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世界へファン層を拡大するヴィジュアル系の現状 (株)スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏インタビュー

インタビュー フォーカス

スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏
スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏

ここ数年、海外で人気を博す日本独自の文化としてアニメ、マンガ、ゲームなどと並び、ヴィジュアル系についてのニュースを目にすることが多くなった。また、CD不況と言われる中でも安定したセールスを誇り、海外への進出も積極的なヴィジュアル系。今回の「FOCUS」は、「ヴィジュアル系」という呼称を生んだ邦楽ロック誌『SHOXX』の創刊編集長にして、以後22年に渡り、日本のヴィジュアル系シーンを最前線で見守り続けて来た星子誠一さんにご登場頂き、ヴィジュアル系の現状と海外での受け止められ方、そして、最近リニューアルをしたヴィジュアル系動画配信サイト「club Zy.」についてなどのお話を伺った。

[2012年2月3日 / 渋谷区道玄坂 株式会社スターチャイルドにて]

プロフィール
星子 誠一(ほしこ・せいいち)
株式会社スターチャイルド 代表取締役


ジャパンカルチャーのヴィジュアル系に特化したクロスメディア事業会社starchildの社長。観光庁よりVISIT JAPAN大使を拝命。タバコとお酒が大好き。

1975年、明治大学卒業後、音楽雑誌出版社に入社。
1990年、X(JAPAN)と出会う。
特にメンバーのhideに衝撃を受けて、半年後に邦楽ロック誌「SHOXX」を創刊し、初代編集長に就任。
公私共にhideとの親交を深め、数年後に”ヴィジュアル系”の呼称がこの雑誌から生まれた。
この間、hide、X JAPAN、LUNA SEA、L’Arc en Ciel、Gackt等の独占写真集を出版する。
1998年、出版社初のローソン独占流通の邦楽ロック誌「Creation」を創刊。
2000年、株式会社スターチャイルドを設立し代表取締役に就任。

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1.

——星子さんは「ヴィジュアル系の名付け親」と言われていますよね。

星子:そう言われていますね。でも、最初はX JAPANのHIDEが「ヴィジュアルショック」という言葉を作ってステージでも叫んでいたので、僕はそれをパクって『SHOXX』という雑誌を創刊したときに「ヴィジュアル&ハードショック・マガジン」というサブタイトルを付けたんですよ。当時はお化粧系と言われていて、それが嫌で記事の中で「お化粧系じゃなくて、ヴィジュアルショック系だ」と言い出したのは僕やスタッフライターです。だからHIDEには「俺の言葉パクっただろう? 少し金(著作権料)くれよ」って言われました(笑)。

——(笑)。星子さんはその「ヴィジュアル系」の可能性を国内だけでなく世界へ広げようと尽力されていて、今や「ヴィジュアル系」は海外でも通じる言葉になっているわけですよね。

星子:今ではどんどん略されて、ヴィジュアル系がヴィジュ系、最近はV系ですからね。「ヴィジュアル系」という言葉は海外でも通じますよ。グーグルでもFacebookでも英語で「VISUAL KEI」「V KEI」と検索するといっぱい出てきますからね。

——もう英語になっているんですね。

星子:「オタク」も「カラオケ」も英語になっているじゃないですか。それと一緒ですね。

——音楽業界が世界のマーケットを見据えてビジネスを考えなくてはいけない時代になってきていると思うのですが、星子さんにお話を伺えば、これから海外へ出て行こうとしている業界人の参考になるんじゃないかな、と思っているんですよ。

星子:だったら良いんですけど…(笑)。おこがましいですが、今後、日本がどうしたら元気になるんだろう、どういうビジネスをしたらいいんだろう、と思ったときに、日本はもうカルチャーで出て行くしかないだろうと思います。歴史を紐解いてみても、1回高度成長を遂げた国というのは、まず2度目の高成長はないですよね。そういう国はどうやって生き延びているのか考えると、自国のカルチャーをきちっと誇りを持って立て直して、他所の国へ魅力的な形で売り込んでビジネスをしています。

 いわゆる新興国、今だったら他のアジアの国々は今ぐんぐん成長していますよね。日本がそれに張り合おうと思っても無理なんだろうと思っていて、だとしたらカルチャーとか観光とか、要するにその国にしかないものを海外に打ち出していく。また、ネットを上手く利用すれば、より早く日本のカルチャーがグローバル化できるんじゃないかなと思います。

——ある程度のスピード感をもって。

星子:そうですね。スピード感をもってできるんじゃないかなと。たまたま私はヴィジュアル系に22年関わり続けている中で、数年前から「ヴィジュアル系はジャパンポップカルチャーだよね」と言われるようになりました。だったら今後はもっと海外に打ち出していって、海外から日本にお客さんが来るようにするべきじゃないかと思っていたんです。また、2年前ですけど、たまたま観光庁から「VISIT JAPAN大使」に任命されて、その想いはより強くなりました。

 今でこそヴィジュアル系と呼ばれているバンドが、単体で海外に出て行ってツアーしていますが、我々の時代で言ったら、ロックなんて間違いなく輸入文化だったわけです。ところがこの輸入文化だったロックが40年も50年も経て、いつの間にか「ヴィジュアル系」という日本なりの音楽として発展し、それが今度は輸出文化になったんですね。

——「ヴィジュアル系」は他の国にはない文化なんですか?

星子:ないです。海外から来た色々なバンドが日本でミックスされたんです。ですから、昭和歌謡みたいなメロディもあれば、ラップもある。ハードロック、ヘヴィメタル、シャンソン、ポップス、色んなものが混じっています。分かりやすく共通点を挙げるとしたら、みなさん音楽にプラスして自分たちの魅力を訴えるためのメイクをしている、メイクも1つの武器にしていることぐらいです。

 これはもう偶然に近いと思うんですが、大昔に日本がアニメのTV番組を外販していた時代があったじゃないですか。20〜30年くらい前ですかね。それで、いつの間にか海外でも日本のアニメで育った子がたくさん出てきて、我々が気付かないうちに、アニメがオタク文化としてヨーロッパに根付いて、そこにヴィジュアル系が被さっていったんです。ヨーロッパの人たちはヴィジュアル系を見て、2次元が3次元になっちゃったみたいな、実物がそこにいるように感じたんですよ(笑)。私たちからしたら別モノですけど、向こうでは自然に結びついたようです。

 するとヨーロッパのイベンターというかビジネスマンがその状況に気づいて、日本のバンドをヨーロッパに呼び始めたんです。昔だったらそう簡単に連絡はとれませんが、今はネットがあるので一発で連絡がつきます。結果、日本のヴィジュアル系バンドが海外でツアーをするようになったんですね。

——それは何年前の話ですか?

星子: 7〜8年前ですね。あまり目立っていなかっただけで、「ヨーロッパにマーケットがあるかも」ということをバンド自身も気づいていましたし、私たちも「状況が変わってきたな」と思っていました。それで、バンドもどんどん海外でライブをやるうちに、例えば、国内の地方ツアーと変わらない感じになっていったんですよね。

 

2.

FOCUS「スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏」

——ヴィジュアル系と呼ばれている人たちは早くから独立心が強いというか、自分たちで率先して営業やプロモーションをして、海外の壁も越えていくようなバイタリティを持っていますよね。

星子:チャレンジ精神というんですかね。今までは日本のタレントが海外に行くとなると、プロモーションだから赤字でもいいとか、もしくはファンクラブの人間を連れて行こうとか、そういうのが結構多かったと思うんですよ。ところが今のヴィジュアル系はきちっと営業になっているんですよ。

——あくまでもビジネスで海外に行くんですね。

星子:そう、ビジネスです。あと、面白いことに日本のヴィジュアル系のバンドが向こうで演奏するときって、日本語じゃないとダメなんです。

——歌詞が日本語の方が喜ばれるんですか?

星子:はい。日本語じゃないと海外の人は納得しないんです。私たちだって海外からバンドが来て、日本語で歌われたら「そんなものは聴きたくないよ。オリジナルを聴かせてくれ」となるじゃないですか? それと一緒ですよ。

——テレビで見たことがあるんですが、海外の人たちが日本語で一緒に歌っていますよね。

星子:歌いますし、ヴィジュアル系独特の振り付けで踊ります。ヘッドバンキングもやるし、モッシュもやるし、「逆ダイ」と言って、お客さんの上を転がってステージの方に飛び込んでいく人もいます。みんなが一様に同じ行動をとるんですよ。

——それは誰が教えたんですか?

星子:いや、誰も教えてないですよ。

——自然にですか?

星子:自然に。見よう見まねで「ここはこうだよね」と、何回かライブに行っているうちに覚えるんですね。

——ちなみにヴィジュアル系が一番人気のある国はどこになりますか?

星子:一番はフランスでしょう。何故かは分かりませんが、フランスは昔から日本に対する愛着心が強いですよね。それでジャパンポップカルチャーのイベント「ジャパンエキスポ」がフランスで始まったのが2000年くらいからで、最初は参加者が数千人だったのが、今や30万人くらい集まりますからね。

——「Japan Expo」はどこが主催しているんですか?

星子:フランスのある団体です。日本で言うところのコミケみたいなものです。最初は全くの素人さんたちで、会社組織ではありませんでした。

——その団体に国からの補助金とかは出ているんですか?

星子:いや、ないです。同人の集まりみたいなものですよ。「Japan Expo」はアニメやマンガが中心なんですが、そこにヴィジュアル系のライブも組み込まれています。また最近、経済産業省や観光庁が出展したりと、国が積極的に関わりだしたのがこの2〜3年なんですが、私も少しだけ具申しました。

——どのようなアドバイスをされたんですか?

星子:経済産業省だけ行ってもしょうがない。経済産業省が行って日本のカルチャーを紹介して、それに魅力を感じた人が日本に来るようにするのは観光庁の仕事だから、両方が行って両方が同じ所にブースを出した方が良いんじゃないですか、と言いました。

——文化を紹介するだけでなく、海外の人を少しでも多く引き込まないと、ということですね。

星子:そういうことです。もう日本は昔みたいにテクノロジーだけでは勝負できないじゃないですか。だったら観光立国としても盛り上がらないと、と思います。

——日本はこれから先どこでお金を稼ぐのかということですよね。

星子:日本のカルチャーというと歴史のある古いものだけを捉えがちじゃないですか。例えば、華道や歌舞伎、能とか伝統のあるものに。でも、そのあたりには若い人はなかなか食いつかないですよ。若い人が食いついて騒ぐようなものを考えて、それをカルチャーとして魅せる技が日本人には足りないと思いますね。

——ジャパンポップカルチャーはフランス以外だとどのような国で人気がありますか?

星子:早いうちに北米へ飛び火しましたね。LAでも「アニメエキスポ」が毎年7月にやっていて、ここも7〜8万人集まりますし、ニューヨークで開催される「オタコン」にも4〜5万人集まっていますし、そういうイベントが今は世界中にあります。細かく調べると数万人規模から数千人規模まで、南米のブラジルとか。あの辺もヴィジュアル系のバンドは行っていますから。

——あとロシアとかも話に聞きますね。

星子:そうですね。あとヴィジュアル系に限ってお話しますと、最近は台湾、香港、タイ、シンガポールといったアジアの国で盛り上がっています。台湾ではヴィジュアル系のバンドを呼ぶライブハウスができましたし、ヴィジュアル系専門誌も創刊されました。だから、私は今、台湾にすごく興味があって、Facebookでも英語プラス繁体字で上げるようにしています。結果、「いいね!」で入ってくるファンの中に台湾の人たちが急速に増えてきましたね。多分すごく情報を欲しているんだと思いますね。

 

3.

FOCUS「スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏」

——星子さん、そしてスターチャイルドの今後の目標をお話いただけますか?

星子:まずは私が関わっているヴィジュアル系を世界に浸透させて、定着化させようと思っています。単なる流行りものではなくて、定着させることが一番の目標です。まずは海外の人にヴィジュアル系のコンテンツがあることを認知してもらうことが大切だと考えています。日本にはヴィジュアル系専門のメディアがあります、そしてこのメディアを見ていただければ、これだけのバンドの情報が毎日アップされてます、と。今はまだ啓蒙している段階かもしれませんが、ようやくみなさんが我々の存在に気づき始めているように感じます。

——やはり中心はヴィジュアル系動画配信サイト「club Zy.」になるんですか?

星子:そうですね。「club Zy.」は、世界中の人々がもっと簡単に入って来られるようにしようと去年の暮れにフルリニューアルして、システムからデザインまで全部変えました。私はこれをヴィジュアル系の好きな子が集まってくる村みたいなものとして位置づけています。

——「club Zy.」はどのような会員制度になっているんですか?

星子:コンテンツは今のところ全部フリーにしていますので、無料会員でも全部見られます。では、有料会員の特典は何かと言いますと、弊社主催ライブイベントの優先予約や、バックステージにおけるアーティスト握手会、撮影会への参加など、そういった特典が付いてきます。会費も3ヶ月で1,050円、半年で1,890円とか、1年間で3,150円とリーズナブルです。

——サイト内のたくさんの動画はオリジナルですか?

星子:全部オリジナル動画です。何でそんなにオリジナル動画があるかというと、取材のときに動画のコメントをもらったり、ライブイベントも年間40本くらいやっているので、そのときのライブ映像やバックステージのコメント映像もどんどん撮っているからなんですね。ですから、「club Zy.」では余程なことがない限りPVは流しません。PVはどこでも観ることができますから。

——また、フリーペーパーも発行されていますよね。

星子:そうですね。「Gab」と「club Zy. MAG」という2誌のフリーペーパーを交互に出しています。また、無料Androidアプリ「club Zy.PHOTO」もリリースしました。これはサイトやフリーペーパーを作る際に撮影した写真をスマートフォンで無料ダウンロードできるアプリです。ポイントがないと写真はダウンロードできないようになっていて、アプリ内にある2000種類くらいの無料ゲームをダウンロードするとポイントがもらえますから、ポイントを貯めて写真をダウンロードするんです。うちにはゲームアプリの広告を統括している代理店からゲームがダウンロードされる度にお金が入ってくるんですよ。金額は微々たるものですが、使用者が世界に拡大して積み重なれば、可能性は広がるだろうと考えています。

——なぜ、この「club Zy.PHOTO」はAndroidで展開しようと思われたんですか?

星子: iPhoneは課金システムにかなり縛りがあるじゃないですか。そこにいまいちピンとこなかったんです。もうちょっとこちらで自由にできた方がいいだろうということと、台数も世界的にみたらAndroidのほうが多いだろうというデータから決めました。

——他にどんな収入源があるんでしょうか?

星子:イベント、フリーペーパーの広告、色々ありますけど、どれか飛び抜けているものはないですね。昔はX JAPAN、LUNA SEA、L’Arc〜en〜Ciel、GLAYの独占写真集をたくさん作って効率のよいビジネスができましたが、今はそんなことできない時代ですから薄利ですよ。でも、やらないことには飯が食えない。食えなくなると自分の夢の実現もできなくなる。大儲けすることは考えてないですし、儲けるネタもない。だとしたら一個一個赤字にならないようにやるしかないんですよね。

——自社でオムニバスアルバムも出していましたよね。

星子:あれも2年前にやめました。ご存じの通りもうCDが売れなくなってしまいましたから。

——それでもヴィジュアル系はまだCDが売れているんじゃないんですか?

星子:他のジャンルに比べたら売れている、というだけです。

——では、ヴィジュアル系のアーティストはどうやって生活しているんでしょうか?

星子:ライブ収入とグッズです。CDは臨時収入くらいですね。僕はいずれCDはプロモーションツールになるだろうと思っています。例えば、ライブ限定のグッズを作ってその特典としてCDを付けるとかね。CDはもう作品ではないです。

 プリンスが5〜6年くらい前にやっていてすごいなと思ったんですけど、新聞に新譜のCDを無料で付けたじゃないですか? その新聞はものすごく売れましたが、本人には一セントも入ってこない。でもライブの動員が一気に増えて、その収入で全部取り戻したんですよ。その後、マドンナがレコード会社との契約をやめてライブ・ネイションと契約したときに、「これからはライブが中心だな」と思いました。ライブ・ネイションは360度契約をやって、ついでにCDも作る。メインはライブですよね。そしてグッズですよ。会場に行かないと買えない。もしかしたらCDも会場でしか買えなくなるかもしれない。これもどんどんグッズ化していくと思いますよ。

 

4.

FOCUS「スターチャイルド 代表取締役 星子誠一氏」

——現在「club Zy.」の会員は何名いるんですか?

星子:最近リニューアルしたので、現在の実数はちょっと分からないんですが、リニューアル前は2万5、6千ですね。これが多いのか少ないのか僕は分かりませんが、みなさんヴィジュアル系のコアなファンです。

——ちなみに日本におけるヴィジュアル系のファンってどのくらいいるんですか?

星子:もっとたくさんいますよ。だってthe GazettEにしろ何にしろ、アルバムを出せば未だに7〜8万枚売るわけじゃないですか? あと東京ドームでライブをやっちゃうわけですからね。ですから、うちの会員はその一部ですよね。

——以前、星子さんにお会いしたときに、その当時はヴィジュアル系が一大ブームになっているときだったので「ヴィジュアル系って流行が終わったらなくなっちゃうんじゃないですか?」と訊いたら、「ヴィジュアル系は流行りものでも何でもなくて、宝塚のようにずっと存在する一つのジャンルなんだ」と力強くおっしゃっていましたよね。

星子:僕はずっとそう思っています。目立たないけど、常に新しいアーティストが出てきますし、固定ファンもずっといます。しかも未だにファンの中心は16〜18歳ですからね。これはうちでアンケートをとったんですよ。一番多かったのは16、17歳の女性です。また最近はニコ動とかのファンがすごく入ってきているというか、ヴィジュアル系のファンとクロスしていますね。ヴィジュアル系、アニメ、あとボーカロイドのファンがかなり被ってきています。でも、日本でのファン層拡大ももう限界でしょう。ジャンルとしてある程度定着しましたし、みなさんヴィジュアル系という言葉もわかりますしね。

——日本全国をヴィジュアル系に染めたいわけではないんですね(笑)。

星子:(笑)。ここまでくれば十分ですよ。昔のように「ダサイよね」「古いよね」と言われなくなりましたし、ジャンルとして確立されたわけですよね。だとすると次は海外でいいと思いますし、僕は単なる流行ものにしたくなかっただけなんですよ。

——では、この先はヴィジュアル系をさらに世界に広めることが星子さんのミッションになるんでしょうか?

星子:そうですね。生意気な言い方になってしまうかもしれませんが、ヴィジュアル系を始め日本には日本が誇っていい、自信を持って世界に誇るべきカルチャーが沢山あると思っています。みんなそれにもっと気づいて世界に発信すべきだと思います。僕は別にヴィジュアル系だけをどうこう思っているわけではなくて、単純に僕はヴィジュアル系だけしかできないので、ここは責任を持って頑張ります、ということなんですよ。

——世界に向けての発信は絶対にするべきだと。

星子:そうです。発信し続けるべきでしょう。そうじゃないと気づかれないですものね。気づいてもらったら、その人たちとコミュニティーというほどじゃないかもしれないけど、信用関係を築ければ、それ以降は作品を買ってくれます。でも、信頼関係を築けなかったら誰も買ってくれないですよ。TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアは、そういった関係を築くためのツールですよね。だからどんどん活用していきたいですね。

——ヴィジュアル系のネットワークが世界に広がっていったら楽しいですよね。

星子:そうですね。ウチがヴィジュアル系のイベントをやったときに、客席を見てみると、海外からのお客さんって間違いなく増えているんですよ。例えば1,000人規模のライブハウスでやっても、白人のお客さんは10人近くいたと思います。アジアの方はもっといたと思いますが、海外の人たちが言葉が通じなくても本当に楽しそうに一緒になって騒いでいる。そういった状況がもっと増えてくれればいいなと思いますし、こんなに世界の人が楽しいと思ってもらえるヴィジュアル系の、そのど真ん中にいられる自分は幸せだなと思いますね。

(2012年2月27日 公開)

(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)

 「ヴィジュアル系はライフワーク」と言い切る星子さん。インタビュー中に、目を輝かせながらヴィジュアル系の魅力を語り、メジャー、インディーズ、新旧分け隔てなくヴィジュアル系アーティストの名前がスラスラ出てくる星子さんには圧倒されました。「ヴィジュアル系は流行でなく、日本の新しい文化」という星子さんの読みは今、現実のものになっています。積極的に海外へ出てファンを開拓するヴィジュアル系のたくましさ、DIY精神は見習うべき点が多いのではないでしょうか。