【特集連載】震災から1年、東北の音楽関係者に聞く〜ノースロード・ミュージック Interview
「音楽、エンターテイメントの必要性を再認識しました」
株式会社ノースロード・ミュージック 代表取締役 久保井隆史氏
東北を中心に、コンサート・イベントの企画・制作を行っている株式会社ノースロード・ミュージック。仙台の本社の他にも、秋田、郡山にもオフィスを構える同社、代表取締役 久保井隆史氏にお話しを伺いました。
——震災からこの1年を振り返ってみて、まず一番に思われることはどのようなことでしょうか。
久保井:被災し、厳しい生活環境の中、前向きに業務をこなしてくれたスタッフに感謝、の一言に尽きます。
——震災当日やその後はどのようなご様子でしたか。
久保井:オフィス内は、あらゆるものが倒れ危険な状態だったため、一時近くの公園に非難し、一部のスタッフは一緒に避難所で一晩を過ごしました。中には、住居が全壊や半壊したスタッフもいました。
1〜2週間は、スタッフは自宅待機としましたが、予定していた公演の中止や延期の対応が続きました。
それから半年は、厳しい営業状況が続きました。
——営業を再開される目処がついたのは、いつごろだっだのでしょう。
久保井:1ヶ月後くらいより、使用可能なライブハウスで公演が再開されました。
また、大きな影響の無い日本海側では早い段階で公演を再開しました。自粛ムードもありましたが、関係なく再開しました。中には、公園でアンプラグドライブを行うアーティストもいましたね。
——この1年間において、活動の支えとなったのは。
久保井:津波や原発により大きな被害を受けた方達にとって、震災直後は音楽などのエンターテイメントは恐らく必要ない物であったと思います。
しかし、少し落ち着きを取り戻していく中で、厳しい生活環境が続いて辛い時、「音楽などの力が皆さんに少しでも安らぎや元気を与える事ができ、必要性を感じていただける時が来るはずだ。そういった時に手助けできる存在でいるために、ここでへこたれてなるものか」という思いで活動してきました。
ましてや、自粛を続けていたら会社の存続が危うくなるという思いで、早期再開を目指しました。
また、コンサートを楽しみに待っている方達に、これまでと同じように音楽に触れていただくこと、すなわち震災前と同じ体感をしていただくことが復興に向かって前進していると感じていただけると信じ、公演の再開に努めてきました。
——東北の音楽業界にいらっしゃるという事に関して、今回の震災で考え方の変化は。
久保井:中止・延期公演が相次ぎ、自粛ムードが起こる中、コンサートを待ち望む方々のメッセージ・思いを目の当たりにし、音楽をはじめとしたエンターテイメントの必要性をより一層感じ、再認識しました。
——東北の音楽シーンの回復具合をどのように見ていますか。
久保井:復興支援のために、予定に無かった東北公演を開催していただいたアーティストも多く、とても感謝しています。
震災後、半年が過ぎた頃から少しずつ公演数は増えてきましたが、未だ再開できない会館もあり、例年のような売上や動員数には満たない状況です。
そして福島県においては、地域によっては少しずつ公演は再開されてきましたが、原発の影響が特に大きい地域では、通常の公演を行うのは当分難しい状況です。それは、残念ながら1〜2年などというレベルの話ではありません。
また巷では、特に仙台は景気がいいという話があります。これは、県外からの復興支援にかかわる方々による影響が大きく、一部の歓楽街や宿泊施設に限る話で、それ以外のほとんどの方は全くそのような状況は無く、むしろ厳しい状況が続いていることをわかっていただきたいです。そのような部分が大きく取り上げられる現状が残念でなりません。
——音楽関係者やこれを読んでいる方へ一言お願いします。
久保井:震災後、同業他社や各関係者の皆様よりいただいた支援は非常に心強く、勇気をいただきました。大変感謝しております。この場をお借りしまして改めてお礼申し上げます。
株式会社ノースロード・ミュージック
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