波がある音楽ビジネスをメインでやるために、好きなことで事業を展開 〜 LD&K代表 大谷秀政氏 インタビュー
ガガガSPやかりゆし58などのアーティストが所属し、その独自のビジネス・スタイルで業界においてひときわ存在感を放つレーベルLD&K。音楽事業だけではなく飲食業も手掛け、運営する代表店舗「宇田川カフェ」には月間約1万人もが訪れるという。他にも、出版事業、ライブハウス経営、スタジオ運営等、多角的に展開するLD&Kが、今春に中国・上海へ進出。カフェとバー、クラブ&ライブハウスを併せ持つ店舗「上海ROSE(シャンハイ・ローズ)」(正式名称:Shanghai Rose | Bar & Cafe on the Bund」)を2013年3月1日にオープンさせる。
そこで今回は、20年近くにわたり音楽レーベルを運営、そして夜カフェブームの第一人者でもある、LD&Kの代表 大谷秀政氏にお話しを伺った。
(取材・文・写真:Takuya Yashiro、Jiro Honda)
PROFILE
大谷秀政(おおたに・ひでまさ)
株式会社エル・ディー・アンド・ケイ 代表取締役社長
1968年生まれ、愛知県出身。1991年、LD&Kの前身である(有)ビッグボス設立。1994年11月に音楽レーベル開始。1995年にエル・ディー・アンド・ケイを立ち上げ、2001年に「宇田川カフェ」をオープン。その後、多方面に事業を展開させ、2013年3月、中国・上海に「上海ROSE」を出店する。
1.
——今回、「上海ROSE」をオープンされることになったきっかけというのは?
大谷:ビジネス的な面でいうと、中国で飲食サービス業において独資がOKになったというのがきっかけの一つです。以前までは、合弁でしか進出できなかったのですが、合弁での展開に関してはあまり上手くいかないケースを聞いていましたので。
もう一つは、将来的な事を考えての、会社のリスクヘッジですよね。日本だけではなく、海外にも拠点を作ってリスクを分散させるという面もあります。
——では、今回はLD&Kの単独の資本ということで。
大谷:そうなります。クラブ&バーみたいなお店を海外でやりたいと前々から思っていたんです。ある程度の規模感があり、政府案件で、敢えてトラブルがあった時に目立って話題になるというところで(笑)。
——そういう戦略もありつつ(笑)。
大谷:あとは、場所および物件としてスペシャルな要素を持つ建物ということですね。業態というのはソフトなのでマネをされるかもしれませんが、ハードとしてのハコがスペシャルであればオリジナルとして存在できますから。
——どれ位前から物件を探されていたんですか?
大谷:5年前にはすでに構想がありました。今回の物件を見つけたのが2年前になりますね。
——かなり時間をかけられたんですね。
大谷:その3年の間はずっと物件を探していましたね。契約をしたのは、一昨年の11月末です。
——最初から、上海にこだわりがあったのでしょうか?
大谷:いえ、かならずしもそうではなくて、ハワイやベトナムとかでも探していたんです。ですが、上海でのビジネスが以前に比べてやりやすくなったというのと、上海には富裕層が多く、欧米人が通うバーなども結構ありまして、そこに割とお客も入って流行っているんですね。今回のような、ある程度エンターテインメント性を持たせた飲食店というのは、やはり所得格差が無い地域では展開が難しいんです。所得格差の余剰の部分に対してエンターテインメントを提供していくのは基本ですから。
——現在の上海の雰囲気は、どんな感じなんでしょう?
大谷:今や上海は東京やニューヨークよりも大きい大都会ですし、色々な面でレンジが広いですね。やはり上海に来るとエネルギーを感じます。
例えば、フェラーリやランボルギーニがアジアに200台ぐらい卸されたとして、9割方は中国に入っていく状況で、そういう国の主要都市であるということからも、なんとなく状況は分かりますよね。他に、上海にある日本の化粧品メーカーだと、1本だいたい3,000円の中国では高級な部類の口紅があったとして、もうその12色をセットで売ってしまうんですよ。
——クレヨンみたいですね(笑)。バラでは売らずに。
大谷:そういうものを買う層が決まっているので、セットにした方が手っ取り早いんですよ。中国では富裕層が3%と言われてますが、それでも日本の人口の3分の1の4,000万人なので、そもそものスケールが違うんです。上海市だけで考えても、商圏人口がだいたい2,500万人なので、その3%だとしても、我々が今回手掛ける規模のハコだと十分に売上が見込めるんです。
既に、昨年の大晦日からプレオープンをしているんですが、手応えは良いですね。「オープンしてしまえばうまくいくでしょう」と建物の所有者も言っていたりして(笑)。
2.
——ロケーションも抜群だと聞いています。
大谷:現時点で、新しく上海に出店可能なエリアの中で、最も良い場所なのではと言われている所です。向こうにいらっしゃる在日企業のみなさんからも、「日本人なのに、どうしてあんな良いところを借りることができたの?」って言われますね(笑)。
上海ROSE
——確かに誰にでも借りられる建物ではなさそうです。
大谷:物件として、最初は日本の化粧品メーカーが借りようとして断られて、次にPRADAが借りようとしてやっぱり断られて、という経緯があったんです。
——厳しい基準があるんですね。
大谷:物件が接するストリートは1920年あたりの物件で、最近はロックフェラー財団が借り上げているところでして、壊される可能性もあったんですが、再開発をする中でさっきの2社が名乗りを上げたらしいんです。ですが、やはり顧客が限定されてしまう商売なので、できればもう少し間口が広いお店がいいということだったらしいんですね。
——たしかに飲食店の方が、間口としては広くなりますよね。
大谷:107年前に建てられた中国政府というか上海市が所有する、歴史的な物件なんです。ここは元々英国の借地だったところで、上海バンド地区、いわゆる「ワイタン」と呼ばれるエリアで租界だったんですよね。
そういう建物なので、限られたお客さんしか来ないお店だと貸す側も名目が立たないらしく、最後にウチと競ったのはイタリアの三つ星レストランだったと聞いています。
——それで選ばれたのはすごいですね。
大谷:武蔵野美術大学が上海市の歴史的建造物保存委員会と提携しているんですね。そこのルートを辿っていったりとか、色々な角度からプレゼンをして、なんとか進出することができました。日本の企業が中国の文化財を借りて進出というのは異例なことのようです。
——相当な政治力が必要そうです。
大谷:確かに、そういう部分は必要だと思います。上海市の共産党の偉い方と政治的な駆け引きもしましたし。ただ、そういう方達は基本的にはもっと大きい規模の事を行っていて、僕らの案件はその中で言えば一番小さい部類のものなので、「そういう小さい飲食店の事で揉めてもお互い得はないでしょ」ということでね(笑)。
——やっぱり賄賂の要求とかあるんですか?
大谷:直接的には絶対ないですけど、なんとなく遠回しにはありましたね。商習慣の違いもありますから。結局は、賄賂を渡さずに済むようにしました。でも、大陸の人との取引というのは勉強になりますね。向こうの人は、ことあるごとに戦いですから良くも悪くも日本人には無い逞しさがありますよね。
——賃料の交渉も大変そうです。
大谷:でも渋谷よりも安いと思いますよ。もちろん、諸々やり取りを経てそういうカタチにはしましたけどね(笑)。
——周りの敷地もお店の土地なんですか?
大谷:そうですね、プールもありますし、テラスの席もあります。
上海ROSE
——建物の内装に関してですが、HPや資料で拝見した際、本や映画で知っている、いわゆる「租界」の欲望蠢くイメージが浮かびました。
大谷:内装プロデュースを蜷川実花さんにお願いしまして、極彩色のそういうイメージになりましたね。基本的には蜷川カラーがよく出ていると思います。
もともとはコンクリート打ちっ放しのスケルトンだったので、内装はイチから作りました。外側は、重要文化財なので手を加えることができないんです。
工事も、日本でいうとだいたいライブハウス1軒施工するぐらいですかね。職人さんの人件費が安いので、日本でイメージするよりも安かったです。
——大谷さん自身も空間プロデュースをされるそうですが、今回、蜷川さんに依頼されたというのは?
大谷:蜷川さんとは世代もけっこう近く、趣味も似ているのでお願いしたという感じですね。イメージを伝えてお願いしてみたら、個人的に信頼いただいている部分もあって、快く引き受けていただきました。蜷川さんが「ヘルタースケルター」でお忙しくなる前から発注をしていたんですけど、多忙の中よくしていただきました。
——具体的にはどのような演出を考えられていますか?
大谷:2階にステージやポール、クレーンがあったりもして、DJやジャズの演奏も可能で所謂クラブっぽい感じになっています。バーレスクを呼んだり、びっくり人間ショーもやりたいですし、今の日本では成立しにくいものを展開する予定です。
——上海のスタッフさんは日本から出しているんですか。
大谷:マネジメントをする香港人のスタッフを日本から一人行かせていますが、それ以外は現地で雇っています。現地スタッフは欧米人が主ですね。
——こういうお店は欧米人が好きそうですよね。
大谷:お客さんの半分ぐらいは欧米の方ですね。でも、お金を落としていくのはやっぱり中国人なんです。特に上海の富裕層って見栄っ張りなので、飲まないのに高いお酒を頼んだりしますよ。そういう事なので、高いお酒がオーダーしたところに運ばれていくのをわざと見えるようにしたりね。会員制のカードも作ろうとしたんですけど、それを作ったらダメなんですよ。お金を払っているところも見えないと意味がないと。
——そういう土地柄なんですね。どれぐらいの売上を見込まれていますか。
大谷:渋谷の宇田川カフェぐらい売り上げれば成立するので、それぐらいは行くんじゃないかなと思います。現在、宇田川カフェには月に1万人ぐらい来店しますからね。
——日本人が中国でビジネスをするのはタフなイメージがあります。
大谷:でも最近は、大陸の人はけっこう日本人とビジネスしたがっていますよ。日本人はマジメだし裏切らないということで。
サービス業や飲食業において日本人が海外に展開する時って、日常的な「ハレ」と「ケ」で言ったら、コンビニやファストフードのようなシステムを持っていって展開する類のケのものが多いじゃないですか。ハレなものである「上海ROSE」に関しては、そういうイメージに対して「見返してやるぞ」じゃないけど、そんな思いもありますね。
3.
——アジアへの進出でいうと、2011年に香港で法人を設立されていますよね。
大谷:香港へは、音楽レーベルの事業で進出しました。10万枚のヒットとなった「クーラー・カフェ」というコンピシリーズがあるのですが、元々座組みを強化するという観点から進出の話しが始まっているんです。
——こういうシリーズで10万枚ってかなりすごいですね。
大谷:3年前に、TSUTAYA六本木店とかだと、年間のCD売上で一位になりましたからね。一年の間、ずっと高止まりして売れ続けたという。
それで、そのコンピシリーズでブラジルの大御所のアーティストに色んな曲をカバーする発注をしているんですけど、その楽曲を処理するのにJASRACで手続きをするとコストがかかるんですね。
例えば、3枚組1,000円とかの輸入盤って、同じ売り場に競合商品のプロダクツとして置かれていますよね。「輸入盤だから安いのもしょうがないよね」では済まされないですし、外資の大手メーカーだと海外から持ってくることもできますけど、弊社みたいなドメスティックなメーカーはそういうものを制作する拠点がないので、「無いのであれば自分で拠点を作ってしまおう」ということで香港に一つ拠点を作ったんです。
現在は、香港盤としてライセンスし、現地の著作権処理団体に処理してもらい香港からの盤として日本に輸入しているんです。そして、そのライセンスはアジア全域に対しても行います。シンガポールやマレーシア等にも卸しています。こうすると原価のコストを抑えられ、日本で制作するよりも半分近く安くできるんです。こういうビジネスモデルの改善にも日々取り組んでいます。
——香港での著作権処理というのは、面倒ではないんですか。
大谷:最初は時間がかかりましたけど、現在はスキームが確立されているのでスムーズです。JASRACにもきちんと確認をとった上で行っていますからね。
CDの曲数に対して幾らなのかという価格競争があると思いますが、その競争にも勝ちつつ高いクオリティのものを提供するというのが、海外に発注することで可能になるんですよ。
——以前から、グローバルでビジネスを行っていたんですね。
大谷:これからは、日本からアジア全域で売りたいアーティスト、またその逆で、アジアから日本で売りたいアーティストのハブとして機能させたりとか、OEMを受けたり等の展開ができればと思っています。
4.
——大谷さんが書かれた本の2冊(『Udagawa café Book』『自分らしく生きるために、「カフェ」を始めたい人への77の言葉。』)を読ませていただきました。音楽レーベルの別事業としては、カフェ等、相当上手くいっていますよね。
大谷:カフェに関してはあくまで副業的な感じだったりもするんで、新店を出す直前まで社員もあまり知らないケースもあったりしますね(笑)。店舗に関しては色んな事をだいたい僕一人で決めて、じゃあ後は全部お任せみたいな(笑)。基本的に「ほったらかし経営」なので、新店をやりたいっていう積極的な意志を持ったスタッフが手を挙げれば、じゃあ作るからやってみればというスタイルです。弊社のコンセプトを理解している人間にやらせるので、基本がブレることもあまりないですし。
——やりたいことをやってるだけとおっしゃられながらも、その根底には完璧なまでのビジネスマインドをお持ちということが伝わってきました。
大谷:意外とちゃんとした内容でしょ(笑)。
——遊びとビジネスのいい感じのバランスをお持ちということで。
大谷:うーん、まぁ事業欲というのは、ホントのところあまり無いのかもしれませんね。商業施設や駅ビルに進出とかは絶対しませんし。本にも、そういう案件を私のところには持ってこないでくださいって、書いちゃってますから(笑)。それでも、相談させてくださいってしつこく来るところもありますけどね(苦笑)。そういう施設だと、主導権がこっちに無いからイヤなんですよ。
——飲食のビジネスの基本をきっちりと書かれていますよね。
大谷:けっこう的を射ていると思いますよ。
——この本はカフェ経営に限らず、色々な業態にもあてはまりますよね。
大谷:ある意味これがフォーマットになればいいなと思います。対象を入れ替えれば、どういうビジネスにも応用できると思いますから。
——そういうノウハウはどこで身につけられたんですか?
大谷:それはもう全部、今まで自分でやってきた中で覚えたことですね。23歳から社長業をやってきましたから。
——一番最初はデザイン事務所だったんですよね。
大谷:そうですね、その後音楽レーベルを始めて。カフェに関しては12年ぐらいやっていますね。
——割と淡々と事業拡大、成長させていっているように見えますが。
大谷:そうは言っても、色んなことがありましたけどね(笑)。今回の上海進出に関しても、オープンまで2年近くかかりましたし、その間はカフェの新店も出していませんから。
——今年の、御社のビジネスのバランスというのはどういう展望でしょうか?
大谷:そういうバランスは特にどういうカタチでもいいんですけど、ただ、最近は社員/スタッフがだいぶ増えてきているので、こだわるトコロはこだわるという引き締めを、今年はちょっとやっていこうかなと思っています。
——スタッフさんといえば、社員旅行を年に4回実施しているらしいですね(笑)。
大谷:全員4回行くわけじゃないですけど、スケジュールのあうどれかには参加ということで。まぁ、僕は4回全部行くんですけど(笑)。
——スタッフの採用においても、「社員旅行に一緒に行って面白そうな人間」というのが選考基準の一つになっているとお伺いしたことがあるのですが。
大谷:(笑)。仕事にせよなんにせよ、元気があってきちんとコミュニケーションがとれるかどうかですよね。なので、一緒に何かをしたときに面白いかな?というのはチェックしますね。
5.
——大谷さんは、ブログもけっこう業界から注目されていますよね。あそこまで書いちゃって大丈夫なの?みたいな(笑)。
大谷:いえいえ、あれでも全然書いてない方で、言えないことばっかりなんですよ(笑)。多分普段思ってること、身の回りで起きていることの2割ぐらいしか書いてないですよ。
生きいてれば凹むこともありますけど、過去のことやネガティブなこと悔やんだってしょうがないし、無理矢理にでも前に進んでいくしかないですよね。生産性のないことにはこだわらず、最終的に少しプラスになるぐらいでやっていくしかないと、普段から思っています。
——今の日本の音楽産業をどう思いますか?
大谷:実際、これだけアーカイブが増えてしまっていて、過去何十年のタイトルがある中で同じことを繰り返して行くのにはもう厳しい状況になってきていると思いますね。素晴らしい作品がたくさん世にでている中で、いまだに「前年比いくら」という部分にこだわり続けるには無理がありますよ。
——アーティストも、キャリアのピークの作品を毎回作り続けられる訳じゃないですもんね。
大谷:それもそうですし、ユーザーにとっても毎回同じ規模で買い続けるというのはツラいですよね。様々なジャンルで出尽くしちゃっている感がある状況なのに、同じ方法でやっていくというのはクレバーではないと思います。データ化が進んで、入手方法も簡単になってもいるので、新しい作品は過去のアーカイブとも競わなければならないわけですから。
——PandoraやSpotifyのような海外の新しいサービスについてはどうお考えですか?
大谷:ウチにもサブスクリプションで聴き放題とかのお話し等よくありますけど、ひとつ言えるのは、コンテンツの商売はこれからますます厳しくなっていくだろうなという事ですよね。本当に良いモノを作らなければ生き残ることができない気がします。
世間的には去年CDが少し盛り返したりして、なんかまた中途半端な状態になっちゃったなと(苦笑)。インフラの部分で、ガラパゴス脱却に少しブレーキがかかってしまったなという気がします。
あと、小売店も統廃合が進んでいるので流通のシステムを改めて考え直していただきたいですね。いつまでも「片方で返品、その一方でバックオーダー」という状況はいつまでたっても効率が悪いですよ。
——課題は山積しています。
大谷:しかし、ウチの場合は基本がレーベル/プロダクションなので、アウトプットのカタチがどう変わっても、やるべき事や本質の部分は変わりません。とにかく良いアーティストと良い曲を送り出すだけですね。
——アーティストの数を積極的に増やしてくというのは?
大谷:そもそも良いと思えるアーティストがいないと単に増やしても意味が無いので、アーティストの数がどうのではないんですよね。
——大谷さん的に、ビジネスとして音楽と飲食だと、どちらが把握できる感じがありますか?
大谷:コントロールができる部分で言うと、飲食ですね。音楽の場合、何が起こるか分かりませんから。飲食店に体調不良とか解散とかはありませんし(笑)。僕の感覚だと、音楽は空気で飲食は水だと思っているんです。水の方がまだ質量が重いですよね。やっぱり空気というのは掴めるものでは無いですから。
とはいえ、お店とアーティストを一緒くたにはできませんし、同じ物差しでは測れません。なので、やはり今後も音楽はメインとしてやっていきます。そこはブレずに、今度の「上海ROSE」も、音楽を含めたエンターテインメントなんですよ。
——音楽ありきの事業展開だと。
大谷:音楽ビジネスは浮き沈みが激しいですからね。弊社に所属しているバンドに対しても、「君らは一時でも幸せな気持ちを共有した存在なので一生面倒見るつもりでいる」と言っているんです。
必然的に波がある音楽ビジネスをやっていく中で、いかに収支を平均化させていくかが僕の役割だと思っているので、だからこその飲食なんですよね。そういうところの意識もきちんとバンドとは話しながらやっています。
音楽だけをやっていると、一時すごく売れたとしてもその後の着地のさせ方が難しいんです。税金を始め、色々考えなければいけないですし。息の長い事業として継続させていくことが、社長としての仕事だと思っています。
——移り変わりの早い業界で、これだけ続いている秘訣を聞いた気がします。
大谷:あとまぁ、モテないことはやりたくないですよね。本にも書きましたけど、洋服なんかでカッコつけるより、もうカフェ持ってる方がモテるだろうって思いましたもん(笑)。弊社も様々なリソースがあって、色んな事をやろうと思えばできるんですけど、そこまでお金儲けに固執してるわけではないですから。
——最後になりますが、当面は「上海ROSE」に注力していく感じですか?
大谷:僕の役割はお店がオープンするまでなんで、オープンした後は現地のスタッフが好きなようにすればいいと思いますよ。以前、大阪にライブハウスとカフェをオープンさせた時も、オープン日に1時間位いただけで、その後は半年ぐらい足を運ばなかったですからね(笑)。オーナーが現場にいて色々言われるのもきっとスタッフもイヤでしょうし(笑)。
——「上海ROSEのオーナー」っていったら、今度はワールドワイドでモテそうですね(笑)。
大谷:そうかもしれないですね(笑)。とにかく、こうやってキチンと目に見えるカタチで実店舗を構えることで現地でも信頼をしていただけるでしょうし、これをきっかけに更に進出していきたいですね。正式オープンは3月1日なので、上海に行くときはぜひ立ち寄ってみてください。