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山本 士朗 氏 スペシャル・インタビュー 株式会社スタンダードワークス代表取締役社長

インタビュー スペシャルインタビュー

山本 士朗 氏
山本 士朗 氏

 2004年7月4日、代官山・鑓ヶ崎交差点に位置する複合商業ビル「Za HOUSE」の地下に、カフェ・ラウンジ『UNICE』(B1)、ライヴ/クラブスペース『UNIT』(B2)、バー『SALOON』(B3)の3店舗からなる、新しい情報発信の場『UNIT』が誕生しました。オープンを間近に控えた7月1日、オーナーを務める株式会社スタンダードワークス代表取締役社長の山本士朗氏に、オープンに至る経緯からそのコンセプト、代官山の音楽シーンを含めた今後の展望までを詳しく語っていただきました。

プロフィール

山本 士朗(やまもと・しろう)
株式会社 スタンダード ワークス 代表取締役


1986年、サッポロビール恵比寿工場内にイベントホール「第一ファクトリー」をオープン。企画、営業、運営管理を行なったことをきっかけに、数々のホール関連事業を手掛ける。
1990年、渋谷・円山町ランブリングストリートに大型ライヴ空間「オン・エアー」をオープン。スタンディングの大型ライヴハウスの先駆けとなる。コンセプトプランニング、営業、企画、総合マネージメントを行なう。
1993年、新宿歌舞伎町(コマ劇場前)にライヴハウスとクラブが融合した「リキッドルーム」を、「恵比寿ガーデンプレイス」内に大小2つのホール「ザ・ガーデンホール」「ザ・ガーデンルーム」をオープン。コンセプトプランニング、デザイニング営業、企画、運営、運営管理等を行なう。
1998年、財団法人 東京国際フォーラムとホールスタッフの業務委託契約を統括する。
2001年、株式会社スタンダードワークスを設立。
2004年、代官山にカフェラウンジ「ユナイス」、ライヴスペース「ユニット」、バー「サルーン」からなる三層構造のコンプレックスをオープン。
▼ 手掛けた主なライヴ/イベントホール
「ファクトリー」「ハミルトンパーク」「ラ・コレッツィオーネ」「ボールルーム」「オン・エアー」「ギャラリー・サイ」「モーダポリティカ」「東京デザインセンター」「ガレリア」「ザ・ガーデンホール」「ザ・ガーデンルーム」「リキッドルーム」「ユニット」etc.

 

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——山本さんはもともとファッション業界にいらっしゃったそうですね。

山本:はい。以前はファッションショーの企画・運営等を手掛けている会社に所属していたんですけど、そこで事業の多角化の一つとしてホール運営もやるようになって、企画・営業・運営管理等に携わってきました。

——例えばどういったホールを手掛けられたんですか?

山本:まず1986年に恵比寿のサッポロビールの工場の中に作った『FACTORY』。これは“多目的ホール”というひとつのジャンルを構築するきっかけとなったんですが、おかげさまで、それが非常に評判が良くて、その後もいくつかのライヴホールの企画・運営管理等を手掛けてきました。当時は、スタンディングで1000人以上入るところがなかったんですよ。でも僕には、これからは“スタンディングでアーティストと共感しながら音楽を楽しむ”っていうのが絶対に主流になるな、という予感がありまして。そういう訳で、渋谷・円山町の開発の目玉として『ON AIR』(現在の『SHIBUYA O-EAST』)を作ったんです。それが音楽ビジネスにキチンと関わった最初の仕事でした。

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——今まで手掛けた中で、『UNIT』と直接リンクするようなものはありますか?

山本:1993年に新宿の『LIQUID ROOM』(昨年の12/31をもって閉館)を手掛けたんですけど、東京の音楽シーンにとってエッジの効いた良いものができたと思っています。“ライヴハウスとクラブとの融合”というオリジナルのものが。東京にはああいうものが絶対に必要だし、さらに進化した形があってもいいと思って…。

——それが『UNIT』誕生のきっかけに?

山本:そうですね。それともうひとつは、なんとなく今の音楽業界に閉塞感が感じられて。ライヴの数自体はそんなに減ってないけど、みんなただ単にライヴに行って見て帰る、クラブに行って見て(踊って)帰るんじゃなくて、もっと違ったカタチで、音楽を通してのライフスタイルの提案ができれば、と思ったのがこのプロジェクトの発端ですね。

——企画から実際にオープンするまではどれ位かかったんですか?

山本:約2年です。某放送局の主導で話を進めていたんですが、いろんな経緯があり実現に至らず…。

——オーナーになるということは、それなりの覚悟も要りますよね。

山本:はい。リスクもかなり大きいですし(笑)。ただ我々がこれまで培ってきたレンタルホールビジネスとコンテンツを融合させることができ、なおかつ3層構造ということで、それ以上に期待と構想が膨らんだのも事実です。もちろん、決して一人でできるようなことじゃないので、これまでのキャリアや人脈を生かしつつ、いろんな方々の力をお借りして、なんとか実現することができたという感じですね。
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——代官山というロケーションについては?

山本:まず、代官山はファッションの街ですよね。町並みも良いし、ヒルサイドテラスのような良質な空間もあって、ある意味“東京らしさ”の一つの象徴というか…。高感度な人たち、クリエイターたちが集まってる街なんですよ。ただ、ファッションやアート、インテリアといったクリエイティブなものはたくさんあるんだけど、そこには音楽だけが抜けていて。もちろんCDショップ、レコードショップはあるけど、音が出せる環境がなかったんです。青山にも渋谷にも原宿にも音が出せる環境があるのに、代官山にはない。当然、東京らしい文化を作っていく上で音楽は欠かせないし、ある意味、代官山って“ヘソ”じゃないかと。そこには音楽が絶対に必要だと思って。

——『UNIT』のコンセプトについて教えてください。

山本:音楽だけじゃつまらない。食事できるところがあった方がいいし、大人っぽいバーもあった方がいい。またそれだけじゃなく、ほかのコンテンツも取り入れなきゃならない。代官山のファッションのイメージやセンス、そういうのを音楽に取り入れていきたい、というのがコンセプトかな。

——ご自身が経営する会社では、恵比寿の「GARDEN HALL/ROOM」の運営管理もなさっていますが、音楽的コンセプトがかぶったりしませんか?

山本:それぞれがオリジナルになるようなカタチを目指しているので、競合するようなことはありませんね。むしろリンクしていければな、と思います。お互いが刺激し合いながら広がりが持てれば、と。

——ちなみに「GARDEN HALL/ROOM」のコンセプトとは?

山本:ガーデンホールも10年を迎え、本当の意味での多目的ホールのブランディングができればと思います。10周年イベントとして、詳細はまだ決定していませんが、今秋そういった音楽とアート、映像を融合させた、世界的なイベントを予定しています。

スペシャル09山本士朗sub_title3 ——『UNIT』それぞれのフロアでこだわった部分を教えてください。

山本:『UNICE』(B1)は新築の居心地の悪さは出したくなかったので、家具も新しいものと古いものとをミックスして配置しました。また天井が高く、圧迫感がないのも特徴ですね。これまでのクラブやライヴハウスでは『UNICE』みたいなイメージはなかったかもしれませんが、どうしても代官山らしさを出したくて。シンプルだけど計算されているようなデザインを心掛けました。『UNIT』(B2)は、デザインよりも実質的な「音」の部分を追求しました。それから『SALOON』(B3)は、“大人の空間”ですね。上のフロアにいて、「ちょっと下行かない?」とか…そういう口説ける場所も必要でしょ(笑)。
ちなみに、『SALOON』もちょっとしたハコになってるんですよ。とにかく、全フロアを通して音楽を楽しんでいただくことが一番の目的なので、『UNICE』も『SALOON』も、それぞれの専任スタッフがセレクトしたBGMを流しています。

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——フロアによって曲の雰囲気も違うんですか?

山本:そうです。スタッフみんな、それぞれこだわりを持ってセレクトしていますね。

——料理にもこだわってらっしゃるということですが。

山本:代官山でイメージするものって、どこかみんな共通してるし、そういうのを裏切れない、という思いはありましたね。だからこそ、音楽を中心としたスペースの“優等生”になりたいし、食事に関しても今までのクラブみたいに片手間に出すんじゃなくて、ちゃんとしたものを出したいな、と思ったんです。それで『ENZO pasteria』(西麻布の有名イタリアンレストラン)の柿沼君との共同作業で『UNICE』を作ってきました。

——ということは、イタリアンがメインですか?

山本:メキシカンのスゴ腕シェフも入っているので、料理自体はイタリアンとメキシカンの融合といった感じですね。メニューは常時60種類ほど取り揃えていて、女性のお客様にも喜ばれるよう、全体的に野菜が中心です。ちなみにランチは1,000円未満のスープセットや週替わりランチをご用意していますので、価格にもボリュームにも、そしてもちろん、味にも満足していただけると思いますよ。

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——『UNIT』の今後の展開について教えてください。

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山本:よく「ファッションと音楽が時代を作ってきた」みたいに言われてるけど、その両者は意外と近いようでそうでもない…というのは、コーディネートする人がいなかったんですね。どちらも分かってる、接着剤の役割をする人が。新宿の雑多な場所でカフェミュージックはできないでしょ? でも『UNIT』ではそういう音楽も取り込めるし、新宿のとがった音楽も取り入れられる。ほかにも、例えば立って聴きたいブルーノートの音楽とか、我々が思ってる以上にいろんな可能性があるような気がするんですよ。そういういろんな音楽を取り込んで、外から見ると「あ、あそこはオリジナルの路線をいってるな」というような場所にしたいですね。 それと、例えば丸の内のOLさんみたいな方とか、ある程度年齢を重ねた大人にも来てもらいたいし、そういう環境も作っていきたい。『UNIT』自体、決して大きなハコじゃないですけど、オリジナルで、なおかつコンセプショナルなイベントをやっていきたいですね。

——最後に、Musicman-NETを見ている人たちにひとことお願いします!

山本:ここが起爆剤となって代官山が元気になるといいな、と思います。昔と比べて、代官山のポテンシャルが下がってるように思えるんですよ。夜、車で通ると淋しいし。町並みも良いし、環境的にもほんとにイイ街なので、また違った意味での代官山の魅力が、『UNIT』を中心に派生していってくれるとうれしいですね。 皆さんもぜひ一度いらしてください。