広告・取材掲載

「生である」ライブの優位性を生かしつつ、包括的なビジネスモデルを模索

インタビュー フォーカス

株式会社クリエイティブマンプロダクション 邦楽部 目黒裕一氏
株式会社クリエイティブマンプロダクション 邦楽部 目黒裕一氏

【特集】ミレニアル世代のアーティストが創る新たな音楽シーン

BABYMETAL、[Alexandros]など、多くの日本人アーティストの海外コンサートを手がけ、次世代アーティストのワールドワイドな活躍の場を広げているクリエイティブマン。プロモーターの視点から見た次世代アーティストのライブシーンの変化とは。

2017年3月16日掲載

 

  1. SNSでのプロモーションは飽和状態
  2. 増加する“写真撮影OKライブ”のメリット・デメリット
  3. 演出がライブに足を運ぶ理由の1つに
  4. インタラクティブ性の強いライブが増えていく
  5. 海外アーティスト公演のオープニングアクトを邦楽アーティストが務める意図
  6. プロモーターも専業から兼業になっていく

 

SNSでのプロモーションは飽和状態

クリエイティブマンプロダクション 邦楽部 目黒裕一氏:プロモーションは大幅に変わりましたね。これはみなさんおっしゃっていると思うんですが、「テレビの地上波にのったら数字を稼げる」というような定石は少しづつなくなってきているのかなと思います。

今はウェブでの情報が飛び交っていて、SNSで誰もが個人で宣伝ができる時代なので主流となっていますが、そのSNSも飽和していて、ただ情報をアップしただけではお客さんには届きません。そこから先をどう独自に展開できるか、そこに行き着くまでのプロモーションをみなさん試行錯誤されていますね。

僕らもYouTubeに宣伝を打ったりはするんですが、ライブの動員にどの程度効果があったか、見えづらいのでなかなか難しいです。若い世代はSNSの中では圧倒的にTwitterユーザーが多いので、Twitterだけは外さないようにしつつ、シティポップ寄りのアーティストはインスタのほうが強い等、アーティストによって出し分けはしています。

 

増加する“写真撮影OKライブ”のメリット・デメリット

目黒:日本公演では今まであまりみかけなかったのですが、最近では写真撮影OKのライブも増えてますね。アーティスト側より公認で撮影を認めて「ハッシュタグをつけて宣伝してくれ!」と。これはお客さんも写真が撮れるしアーティストサイドは宣伝になることもあってウィンウィンですね。

ですが、デメリットももちろんあります。撮影してる手が邪魔で見えなかったり、スマホのライトの影響で演出の暗転が作れなかったり、あとアーティストサイドも、クオリティの低い写真を上げないでほしいということもあるので、賛否両論ですね。

でも洋楽や海外公演は基本的に撮影OKなんで、演奏をしてるアーティストにとってはカメラ越しで見られるのも気持ち良くはなさそうですよね。ニュースでもこの間取り上げられてましたが、レッチリのライブのギターソロで、お客さんがギタリストをスマホで撮影してる様子をギタリストが演奏を止めてスマホで撮影すると。現代ならではの光景でもありますね。

目に焼き付けて欲しいという事もありますが、自分だけのオリジナルな動画が欲しいって気持ちを考えると僕自身も考えに悩む所ですね。

 

演出がライブに足を運ぶ理由の1つに

クリエイティブマンプロダクション 目黒 裕一氏

目黒:これはあくまでも僕の個人の考えなんですが、僕としてはアーティスト本人には極力Twitterとかをやらせたくないんです。

アーティストはお客さんのリアクションが見られるから面白いと思いますし、お客さんもアーティストのオフシーンが垣間見えたりして面白いと思うんですよね。でもアーティストとファンってある程度の距離が必要だと思うんですよ。

身近すぎるとお友達感覚になっちゃうんですよね。僕らって夢を売る商売じゃないですか。アーティストを神格化させないと、ライブでの「本人が目の前にいる」っていう感動が半減しちゃうと思うんですよ。

今はAbemaTVさんとかLINE LIVEさん、ニコ生配信さんもそうなんですけど、音質も良くなって自宅でもかなり良い環境で観られるのに、わざわざライブに足を運ぶ理由ってなんだろう? と考えると、憧れのアーティストを生で観られること、プラスアルファでそこに演出が入ってくると思うんですよ。やはり映像だけだと体感できない部分があると思うので。

VR技術が進化すれば空気感もバーチャルで体験できるようになるかもしれないですが、生であるというライブの優位性はなくならないと思いますし、その強みは今後も生かして行かなくてはいけないと思います。

 

インタラクティブ性の強いライブが増えていく

目黒:演出は昔に比べて全体的に派手になってきていますね。機材も良くなってますし、新しい演出をやればやるほど古い演出のコストが下がっていって、そうすると選択肢も広がります。僕個人が非常に好きなのですがDefqon.1のエンドショーは、照明とレーザーと花火が常に音とシンクロして、ひとつのエンターテイメント・ショーを見てるような感じです。

目黒:今、僕たちもVRの導入に着手してるところなんですが、コンテンツを作るところからはそう簡単にできないんですよね。規模と予算とが見合わないので。ですが今後は確実にVRや生中継など、インタラクティブ性の高いライブが増えていくと思います。初音ミクだったら世界同時公演もできますからね。例えば、SEKAI NO OWARIさんのあの世界観にVR技術が追いついてくれば、さらにすごいことをやってくれるんじゃないかと思います。

 

海外アーティスト公演のオープニングアクトを邦楽アーティストが務める意図

目黒:洋楽は日本では市場的に海外と比べるとそこまで大きくないですし、動員数を増やすという理由もあるんですが、アーティスト自身が出演を希望しているケースが多いですね。海外進出を狙ってるアーティストがそこをきっかけづくりにする事もありますし、一度洋楽ファンのお客さんの前でパフォーマンスをして、レスポンスを見つつ、どの国を狙っていこうか見極めたりしています。

海外への敷居は昔よりもだいぶ低くなっていますから、邦楽アーティストから海外公演について相談を受けることもあります。BABYMETALを筆頭に市場ができてきたんでしょうね。Crossfaithも日本では今よりずっと小さいキャパでやっている段階から、海外ツアーを視野に入れて、それを実行してやっています。市場ができてきたことでサイクルが回り始めたというか、やっと僕たちが想い描いていた状況になってきたという感じがします。

 

プロモーターも専業から兼業になっていく

目黒:プロモーターに限らず、専業というよりも、様々な機能を持つ包括的なビジネスモデルが増えていくと思います。マネジメントもプロモーションにアンテナをはっていますし、チケットの発券もしようと思ったら多分誰もができる時代なんですよね。

チケット販売を主体にしている業者さんやCD販売の会社がライブ事業を始めたり、マネジメントを始めていますし、レコード会社とか媒体さんとかもマネジメントを始めている状況なので、どのセクションが何をしてもおかしくない時代ですよね。その中でどこに強みがあるかで差別化を図っていくことが必要なんじゃないなと思ってます。