新しいムーヴメントが起きているこの瞬間を体感して欲しい 〜 ドワンゴ「ニコニコ超パーティー」プロデューサー 阿部大護氏 インタビュー
昨年、色々な意味で多くのユーザーの度肝を抜いた、ニコニコ動画の一大イベント「ニコニコ超会議」。その説明のできない良い意味での「訳の分からなさ」や、4億7000万円の赤字となったこと自体がニュースになるなど、各所で話題となった同イベントが今年も4月27日、28日に千葉・幕張メッセで開催される。
そこで今回は、音楽業界出身というバックグラウンドを持ち、「ニコニコ超会議」の中において、とりわけ今年もかなりカオスな展開が予想される「ニコニコ超パーティー」のプロデューサーである「あべちゃん」こと、阿部大護氏に迫ってみた。
(取材・文・写真:Kenji Naganawa、Jiro Honda)
PROFILE
阿部大護(あべちゃん)
(株)ドワンゴコンテンツ ライブ事業部 部長代理見習い
東京・八王子市出身。デザイナーを経たのち、エイベックスへ。デザイン、WEBプロモーションを担当し、その後ドワンゴに入社。以降「ニコニコ大会議」「ニコニコ超パーティー」等、ステージイベントを多く手がける。
1.
——阿部さんはドワンゴの前は、エイベックスにいらっしゃったんですよね。エイベックスではどのようなお仕事をされていたんですか?
阿部:最初はウェブのデザイナーをやっていて、その後、ウェブとモバイルを使ってタレントやアーティストのプロモーションをする部署にいました。
——エイベックスに入られた経緯というのは?
阿部:エイベックスに入る前もデザイナーをやっていたんですが、もともと大学時代にダンスをやっていたりして、そういう「エンタメ系のところないかな?」と思って探していたら、たまたまエイベックスの募集を見つけて。何かこだわりがあったわけではないんですけど、辿り着いたのがエイベックスだったという感じでした。
——そこでの仕事はいかがでしたか?
阿部:面白かったですね。ウェブのデザイナーをやっていた時期は、どうやってアーティストイメージを作ってデザインするかが仕事の中心でした。そこからプロモーションの戦略側に回ってからは、ブランディングをするところまで関わるようになりましたから、デザインもプロモーションも、両方とも非常にヴォリュームのある面白い環境だったと思います。
——阿部さんが、音楽やエンターテイメントに興味を持ったきっかけは?
阿部:昔から音楽はずっと好きだったんですよ。親が音楽が好きだったというのもあって、小さいときから洋楽を聴かされていました。人並みに邦楽も聴いてて、中学二年の文化祭のときに、衣装とメイクをバッチリ決めてシャ乱Qの「ズルい女」を歌って踊るというので、初めてステージに立ちましたね(笑)。その頃から、人がわーっと盛り上がるようなコンテンツが割と好きだったのかもしれないです。
——ちなみにパートは?
阿部:ボーカル&ダンスです(笑)。
——(笑)。楽器には行かなかった感じで。
阿部:楽器自体はすごく好きなんですが、そんなに長続きしなかったですね。小学校の時はピアノ教室に通いたいと言ったくせに脱出して2回で辞めたり(笑)、中学や高校の時はアコギやエレキギターをそれぞれ1年ぐらい弾いた程度で。音を出したり歌ったり踊ったりするのはもともと好きですが、「プレイヤーとして高みを目指す!」みたいな意識は全く無かったです(笑)。
——友だちとサークルを作ってみたいな感じ?
阿部:そういうノリです。グループノリでやっている感じでしたね。大学のときはダンスサークルに所属して踊っていました。それで、ダンスをやっていくうちに舞台公演の振り付け依頼とかが来るようになって、そこで舞台の振り付けをしたり演出を考えたりもしていました。
——それは、既にお仕事としてですか?
阿部:いえ、全然仕事ではないです(笑)。関東近県の学生が集まって、何百人とかでやる舞台公演だったんですけど、別にギャランティーは発生していないですね。
——ちなみに、ご出身はどちらなんですか?
阿部:八王子です。東京近辺で発生しているブームみたいなモノは、割と追っかけていた感じで。
——どんな学生時代でした?
阿部:ごく普通に音楽に興味を持っていましたけど、かといって将来は音楽の仕事をしたいとは全然思っていなくて。もともと中学のときからパソコンをずっとやっていて、インターネットも早めに始めていたので、「IT系の会社で企画を考えてやりたいな」というのはなんとなく思っていましたけど。
——阿部さんって、どの辺りの音楽を聴いていたんでしょう?
阿部:ほぼ洋楽メインで、ヒップホップ、ハウス、テクノ、トランス、ジャズ、クラシックと幅広く聴いていました。一時期はたまにDJもやっていたので、アメリカに行ってB級のヒップホップレコードを掘ったりもしていたんですよ。具体的な王道のアーティストから影響を受けたというよりは、マイナーなものばかり好んで聴いていましたね。例えば、ヒップホップだったら’90年代前半のミドルスクールとか、ジャズもサンプルネタ探して聴くとか。なので、大学時代は本当に洋楽ばかりで、カラオケに行くとその時に流行っていたJ-POPを全く知らないみたいな(笑)。
——クラブカルチャー寄りだったんですね。
阿部:そうですね。同時にダンスの振り付けや演出もずっと考えていたので、国内および海外のライブや演劇から、どういう演出や音の使い方がお客さんに刺さるのかということを、割と意識せずに吸収して学んでいたんだと思います。それが今に繋がっている部分もあるのかな。
——では、もともと音楽やエンタメの素養は相当あったと。
阿部:どうでしょうね(笑)。
2.
——それでエイベックスからドワンゴへ転職されるわけですが、ニコ動にハマりすぎて…という話は本当なんですか?
阿部:それは本当で、エイベックスでマーケティングのデザイナーをやっていたときから、仕事しながらディスプレイ2画面の一方でずっとニコニコを観ていて(笑)。動画ランキングのチェックを毎時間やって、ユーザー生放送のサービスがスタートしたら、今度はそこの気になる放送を見てたり(笑)。
——困った社員ですね(笑)。
阿部:そうですよね(笑)。「ニコニコ大会議」のチケットも、某掲示板で譲ってもらって足を運んで、メモ帳片手に新機能のサービス内容をメモったりしてました。
——メモる?それは仕事としてですか?
阿部:全然仕事じゃないんですよ(笑)。そうしたら、帰り際に会社の偉い人に会って「お前何やってるんだ」みたいなこともあったり(笑)。
——(笑)。ニコ動に初めて触れたときの印象はどうでしたか?
阿部:最初は「よくわかんねぇな」だったんですけど、いつの間にかハマっていましたね。コンテンツ自体というよりも、擬似的に人がタイムラインにいる感じが面白くて。当時は、ネット上に人がたくさん集まる場所が限定されていたので、「みんなで一緒にここで盛り上がっている」というのが楽しいなと。
——初期だとレミオロメンの「粉雪」とか。
阿部:そうそう。自分でもコメントして、しばらくしてから戻ると、どんどんコメントが増えたりしてて。初期はコンテンツ量も少なくて、何回も同じ動画を見に行くんですけど、特定のパターンで書き込む人がいて、「こいつ同一人物だな」とか分かるんです(笑)。そういう親近感とか、人が集まって繋がっている感じが面白かったですね。
——それで、仕事を疎かにしつつ…(笑)。
阿部:疎かにしまくりで(笑)。段々ニコ厨みたいな状態になっちゃいまして、ニコニコを使って何か仕事ができないかな?と考え始めたんです。それで、公式生放送を使って、アーティストやタレントをユーザーに寄せた企画で何かできないかと提案書を書いて、持っていった先がニコニコのFooさんでして(笑)。
——そこで意気投合しちゃったと。
阿部:はい、会ってその日のうちに飲みに行って、「いつから一緒に仕事する?」と言われて、「じゃあ明日から…」と翌日エイベックスに辞表を出したんです(笑)。
——その噂は本当だったんですね(笑)。
阿部:はい、当時の上司にはすっごく怒られましたけどね(笑)。
3.
——ニコ動に触れることによって、阿部さんの音楽に対する認識の変化とかありましたか?
阿部:僕がニコニコに惹かれたのは、作品の純粋さなんです。右向け右のトレンドやビジネスに捕らわれず、自分の主張をしたいがままにするという作品が多くて。それは歌詞にも反映されていて、作風も「こんな曲、世間には中々ないな」というものがすごく多いんですよね。
僕は音楽業界の中で仕事をしていましたが、「これって音楽作品として、芸術作品として純粋なのかな?」という思いがずっとありました。そういう中で、実はニコニコの方が、純文学的な意味で言うと、芸術作品として純粋なんじゃないかなと思ったんです。
音楽業界も、やはりすごく大変だと思うんです。尖ったことや新しいことをやりたいけれど、トレンドから外れると売上が立たなくて、チャレンジしようにも予算がもらえなくて、という負のスパイラルがあって。
——ジレンマが。
阿部:でも、シーンを変えてきた人たちというのは、尖ったことをやった人だと思っているんですね。メジャー全体の中でも、尖ったモノを出さない限りは新しいムーブメントは作れないですし、イコール新しい市場を作れないことだと僕は思っていて。
別に業界批判をしている訳じゃないんですけど(笑)、現在、恐らく音楽業界の新人発掘をされている人たちってけっこうニコニコをチェックしていると思うんですよ。そこから新たな才能を発掘して、尖った新しいことを世の中に出していってくれるのは、僕はとても嬉しいんです。でも奪い去っていくだけで、本人にはニコニコで活動させませんとかされるとイラっとするんですけどね。結局本人を潰しちゃうパターンも多いし。
あと、ニコニコというのはビジネスというバックグラウンドがないところから生まれてきた文化なので、音楽業界でニコニコにあまり馴染みが無い方も、単にメジャーとの比較ではなくて、「新しい文化」として別の視点から見て頂けると、とても楽しめるんじゃないかなという気がします。
——阿部さんのアンテナに引っかかるニコ動のアーティストというのはどういう人なんですか?
阿部:僕の中には、「質が高い」、「お笑い要素として秀逸である」、「イケメン要素がある」という3つの基準がありまして。その三つの軸を考えながら、ひたすら観ています。例えば、お笑いの軸だったら、動画上のどのポイントでネタを入れてくるかをチェックしますね。
——センス?
阿部:動画というフォーマットだったら、開始して何秒後くらいに一ネタ入れた方がいいとか、分かる人には分かる法則があるんですけど、状況に合わせてそういう緻密な計算ができる人はセンスや才能があるなと思います。動画の作りが上手い人は、やはりランキングや再生回数で上の方にいますよね。
——阿部さんが「この人は人気が出るな」と思った人はやはり実際にそうなりますか?
阿部:割と外れてはいないと思います(笑)。人気を得る人って、みんなセルフプロモーションができていると思うんですね。動画の作り方や投稿作品のチョイス、生放送からtwitterの発信まで、全部自分でやる一つのサイクルができているので、その辺りで自力の差が出る感じはありますよね。
——普通のアーティストだったら分担していることを、全部自分でやっているわけですもんね。その最たる例が「ボカロP」だったりするわけで。
阿部:そうですね。今は色々なツールが発達しているので、自分で自分のアーティスト性を100%表現することが可能な環境になっていますしね。
4.
——以前、ドワンゴの方から、ニコ動ってそんなに「音楽」を重視しているわけでもないというお話しを伺ったことがあります。
阿部:僕らは基本的にニュートラルなんです。ステージイベントをやる時も、色々なカテゴリや人に焦点を当てようと思ってやっています。例えば、最大勢力の一つに「ゲーム」があるんですが、「70時間ぶっ通しゲーム実況」みたいなイベントもあって、ゲームプレイヤー50人くらい呼んで、スタッフもずっと寝られないみたいな(笑)。
ただ、それはステージに立って、照明が入ってという派手なコンテンツではないので、前面に出てくる感じではないんですよね。それに比べると、音楽モノは分量としては決して多くないですけど、一つ一つが派手に見えるので、割と「ニコ動全体としては音楽モノ押しなんでしょ?」と思われがちなんですけど、全然そんなことないという(笑)。実際は、音楽に限らないネット上に発信されている様々なコンテンツが、ニコニコには集約されていると思います。
——ニコ動として、普段から音楽業界を特に意識しているという雰囲気は感じられませんよね。ウチはウチでみたいな。
阿部::こちらから積極的なアプローチとかはしてないですね。日本の音楽でインディーズ・シーンが盛り上がって以降、プロとアマの境界線は曖昧になりましたけど、それこそ、ニコニコの中で考えたら、めちゃくちゃ多くのユーザーに支持されている人もいれば、そうじゃない人もいて、本当にぐちゃぐちゃなんです。そういう流れなので、人がたくさん集まっている「場所」として、音楽業界のみなさんにはニコニコを活用していただきたいですね。何らかの工夫したカタチでメジャーアーティストの作品を発表したりとか。
特に、笑いの要素があるアーティストは、ニコニコと親和性が高いと思います。例えば、ゴールデンボンバーはニコニコですごく流行って、果てには紅白に出るぐらいにまで広まったというのは、良いケースですし。僕の中では、ニコニコでやったらきっとハマるだろうな、というアーティストは具体的にイメージできてたりするんですけどね。
——最近は、ニコ動出身のアーティストがメジャーに行くことも珍しくないですよね。
阿部:ニコニコから出てきたユーザーさんやクリエイターさんで儲けようというビジネススキームを僕らは基本的に組んでいないので、彼らがきちんと作品を発表でき、生活が保証される範囲で、彼らの良さを最大化する方向で音楽業界のみなさんには手掛けていただけたらなと思います。
——今、ドワンゴさんも契約まわりの知識の啓蒙もされていますよね。dueで権利関連の情報交換や、確定申告講座とかのページがあったり。
阿部:やっていますね。マネジメント機能を持たず活動している個人の方が多いので、ある程度、そういった知識をつける必要はあると思います。
——ニコ動のアーティストさんは、今後日本を飛び越してそのまま海外に出て行くようになったりするのでしょうか。
阿部:僕としては、海外で同じコンテンツを楽しんでくれるユーザーが増えてくれたらいいなと思います。未来の事はわからないです、預言者じゃないんで(笑)。ただ可能性は大いにあると思いますよ。
5.
——阿部さんは、そうやって出てきたアーティストが次のステージへ向かうにあたってのイベントをたくさん手掛けられていますが、その際に心がけていることとかありますか?
阿部:まずは、偏り過ぎないようにするバランスですね。超パーティーでも色々なカテゴリを設けています。音楽要素はどうしても強くなるんですけど、その音楽の中でも、例えばボカロじゃないアニメの音楽や、ニコニコインディーズと呼ばれる人たちの音楽もきちんとカバーするようにしています。
いろいろなジャンルが混在した状態を作って、「ニコニコってこういうカオスな感じがいいよね」と、思っていただけるように。
——去年も阿部さんはそこを突き詰めるがあまり、演目の尺を極限まで詰めていましたもんね(笑)。
阿部:そうなんです、本当はもう全部出したいんです(笑)。なので、今年は余裕を持ってという話になっているんですけど、構成を考えるとやっぱりパンパンになっちゃう(笑)。その辺は今年も戦いですね。
あと、他に心がけていることは、新しいクリエイターさんに出ていただくことです。今まで公式に出たことがない人にステージに立っていただきたい。そして、それによってクリエイターとして、この先活動していくモチベーションを高めていただけたら嬉しいです。
——ニコニコのイベントって、お客さんと演者の境界が非常に曖昧ですよね。
阿部:そこもすごく意識しています。今年の超パーティーのサイトのトップにも「踏み出せばあなたの舞台」って書いてあるんですね。
ニコニコって、昨日まで一般人だった人が、勇気を出して投稿してみたらステージで表現する立場になったりとか、そういう明日何が起こるか分からないという世界ですから。観客のみなさんも、第三の出演者だという感覚があるので、今回の超パーティーでもその場でお客さんにステージにあがってもらうという演出はやろうと思っています。「こっちはパフォーマー、こっちは見る側」みたいに分けたくないんですよね。
——先日の超会議の記者発表で、阿部さんのお話をお伺いして、「どうなるか分かんないけど、やっちゃえ」みたいな雰囲気を感じました(笑)。
阿部:やっぱりインタラクティブの一番の楽しさって、ハプニングじゃないですか。カッチリ決まったものをただ見るだけというのはつまらないと思うし。本来はカッチリ作ってお客さんは見るだけが当たり前というイベントで、敢えてハプニングを起こすことによってカオス感を出して、即時的なエンタテイメントを作り出すことは意識したいです。カオス感というのは、ニコニコにとって重要な要素だと考えています。
尺の決まったステージイベントでのインタラクティブってすごい難しいんですけど、そこを生み出せるものを試行錯誤しながら考えてます。ただ技術的にできるかどうか分からないので、まだお話しません(笑)。当日のお楽しみってことで。
6.
——今年の超パーティーのイメージというのは?
阿部:サイトのイラストの感じもそうなんですけど、今年はカーニバルやサーカスをイメージしているんです。そもそも、僕はニコニコ自体がカーニバルやサーカスっぽいなと思っていて。カーニバルやサーカスって、色んなところで色んな人が様々なことをやっているのが楽しいですよね。お客さんを参加させたり。なので、そういう演出ができたらなと考えています。
——去年、超会議に行きましたが、「なんかよく分からなかった」というのが正直な感想でして(笑)。
阿部:そう言っていただけるのが一番なんですよ(笑)。そもそも説明ができないモノなので、そういう把握できない感じを心がけていきたいなと。
昨年のニコニコ超パーティーの様子
——ユーザーさんは、とりあえず去年、第一回を経験しているので、少しはイメージできているかもしれないですね。
阿部:まぁ、まだ詳しい事は全然決まってないんですけどね(笑)。ただ、オープニングは特に面白くなるかな。ワクワクするものになると思います。
——出演者も相当多いですよね。(※ 「2月8日『ニコニコ超パーティーⅡ』中川翔子他、追加出演者116名発表」)
阿部:今年は出演者が去年をかなり越える予定です。去年は249名だったんですけど、それを100名以上超えるかもしれません。できるだけ沢山の方にステージに乗っていただきたいので(笑)。
——ちなみに出演者ってどういう風に選んでいるんですか?
阿部:フラットな募集形式をとったり、ユーザーがこの人は出てしかるべきだろうと思うような方、後は出演したことがない方、この辺りのバランスをとりながらこちらからオファーをかけています。でも、事務所の都合でとか、顔出しがNGだったりで、断られてしまうこともありますね。こちらとしてはユーザーさんの意見を最大限に反映したいんですけど、事情があってユーザーさんの希望に添えなかったりするときは、はがゆいですね。「何でこの人出ないの?」みたいなツイートとか見ると、切なくなったりして(苦笑)。
とにかく、超会議や超パーティーは、他に似ているモノがないものだと思っていて、敢えて言うならオリンピックだと思うんです。他では体験できないものなので、まぁ試しにちょっと来てみてください、って思います。永遠に完成しないこの進化しつづける過程は今でしか味わえないので、「新しいムーヴメントが起きているこの瞬間を見に来てくれ」って感じですね。
7.
——阿部さんはこうやって取材を受けたり、オモテに出る機会も多いと思うんですけど、そこで「ニコニコのあべちゃん」としてセルフ・プロデュースしてる部分もあるんですか?名刺のルビも「あべちゃん」だったり、いつも髪が派手だったりしますよね(笑)。
阿部:いえ、そういうのはあまり考えてないですね。ただ、どこの場所にいても見つけやすくていいとは言われますけど(笑)。今髪が赤いのは、全然寝てないときに美容室で「ビビッドな感じにしてください」って言って、そのまますぐ寝ちゃって起きたらこうなってたという(笑)。
——阿部さん自身、元々ダンサーだったりクラブミュージックのシーンにいたり、そういう少しエッジのきいたバックグラウンドをお持ちじゃないですか。そういう部分と、ニコ動カルチャーのオタクな部分で、自分の中で違和感とか無かったですか?自分とは違う世界だ、みたいな。
阿部:それが、無いんですよね。ヤンキーオタク論的な所に行き着くとは思うんですが、そもそもヤンキーとオタクって、一部では共通の言語が通じるというか、親和性があると思うんですね。痛車と改造車とか、初音ミクに対する愛情と倖田來未のFC「倖田組」の精神性とか、変わらないと思うんですよ。刺さる対象が違うだけで。僕も、2次元には興味が無かったんですけど、ボカロという現象と音楽の純粋さを入り口に初音ミクの文化にハマっていって、そうすると初音ミク自体を好きになり、気が付いたら携帯の待ち受けが初音ミクになってたみたいな(笑)。コンテンツも例えばアニソンが一般化しているように、垣根はなくなっているんじゃないですかね。マクロで見るとなんとなくヤンキーとオタクみたいに分かれる部分はあると思うんですけど、そこを横断的に楽しむ人は増えてきていると思います。
——それはニコ動にとっていい傾向ですよね。
阿部:そうですね。まぁ、僕自身はオタク的なものを元々持っているんだと思います。だって、高校生の時に、当時ハマっていたXファイルのIDカードをマネして、スキャナ使ってそっくりに作って遊んでましたから(笑)。
——オタクですね(笑)。さて、最後になりますが、やはり阿部さんは今後もニコ動を通じて世界に愛と平和を届ける使者になる?(笑)。
阿部:使者になりたいわけじゃないですけどね(笑)。でもニコニコが目指すのは愛と平和と笑顔だと思ってますよ。弊社、川上からは「世迷い言だよね」って言われましたけど(笑)。
——阿部さんマジなんですもんね(笑)。
阿部:僕はもう大マジですよ(笑)。絶対できるだろうなと思ってます。人生の半分を捧げてもいいぐらいですから。
——全部じゃなくて?
阿部:あとの半分は余生でゆっくりお茶を飲みたい(笑)。