広告・取材掲載

変わらぬ音楽業界を前進させる起業家たち。「Techstars Music」発起人が語る、音楽系アクセラレーション・プログラムに注目が集まる理由

インタビュー フォーカス

ボブ・モジドロウスキー氏

音楽業界で「スタートアップ支援」の動きに注目が集まっている。急変するビジネスモデルへの最適化と、利益拡大を生む新事業を模索する音楽業界。この現状を改善し、新たなビジネス価値創出を目指すため、世界のレコード会社を始めとする音楽業界の経営者たちは、中長期的に起業家を支援する「アクセラレーター・プログラム」という形に可能性を見出し始めた。

2017年に始まった「Techstars Music」は、音楽業界と投資家を結びつけ、斬新なアイデアや技術を持った起業家たちをコラボレーション形式で支援する、音楽業界を専門にするアクセラレーター・プログラムだ。通常の投資とは違い、音楽業界や投資家からのメンタリングやネットワーキングなどで、業界の課題解決を目指す起業家の育成を多層的に支援し、新規事業や市場の拡大へと導く新しいアプローチだ。

プログラムの発起人であり、マネージング・ディレクターを務めるボブ・モジドロウスキー(Bob “Moz” Moczydlowsky)は、業界の課題解決を探るべく、自らスタートアップを発掘する”世界ツアー”を敢行している。先日来日し、日本の起業家や音楽業界と交流を図ったモジドロウスキーに、Techstars Musicについて詳しく話を訊いた。

(インタビュー・文 / ジェイ・コウガミ)

  1. 今こそ音楽ビジネスへの投資が最適な時代
  2. 求められるのは、音楽業界の課題を解決するスタートアップ
  3. トップクラスの音楽業界関係者やVC400人が集まる「Demo Day」
  4. 音楽業界の市場拡大に向けて意識を変える
  5. 今や、音楽ビジネスはテクノロジービジネス

 

今こそ音楽ビジネスへの投資が最適な時代

――まず始めに、Techstars Musicを立ち上げる以前、どのような音楽ビジネスのキャリアを歩んでこられたのか、教えてください。

ボブ・モジドロウスキー:私はこれまでYahoo!で音楽チームのプロダクトマネージャーとしてキャリアを始め、その後にアーティスト向けのD2Fスタートアップ「Topspin」(2014年にBeats by Dreが買収)で働きました。そしてTwitterで音楽ビジネス事業の責任者を務め、2017年にTechstars Musicを立ち上げ、マネージング・ディレクターとしてアクセラレーターの運営全般に携わっています。常にIT業界の観点から音楽ビジネスに関わってきました。

――Techstars Musicの運営チームはバックグラウンドがユニークと聞きました。どういったキャリアの方々ですか?

モジドロウスキー:私のパートナーでプログラム・ディレクターのジェン・ホールは元アーティストのマネージャーです。彼女はSilva Artist Managementでベックやソニック・ユース、ビースティ・ボーイズなどさまざまなアーティストビジネスで実績を残した後、Techstars Musicに参画しました。彼女はレコチョクなどプログラムに参加するパートナー企業とスタートアップとの橋渡し役として活躍するキーパーソンです。

マット・サンドラーは駐在起業家で、音楽教育のスタートアップ「Chromatik」創業者として2016年に会社を売却し、現在はTechstars Musicでスタートアップのアドバイザーとして投資家とのネットワーキングを支援します。

――IT業界の立場で、どのようにレコード会社を始めとする音楽業界とネットワークを作ってきたのですか?

モジドロウスキー:Topspinでの経験から、アーティストや音楽コンテンツのマーケティングを数多く行うプラットフォームビジネスに携わることができました。その時に、アーティストのマネージャーさんやマーケティング担当者、レコード会社を含む音楽業界の関係者の皆さんとコネクションを作りながら、サービスを成長させた経験が生きています。

――Twitterでの仕事も音楽業界が中心だったわけですね。

モジドロウスキー:Twitter社では、音楽業界との関係構築が主な仕事でした。音楽業界といっても多岐に渡ります。アーティストだけでなく、彼らのマネジメント会社、レコード会社、音楽ストリーミングサービス、ライブ会場、プロモーターなど、音楽に関係のあるあらゆるステークホルダーや企業、クリエイターをいかにTwitterで効果的にファンとコミュニケーションを図れるかの戦略を作ることがミッションの一つでしたね。

Techstars オフィス

――なぜTechstars Musicを作りたいと決めたのでしょうか? 音楽スタートアップを支援する場合、VCという形での支援も出来たと思います。

モジドロウスキー:私はTwitterのような大企業で働いた後、再びスタートアップの世界に戻りたいと思っていました。誰も思いつかないようなアイデアを考え、ゼロベースでプロジェクトを作り、大勢のユーザーのためにサービスを改良していくことが好きなんです。スタートアップには中毒性がありますね。Twitter退職後、今後何をするかを決めかねていました。その時に、Techstars Venturesのマネージングパートナーで投資家のマーク・ソロン(Mark Solon)と出会ったことが、アクセラレーターの立ち上げにつながりました。

――どういった話をしたのですか?

モジドロウスキー:彼とは音楽ビジネスの投資や、音楽業界の課題について何度も議論を重ねてきました。彼は「今こそ音楽のスタートアップに投資する時期じゃないか?」と言ったんです。ですが、私は「一方的な投資はやりたくない。投資するなら、音楽業界とコラボレーションできる方法でやりたい」と伝えたんです。そうした会話がキッカケとなり、音楽業界を巻き込むアクセラレーター方式のTechstars Musicを設立することになりました。

――音楽のスタートアップに投資する時期が熟したと。

モジドロウスキー:音楽ビジネスに携わるスタートアップへ投資するのに、今ほど適切なタイミングはありませんよ。音楽業界のビジネスモデルが、コンテンツの売買から定額制へと移行することで、市場に新たなニーズが生まれ市場が拡大していく一方です。そうなれば、投資機会は格段に増加していくと予想しています。

 

求められるのは、音楽業界の課題を解決するスタートアップ

――Techstars Musicが実施するアクセラレーター・プログラムについて詳しく教えてください。

モジドロウスキー:Techstars Musicは、少数精鋭のスタートアップを世界中から探し出し支援するアクセラレーター・プログラムを年1回開催します。参加するスタートアップ各社には、Techstarsが12万ドルの資金を投入します。この資金はVCと音楽業界から調達しています。そして期間中には、メンターである音楽業界や大手企業の経営者や技術者、そして投資家から、成長戦略やサービス開発のアドバイスを受けたり、資金調達の準備に向けた支援を受けられます。

私たちは、アクセラレーター・プログラムという仕組みが、急激に変化する音楽業界に最適化したスタートアップや起業家には必要だと考えました。過去を遡ってみると、VCと音楽業界の関係は、理想的と呼べるものではありませんでした。ですので、Techstars Musicでは、音楽スタートアップや音楽ビジネスを再定義して、音楽業界の価値をあらゆる分野に最大化する新しいビジネスを、音楽業界とVCと起業家が一緒に作るアプローチを目指しています。

テックスターズ ロゴ

――どのようなスタートアップが、プログラムに参加する権利を得られるのでしょうか?

モジドロウスキー:私たちは、自分たちの起業家支援を次のように説明しています。「Techstars Musicは、音楽業界の課題を解決し、価値を高めるスタートアップに投資します」。ですので、音楽スタートアップだけに投資するわけではありませんよ。音楽業界に新たな価値を提供できるスタートアップであれば、投資の対象です。

――前回は、ビッグデータやAIなどの技術系スタートアップも参加したそうですね。

モジドロウスキー:2017年は、ポッドキャストや人工知能(AI)、クロスプロモーション向けのマーケティングツールを提供するスタートアップを支援しました。いずれも、これまでの定義では、音楽スタートアップではありませんが、現代の文脈では、音楽業界に価値を還元する可能性を持つ企業だと判断しました。

ご存知でしょうが、現代の音楽ビジネスはかつてないほど技術力が求められると同時に、ライブイベントやコミュニケーションの分野など、消費者中心のエコシステムが拡大し続けています。音楽スタートアップをカテゴリー化しようとすれば、起業家のチャンスを潰してしまいかねないのです。

Techstars Music 2017年度参加スタートアップ一覧

――TechStars Musicが考える「音楽ビジネス」とは、具体的にどのような領域でしょうか?

モジドロウスキー:例えば、私たちが興味を持っている分野の一つに「ドローン対策」(アンチ・ドローン)があります。音楽フェスティバルやスタジアムでのライブでは、観客の安全性の確保や、会場運営の効率化が世界的に求められていますが、ドローン対策はその一つのアプローチです。独自の通信技術や無線技術を応用できれば、非公式のドローンの飛行をスタジアム圏内で禁止することもできるわけです。これはもはやセキュリティ・スタートアップの話ですが、私たちは音楽ビジネスにこそ価値創出できると考えます。

このようにTechstars Musicでは音楽ビジネスの定義を広域に捉え、音楽業界に応用するための技術や事業戦略のスケールアップや開発を支援していくので、ユーザーに最適化した、価値の高いサービスを創出する機会が生みやすくできると考えています。

――安全性の向上は、ライブ以外でも、スポーツイベントやカンファレンスなどにも応用できそうです。

モジドロウスキー:その通り。音楽以外にも応用できれば、スタートアップは新しい顧客の確保に繋がり、より魅力的な投資対象に成長できるということです。

 

トップクラスの音楽業界関係者やVC400人が集まる「Demo Day」

――Techstars Musicへの参加は日本からも出来るのですか?どのような選考プロセスか、教えてください。

モジドロウスキー:世界中の誰でもオンラインで応募できる方法と、私たちに直接推薦される場合、私たちのリサーチチームが発掘する三通りの方法があります。候補リストが完成すると、私たちとTechstars Musicでメンターとなるパートナー企業が創業者たちにインタビューします。合格率は1%以下で、厳しい審査です。

最終審査に残った25社は、ロサンゼルスのオフィスでピッチを行い、その結果を踏まえてプログラムに参加する企業を選出します。審査後も、候補企業はパートナー企業とコンタクトを続けることができますので、本プログラムに参加できなくても、将来の事業に有益となるコネクションを構築する機会を保ち続けることはできるようにしています。

――3カ月のプログラム期間中はどういった内容ですか?

モジドロウスキー:プログラムは3つに分かれています。2018年のプログラムは、2018年2月から5月までです。最初の6週間は、メンターたちとビジネス戦略のミーティングを繰り返し行います。その中には事業戦略や市場分析、顧客獲得戦略、資金調達戦略などがあり、多岐に渡るアドバイスから、企業価値の現状を評価する作業です。第2フェーズの6週間は、企業の価値向上と、ビジネスの改良に注力する期間となります。

第3フェーズの6週間は、資金調達に向けた最終準備期間となります。事業計画書、製品ロードマップや損益計算書は魅力的か、5分のプレゼンで伝えきる工夫は十分か。最終日には「Demo Day」があり、企業は投資家や音楽業界の経営者、メンターたちの前でピッチを行います。

――「Demo Day」には世界の音楽業界から経営者クラスのエグゼクティブが数多く集まったと聞きました。レコード会社だけでなく、マネジメント会社、プロモーター、音楽出版、ハードウェア会社など広域な企業が訪れたそうですね。

モジドロウスキー:今年開催した「Demo Day」には、約400人が訪れました。11社のプレゼンを見るために、音楽業界からは200人ほど、100人以上のVCが集まったのです。これは、Techstars Musicと音楽ビジネスへの投資に対する期待の高さを示していると思います。これほどの人数のVCと音楽業界の人が一同に介して、スタートアップと音楽ビジネスについて議論する機会は、世界中探しても存在しないのではないでしょうか。その意味で「Demo Day」は特別な場所で、開催できたことを嬉しく思います。

「Techstars Music」Demo Day

――プログラムに参加したスタートアップとは、期間終了後も、良好な関係を続けていると聞きました。

モジドロウスキー:私たちが所属するTechstarsは、世界レベルで起業家向けのアクセラレーター・プログラムと投資活動を行うグローバル・ネットワークです。そのため、私たちが提供するのは、一時的な経営支援ではなく、Techstarsが構築してきた5000人以上の専門家たちのネットワークと起業家たちをつなぎ、スタートアップがあらゆる側面で成功するための継続した機会創出です。

ここで云う専門家たちとは、世界各地で活躍する大手企業やスタートアップコミュニティ、音楽業界やエンターテインメント業界の第一人者たちで形成され、経営者から、テクノロジスト、投資家、ビジネスコンサルタント、弁護士などが世界中に点在しています。

Techstars Musicの13週間プログラムが終了した後も、スタートアップはパートナー企業やメンターたちとのコネクションを活用してビジネスを成長させる機会に恵まれるのも、参加するメリットです。私たちはこの関係を「Techstars for Life」と呼んで、スタートアップの支援を続けます。

例えば、世界中のTechstarsアクセラレーターの卒業生だけが参加できる「Founders Con」という恒例イベントがあり、ここでは世界中からの企業やVCが集まり、今後の事業計画や将来の投資の機会について相談できる2日間のイベントを開催しています。Techstarsの持つVCと音楽業界とのコネクションとマッチングこそが、創業者たちの可能性を広げてくれます。

――音楽業界の経営者たちは、どのような課題が現実問題として議論しているか、世界の事情をシェアしていただけますか?

モジドロウスキー:具体的な問題の一つは「アーティスト・ディスカバリー」です。音楽ストリーミングの時代は、コンテンツはこれまでにないほど充実しましたが、アーティストのレコメンドや新人の発掘が一層難しくなり、それに伴うファンベースのマネタイゼーションもこれまでとは異なる手法が求められています。また、ライブイベント市場においても、グッズやドリンクの購入、eコマースとの連携、チケットのID承認、スマートフォンの活用など、現状の方法はファンにとって不都合が多いものばかりで、ビジネスの機会を損失しています。

――新しい音楽ビジネスの価値を創出するスタートアップや起業家、テクノロジストが、求められているというのが現状ですね。

モジドロウスキー:間違いの無いように言っておけば、私たちは次のSpotifyを探しているわけではありません。私のように毎日Spotifyを使うヘビーユーザーは世界中にいますが、一方で私の娘はまだ10歳ですが、自宅ではAmazon Echoに「Alexa、ジャスティン・ビーバーをかけて」と話しかけることが、彼女の音楽サービスなのです。つまり、同じ音楽ストリーミングでも家庭内で年代によって使うサービスが変わるんです。

ですので、世界の音楽ビジネスの波が音楽ストリーミングに向いているからといって、私が投資対象を探す時は、収益性の高さではなく、あらゆる可能性を探ります。もしかしたら、定額制ビジネスの中にポテンシャルの高いスタートアップがあるかもしれませんが、それ以外でも、音楽業界に価値があると感じたスタートアップは、プログラムに参加してほしいと思っています。

 

音楽業界の市場拡大に向けて意識を変える

――スタートアップへの支援が、音楽市場を拡大するという考え方に音楽業界やVCが意識変化していかなければなりませんね。

モジドロウスキー:大切なことは、音楽業界が抱えている壮大な課題を解決し、より大きなビジネスを生み出す可能性のあるスタートアップに投資することです。音楽企業に投資するだけでは新規事業の拡大は実現できません。

例えば、画期的な手法でファン同士のエンゲージメントを作るコミュニケーション・サービスのスタートアップがいるとしましょう。ですが、そのスタートアップはマネタイゼーションの方法まで到達していない。ですが、彼らのピッチはとても未来的で、ファンにとっても非常に魅力的に感じるモノだったとします。私たちには、このようなスタートアップからの提案が数多く来ます。

しかし、これらの多くは、音楽好きな創業者によって生まれたアイデアで、彼らの友人を満足させるほどスケールの小さいサービスか、すでに市場に展開しているプラットフォームの追加機能と同じ価値しか持たないサービスだったりするのです。後者の場合でしたら、どこかのプラットフォームに買収されて統合される可能性もあるかもしれませんね。ですが、これらのスタートアップのアイデアは、私たちの投資の対象には当てはまりません。

――今回のプログラムでは、日本からレコチョクが参加したことによって、国内の音楽業界ではアクセラレーター・プログラムへの注目が高まっています。具体的にメンバー企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか?

モジドロウスキー:メンバー企業は、資金の提供によるスタートアップの株式取得に加えて、プログラム終了後もスタートアップの最新情報を把握できたり、Techstarsの関連イベントへ参加できるなど、一般的な音楽企業が参加することができないプログラムに参加できる優位性があります。こうした継続したネットワーク構築の機会を作ってきたこともあり、第一回目のプログラム後には、世界各地の企業からパートナーとして参加したいとコンタクトがありました。

Techstars Music 2017年 パートナー企業一覧

――Techstars Musicが代表的だと思いますが、スタートアップを支援し、VCと音楽業界を結びつけるプログラムによって、音楽ビジネスへ出資する動きに変化は生まれていると感じられますか?

モジドロウスキー:他業種に比べて、音楽ビジネスはマネタイゼーションの問題などが存在するため、魅力的な投資対象でないことは事実です。成長するためには、より多くの資本が必要です。そのためには、今後もVCと音楽業界の連携を強めていくことが、変化につながるキーだと考えています。

Techstars Musicが拠点をロサンゼルスに構えていることも、理由があります。サンフランシスコやシリコンバレーとは違って、ロサンゼルスには音楽やエンターテインメント・ビジネスの拠点が数多く存在しており、そうしたコミュニティの中から、徐々に音楽ビジネスへの投資価値や将来性に期待する声が高まってきていると実感できるのです。

また、Techstarsがシリコンバレー以外の世界各地でアクセラレーター・プログラムを実施してきた実績も、グローバルレベルの音楽ビジネスへの投資機会を作ろうとする活動に反映されています。

 

今や、音楽ビジネスはテクノロジービジネス

――Techstars Musicが目指すアクセラレーター・プログラムにどのような将来像について教えてください。音楽ビジネスへの投資を推進するために、何が必要だとお考えですか?

モジドロウスキー:私たちは、音楽業界の問題を解決するアクセラレーターとして、あらゆる面で世界一の存在になることを目指しています。そのためには、活動の規模をグローバルレベルに拡大することが、更なる投資への関心を促すと考えます。

例えばパートナー企業には、今回日本からレコチョクが参加したように、世界各地からレコード会社やマネジメント会社、テクノロジー会社が参加し、数多くの経営者や投資家がメンターとして加わってくれることで、プログラムのグローバル化を推進します。

参加するスタートアップも、グローバル規模に拡大することが目標です。今年のプログラムに参加した企業11社の内、6社はアメリカ以外の企業だったのです。こうした結果を残すことで、徐々に世界各地のVCや大手IT企業の中から、音楽ビジネスへの投資に興味を示す人が増えることに期待しています。

――最後に、日本では、音楽ビジネスへの投資が海外に比べて活発に行われておらず、音楽業界に新しいビジネスをもたらすスタートアップが生まれる機会が多くありません。このような状況を日本の音楽業界はどう改善できるか、アドバイスがあれば教えてください。

モジドロウスキー:日本は、音楽ビジネスを拡大させる様々な要素を有する魅力ある音楽市場です。特に、ファンベースのマネタイゼーションは、他国の市場とは全く違う方法で成功していますよね。さらにファンが喜ぶサービスやプロダクトを作れば、音楽ビジネスの価値を拡大させられると思いますよ。

音楽業界に携わる人は誰もが、現代の音楽ビジネスはテクノロジー・ビジネスであり、あらゆる側面にテクノロジーを理解できる人材が必要なこと、そして定額制ビジネスへの移行が音楽市場を拡大する可能性であることに気が付いたのです。コンテンツのマネタイゼーションやファンとのインタラクション、新人発掘など、これらは全てテクノロジーによって解決できます。

日本の音楽市場は、定額制ビジネスが定着するまで、もうしばらく時間はかかるでしょう。ですが、その時代が来た時は、起業家たちによって今までとは違う構造の音楽ビジネスが生まれ、音楽市場は拡大できるはずです。

「Techstars Music」ボブ・モジドロウスキー


プロフィール
jaykogami
ジェイ・コウガミ
デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長

音楽ビジネスとデジタルテクノロジー専門メディア「All Digital Music」を立ち上げ編集長を務める。「世界のデジタル音楽」をテーマに、音楽とデジタル・エンターテイメントを取り巻くテクノロジー、ビジネストレンド、音楽スタートアップなどに特化した執筆・取材・リサーチ活動を行う。音楽ビジネスジャーナリストとして、「Sonar+D」(バルセロナ)や「MUTEK」(モントリオール)など、海外の音楽カンファレンスや業界イベントを現地で取材するなど、グローバルな視点から、クリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまで「WIRED.jp」「オリコン」「Real Sound」「BLOGOS」「ワールドビジネスサテライト」など、オンラインメディアや経済メディアでクリエイターから経営者、起業家までの幅広いインタビューや、音楽ビジネスやテクノロジーに関する寄稿記事を手がける他、業界向けの講演や、企業コンサルティングを幅広く行う。
All Digital Music
Twitter
Facebook