Music Allyが日本でのサービスを開始、ストリーミング時代に求められるデジタル・マーケティング戦略とは
イギリスを拠点にデジタル・ミュージック・ビジネスを展開するMusic Ally(ミュージック・アライ)が、今年2月に「Music Ally Japan」を立ち上げ日本でのサービスを開始した。
同社は、17年にわたる経験から培った知識を活用したデジタル・マーケティングを専門に、世界各国のメジャーおよびインディーズレーベルやマネジメントなどの音楽関連企業、さらにアマゾン、Spotify、グーグル、フェイスブックなどにサービスを提供している。また、音楽マーケティング・カンファレンス「Sandbox Summit」も定期的に開催している。
ストリーミング時代のグローバル展開において不可欠となったデジタル・マーケティングに注目が集まる今、Music Ally本社CEOのポール・ブリンドリー氏にお話を伺った。
日本用にアレンジされたトレーニング・プログラム
今年2月にサービスを開始した「Music Ally Japan」では、世界の音楽ビジネスに関するニュースマガジンやレポートを配信するほか、デジタル・マーケティングのノウハウを、オンライン動画でトレーニングするプログラムを提供する。
イギリス以外の国に対して提供しているプログラムを日本用にアレンジしており、配信サービスごとの効果の高い設定方法など、観ればすぐに取り入れられる内容になっている。
そして先日、日本第1弾となるトレーニング動画「YouTubeにおける成功 – アーティスト・チームのための戦略帳」の提供が開始された。この動画では、YouTubeの基礎知識から、「プレミア公開」などの新機能、多くのユーザーに観てもらいやすい動画の要素、説明欄の使い方、最適な設定の方法など、総括的な内容を1時間にわたって解説している。
今後は、Spotifyやフェイスブック、インスタグラムといったプラットフォームのトレーニングや、最新のマーケティング事例、データ戦略なども紹介していく。
日本でサービスを展開するにあたり、「大事にしているのは、ただノウハウを提供するだけではなく、デジタル・マーケティングのスキルを上げてもらい、お互いに学び、成長し合うことで密接な関係を構築すること」と語り、さらに「トレーニングだけではなく、双方向の関係を結ぶことによってお互いメリットが得られると判断した場合には、クライアントごとに柔軟な対応をしていきます」とポール氏。
日本におけるデジタル・マーケティングの課題
また、日本のクライアントにサービスを提供する中で、デジタル・マーケティングの事例を知る方法がわからないこと、日本の音楽を海外に輸出していく方法が課題として挙げられたそうだ。
「やはり皆さんが知りたがっているのは成功事例だと思います。この事例をポジティブに伝えていくことが我々の役割でもあります。インド、南米、中国などのアーティストが世界中で聴かれる今、良い音楽を作ることも大事ですが、それを正しく広めるための手段を知り、より多くの人に聴いてもらうことが最も大事な時代になってきています」と、デジタル・マーケティングの重要性を力説する。
なお、同社は毎年、年末にキャンペーンの成功事例をまとめたレポート「Sandbox」を配信しており、日本でも同様にレポートとして配信する予定となっている。
ストリーミング時代に求められるスキル
さらにポール氏は、変化しているアーティストとレーベルおよびマネジメントの関係について、マーケティングが鍵を握ると語る。
「今やアーティストはSpotifyと直接取引することもできる時代です。今まではレーベルやマネージャーなど分業が進んでいましたが、オンラインではそういった境界がどんどんなくなっていくので、デジタル・マーケティングのスキルがあるかないかがますます重要になってくると思います。オンラインではデジタル・マーケティングのスキルに長けた人たちが成功を掴んでいますし、今後レーベルやマネージャーなどが付加価値を発揮するためには、そのマーケティングで差をつけていく必要があります」
また、デジタル領域であっても、最も重要なのは人やクライアントとの繋がりだという。
「我々はデジタル・マーケティングについて多くの経験を持っていますが、それはヨーロッパやアメリカでの事例が多いことは事実です。例えば、中国ではあらゆることが違っているので、これまで積み重ねたノウハウが通用しないこともあるでしょう。しかし重要なのは現地の人と関わり学び続けることです。
お互いに学び、双方向で情報を提供し合い、ローカルマーケットを知る人たちといかにコネクションを作れるか、いかに強い関係を築けるかというのが、我々にとってもすごく大事なことです。我々のサービスのベースになっているのはこういったコネクションなので、それはやり続けなければならないと思っています」
なお、近日中には中国にて、Music Ally Chinaもローンチ予定のため、今後は中国に関する情報も充実しそうだ。
最後にポール氏は、「一番伝えたいことは、新しいテクノロジーをポジティブに捉え、恐れずに積極的に取り入れていくことが大事だということです。本来、新しいことに取り組んでいくことはとても楽しいことですから、是非、我々と一緒にチャレンジして頂けたら」と音楽利用者・権利者双方にメッセージを送った。