視野を世界に広げて日本の音楽の素晴らしさを伝えていく 〜欧州最古のコミックフェス「ルッカコミックス&ゲームス」株式会社イータレントバンク 代表取締役社長 殿木達郎氏インタビュー
「総合エンタテインメントを核とした、マーケティング・プロデュース・カンパニー」を掲げ、インターネットを通じてプロモーションやマーケティング、音楽配信など幅広い業務を手掛けるイータレントバンク。2年前より国際事業部を新設し、欧州企業との提携など海外へのプロモーションも視野に入れる中、欧州最古のコミックフェス「ルッカコミックス&ゲームス」とのパートナーシップを結び、欧州への展開を目指すアーティストや企業を後押ししていく。パートナーシップを結んだ「ルッカコミックス&ゲームス」や日本コンテンツの欧州での受け入れられ方について、またイータレントバンクの今後について、同社 代表取締役社長殿木氏に話を伺った。
PROFILE
殿木 達郎(とのき・たつろう)
株式会社イータレントバンク 代表取締役社長
1969年東京生まれ。(株)イータレントバンク代表取締役社長。15歳よりドラムをはじめ、バンドでの音楽活動を行なう。IT黎明期よりインターネットを活用したミュージックビジネスを実現するために2000年、同社設立。ITに特化したプロモーションシステムやWEBメディアを多数プロデュース。現在はプロモーションとマーケティングをベースにアーティストの海外進出における総合プロデュースを手がける。「アーティストとユーザーを最短距離で結びつける」目線からのミュージック・ビジネス・クリエイターとしてアーティストからの信望も厚い。
1.
——お部屋の中にドラムセットが置いてありますが、これは殿木さんのですか?
殿木:はい。昔バンドでドラムを叩いていたんですよ。でも、メジャーデビューできず、ではインディーズで、という気負いというかノウハウもなく、しかも楽器がドラムなのでつぶしもきかないのですよね。一応スタジオミュージシャンのオーディションなども受けていたんですが、当時打ち込み全盛だったので、上手い人でもなかなか仕事が来ないという状況で「これ厳しいな」と。結局プレイヤーとしてはその時は断念したのですが、それ以降も音楽関係の仕事をずっとやっていましたし、根底には「音楽をやり続けたい」という思いがありました。
——インターネットとの出会いはいつ頃だったんですか?
殿木:‘97年くらいからパソコン通信とかで遊んでいて「これはすごく面白いな」と思っていました。最初はメンバー募集とかに使っていたのですが、そのうちにイラストレーターやカメラマンをやっている20代の若い同世代の人たちが集まってきて、「何かできんじゃないか?」なんて話も出たのですが、みんなクリエイターなので、ビジネスに関するノウハウが全くなくて、ただ集まって終わっちゃったんですね。
そして2000年になったときに、ネット産業もずいぶん盛んになっていて、今でこそいわゆる“アイドル”がブームですが、2000年のときも「ネットアイドル」といって普通の女の子が人気だったんですよ。自分で写メを撮って、それをホームページに上げたら人気が出て、イベントをやったら大盛況、オリジナルグッズもすごく売れるような状況があって、「このやり方はバンドでも使えるんじゃないかな?」と。つまり、アーティストとリスナーを最短距離で結びつけるのがインターネットじゃないかなと思い、2000年にイータレントバンクを設立しました。
——ずいぶん早い時期からそういったことを考えられていたんですね。
殿木:ただ、当時早すぎたので、事務所に「アーティスト・タレント専門のホームページを作ります。作らせてください」とお願いしたら、「インターネットなんて写真は盗られるし、音楽は盗まれるし」とすごく敬遠されました。ただ、僕はずっと自分で音楽をやってきたので、アーティスト目線で根気よく話をしていったところ、少しずつ耳を傾けていただけるようになり、そこから少しずつアーティスト専門のホームページを作り、今みたいにソーシャルメディアのような便利なものもなかったので、それこそ個人の音楽好きの人がやっている掲示板に、宣伝にならないよう普通にコミュニケーションをとりながら、ホームページの書き込みをさせていただいたりしていました(笑)。
——それはものすごく手間がかかる作業ですよね(笑)。
殿木:もう、人海戦術でした(笑)。そんなことをやりながら、次にウェブマガジンを始めまして、当時フラッシュが出始めだったので、フラッシュで写真を流しながら、テキストや音声をかぶせたりしました。また、サイトで音楽を流すのは、権利関係で難しいと皆さん敬遠されていたんですが、「プロモーション目的で音楽流します」とJASRACと契約をして、音楽もきちっと流せるようにしました。
——そのウェブマガジンは何という名前だったんですか?
殿木:「プラグイン」というメディアで、スポニチさんと一緒にやっていました。「ライフスタイルと音楽」をコンセプトにしていたので、車のコンテンツを入れて「ドライブで聞きたい音楽はこれです」とか、お酒好きの人に向けて「この日本酒に合う音楽はこの楽曲です」とか、そういった企画をやっていました。
そこで初めて我々の立ち位置が明確になったので、アーティストやレコードメーカーにも我々のやっていることを理解してだけるようになってきた頃に、iTunesが日本に上陸してきたんですね。我々はレコードメーカーでも事務所でもないですが、とにかくネットでのプロモーションには長けていると思うので、売るコンテンツはこれから集めるけど、どうしても契約してほしいとiTunesに交渉しました。
——では、かなり早い時期にiTunesと契約されたんですか?
殿木:そうですね。上陸して1か月くらいで契約をしました。それで最初に配信したのがミュージカルの役者さんの楽曲でした。ミュージカルの役者さんたちは歌がすごく上手いのですが、CDを作るとなるとレコードメーカーは「そんな売れないだろう」と敬遠するんですね。でも会場で実際に手売りすると、3,000とか5,000枚売れる現状があったので、「楽曲をiTunesで配信すればいいんじゃないか?」と。それでミュージカルの方々に、「楽曲配信しませんか?」と提案して取りまとめをしたのがスタートですね。
——ニッチなものでもiTunesだったら充分やれると。
殿木:そうですね。我々はパッケージを作らないですが、iTunesと契約することで、ある意味レコード会社の機能を持てたので、メジャーとの契約が切れてしまった方だとか、あとは自主制作でやっているんだけど、なかなかメジャーなアプローチができない優秀な方の配信をお手伝いさせていただくようになりました。
その頃には世の中にもITが浸透してきたので、レコードメーカーのインターネット戦略、主にプロモーションをお手伝いするようになり、ニュース記事を作成して、それを色々なネット上のメディアに配信する音楽業界に特化した通信社的な立ち位置になっていき、それが今ベースにあるんですが、そこからWebサイトの制作から運用、それから、例えば「Facebookの特設ページを作りたい」「Youtubeで何かコンテンツ作りたい」といったリクエストがあるものは全部請け負っています。
2.
——近年、イータレントバンクは海外展開もされていますよね。
殿木:はい。会社設立当初から才能ある人たちを世の中にきちんと出していくプロデュース会社というイメージを持っていまして、インターネットはワールドワイドに展開できるものなので、国内だけでなく海外も視野に入れようと2年ほど前に国際事業部を立ち上げたんです。
——国際事業部を立ち上げられて、手始めに何をされたんですか?
殿木:まずはニュースを英訳したものを海外に発信をしていきました。そうすると、今度は海外の、日本のカルチャーに興味をもっているところからアプローチがありまして、「もっといろんな情報がほしい」とか、あるいは「こんなイベントがあるんだけれど」と紹介していただいたりする中でネットワークができ、フランスやイタリアのプロダクションとパートナーシップを結んでいったっていうのが、この1年くらいの話です。
——ちなみに殿木さんはもともと英語に強かったんですか?
殿木:いや、全くダメでしたね(笑)。ですから、スタッフの力はものすごく大きいなと思います。やはり海外との壁って言葉の問題とコミュニケーションの問題だったんですよ。でも、音楽が好きだってことと、実際海外へ行って、ワインで乾杯をした瞬間にものすごくフランクになり、好きなアーティストの話とか楽器の話とかを身振り手振りで話すうちになんとなく慣れてきました(笑)。
日本人は英語の文法が間違っているとか、そういったことをやっぱり気にしがちですが、例えば、フランス人もイタリア人も英語は母国語ではないので、英語はある意味カタコトと言ったら変ですが、文法はめちゃくちゃだったりします。僕らもめちゃくちゃで、めちゃくちゃ同士なんとかコミュニケーションがとれているので、もうそれでOKじゃないかと思います(笑)。
——(笑)。
殿木:言葉に対する日本人特有の変なコンプレックスがなくなって、そこから自然な感じでコミュニケーションがとれるようになり、フランスのパートナーとは、今、日本のコンテンツをフランスで紹介していくプロジェクトを進めています。また、イタリアのプロダクションとは日本の女性シンガーを一緒にやっていこうということで、その女性シンガーをイタリアに連れていきまして、わずか2週間ほどだったんですが、レコーディングとアー写撮影、それからPV撮影までやりました。
——その女性シンガーの方はイタリアのプロダクションに所属しているんですか?
殿木:いや、彼女はBOOWY時代から布袋寅泰氏を30年間マネージメントをしてきた、糟谷銑司氏プロデュースの女性シンガーで、IRc2 CORPORATION所属です。IRc2社長の糟谷さんが温めている女性シンガーがいるという話を聞きまして、たまたまイタリアのパートナーが日本に来ているときだったので一緒にミーティングへ参加したら、彼らが「彼女、面白いからやりたい」と。それで、事務所とクリエイティブ、あと僕らがプランニングと全体のプロデュースという役割で、この三者がそれぞれやれることを持ち出してやりましょうとプロジェクトになりました。ようやく、この12月にお披露目できる形になるので、それをヨーロッパ・アメリカというような欧米市場の中で、勝負できるような形にしていこうと考えています。
糟谷銑司氏プロデュースの女性シンガー Julie(ジュリー)
ただ、今はCDが売れない時代ですし、デジタルでのマネタイズもなかなか難しいので、エンタテインメントの力を使って、今度は逆に企業のプロモーションに結び付けられるような形を作れたらなと思っています。例えばアーティストはコンサート、それから、いわゆる音楽のソフトウェアでの収益、あとはマーチャンダイジング、これらがだいたい大きな柱だと思うんですが、それ以外にもやはり収益を稼ぐ方法を得ないと、ミュージシャンとしての活動がもう限界というか、できなくなってしまう、それはやっぱり一番よろしくないことだと思うんですよ。
——稼げないというのは、アーティストが活動を続けていく上で最大の問題ですよね。
殿木:そうですね。ですから、そこを解消できるビジネスモデルを作れないかなと今考えています。アーティストには訴求力と発信力がありますし、ファンの属性もある程度決まっています。そこでアーティストをメディアとしてとらえ、企業のプロモーションをうまく乗せていこうと。アーティストにとってみれば、やはりプロモーションする予算というのは必要なので、そこは企業から予算を調達して、でも、単純にスポンサーという形になってしまうと企業のアイコンで終わってしまいますので、きちっとコラボレーションという形を作っていけるようプロデュースするのが我々の役目になるかと思います。
3.
「ルッカコミックス&ゲームス」カンファレンス風景
——欧州のコミックフェス「ルッカコミックス&ゲームス」に参加されるきっかけは何だったんですか?
殿木:この3〜4年で、日本の音楽業界の中でもフランスの「ジャパンエキスポ」はいいプロモーションの場であり、海外進出のひとつのきっかけになるようなイベントになっていまして、我々も一昨年、参加させていただいたのですね。そのときはゴールデンボンバーをフランスに連れて行ったのですが、ヨーロッパには熱狂的な日本のコンテンツのファンがたくさんいるのだということに少々驚いたんですよ。それで話を聞いてみると、イタリアにも毎年10月に「ルッカコミックス&ゲームス」というコミックとゲームのショーがあると。実は、これ40年ぐらい続いているイベントなのですね。
——そんなに長い歴史があるんですか。
殿木:そうなんですよ。トスカーナ州ルッカ市はイタリアのフィレンツェから電車で2時間弱ぐらいの城壁に囲まれた街で、そこでコミケのようなことをやっているんですね。日本の業者や日本人は全然入り込んでないのですが、現地の人たちはやはり日本のマンガをすごく好きで、会場には日本のマンガやゲームがバーッと並んでいるんですよ。
「ルッカコミックス&ゲームス」の参加者にとって、いわゆるコスプレをするのが大きな目的であり楽しみで、みなさん色んなキャラクターに変身して来るのですが、彼らは手作りで一から作っているのでクオリティが高いんですよ。しかも、最近の作品よりは、今から25年ぐらい前の日本で流行ったようなアニメーションがすごく多くて、それこそルパン三世がものすごく人気だったりします。それからいわゆるマジンガーZとか、とにかく「え? 何でこんなキャラクター知っているの?」というような光景なんですよ。
——コスプレは日本の作品にちなんだものが多いんですか?
殿木:日本の作品に限らずアニメやマンガのキャラクター全般、あとは、例えば、スターウォーズのキャラクターとかですね。ディズニーのキャラクターになっている人もいらっしゃいますし、普通の服でいる方が浮いてしまうぐらいの感じなんですよ。で、そこの中に、日本をテーマにしたブースがありまして、刀のレプリカや湯呑み茶碗、あとはTシャツに漢字が書いてあるものだとか、そういう伝統的なものもあれば、いわゆるフィギュアが秋葉原のショーケースのようにズラッと並んでいたりするんですね。
——その「ルッカコミックス&ゲームス」に昨年初めてに参加されたわけですね。
殿木:はい。日本からゲストで来ているのは、漫画家の方くらいで音楽が全くなかったので、せっかく参加するのだから我々は音楽でと思ったのですが、誰かを連れて行くにはリスクもあるなと思い、身内の中からDJとダンサーを連れて行って、アニソンをガンガンかけたんですね。そうしたらものすごく盛り上がったんですよ。あと、可愛い女の子をボーカルにしたロックバンドを僕が勝手に作って連れていったのですが、これも大盛り上がりでした。ちなみにドラムも叩きました(笑)
——初参加は大成功だったんですね。
殿木:そうですね。まず自分が実験台になって、痛みも含めて体験すれば、次にアーティストを連れて来るときに、一通り分かっていていいだろうと。僕はどっちかと言うと自分で経験しないと嫌なタイプなので、最初は自らやりました。今年はMAY’Sと八王子Pを連れて行きました。
——その二組を選ばれた理由は?
殿木:やはり、イベント自体どちらかというとマンガやアニメのイベントなので、そっちの色を出したキャスティングの方がいいかなと思い、イタリアでも人気の漫画が映画化された際に、その主題歌を歌っていたMAY’Sと、アニメや動画と曲を同期させながらライブをする八王子Pを選びました。
——やはりキーワードはアニメやマンガになるんですか?
殿木:もちろんアニメとかそういうことを念頭にしていたんですが、MAY’Sのボーカルの片桐舞子さんはすごく声が綺麗で、「日本にもこんなに歌も上手く、楽曲がしっかりしているアーティストがいるんですね」とアーティストとしての実力がすごく受け入れらましたね。
——ライブ以外にどのような催しに参加されたんですか?
殿木:オープンスペースで、日本の音楽の現状ついてカンファレンスをやりました。日本のアーティストはたくさんいるけれど、日本の音楽業界の仕組み的に海外へ行って活動することがなかなか難しい。でも、ニーズがある中でそれがやれていないのはアーティストとしてもリスナーとしても、どちらにとっても不幸なので、我々ができることを今模索しているんだという話をさせていただきました。
そのカンファレンスの中で、ネットで好きな日本のバンドを見つけても、ホームページには日本語しか書いていないので、せめて英語で書いてあるともっと私たちもわかるのにといった切実なご意見をいただいたり、あとイタリアでも日本のアニソンとか、いろんなものがラジオでかかったりするんですが、その権利がきちんと日本に分配されているのか? という、著作権の問題なんかを指摘された方もいらっしゃいました。あと、イタリアの音楽は日本でどういう風に思われているのか? とかですね。逆に言えば僕らもイタリアの音楽というと、どうしてもクラシックだとかオペラだとか、そういうイメージがあるんですが、実はポップミュージックもロックバンドもたくさんあるんですよね。
——確かにそういった側面は知らないですよね。
殿木:そうなんですよ。やっぱり知られてないってことはプロモーションが弱いというか、その仕組みがないのだなと思いましたし、逆に言うとニーズは双方ともあるので、そこに対してきちんとプロモーションをしていけばチャンスはあると思いました。
——日本の音楽を知りたいというイタリア人もいるし、イタリアの音楽を聴いてみたい日本人もいると。
殿木:これだけ日本にはイタリアンレストランがあって、イタリアのファッションブランドもたくさんあるのに、音楽が入ってこないのはもったいないなと思うんですよね。また、日本の音楽市場が大変なのは分かるのですが、もうちょっと見方を変えて、せっかく素晴らしいものがあるのだから、それをもっと世界中に広げていくことを、これからはやっていかなくてはいけないんじゃないかなと思うんです。
4.
——例えば、イタリアに日本の音楽を持っていくときに、歌は日本語のままでいいんですか?
殿木:そうですね。日本語で全然大丈夫ですよ。逆に言えば、彼らも日本語をすごく勉強したがっていますし、下手な英語にする必要はないですね。逆に、英語で歌っている方が、すごく気持ち悪く感じるのじゃないかなと思いますね。
——言葉は問題ないとするとネックになるのは何ですか?
殿木:距離が遠い分、渡航代をどうするかですね。フェスとかイベントとか、そういった場所は作っていただけるのですが、まだ大きな規模ではないですし、ビジネスモデルもできあがっていないので、行くまでが大きな課題だと思っています。ですから、先ほど少し話したように、イベントを使って、海外進出したいと考えている企業とアーティストがコラボレーションするというのは一つの手だと思います。それがスポンサー費という形でなくても、例えば、アーティストのおかげで物が売れれば、それをロイヤリティーみたいな形で還元するとか、その仕組みは今後考えていく必要性がありますね。
——イタリアやフランスではこういう日本の音楽がウケるみたいな傾向はあるんですか?
殿木:やはりアニメソングとヴィジュアル系のロックバンドはすごくアリだなと思います。ただ、ヨーロッパの人たちは演奏能力をシビアに観るので、見栄えも大事なのですが、演奏がしっかりしているという前提がないと難しいですね。それから、男女問わず声が綺麗だっていうことも重要です。そこは一つポイントですね。
——何を持って行ってもいいということではない?
殿木:はい。でも、日本の音楽は楽曲とアレンジャーのクオリティが高いものが多いので、ヨーロッパは勝負できるフィールドじゃないかなと僕は思うんですよね。
——3回目の参加となる来年の「ルッカコミックス&ゲームス」について、すでに決まっていることはあるんでしょうか?
殿木:我々は現在「ルッカコミックス&ゲームス」の日本コンテンツのオフィシャルパートナーとなっているのですが、来年は色々なタイプのアーティストと一緒に行けたらいいなと思いますね。我々はアーティストを選ぶにあたって、どちらかというとエージェントというよりも、パートナーとしてその後の展開もご一緒できるかどうかというのが、実は判断のポイントだったりするんですね。単純にエージェントですと、もうつなぎ仕事で「あとは勝手にやってください」となってしまい、現地に対してもアーティストに対しても無責任になってしまいますから。
——でも、それはとても根気のいる作業になりますよね。
殿木:そうですね。おそらくヨーロッパってまだ誰も手を付けてない、要するにすぐお金になりにくい地域なので、海外展開されている方々に「ヨーロッパでどうやってお金を稼ぐのですか?」と言われているのですね。僕らも海外事業部立ち上げて2年3年は、正直投資だと思っていますし、その中でまずネットワークを作ることと、あとはヨーロッパでの拠点ができれば、そこから音楽だけじゃなくてファッションもありますし、そういった企業を上手く連動させるビジネスになればと考えています。音楽だけ単体で考えるとどうしても行き詰ってしまうのですが、我々はそこからもっとバジェットがあるところを狙っていこうと考えています。
——まずはヨーロッパから始めて、世界へ拡げていくと。
殿木:僕らも少ない人数でやっていますので、まずはヨーロッパで確実に見えるところまでやっていこうと。世界の中で今ヨーロッパといい関係ができているので、まずはそこをひとつ形にしようということです。もちろん、アジアやアメリカ、南米にもすごく興味がありますし、来年は南米もやれたらいいなと思います。
——企業とのコラボレーションですが、すでに興味を持たれている企業はいるんでしょうか?
殿木:そうですね。ちょうど共著で本(「ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略 〜 “音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス」)を出させていただきまして、そこでも「音楽を企業の商品に置き換えて考えてみたらすごく分かりやすいのじゃないか?」と書かせていただいたのですが、今、一般企業のソーシャルを担当されてる方とか、そういった方々も同じようなお話させていただいています。
企業と音楽・エンタテインメントを結び付けることができれば、今までにないビジネスモデルが生まれてき、お金が音楽産業に流れてくる、それをアーティストにつぎ込めれば、もうちょっとクオリティの高いものを作れる可能性もでてくるんじゃないかと。結局、僕一人では何もできないので、そういった仲間というか、同じ思いの人たちと力を合わせるしかありませんし、現実にそういった方々が周りに増えてきていますので、すごく心強いなと思っています。
——殿木さん、イータレントバンクの目線の先には世界があるわけですね。
殿木:そうですね。もう日本だけではダメなんじゃないか? と思うんですよね。僕はやはり音楽が好きで、結局音楽に関することしかできない人間なので、音楽産業をきちんと継続させるためには、やはり世界に向くことが突破口になるのではないでしょうか。そのための道筋を作るのが、これからの我々の使命かなと思っています。あと、密かに国際的なメンバーでバンドを結成することを企んでいたり、もちろんドラマーとして(笑)。