽曲を並べるラジオ型配信は音楽サブスクで人気機能だが、音楽配信でも既存ラジオのようにトーク+音楽がやれるようになる。十年待っていた機能で破壊的イノベーションに繋がると思う」
「音楽売上世界1位のUMGに続き2位のSMEも音楽ストリーミング売上の成長鈍化。特にYouTubeなど無料配信の広告売上が3.9%縮小。同社CEOが無料を減らして、Netflixが始めた月額安め+広告型へシフトすべきと提案した背景に。他にスーパーファンや生成AIの収益化がポスト・サブスクのテーマになっている」
「月額千円/人そこそこしか売れないことが音楽サブスク、レーベル、アーティスト全員の課題になっているが、中国音楽サブスク最大手のテンセント・ミュージックから料金5倍のスーパーVIP会員が登場。音楽やポッドキャスト、オーディオブック、オンラインカラオケが高品質、デジタルアルバムへの優先アクセス、チケット予約の特典も受けられるという。要注目」
「世界の音楽業界でレーベルサービスが台頭しつつある。アーティストは楽曲の権利を渡さず、売上をシェアしてプロモーションやマーケティング、マネジメントなどレーベルに準じるサービスを受ける。K-POP最大手のHYBEはレーベルを超えた会社を目指しファンダムのプラットフォームだけでなくレーベルサービスの提供も開始する」
「生成AIがどの素材を元にしているか分からないことが音楽ほかエンタメ企業の積極的利用の妨げになってきたが、ユニバーサルミュージックがここでも面白い動き。Prorata.aiは生成AIの元素材にIDを埋め込み、生成コンテンツにクレジットを入れる技術を持つが、ここと提携した」
「ユニバーサルミュージックがFacebookやInstagramを運営するメタ社と音楽ライセンス契約を拡大。7月にメタ社との契約を縮小していたのでTikTokの時のような事態を心配するきらいもあったが、Facebookユーザーには音楽ビデオのシェアがあまり人気が無かったためそこを縮小しただけだったようだ」
「新譜のリスニングパーティーで盛り上がっているライブ配信Stationheadがスーパーファンを増やす新機能。チャンネル登録したファン向けにサプライス・メッセージをボイスで送れる。この機能は他の音楽配信でも広がるだろう。なお、Stationheadがライブ配信で楽曲を使えるのは、音楽だけApple MusicやSpotifyなどファンが使用しているサブスクで聴けるようにしているからだ」
SpotifyのエクCEOが噂の高音質プランについて「まだ初期段階」と言及。注目は高音質だけでなくさらなる機能をデラックス版に備えるらしいことだ。価格は月額17〜18ドルぐらいになりそうだ」
「音楽ソフト売上世界一のUMGのQ2売上は前年同期比9.6%増で引き続き好調だがサブスク売上の伸びが期待以下に。ストリーミング売上(※無料ストリーミングにおける広告売上の分配)は3.9%縮小だが、同時期YouTubeの発表した広告売上は増収だったので、おそらく一時期TikTokに配信を停止したことと、メタ社と提携を解消したことが響いたと見られる」
「再生数100万〜5000万回である中間層のアーティストは前年同期比で5%以上増えたというレポート。メジャー中心の上位層に比べ、中間層は100万~1,000万回再生で62.1%が、1,000万~5,000万回再生では37.4%がインディーズだ」
「ユニバーサルMやワーナーMとも提携するユニコーン企業ジーニーズがアバターでクリエイターと様々なテック企業を繋ぐネットワークを構築した。アバター関連はARやUGC、ゲーム、拡張MVそしてマーケティング等々やることが高度かつ広範で事実上、限られたアーティストしか手をつけられなかったが、これで変わってきそうだ」
「アーティストになりすまして音楽売上を掠め取るストリーミング詐欺は音楽のストリーム総再生回数の何と1割で、30億ドル近くを詐欺グループに掠め取られているがミュージシャンたちの関心は低めだ」
「音楽業界の頂点に立つルシアン・グレンジCEOは生成AIなど新テクノロジーに積極的で昨今、その言動に業界外からも注目が集まっている。世界の音楽ビジネスのトレンドを掴むのに本インタビューは必読だが英語なので、グレンジCEOの動向をまとめた私の記事を参照されたい」
「Pollstarは欧米のコンサート売上を調べるときに重宝する。世界トップ100ツアーの興行収入は前年比8.7%増の30億7,000万ドル(約4,957億円)だが、平均チケット単価9.4%増の127.38ドルに依存。公演数が増えたが、平均興収/公演は6.9%減の137万ドルだった」
「Bandcampがスーパーファン限定で新譜を先行配信する機能を実装。本質的なアイデアだと思う。インディーズ、DIYアーティストのCD・グッズを販売するサイトの提供で始まったBandcampだがiTunes、Spotify、Shopify、Instagramの登場で核を失いつつあった。今後に注目したい」
「音楽ディストリビューターの米クリエイト・ミュージック・グループが評価額10億ドル(1,610億円)でユニコーン企業入り。TuneCoreのように誰でも配信できるタイプではなく、選定して契約するタイプ。アーティストはマーケティング等の投資を受けられる。6ix9ineやNicki Minajがここからビルボード1位を獲った」
「僕の連載で、著作権のある楽曲を正規に学習させたアーティストAIが新たな音楽収入を生む時代の到来を予告したが、いよいよ現実に近づいてきた。YouTubeがAI音楽生成ツールのトレーニングで世界3大メジャーレコード各社と交渉中。音楽業界1位のグレンジCEOが主導している」
「新譜のリリース・パーティーをアーティストがファンとオンラインで開催できるStationhead。すでにビリー・アイリッシュら大物が活用を始めているが、スーパーファン専用のAll-Accessを用意した。SpotifyやApple Musicと提携しているので権利関係は問題ない。この流れは鉄板なのでぜひ日本の音楽業界も参考にしてもらいたい。」
「高品質の音楽生成でクリエイターに人気のSunoとUdioがSME、UMG、WMGなどから千億円規模の提訴。先日、著名投資家などから追加出資が決まったばかりだった。音楽の生成でも著作権のある学習素材を技術的に判別できたのか、人的な証拠を確保したのか注目したい。」
「サブスクの普及が終わり、いよいよポストサブスクの時代へ。欧米の音楽ストリーミングは成長率鈍化、アメリカで有料会員の増加率は2019年に28.8%が2023年は5.7%で今年はもっと減る。月額値上・有料会員比率の他にオーディオブックなど音楽以外の商材開発、スーパーファン向けの都度課金などが次の課題になっている」
「日本を除く先進国でサブスク(とライブ)が成熟し、世界の音楽業界はスーパーファンプラットフォームを次の目標に定めつつある。UMGとWMGのCEOも年始に明言しており、ワーナーと米ソニーはFaveに出資、ユニバはBTS擁するHYBEのWeverseと提携。Weverseがメジャーアーティスト向けのプラットフォームなのに対し、今回のTHEUSはクリエイターにオープンなものを目指しているようだ」
アーティスト還元率100%で誰もが音楽配信に曲を出せるTuneCoreが累計40億ドル(約6,300億円)をアーティストに還元。TuneCore Japanは累計547億円で2023年は155億円支払と急成長だった。同年、日本のデジタル売上は1,165億円。TuneCore Japanはストリーミング売上でユニバーサル、ソニーに続く第三位だった」
「SpotifyがビデオポッドキャストのNebulaと提携。動画付きのポッドキャストとYouTubeなどの違いは、スクリーンから目を離していても楽しめる点。そこが現代社会にマッチしている。Spotifyでポッドキャストを聴く月間アクティブユーザー数は6億人を超えると予想されており、人気ポッドキャスターはSpotifyで月に1万ドル以上稼いでいる」
「Spotifyがアメリカで昨年に続き値上げ。米上陸の2011年に9.99ドル/月だったのが11.99ドルに。この間、39.4%のインフレが置きているので13.92ドル/月に満たないと音楽の値段は実質、下がっている。日本の価格は980円/月で据え置きだが2016年9月の上陸時から日本では11.3%、物価が上昇している(CPI)ので、そのまま反映するなら1,107円/月となる。Apple MusicやLINE MUSICは1080円/月になっている。なおインフレを反映すると世界の音楽ソフト売上はCD全盛期の約3分の2であり、完全復活していない」
「女性は13歳、男性は14歳で音楽の好みがほぼ決まる。31歳で音楽発見が停滞し、33歳で一生聴く音楽が決まると調査結果。最近の日本は音楽の無関心層が2018年で20代8.9% 30代18.4% 40代29.9%だったがコロナ後の23年には20代46.2%(←誤植かと思った!) 30代46.2% 40代49.1%と由々しき事態」
「数ある音楽系の生成AIのなかでもボーカル・歌詞付きでそれなりの曲を作ってくれるSunoはプロミュージシャンにも国内外で人気がある。最近、高音質のWAV形式に対応した有償のプロ版も登場。記事のとおり著作権のある曲を無断でトレーニングに使った疑いもあるが評価は高く、追加資金の調達に成功した」
「EDMが落ち着き、成長が鈍化したかに見えたエレクトロ市場だが、インドや南アフリカ、南米などストリーミングの普及で急成長するグローバルサウス諸国でヒップホップを超える成長を作り出している。アフリカ音楽シーンを牽引するナイジェリアのトップ100を聴くと洗練されたエレクトロが多く、グローバルメジャーの幹部が当国へ赴く報道も増えている」
「邦楽アーティストもStationheadを使うようになるだろう。新しいアルバムのリリースはファンにとってライブと並ぶ一大イベントだが、デジタルの力でファンとアーティストがオンラインで同時間に集まって楽しめるようになった。ライブ配信=ライブ中継という思い込みは捨てたほうがよい」
「広く浅く取るサブスクの普及が目標だった時代が終わり、デジタルでも深堀りを目指すようになると3年前、拙著で語ったがスーパーファンの収益化はそのひとつ。中国テンセント・ミュージックがそのモデルを作ってUMGが注目していると当時書いたが現実化してきた。実は、日本のファンクラブを中国はDXした。韓国のWeverse、日本ならエムアップ、THECOO、SKIYAKIがファンクラブ・プラットフォームでは有名だ。SKIYAKIがスペシャと経営統合する際、特別インタビューでスーパーファンについて詳しく聞いているのでご一読いただけれ幸いだ」
「実は、ヒット曲の予測AIは驚異的な精度を出しつつあり、生成AI以上にメジャーレーベルの業態を激変させると僕は見ている(コラム「AIが流行を支配する日」)。Apple Musicよりも世界シェアの大きいテンセントがヒット曲の予測AIを導入するインパクトは巨大だ」
「Spotifyは3年前(2021年1月)に高品質オーディオへ進出すると発表したが翌年、延期を発表した。今回も確定とは言えないが、同社は長らく株主からビジネスモデルの拡張を求められていて、高音質の最上位プランの追加はその流れにある。ライバルのAppleは高音質配信を武器にイヤホンやスマートスピーカーなどハード売上も立てているが、Spotifyの音楽ハードは失敗が続いているので巻き返したい」
「YouTubeショートが好調で、YouTube MusicはSpotifyと比べ広告の強いフリーミアムモデルが機能しつつあるといえる。Spotifyの世界シェアは31.7%、中国テンセントは14.4%、Apple Musicは12.6%、Amazonは11.1%、そしてYouTube Musicは5位の9.7%だが成長速度が高い。10年以内にApple Musicを超えてくるという予想もある(2023年 Q3 英MIDiA社調べ)」
「Spotiyの動向を15年間ウォッチしてきたが、トレンドの新技術を買収・開発することに果敢な企業だ。その中には音声共有機能など、モデルとなったサービスの衰退とともに失敗に終わったものもあるが、レコメンデーション・エンジンのThe Echo Nest買収など根幹機能として残ったものも多い。成功した新機能の共通項は、人類の生活に定着するテクノロジーやサービスがモデルになっていることだ。今回はYouTube、TikTok、ChatGPTを意識したもので、グローバルな音楽エコシステムに関してはSpotifyがまさしくリードしてきた潮流である」
「音楽サブスク内で、音楽以外のコンテンツ消費が欧米を中心に急激に伸びた結果、SpotifyやApple Music、Googleは100億円単位で人気ポッドキャスト・プロダクションの買収競争を繰り広げていた時期がある。直近ではSpotifyはポッドキャストからオーディオブックに注力を移動。一定の成果が出た印象だ」
インタビュワー・プロフィール
榎本幹朗(えのもと・みきろう)
1974年東京生。Musicman編集長・作家・音楽産業を専門とするコンサルタント。上智大学に在学中から仕事を始め、草創期のライヴ・ストリーミング番組のディレクターとなる。ぴあに転職後、音楽配信の専門家として独立。2017年まで京都精華大学講師。寄稿先はWIRED、文藝春秋、週刊ダイヤモンド、プレジデントなど。朝日新聞、ブルームバーグに取材協力。NHK、テレビ朝日、日本テレビにゲスト出演。著書に「音楽が未来を連れてくる」「THE NEXT BIG THING スティーブ・ジョブズと日本の環太平洋創作戦記」(DU BOOKS)。現在『新潮』にて「AIが音楽を変える日」を連載中。
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