第18回 根本 要 氏
スターダスト・レビュー(VO/G)
今年でデビュー20周年をむかえるスターダスト・レビュー。前々日には一日10時間で100曲を歌いきるという前代未聞の「つま恋100曲ライブ」を終えたばかり。その疲れを微塵も感じさせず、根本氏のマシンガン・トークはとどまるところを知りません。これまで好きなことばかりやってきたし、仕事が楽しくてしょうがないと語る根本氏。日本屈指のライブバンドとして精力的に活動を続けるスターダスト・レビューの秘密に迫ります。
プロフィール
根本 要(Kaname NEMOTO)
スターダスト・レビュー(VO/G)
1957年5月23日生まれ。A型。埼玉県出身。
1981年、スターダスト・レビューのメンバーとして「シュガーはお年頃」でデビュー。以来37枚のシングル、25枚のアルバムをリリース。2001年でデビュー20周年を迎える。2000年4月から2001年4月には年間100公演ツアーを敢行、2001年8月4日には20年間のライブの集大成として、朝10時に開演し、夜8時までの10時間で100曲を演奏するという前代未聞の野外ライブ「つま恋100曲ライブ〜日本全国味めぐり(お食事券付き)」を成功させる。また、個人としてもラジオやテレビでレギュラー番組を持ち、幅広く活躍中。
- 「日本のグレートフル・デッド」を目指せ!
- ライブもCDも両方大事!!
- 伝えるものが見えないと、いい歌は歌えない・ポリシーは「高い音楽性と低い腰」
- ミュージシャンの糧は日々労働(ライブ)!
- 中2の禅寺修行で悟りをひらく──「人生引き分け主義」
- 前代未聞の練習好きバンド!? 日々練習で妥協はなし!
- 次はもっといいものを…いつも次作が「最高傑作」 ──そしてライブは最高の「ご褒美」!
- やりたいことをやらせてくれる最高のスタッフと、 支えてくれる大人のファン
- 歌ってるときは休んでる?!ボーカリストの奥義を究める
- 売れなくても音楽を諦めない ──音楽をやりたいからずっと続けられる
1.「日本のグレートフル・デッド」を目指せ!
−−まずは「つま恋100曲ライブ」、おつかれさまでした!おとといということでさぞお疲れかと思っていたのですが、昨日もお仕事されていたとかで…そのパワーには圧倒されるばかりなんですが、この「100曲ライブ」の企画を最初に聞いたときはほんとにたまげたというか…。限界に挑戦、とかそういう意図があったんでしょうか?
根本:いや、そういうことは考えたことなくて、いつもリハーサルとか12時間ぐらいやってるし、もう昔からね…あのころはお金なかったから時間区切ってリハスタ借りてましたけど、今は一日ロックアウトできるようになったから。だいたい1時から始まって、遅いときは11時くらいまでやってますから。そんな感覚で僕は今回も考えたんで…
−−ということは、「これは自分でやれるだろうか」とかそういうレベルじゃなくて、普通にやれちゃうと思えることだったんですね。
根本:やれるとかやれないとかは考えたことなくて「だれもやったことないんだったら、やれなくても大丈夫だな」とは思いましたね(笑)。だめだったらやめても、きっと「無理でした」ですむんだろうし…まあある程度は「できるだろうな」っていう自信はありましたけどね。リハーサルでいつも70曲ぐらいは歌ってるってこともありましたし。でも炎天下だから、っていう心配は多少ありましたよ。
−−すみません、僕らは行ってないんですけど、やっぱり暑かったですか?
根本:それはもう暑かったです!浜松は39度くらいになったっていう話だったんで…
−−東京はわりと涼しかったんですけどね。だから「つま恋も平気かな?」って思ってたんですが…
根本:いやもうすごかったですよ。200…300人ぐらい倒れたって聞いてますから。
−−やっぱり大変だったんですね。
根本:僕はね、今回のコンサートはいちばんなにをしたかったかっていうとね…グレートフル・デッドっていうバンドの存在を僕らはずーっと気にしてまして…音楽性とかそういうのは違うとは思いますよ。まあ今でこそジェリー・ガルシアがいなくなって活動は休止状態ではありますけど…ほかにもフィッシュとかデイブ・マシューズ・バンドとかアラバマとかああいうカントリーロック系のバンドもそうですよね…アメリカってチャートとかまったく関係なく、ライブバンドがものすごいたくさん人集めるじゃないですか。無名のバンドが。結局、「このバンドを見に行こう」っていうのは、「このヒット曲があるから」とかじゃなくて、「あのバンドで一日楽しもう」とか、そういう感覚があるんだと思うんですよ。それが単純に、お子さまが楽しむんではなくて、自分で働いたお金でチケットを買うような、いい大人たちが来るコンサートですよね。
−−生活の中にコンサートがあるんですよね
根本:デッドヘッドもそうですよね。…まああいつらは仕事休んでコンサート行っちゃうのかもしれないけど(笑)。僕は、自分が40過ぎて、どんどんロックが高齢化してるような気がするんですね。僕らのずっと前の世代、たとえば(内田)裕也さんたちの世代とかは、必ずしもロックはポピュラリティを持っていなかったと思うんですね。それがいつのまにか歌謡曲まで浸食するようになって、ある種のポピュラリティを持つようになった。でもそのポピュラリティを持つ人たちっていうのはほんの一握りで、たいていはテレビにも出られないし、CDもそんなに売れない。僕らもその中のひとつだったと思うし…でも、20年やっている中で、それでも基盤がなんとなくできちゃって、去年の4月から今年の4月まで100公演やってたんですよ。それでだいたい17〜18万人のお客さんが来てくれて…それで「俺たちって意外とスゲェんじゃないか?」って思って(笑)。ステージから見るとまあおじさん、おばさんが多いわけですよ。それがみんな同じようにステージを楽しんでくれてるのを見て、17万人は無理だとしても、こういう人たちを一気に集めてみたいな、って思ったんです。
(グレートフル・)デッドのライブとか見てると、もちろん若い人もたくさんいるけど、ほんとにおじさんおばさんたちがウワァ〜ッって盛り上がってるでしょ?ああいう雰囲気っていうのは、なかなか日本では作れないからね。GLAYには20万人集まるけど、それは高校生とか大学生とか、ものすごいアクティブに動ける人たちですよね?ふだんの生活の中で、働いて、ストレスため込んでるような人たちが、なかなか音楽のコンサートに足を運ぶっていうのは少ない。でも少ない中で、スターダスト・レビューっていうのは、そういう人たちが集まりやすいような状況を作っているような気がしたんですよ。
−−こういう企画はおそらく日本初なんじゃないでしょうか。
根本:…そうですね…例えば浜田(省吾)さん、(山下)達郎さん、小田(和正)さんとかも、同じような(大人の)お客さんをたくさん集めていらっしゃいますけど、みなさん大御所ばかりじゃないですか。だからそんなにバカなことはできないでしょ。ポジション的に許されない(笑)。
それとね、僕らの場合は業界の鬼っ子じゃないけど、20年やってても、業界の系譜みたいなところに僕らは絶対入らないんですよ(笑)。なんで誰も入れてくれないんだろうかって思うんだけどね。よくそういうファミリーツリーみたいなの作るじゃないですか。はっぴいえんどや(サディスティック・)ミカ・バンド、シュガーベイブがいたりね…そういう中に、僕らの名前って見たことない。僕らっていうのは、いつもそういう業界のハミダシ者みたいな感じで、自分たちの存在もよくわからない。でも20年もやってきちゃったもんだから、じゃあ誰も説明してくれないんだったら、自分たちで説明しようかなって思ったのもあります。
−−スタレビっていうのは、音楽的にもすごくポップで、ある意味王道を行くロックで、いちばん真ん中にいるような気もするのにね。
根本:やっぱりヒット曲が出ないっていうのは、そういうところに入れないいちばんの理由なんでしょうね。世の中で目立つためには、ものごっついマニアックか、ものすごいポピュラリティを持っているか、どちらかだと思うんですよ。ところが、これは日本の音楽業界の一番の弱点だと思うけど、この二つの間が全くなくなっちゃう。だから今はシティポップスなんて言われていた人たちは全滅ですよね。はっきり言って。まあ今はまたバンドがたくさん出てきていて、ロックバンドはそうやって熱を持っていろいろやっていくんだろうけど、ある程度おしゃれな音楽を追究してきた人たちっていうのは、CDもそこそこ、ライブもそこそこってやってきたから、今はそれが両方沈み込んじゃってると思うんですよ。
僕らは一見シティポップスみたいなことをやっていながら、僕の中にもすごいロックな流れがあったり、バンドだからもっといろんなことやりたいって言ってアカペラやったりとか、ショーみたいにコンサートを作っていったり…とにかく自分たちが広げた風呂敷は全部自分たちで責任持とうと思ってやり始めて…だから、あれもある、これもある、それもある…がゆえに、どこにも所属できなくなっちゃったんだと思うんですよね。
だから自分では、とにかく僕らの自分たちのポジションを作りたかった。となるとやっぱり「ライブ」だろうな。泣かず飛ばずで何のヒット曲もなく、17万人も集められる人たちって言うのは僕らしかいないと思うんですよ。
−−スタレビか、グレートフルデッドか、ですね。
だからそれをちゃんと自分たちの代名詞としてもいいかもしれないし、やっぱりライブバンドなんだと。どうしてもライブバンドっていうと、血湧き肉躍る的な、それ〜〜っていうのが多いのかもしれないけど、でもおじさんたちがちんたら楽しむようなコンサートもいいなって思ったからなんです。
2. ライブもCDも両方大事!!
−−資料を見させていただくと、ライブは通算1300回以上、アルバムは25枚目ですよね…すごいですね。
根本:でもね、その25枚のアルバム全部足しても、宇多田ヒカルの1枚に勝てないようなもんなんですよ(笑)、全部足してもね。でも、僕らが700万とか500万も売るのはありえない。これから時流に乗ろうとも思ってないしね。僕らは今聴いてくれてる10万15万の人たちで十分なんですよね。なぜなら僕らのコンサートにはちょうどそのくらいの人たちが見に来てくれてるから。スターダスト・レビューってバンドのキャパシティってもんがあって、もちろん今の数字がマックスだとは思ってないし、いつか50万になったらいいなと思ってるし、もしかしたら10万に減るのかもしれない。わからないけど、今できるキャパシティを知っていれば、そう無謀なこともしないし、急激に減ることもないのかなって気がするんですよね。
−−そうやって自分たちのベースをきっちり作られているからこそ、今回メジャーを離れることができたとも言えますね。
根本:そうですね。
−−自分でやった方が思い通りにできますもんね。
根本:うん、そのほうがおもしろいなと思いますよ。
音楽業界は売れないとだめなんですよ。でも「売れないと」って言いながら、売れた人なんて何人もいないわけですよ。100組デビューして、翌年残れるのは2組、3組でしょ?ほんとに数パーセントですよね。じゃあおまえらはその中に入れるのかっていうと、入れなかったんですよ、ずーっと。20年入ってこなかったわけ。だからそこの数パーセントになることを望むよりは、じゃあそこからはみ出た人たちはなにをやるのかなって考えていっただけですよ。
音楽を作るのには単純に三つの形があると思うんです。ソロ・アーティスト、ユニット、バンド。バンドと、ソロ・アーティスト、ユニットの二つとの違いは何かって言うと、全部家内制手工業だから。バンドは売れようが売れまいが、できるんですよ。ところがソロ・アーティストもユニットも、バンドつけてライブやるのもCD出すのも金がかかる。僕らは5人いたら全部できるから、活動はできるわけですよ。100人しか入らないところで100人のために演奏しようと思ったら、僕らが5人いたらそれでできる。ソロ・アーティストが100人のために演奏しようと思ったら、リハーサルはやらなきゃいけないわ、人は呼ばなきゃいけないわ、たいへんなことになりますよね。何で僕らがバンドという形をとっているかというと、ライブをやりたいから、ライブをやりやすいからなんです。
−−音楽をやるために、なんですね。
根本:それだけなんです。僕らはただ、音楽がやりたいだけで、売れてる売れてないは二の次、三の次なんです。でも、その音楽をやれる状況は自分たちで作らなくちゃいけないから、バンドだったら、売れてなくても作れる。
−−音楽が好きでやっていたら、気がついたら1300回もやってたって感じですね。
根本:そうかもしれないですね。
この間の「100曲ライブ」では15,000人集まってくれましたけど、そんなことはふだんはなくて、僕らが1万人以上集めたのってまだ3回しかないんですよ。いつもはコンサートはその県のいちばんでかいところでやっていて…だいたい2,000人クラスですね。2,000人は集められるんですよ。だけど、その町で10万枚はやっぱり売れないわけですよ。日本全国で50万のアルバムを売るのは難しいけど、その町で1,000人ぐらいは集められるんですよ。だから、目標が立てやすいじゃないですか。300人ぐらいから始まって…300人が600人、600人が800人になって、時には減るときもあるけど、それがいつのまにか1,800人ぐらいまでに増えていくわけですよ。これはすごいなと思っていて、でもアルバムはいつも15万枚(笑)。相変わらずそんなもんで。
でもこれはしょうがないですよ。アルバムは口コミで売れていくこともあるけれど、やっぱり宣伝力っていうのがデカイじゃないですか。それなりに宣伝費かけてもらってこのぐらいで、それ以上でも以下でもないんだと。でもライブは、いいライブをやれば次も来てくれるんですよね。そういうのがあったんで、アルバムの売上が15万が10万になったことよりも、ライブのお客さんが例えば1,500人が1,300人になったときのショックの方がムチャクチャでかいですよね。「あれぇ〜?俺たちって……」って思っちゃいますもんね。
−−現在の状況をありのままに受け止められているメンバーの方がいて、スタッフの意図とも一致していて、すごく自然な環境にあると思うんですが、今回の独立は事務所も変化あったんでしょうか。
根本:ええ、事務所も独立しました。こういうことを考えたんですよね。僕らって、1ツアーだいたい17万人ぐらい集められるんですよ。でもアルバムは15万ぐらいしか売れないわけ。ということは、2万人はアルバム聴いてないで来てるわけ。それ悔しいじゃないですか。アルバムのツアーなんだからアルバムくらい聴いて来いよって(笑)。それはアルバムがよくないのかライブがいいのかわからないけど、流通の問題だと思うんですよ。つまり、今はインターネットとかでも買えるようにはなったけど、アルバムは基本的にCD屋でしか買えない。ところがチケットはいろんな方法で買えるんですよね。プレイガイド行くことも、電話で予約することも、コンビニで引き替えることもできる。9時から5時、あるいは10時から6時のCD屋さんと比べて、24時間のコンビニでチケットがとれるんだったら、そっちのほうが絶対買いやすい。だったらそういう流通にのっけたらどうかなと。
3. 伝えるものが見えないと、いい歌は歌えない・ポリシーは「高い音楽性と低い腰」
−−じゃあ今が一番好きなことができる状況になってきたわけですね。
根本:そうですね。ほんとにおもしろいですよ。まだやってみたいことがいっぱいありますよ。だいたい日本の音楽業界でのいちばんの指標っていうのは、おそらく「オリコン」と「テレビ」だと思うんですよ。ところがこの二つに出ない人たちっていうのが、わんさかいるはずなのに、そういう人たちのことがどうでもよくなっちゃってるんです。でもほんとは彼らにも一つ一つポジションがあるわけで…ここに出られる人は幸せで、ここに出られた時点である程度約束されてるっていうか…僕らだって決して「オリコン」にのらない訳じゃないけど、20位くらいに入ったことはないし…あ、アルバムが2位になったことは何回かありますけどね。結局僕らが僕らであり続けるためには、その二つはわりとどうでもよくなってきちゃって、現実に僕らは15万の人たちがアルバムを聴いてくれて、17万の人たちがライブに来てくれる。これこそ財産だな、と。人がそれを評価しようが評価しまいが、僕らはそれ以上でも以下でもなくて、「これが僕らだ」って。
−−ファンとの結びつきが強くてコミュニケーションが図れてるから、それは十分に納得できますよね。
根本:そうなんですよ。テレビカメラに向かってなかなか歌えない自分が20年いて…昔「夜のヒットスタジオ」に出してもらったことがあって、当時はお化け番組だったわけ。それで当時の事務所の社長から「明日から人生変わるような歌を歌ってこい」って言われたんだけど、「社長、そんな歌俺が歌えるわけないじゃないですか」って俺は言ったのよ(笑)。今日歌った歌より明日歌う歌をもっと良くするようにはできるかもしれない。でも今日が人生で一番すごい歌だ、なんて俺には絶対無理だ。ましてやそれがカメラの前で、なんて無理だって。「カメラの前には何千万という人がいるんだぞ」って言われても「でも俺には見えない。だったらここに50人でいいから、50人呼んでくれた方が、俺はよっぽどいい歌が歌える」って。それが「歌」っていうものの結論なんでしょうね。伝えるものがないと、歌を歌えないんですよ。「伝わった」という感覚がないと、いい歌が歌えないんです。ライブの何が好きかって、やっぱり拍手なんですよ。
−−そのライブも2時間半以上全力投球でやるわけでしょ?それがすごいですよ。
根本:そうですかね?ほら、無理してやろうとは思ってないから。例えばコンサートっていうのは、20曲出してきて、その中から曲を選んでいったら、10曲じゃ終われないわけですよ。あれもやりたいこれもやりたい、あれもしゃべりたいこれもしゃべりたい…ってやってくると、気がついたら3時間になっちゃう。
−−ライブのDVD見ましたけど、足もめちゃくちゃ上がってますよね(笑)。40代であの足の上げ方は何なんですか(笑)。しかもアンコールぐらいの時間に。
根本:今回100公演ではスタッフに禁止されてたんだけど、バック転とかやったりしてて、ジャニーズ・シニアなんて言われてね(笑)。
バック転も踊りも、僕らがACDC見たり、子供ばんど見たりして、彼らのライブを見てムチャクチャかっこよかったし、何でこんなに楽しいんだろうって思ったところから来てるんですよ。ロックバンドってスカしたのもあるけど、楽しませようっていうスタンスできたアーティストって言うのはやっぱりすごい楽しいんですよ。それをやりたいんです。マイルス(・デイビス)のインタビューで、「何でアーティストが観客にサンキューっていうのかがわからない」ってコメントがあるんですよ。「今日の俺はこれだ。これがすべてサンキューなんだ」って。マイルスみたいな天才はそれでいいんですよ。でも僕らみたいな凡人はやっぱり一曲ごとにありがとうって毎回言うんですよ。僕らもある種エンターテイメントだし、子供の頃にフランク・シナトラとかトム・ジョーンズ・ショーを見て「何でこんなにこの人たちはおもしろいんだろう」って思ってた、それが僕らのライブの原点にあるんですよ。音楽だけでなくて、音楽を使ってお客さんとコミュニケーションしていく。
−−音楽だけじゃなくて、そのほかの要素も含めたエンターテイメント性というかショーマンシップというか、そういう風に構成してるわけですよね。
根本:そういうのって、意外と日本人は不得意なのかもしれませんね。僕らは別にそんなこと考えずに、やりたいからやってきた。そういうステージを見せてくれた東京おとぼけキャッツにしても、ウシャコダっていうバンドにしても、僕らに見せてくれてたんですよ。かっこよかったわけですよ。音楽の質は高いし。僕らのキャッチフレーズに「高い音楽性と低い腰」っていうのがあるんですけど(笑)、威張ったってしょうがないんですよ、ミュージシャンなんて。やっぱりそこに共鳴できる何かがあるからこそ、お客さんは楽しんでくれる。また自分でもそれが楽しくてしょうがないんでしょうね。
−−音楽性はものすごい高いのに、そういうところで損してると思ったりしませんか?存在自体が楽しい雰囲気だから、本来もっと注目すべき音楽性にスポットが当たってない気がするんですよ。
根本:そういうことをおっしゃってくださる方は1年にひとりかふたりいらっしゃるんですよ(笑)。それはとても嬉しいんですけど、その音楽性の高さを知っているオーディエンスやリスナーはほんの一握りですよね。そういう人たちを相手にして、所謂マニアックっていう言葉で集結させることもあるかもしれないけど、僕らはやっぱりポップスじゃないですか。でもわかる人にはきっと細かいところを伝えていきたいところもあるけど、基本的にはわかろうがわかるまいが、気持ちいいな、楽しいなって思ってくれればそれでいいんです。僕はビートルズも楽しかったから聴いてきたわけであって、よくよく聴くとすげえことやってるっていうのに後々気づいてくるわけでしょ。最初から「こいつらすげえんだ」って小難しい音楽って、なかなか入りづらいじゃないですか。それが敷居を高くしちゃうんだったら嫌だなって思いますね。
−−ところで去年は「年間100公演」っていうこれまたすごいツアーを敢行されましたけど、千秋楽が20年ぶりの熊谷でしたね。熊谷市ご出身なんですか。
根本:そうです。というか、僕は地元で、熊谷の隣町の行田出身で、ベースの柿沼がその隣町です。
−−ということは、もともとメンバーの方とは大学がいっしょなんですか。
根本:いや、僕と柿沼がたまたま同じ高校だっただけで、後のメンバーは二つくらい年下なんですけど、やっぱり埼玉出身ですね。でもこの20年間地元でやったこと1回もなかったんですよ。デビューしたときにお祭りの櫓の上でやったことありますけど、それだけですよ(笑)。僕らみたいなマイナーなバンドだと、友達しか来ないし、客席にいる人数と楽屋に訪ねてくる人数と同じくらいになっちゃうのってイヤだなと思って、ずっと地元でやるの嫌がっていたんです。でもそろそろいいかなと自分で思って。あと100公演やろうと思ったのは、まず僕らはツアーバンドなんで、1県1箇所行ってあたりまえなのに、「山梨」「岐阜」「三重」「奈良」、この4県はなかなかツアー入らないので有名なんですよ。一般的に、ほんとにコンサートやりづらいんですって。だからなんとかこの4つをやりたいなって思ってて。最初50公演ぐらいやってたときに、「なんでこの4県は入らないんだろう」って、思って、それを60にしてもまだ入らない。もうこうなりゃ、「100やるから、山梨も岐阜も三重も奈良も、全部決めてくれ!それで最後は俺の地元だ!」ってね(笑)。それでスタッフが全部組んでくれたんですよ。
−−普通多くて40〜60ですよね。大型バンドでも。100っていうのはなかなかないですよね。
4. ミュージシャンの糧は日々労働(ライブ)!
根本:僕らは音楽という生業を持ってるってことは、演奏してお金もらうんでしょう。CDがいっぱい売れてお金がいっぱい入る、みたいな、高利貸しみたいな感覚じゃだめだと思うんですよ。ミュージシャンっていうのは、日々の糧は自分で働かないとだめなわけで、通帳見たらこんな金がいっぱい入ってた、みたいな印税生活ばっかり続けてたらろくなヤツ出てこないと思うんですよ。日々労働がミュージシャンの糧にならないといけないと僕は思うんですよ。
−−まさにミュージシャンの鑑ですね!
根本:だって、歌ったから金もらえるわけでしょ。
−−それはボーカルの方だから言えるのかもしれないですけど、ライブが連チャンで続くこともありますよね。それはつらくないですか。
根本:ああ、3連チャンはありますね。でも日程はスタッフがきちんと組んでくれるんです。デビュー当時は5日連続でやったことあって、4日、5日目はやっぱり声出なかったですよ。今だったら5日ぐらいはやったらできるかもしれないですけど、ベストな体調のこととか、移動のことなんか考えると、2日やって一日休むとかになりますね。そういうところをスタッフはちゃんとケアしてくれるんで、僕らが「しんどいな〜」と思いながら続けるってことは1度もないですね。
−−ほんとにいいスタッフなんですね。でも去年のライブではアクシデントもあったとか。
根本:ああ、骨折したことね。あれもね、次の日からコンサートが「骨折スペシャル」になるんですよ(笑)。すごい喜ぶんですよ、骨折は骨折で。あれは高松だったんですけど、間奏でめいっぱいギター弾いて、それ〜ってマイクに走り込んで戻るところがあるんですけど、ステージのぎりぎりまで行き過ぎちゃって、足をひねっちゃったんですよ。ぐにゃって音がして、もう1歩も動けない。それで「これはやばいなー」って思いつつ、顔は青ざめてくるし、アンコールの2曲目だったんで、お客はイェ〜〜って盛り上がってるんですよ。「俺は元気じゃないんだけどな(苦笑)…ちょっと足がまずいんだけど、でも最後までやるからな〜!」って。もう全然動かないんですよ。
それでライブ終わってからすぐ病院言ったら「骨折です」って言われて、松葉杖借りて。足は痛いけど体は元気だから、ライブやりたいんですよ。ギプスしちゃうと、ガンガン叩いたりしても痛くないんですよ。動かないから。こりゃ楽勝じゃん、って。でもギプスや包帯を目にすると、お客さんて引くじゃないですか。だからスタッフと相談して、怪獣の足をつけようってことになって、でっかい怪獣の足を買ってきてギプスと松葉杖につけたんです。ステージ中央に椅子がおいてあるから、お客さんもあれ?って思うじゃないですか。そこに座って、「みんないくぞ〜!」「イエ〜!!」「実は昨日俺は骨折した!」「え〜〜〜〜!」「けどな、コンサートでアーティストに気を遣って痛々しい、なんて思った瞬間に、そのコンサートはお前らの負けだ。俺の足なんか気遣わずに、みんなのるか?」「イエ〜〜ッ!」「俺の足の骨折なんか忘れるか?!」「イエ〜〜ッ!」「……お前ら冷てぇなぁ…」(笑)。
−−(爆笑)
根本:そうするといつもより、違うコンサートになるんですよ。おもしろかったですよ。
−−そりゃ、痛くなければできるんでしょうけど(笑)
根本:いや、痛くないですよ。ステージに出ちゃうとほんとに痛みなんて吹っ飛びますよ。
ライブやってると、去年も浜田省吾さんがアキレス腱切ったらしいんですけど、そういうアクシデントってやっぱりあるんですよ。僕もバック転やって失敗して肉離れ起こしたこともあるし、沖縄で尿管結石になって、弛緩剤と麻酔打って朦朧としてても、ステージに出るとすごい元気になるんですよ、不思議なことにね。
ステージって、普通の生身の人間が、何千人の人たちから見つめられるわけでしょ。そうすると違う感覚に陥るんですよ。僕はあそこにいって、苦しいとかつらいとか、だめだとか思ったことないんですよ。だからライブはやめられないんでしょうね。ある種違う自分がいたり、演技ですよね、あれは。もちろん僕自身なんだけど、通常の自分の性格じゃない人格があそこに出てくるんですよ。そのおもしろさがあそこにはあるんですよ。
5. 中2の禅寺修行で悟りをひらく──「人生引き分け主義」
−−そもそもそのステージでの別の自分に気づいたみたいな、その片鱗が出てきて自覚的になったのはいつ頃のことなんでしょうか。スタレビやってるうちにそうなったんですか。それとも昔からとんでもない子供だったんでしょうか。子供の頃のとんでもないエピソードとかありますか?
根本:中2の時に一ヶ月くらい禅寺にこもってたことあるんですけどね…悟りを開こうと思って。小学校の何年生だったか、鏡と対峙したときに自分でね、「このルックスじゃまともには暮らせないよな〜…」って思ったんですよ。その場合どうするんだ、俺は?性格を磨くしかないよな。俺の性格は日本一だ、って思うように、日々性格を磨くという…。当時は身長でかかったんですよ。小学生の時にもう今の身長があって、みんなより頭一つ飛び出てたんですけど、いつの間にかそこで止まってたんですね(笑)。それでガキ大将だったんで、周りに友達はたくさん集まってくるんですけど、その自分について来る奴らに対して、こんな落ち着きがなくて喧嘩っ早いヤツでいいのか、って思って、これは悟りを開くしかないなと。それで中学二年のときに、夏休み1ヶ月使って、禅寺にこもって修行してたんですけど、これは厳しかったですね…。
−−座禅ですか。
根本:後にも先にもあんなにつらいのは味わったことないですよ。
−−中2で座禅っていうのはあんまり聞かないですね(笑)。
根本:そういう経験はありましたね。でも基本的にお客さんが喜んでくれたら自分も嬉しいじゃないですか。
−−それはやっぱり禅の修行が生きてるんですよ(笑)。
根本:当時から変わってないって言われますけどね(笑)。デビュー当時は前座を何回もやらされたことがあったんです。そりゃそうですよね、お客さんのいる場所に行かなくちゃいけないし、僕らの名前で集められるわけないから。最初にやったのはVOW WOWの前座。次がエリック・クラプトンの前座で、次がユーミン。VOW WOWのときに学んだんですよ。「だめだ、まともにやってもだれも聴いてない」。それで次のクラプトンのときに2曲目をやって「こんばんわ、エリック・クラプトンです」。って自己紹介したりね。とにかくウケねえとしょうがないなって思ってたから。デビューシングルが「シュガーはお年頃」っていうんですけど、それをやるときも「「シュガーはお年頃」というデビュー曲を演ってみたいのですが、いかがでしょうか〜?」お客はしらけてパチパチ手を叩くくらいなんですよ。それでも負けずに「そんなんで聞けるような曲ではありません。もう一度聞きます。いかがでしょうか〜〜〜?」そうするとしょうがないからわ〜って拍手してくれるでしょ。で、「満場一致のリクエストでお届けしましょう」ってね。葉山アリーナでユーミンの前座やったときなんて、もうひとつも受けなかったんですよ。それで悔しくてね。当時「行くぜ!」「イエ〜ッ」ってかけ声がはやってて、それがあまりにも格好悪かったんで、僕らの曲で「おらが鎮守の村祭り」っていうコミックソングみたい曲では、みんなに「豊作じゃ〜!」って言わせてるかけ声があったんですけど、ユーミンのお客さんが「豊作じゃ〜!」なんて言うわけないじゃないですか。言わないのが悔しくて、「てめぇらがユーミンなら俺たちはノーミンだあ〜〜!」って、ちょぼちょぼウケてくれましたけどね。
とにかく負けず嫌いなんです。でも勝つのも嫌いなんですよ。負けるのはすげえ悔しいけど、勝つと、なんか申し訳ないなって気持ちになっちゃう。僕らは「人生引き分け主義」って呼んでるんですけど、そこそこに手を抜いていくのが好きなんですよね。
−−そういうユーモア感覚はどこで培われたんでしょうね。自分を磨いたからなのか、元々の素質なのか。
根本:どうなんでしょうね…それは自分でもよくわからないんですけど…発想が変なことはよくあるかもしれないです。人の言葉尻とかがすごく気になったりするんですよね。
例えばこれはよく言ってるんですけど、CDとかに必ずついている「絶賛発売中!!」→「おいおい誰が絶賛してるんだよ」「好評発売中!!」→「なにが好評なんだよ」…って、ああいう常套句で片づけられるのがすごくイヤだったんです。それから今日たまたまNHKで松尾キッチュ(貴史)さんが「20年ずっと気になってることがある」って言い出したことがまったく俺と同じこと思ってたの。それは、新幹線に乗ると必ず「最近盗難の被害が増えております」って、毎回毎回言っていて、いつも「最近増えて」って、おいいつまで増えるのかよって思うんですよ(笑)。そういうのとか、飛行機に乗ると、着陸の時にスチュワーデスさんが「本日はご搭乗ありがとうございました。また皆様と機内にてお会いできることを楽しみにしております。」「機内にて、だよな、やっぱりなぁ。会っちゃくれねぇよなあ(笑)…」って、そういうのがすごく気になったりするんですよ(笑)。「また皆様とお会いできることを…」なんて言ったら、「お、なんだ、会ってくれるのか?」って思うじゃないですか。「機内にて」って釘指された瞬間に、「そうだよな〜(笑)」って。そういう言葉尻をすごく気にするっていうのはあるみたいですね。そういうのが、人とコミュニケーションするときのおもしろさになってるのかもしれないですね。
−−要するにいっぱいチャンネルを持たれてる、ってことですよね。
根本:たとえばね、ジョン・レノンが王室のコンサートで「じゃあ次の曲ではみなさん手拍子をお願いします。じゃなければ、宝石をジャラジャラ鳴らしてください」っていう有名なセリフがありますよね。ああいうジョン・レノンの一言とか、自分がずっとロックを追っかけてきて、みんないいこと言ってるんですよね。あんな一言が自分の中ですごい大きくなるんですよ。昔から音楽も好きだったけど、アーティストのインタビュー読むのもすごい好きだったんですよ。
−−知らず知らずのうちに全部吸収していってるんですね。勉強家なんでしょうかね。
根本:いや勉強家とかじゃなくて、楽しいことしかしてやってこなかったですよ。例えばキース・リチャーズがインタビューの中で、「そんなすごい音楽をよく作り続けていられますね。どうしたらそんな音楽が作れるんですか」って聞かれたときに、「そんなものは簡単だ。ほんのちっぽけな才能と、過去のすばらしい音楽があればいい」って言うんです。もう涙出ちゃいますよね。キースにしてもそんなことを言わせるんですよ、音楽っていうのは。つまり自分がいっぱいいい音楽を聴いてきたことが全部財産で、自分の才能なんかこれっぽっちだと。でも、そのすばらしい音楽があったからこそ、自分は音楽をやり続けていける。まさに僕もほんとに同じことを思いますよ。僕の才能なんてのはほんとに、(指先の)こんなもんかもしれないけど、いっぱい音楽聞いたから、今度はそのすばらしい音楽になにか返したくなるんじゃないですか。
−−これは今はやりのリスペクトですよね。そういえばBS-iの番組もそんな感じですよね。
根本:まさにそうですね。自宅に友達呼んでしゃべってるみたいな感じですから(笑)。
−−趣味と仕事と一緒にやれてるんですね。
6.前代未聞の練習好きバンド!? 日々練習で妥協はなし!
−−「Rockの要」見てても思いますけど、ほんとにいろんな音楽に詳しいですよね。でもスタレビのもともとの音楽性はドゥーワップとかブギウギっていうか、けっこう古い音楽がルーツですよね。
根本:それはね、はっぴいえんどとかにああいう匂いがあったんですよ。だから僕らはほんとにモノマネですよ。そういう人たちがヒントをくれたことが、たまたま僕らの音楽性になって現れていったんだから。だからそれで3作、4作やり続けて、全然売れなかったけど、たまたまちょっとヒットが出たりして…でもそういうときもやりながら必ず裏の部分も見せようとしてましたね。これだけじゃねえんだよ、俺たちは、って。ロックンロールに対するバラード、じゃないけど、音楽っていつも局面がいくつか有るから、それを見せたいなって思うんですよ。一方向だけで判断されるのがすごいイヤで。
−−そういう音楽性の幅の広さと音楽の技術の高さはほんとにレベルが高いですよね。例えばアカペラなんかはゴスペラーズには負けないですよね(笑)。
根本:あれは、もともとうちのバンドはリードボーカルが不在だったから、仕方なしにコーラスやってたんですよ。僕はたまたま曲作ってたから歌ってただけで、もとはギター小僧だったんだけど、歌がないとやばいなって言い出したメンバーがいて、じゃあ俺しか歌えないな…俺が歌うけど、ここは全部ユニゾンな、って。そしたらユニゾンが格好悪かったんで、じゃあコーラスつけてみるか、ってコーラスをやっているうちにアカペラができたんですよ。
−−バンドでほかの追随を許さないクォリティですよ。
根本:わかんないけど、ややこしさはありますよね、スターダスト・レビューっていうバンドを表すのに。昔、高橋研さんが僕らのバンドを称して「おまえらすっげえめんどくさい」って言ってたんですよ。「普通バンド組むときっていうのはギターはギター、ベースはベース、ボーカルはボーカル、1パートにひとり、がふつうなのに、お前らはみんなが歌う。俺はドラムやりたいのに何でコーラスやらなくちゃいけないんだ」って。「一緒に楽器以外の何かをやらされる、そんなバンドなんてなかなか成立しないんだ、だからビーチボーイズ型のバンドっていうのは、ほんとに出てこないんだよ」って研さんは言ってたんですよ。なるほどな、と思った。たまたま僕らは楽器が下手だったから、楽器を補うためにコーラスやんなきゃだめね、っていう風にしてただけで、楽器がムチャクチャうまかったら、コーラスなんてやってないでしょうね。
−−僕は個人的に、うちのリハスタでやっていたころのスタレビで強烈だったのは、あんなに真剣に練習するバンドはないってことでした(笑)。前代未聞でしたよ。(一同爆笑)
根本:マネージャー氏:それは今もそうですね。
−−だからぱっと集まって130曲やれるわけですよね。こういうバンドはないですよね。
根本:いや、練習好きじゃなくて、スタジオ代っていうのは金かかるわけですよ。遊んでる時間もお金かかってるんですよ。だからもったいない、って思っちゃうんですよね。リハーサル代は事務所が出してくれるわけでしょ。「申し訳ないな〜」って思うんですよ。
−−まじめ〜〜(笑)
根本:だからとにかく一生懸命やろうと思うだけですよ。
−−でもその甲斐あって、今では全員で歌えて、しかも演奏能力も高い。
根本:いやーそれはどうかわかんないけど、みんなで歌ってたために、演奏能力が思ったほど伸びなかったのも事実ですよ。20年のあいだにもっとあそこをこうしたら、もっといいバンドになってただろうなっていうのはありますよ。でも現実にはこれが僕らだからしょうがない。でもそれをだからってあきらめないで、もっといいバンドになるように練習していこうよ、アカペラも気合い入れて作っていこうよって言ってやってますよ。
−−決して音楽的に妥協しないんですね。
根本:だって世の中すげぇ人たくさんいるんですよ。やっぱりね、TAKE 6のアカペラ見に行ったときに、「俺らこんな恥ずかしいことやってていいのか?」って、もうやめようとさえ思ったよ、あれを聞いたときに。でも僕らのアカペラだって楽しんでくれる人がいる、それを何とか作っていこうって思ったしね。僕らのレベルで今はOKだけど、単体でとったときにスゲェ人たくさんいるわけで、それに負けたくないじゃないですか。もちろん勝つ必要もないんだけど。
−−引き分けにはしたい(笑)?
根本:そうですね、引き分けにしたい。(山下)達郎さんのすごいアカペラ聞いて、あれは生の達郎さんひとりではできないでしょ?じゃあ生の俺たちはヘタでいいのかって、そういうことにはならないでしょう。うちのメンバーが歌って、ああいう(達郎さんのような)コーラスができないもんだろうか、って思うんですよね。ギターにしたって自分の歌にしたって、まだまだうまい人たちはたくさんいるわけで、そこに近づくためにはどうしたらいいんだろう、やっぱり練習するしかないよなって。
7. 次はもっといいものを…いつも次作が「最高傑作」 ──そしてライブは最高の「ご褒美」!
−−7月に発売された「NO BALLADS」っていうアルバムは、お客さんを入れてのライブハウスでの一発録りなんですよね。
根本:そうなんですよ。やっぱりギター弾きながら歌うっていうのはライブバンドの骨の部分だと思うので、ロリー・ギャラガーとかジョニー・ウィンターとかが、歌いながら弾く、っていう格好良さ!やっぱりギタリストは歌わなきゃ、ボーカリストは弾かなきゃって自分の中で思ったし…でもああやってライブ・アルバム作っちゃうと、「やっぱりギター弾きながら歌うって、こんな歌が下手くそになっちゃうんだ、ギターもこんなにおぼつかなくなっちゃうんだ、って思うと、次はもっとよくなる、次はもっといいものを作ろうよって出てきますよね。だからね、アルバム作りっていうのは、「後悔を作る」ことだと思うんですよ。自分の情けない気持ちをはき出すためにアルバムを作る。だから次のアルバムが最高傑作になる、そう信じてやってるんですよね。
−−作曲も作詞もボーカルもやって、しかも限りないクリエイティブ精神ですよね。
根本:無理をしてたらこうはならなかったかな…
−−これで無理はしてない、と。
根本:うん、してない。スタッフがいい形で僕らを守ってくれるから。もうだめだ〜っていうようなスケジュール組まれたことないし、現実にそれをやった後の楽しみがあるわけですよ。アルバムをガ〜〜〜ッって作って、ああ畜生時間がない時間がない、これでもうガマンできないけどしょうがないな、でも、ここをやりとげれば…ライブが待ってる…(笑)。
−−ライブはご褒美みたいなもんですね。
根本:ほんとそうですよ。ライブできるじゃーん!って。
−−(マネージャー氏に)ライブやりたくない、っていうミュージシャンもいるかもしれないのに、スタッフは扱いやすいんじゃないですか?(笑)
マネージャー氏:(笑ってうなずく)
根本:そうなんですよ、ライブが嫌いなアーティストっていらっしゃるじゃないですか。なんで音楽やってるのかわかんないですよ。まあアルバム作るときにクリエイティブな気持ちで音楽を創造していくって言うのがあるのはわかるんですけど、僕なんかはとてもそんな気持ちだけではスタジオには入れないですよ。やっぱり生でやりたいから、今は(アルバムでは)とりあえずここまで作っておいて、生でやるときはこういうふうにやろう、ここはああしよう、って思いますからね。僕らのバンドの一番の得意体質なところは、ポップスのバンドの割にインプロビゼーションのパーセンテージが高いというか、即興性がものすごくあると思うんですよ。だからライブをやりたがるんだと思うんですけどね。
−−じゃあライブの話で、おとといの「100曲ライブ」のお話をもう少し伺えますか。どんな構成だったんでしょう。
根本:僕はね、音楽を100曲真剣にずっと聞いて、もつはずがないから、スターダスト・レビューのコンサートに来てくれてる人たちは、音楽だけじゃなくて、僕の話とか、この空気感とかもとても楽しみだと思ったんですよ。だから、じゃあこのコンサートにサブタイトルをつけようと。「つま恋100曲ライブ〜日本全国味めぐり〜」っていうのにしたんです。これは20年間、僕らがツアーで思いも寄らぬおいしいものに出会うんですよ。これをうちのお客にも食わしてやりたいなあって思ったんで、店に行って全部口説き落として呼んできたんですよ。20店全部そうですよ。博多のラーメンから宇都宮の餃子、広島のお好み焼き、高松のうどん…それからこれはスタッフから出た案なんですけど、どうせ10時間もみなさんを拘束するんだったら、お弁当ぐらいつけてあげようよっていうことで、「スタレビ弁当」っていうのをちゃんとパッケージも作ったんですよ。中身は崎陽軒さんのシュウマイ弁当をスペシャルにしてもらって、それを配ったんです。実際あのライブに来てくれたのは15,000人だったんですけど、そういう人たちに、ポンとお弁当を配る。しかも、食べながら聴く(笑)。普通はディナーショーだって、飯食い終わった後じゃないとコンサートやらないじゃないですか。でも僕らは、飯を食いながら、お客さんが飯を食ってるのを見ながら演奏したかった曲があったんですよ。
−−小さいライブハウスだと気になるけど、それだけ大きい会場だとお客さんが食事してても全然気にならないですよね。
根本:そうそう。だから遠慮せず食え!って言って、いざ食う段階になったら食事に関係した曲を演奏することにしたわけ。例えばもうかなり初期に作った「ブラックペッパーのたっぷりきいた私の作ったオニオンスライス」って曲があって、“じゃあ前菜はサラダでいきましょう”とかそんな曲から始めたりとか、「では、ワインなんぞはいかがでしょうか」とか言いながら「ワイン恋物語」っていう曲をやったり…食事に関係した曲をどんどんやってたんですよ。だからもうみんな飯食いながら耳を働かせながら食ってはちょっと見て、お箸でリズム録ったりしながらね(笑)…それがすごいいい雰囲気だったのよ。もうみんな立ち上がったり歩き回ったり好き勝手に動いてるから。ああいう状況ってオムニバスのイベントだとよくあると思うんですよ。興味ないアーティストになると立ち上がってちょこちょこしてる。でもここに来てるお客さんは全部、スターダスト・レビューを見に来てるわけ。だから僕らはどんな動き方をしてても全然気にならない。平気でみんなダラダラダラダラ動いてて、だけど、口ずさんでるのよ。これが嬉しくてね。
−−つま恋という場所自体、思い出の場所なんだそうですね。
根本:そうです。(つま恋で行われた)ヤマハのポプコンでクリスタル・キングに負けたんですよ。僕らはポプコンにでたときは、ユーミンの前座でやった「おらが鎮守の村祭り」って曲をやったんです。僕はサンバというリズムを何とか紹介したかったんですけど、まあふざけた曲だったんで、簡単に「大都会」に負けちゃったんですね。でも準グランプリをもらったんですよ。
−−で、グランプリが「大都会」?
根本:そう、だから今回の100曲ライブでは「大都会」も歌ったんですよ。あれは拍手喝采でしたね(笑)。ほかにも僕らには「お馬鹿ソング」って言われてる曲があって、「恋はバレーボール」とか「村長さんの娘」とかあるんですよ。大都会に始まって、そういうお馬鹿ソングを立て続けにやるコーナーを作ったんです。盛り上がりましたよ〜。それからGSメドレーとかね。「バン・バン・バン」「好きさ好きさ好きさ」とか「シーサイド・バウンド」、それと黛ジュンさんの「天使の誘惑」、これは僕すごい大好きな曲なんでそういうのをまとめてGSメドレーでやったりとか。
−−10時間で100曲っていうと、かなりのスピードでとばさないとだめだと思うんですけど、お客さんにはメシ食わせて、自分たちはメシ食ってたんですか?
根本:あんまり食わなかったかな?ちょこちょこつまんではいましたけど。
−−トイレも大変だったでしょうね(笑)。
根本:3時間やって1時間休む、2時間やって1時間休む、っていう休憩をとってたんで別に平気でしたね。
−−ということは、演奏中はベタで歌い続けるしかないんですね。でないと100曲、結果的にはアンコールも入れて101曲ですか、歌えませんよね。
根本:そうですね。
−−100曲ライブは大成功だし、普通のライブでも3時間くらいは軽く歌い上げて声も枯らさない、トークもすらすら言葉が出てくるし、完璧なパフォーマー、シンガーですね。
根本:それは好きなことしかやらないからですよ。無理して人にやらされたりしたら、僕だってへこみますよ。やりたいことをやってるからみんなもついてきてくれてるんだと思いますよ。
8. やりたいことをやらせてくれる最高のスタッフと、 支えてくれる大人のファン
−−この企画も最初からみんなすんなりついてきてくれたんですか?
根本:バンドだからね、普段できる曲いっぱい持ってるんですよ。ソロ・アーティストの方は1曲やるだけでもみんなが譜面抱えていろいろたいへんだけど、バンドでは誰一人として譜面見てるヤツいないわけだから。それを数えたら130曲ぐらいあったんで、それで考えたんです。それも実はステージで最初に発表したんですよ。事前にはほんとに数名の濃いスタッフにしか言わないでおいて、ステージで「こういうのやりたいんだ」って言っちゃった。「できちゃった結婚」じゃなくて「言っちゃったライブ」って言ってるんですけどね。これはやるっていうことを前提にして考えないと、僕一人で考えただけではつぶされると思ったのね。「いや〜やめたほうがいいよ」とかいってね。だから「やる」っていうところから考えていったんですよ。今回の独立も、「独立する」って言うところから考える。いろんな難関は出てくるし、すべてがうまくいくわけじゃないけど、とにかくやってみる。ライブも全部できないかもしれないけど、とにかくやってみたいんだって。だからもし97曲しかできなかったら、300円お客さんに返す、って言ってたんですよ。
−−チケット代はおいくらだったんですか。
根本:12,000円です。でも2,000円はレジャーシートとお弁当代。一人分のスペースを確保できるレジャーシートをつけたんですよ。あとスタレビ弁当ね。そうすると1曲100円なんですよ。もし70曲だったら3,000円返す。それはもうスタッフも了承済みでやってたんです。
−−濃いスタッフから反対意見はなかったんですか。
根本:こういうのをおもしろがるスタッフを、僕らが20年かけて集めたんですよ(笑)。
−−サイコーですね(笑)。
根本:無謀だ、っていうのはメンバーのほうが多いですからね(笑)。うちのバンドは意外とメンバーの中で攻めたり守ったりがあるんですけど、バンドが一つの意志を持ったときには、スタッフはそれーって一丸となって動いてくれるんですよ。全然滞ることはないですね。
−−すばらしいチームになってるんですね。
根本:ほんとに、いつのまにやら、ね。
−−そんなスターダスト・レビューだからこそ、ファンとの結びつきも強いんでしょうね。
根本:昨日も僕のところにファンクラブのメールが150通ぐらい来てたし、番組の書き込みも70〜80あったんだけど、みんなとにかく「トイレで鼻つまみながら聴いたあの曲」「うなされながら聴いたあの曲」「担架で運ばれながら聴いたあの曲」とかね(笑)。いろいろありなんですよ。それで、僕らのお客さんは大人だから、良識がある人たちだと思っているから、もうぜんぶそこに任せてたんです。カメラとかも自由に持ち込んでいい。お酒ももちろんですし、こういうイベントってだいたいやたらとお茶とか飲み物とか高かったりするけど、それも絶対にイヤだと。一般の価格で売ってくれと。全国から連れてきたお店も、一般の値段にしてくれと。そういうところで高い、まずいってあたりまえじゃないですか。そんなの、俺たちのプロデュースするイベントではそんなことありえない、全部俺たちの範疇で、どこを切ってもスターダスト・レビューなんだってことで…すっげぇ喜んでもらえましたよ。
−−なんか…すべてが理想的なコンサートですね。
根本:僕もあの雰囲気を見て、これはまぎれもなく、僕らでしかできないなと思いましたよ。あのお客さんっていうのは、20年間やり続けてきたからついてきてくれたお客さん。それは、20年間音楽をやり続けてきたからじゃなくて、20年間ライブをやり続けてきただけだったのね。僕らはライブをやるためにアルバムをいつも作ってる。ライブに出たいから、僕らの世代ではアルバムを持ってツアーに出る、アルバムのツアーって言うのは一つのバンドのステイタスじゃないですか。だからとにかくツアーに出たいからアルバムを作る。それを20年もやってきたから、お客さんもそういう楽しみ方を覚えてきてくれたんだと思うんです。
9.歌ってるときは休んでる?!ボーカリストの奥義を究める
−−100曲ライブの次の日もお仕事されていたそうですね。ほんとそのパワーの秘訣というか…20周年どころか40、50周年まで軽く行けそうじゃないですか(笑)。
根本:僕は先のことを考えるよりも、明日が楽しみでしょうがないんですよ。明日も宮崎に行って、あさってコンサートがあるんですけど(笑)、やっぱり行けば待っててくれる人がいますよね。こんなに嬉しいことはないですよ。自分たちの音楽を聴くためにいてくれる人たちでしょう?
10年前くらいに、ステージで「あ!」と思った瞬間があるんですよ。それまでは僕はお客さんは何となく集まってくれるんだと思ってたから、懇切丁寧にスターダスト・レビューを紹介してたのね。だから僕らのステージもなんとなく始まることもなかったの。オープニングをいかに凝るかっていうのを大事にしてやってたわけ。それが10年目くらいに「あ、こいつら俺たち聴きに来てるんだ!」って気づいたんですよ。「俺たちが出ていけば喜ぶんだ」って。それに気づいたときに、いろんな方法論ができるようになったんです。それまではこんなに来てくれた人たちをなんとか楽しませよう、って懇切丁寧に作りすぎてたんですよ。でも「こいつら俺たち聴きに来てるんじゃん」って思ったときに、あんなこともこんなこともできるようになったんですよ。
−−解放されたんですね。
根本:そうなんです。「なんだ、俺が出ていけば喜んでくれるんじゃん、それで最高のステージを見せればいいんじゃん」って…あれは自分にとってものすごい大きな瞬間でしたね。
−−そこから十余年、めちゃくちゃ楽しくライブ人生を送っている、と。
根本:そうですね。ほんとに楽しくライブをやって来られましたね。
−−スタッフのみなさんもバンドの勢いにはまったく心配がないですね(笑)。
ところで要さんの声は高音系ですけど、声域広いですよね。
根本:そうですね、歌に使ってるのは2オクターブ半くらい使ってるんですけど、上から下まで3オクターブが限界かなと思ってたら、結構延びてきて4オクターブ弱ありますね。
−−天井知らずというか…そのくらい声が出る人っていうのは歌のパワーもすごいですよね。それに加えて長時間電池切れしないし(笑)。
根本:おもしろくてしょうがないんですよね。歌ってて疲れるってことはあんまりないんですよね。どっちかっていうと喋ってる方が疲れるっていうか…
−−でもしゃべりも止まらないですよね。
根本:しゃべるとある程度疲れるけど歌ってるとものすごい楽〜に気持ちよく歌えて…
−−歌ってるときに休んでるんですかね(笑)
根本:そうかもしれないですねぇ〜(笑)。
−−奥義を究めてますね(笑)。
根本:100曲ライブのリハーサルをやってるときに70曲ぐらい歌ったんですけど、終わってからカラオケ行きましたからね(笑)。
−−ひぇ〜〜〜!やめてくれ…
マネージャー氏:つま恋終わった後もどうなるかな、って心配してたのに、みんな元気なんですよ。
根本:3時半ぐらいまでみんなで飲んでたよね。
−−まいったなこりゃ…
根本:すごい楽しいんですよ、音楽に関わっている自分が。嫌なことはやらないできたから、そこでやっていることっていうのは僕にとって楽しいことばっかりだから、こんな楽しいことばっかりやってて、しかも飯まで食わせてもらえて、それで自分の大好きなスタッフがそこにいて、今日は楽しかったな〜って100曲ライブを振り返って、僕らはステージからしか見てないけど、スタッフが客席、あるいは裏側から見た光景を教えてくれるわけ。「あ〜そんなことあったのかよ?わぁ見たかったな〜」って、もう飽きることなく、気がついたら3時半くらいになってたんですよ。それだってもっと話聞いてたいな〜と思ってたんだけど、スタッフにもうそろそろ寝ましょう、って言われてスタッフが限界だったみたいで…。
−−あらゆる意味でスーパーバンドだってことですね。
10.売れなくても音楽を諦めない ──音楽をやりたいからずっと続けられる
−−じゃあ最後に、若い後輩バンドとかにメッセージとかありますか。
根本:さっきも言いましたけど、デビューしてから来年、再来年と残っていける人たちはほんとに数パーセントでしょう。そこに入れたら万々歳、何よりもいいことですよ。どんな状況であろうと、「売れない方がよかったよ〜」なんて言う人もたまにはいるけど、売れて悪いことは一切ないんだから。でもほとんどが、僕らも含めて、そういう風にならない人たちなんだから、そんなときにどうするか。僕らはたまたま、そんなヒット曲もなく、メジャーと呼ばれることもなく、20年が気がついたら経っていた。そしたらスターダスト・レビューを評価してくれる人も出てきた。これからいろんなバンド、いろんなアーティストが出てくると思うけど、ほんとに売れる人たちは一握りだ。でも、売れなかったときに、それでも5年続けていって、やばいなバンドが、って思ったときに、「でも、スターダスト・レビューみたいになるのもおもしろいかもしれないじゃん」って言われたらいいなって。つまり、売れることだけ考えてたら、音楽は諦めるのが早くなっちゃうから、売れるのは一握りなんだから、そうならない可能性の方が高いから、でもそれでもいいんだよっていうことですよ。そこで音楽をやめさせちゃいけない。音楽は売れる売れないじゃなくて、やりたいかやりたくないかなんですよ。「バンドはなんで続いているんですか」ってよく聞かれるんですけど、音楽をやりたいからですよ。やりたいから続けてるんです。「なんで解散しないんですか」って「解散する必要がないから。やりたいから」なんですよ。解散してしまったバンドは、「やめよう」って言ってしまったんでしょうね。やめようって言わなかったらバンドは続いていくはずですよ。
−−ストーンズとかデッドとか、バンドの鑑みたいに思ってたんですけど、日本にはスタレビがいるぞ、ってことになりますね。まあ長く続けてる方には日本にも忌野清志郎さんとかもいらっしゃいますけど…
根本:いや、でも僕らなんてまだ、音楽がビジネスになるってことがわかってからこの世界に入りましたけど、清志郎さんや達郎さん、浜田省吾さんなんかは、まだ音楽がビッグ・ビジネスになる前からやってて、しかも第一線でやってる。そういう人たちがいるから、僕らは彼らの後ろの方で、そういう人たちが風よけになってくれていたから、わりと楽にやって来られたんだと思いますよ。でも、僕らの後ろに来る奴らが、あんな第一線にならなくても、いいじゃん、スタレビみたいに、もしくはムーンライダースみたいになれば、って思えばいいんですよ。やっぱりバンドは続けていった方がおもしろいし、けっこういい味出てくるんですよね、長いことやっていると。
僕はほんと実体験でしか語れないから、偉そうなことは何一つ言えないんだけど、でも20年やってきたことが、僕らの中では一つの自信を作ることができたし、それにはお客さんを巻き込むことができたし、そういうふうになるっていうのもいいなって。
−−最初から最後まで要さんのパワフルさに圧倒されっぱなしなんですけど、健康管理の秘訣ってありますか?
根本:僕はあんまり寝ないんですよ。楽しいことがあるうちは寝ないんです。だからストレスがないんですね。
−−スポーツとかやってるわけじゃないんですね。
根本:うん、全然。
−−ストレスがたまらないって言うのはいちばんいいですね。
根本:明日のライブのことを考えると、全部が解消されていくっていうか、あれもやりたいこれもやりたい、って思って…そういうことなんじゃないですか。やりたくないことはやらない、って僕は20年間そういうふうにやってきたから。
最初の10年間はよくわからずに来ちゃった。でもスタッフが教えてくれたことで、10年間である程度学んで、そのあとの10年間はほんと好きなように作ってこさせてもらえて…それがよかったのかもしれないですね。これからもまだやりたいことがいっぱいあるんで、そういう風に作って行けたらいいですね。
−−今日はほんとにいい話をありがとうございました。
(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)
揺るぎない音楽への情熱から名言が次々に飛び出す根本氏のマシンガントークに圧倒させられた1時間でした。
さて、ご紹介いただいたのは根本氏が音楽プロデューサーを担当した「音楽ネタ」ライブ を目前に控えた俳優・イッセー尾形氏の登場です!今や一人芝居の第一人者として唯一無二の存在の尾形氏ですが、そこに至るまでの苦労や作品づくりの秘密は、音楽を志す者にも通じる興味深いインタビューとなりました。乞うご期待!