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「Music Jacket Gallery & epa」開催 パッケージを作るこだわりを音楽とともに広く伝えたい! ビクターエンタテインメント(株) デザインセンター長 河津睦彦 氏スペシャル・インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

河津睦彦 氏
河津睦彦 氏

 今回で3回目となる「Music Jacket Gallery」がいよいよ1月17日より開催される。今年は、規模を拡大し東京・大阪と2箇所での開催が決定。さらに金羊社による学生向けのクリエイターコンテスト「epa」と初のジョイント企画「Music Jacket Gallery & epa」として開催されるという。このイベントの見どころ、パッケージへのこだわり、ミュージックジャケットの魅力、配信とパッケージのこれからについてなど、イベントの主催社代表の1人であるビクターエンタテインメント株式会社 デザインセンター長 河津睦彦 氏にお話を伺いました。

[2006年12月26日/ビクターエンタテインメントデザインセンターにて]

Music Jacket Gallery & epaメイン2

●Music Jacket Gallery & epa <無料>

<東 京> 2007年1月17日〜22日
〒150-0001 渋谷区神宮前3-20-18
原宿デザインフェスタ ギャラリー
OPEN/11:00-20:00 TEL/03-3479-1442

<大 阪> 2007年2月9日〜14日
〒542-0083 大阪市中央区東心斎橋1-11-14
心斎橋「キャナル長堀」
OPEN/10:00-19:00 TEL/06-6251-6198

●トークイベント「ジャケットはアートか?」<無料>

開催日時:2007年1月17日(水)18:00開演(17:30開場)
会  場:原宿「BS朝日 サテライト・スタジオ」
<パネラー>
信藤三雄 氏(アート・映像ディレクター)
篠崎 弘 氏(朝日新聞・編集委員)
岩本晃市郎 氏(ストレンジ・デイズ編集長)
<モデラー>
植村和紀氏(T&Mクリエイティブ株式会社)

▼Music Jacket Gallery & epa
 → http://www.epa-and-mjg.com/

▼第7回エンタテインメントパッケージアワード(epa)
 → http://www.kinyosha.co.jp/epa/

——「Music Jacket Galley」をはじめた経緯は?

音楽の中心が、コンテンツ(音源)であるのは間違いないけれど、音源とあわせてビジュアルは、アーティストにとって特にこだわる部分なんですね。その中でもっとも身近にあるのが、CDやDVDのパッケージだと思うのですが、ジャケットサイズが、レコードからCDに変わり、最近では表現する形がデジタル(配信)になったりと、パッケージを通してアーティストのこだわりが以前よりお客さんに伝わりづらくなったと感じていました。同時にパッケージに直接触れられるレコード店でも、スペースや他商品等が増え、パッケージから作品やアーティストの魅力をお客さんに伝えるように売ることが難しくなっていますよね。

そんな状況のなかで、パッケージを作る側の人間として、その“こだわって作っている部分を音源とあわせてもっと広く伝えられないか?”というのが「Music Jacket Galley」をはじめたきっかけであり、今大きなテーマになっています。

——どういったイベントなんですか?

「Music Jacket Galley」は、もともとレコード会社として独立したデザイン部門をかかえていたビクターエンタテインメント、東芝EMI(T&Mクリエイティブ)、コロムビアエンタテインメント(C2design)の現場の人間が中心となってはじめたミュージックジャケットの展示イベントです。

——レコードメーカー本体ではなく、デザイン部門中心のイベントなんですね。

本当はレコード協会も含め、全社的にやるテーマだとは思っているけれど、僕らがやっているのは“エンタテインメント”だから、押し付けや啓蒙じゃなくて、カルチャーとして単純に楽しんでもらいたいと、今はこういった形をとっています。

——今年は、金羊社「epa」との共同開催になるそうですが、その経緯は?

3年目にして、主催者である3社がそれぞれ、経営が変わったり抱える状況も変化する中で、同じ趣旨の企業とのジョイントも視野に入れて、今回はより規模を大きく、面白いものにしたいと思っていたんです。

そんなときに、金羊社の「epa ※」という学生対象のジャケットコンテストが、開催7回目を迎え、今回は2,000通近い応募がありました。盛り上がりと共に、審査委員長の信藤三雄氏が『プロよりいい』と言ったくらいに作品のレベルも上がってきています。

ジャケットコンテストとして優秀作品を表彰して、実際にメジャー作品のCDジャケットにするところまできたら、次はその作品を世に見せる場が欲しいということになって、せっかくだから、epaの作品もギャラリーに一緒に飾ろうという流れで共同開催が決まりました。

——どんな展示内容になりそうですか?

若い人たちが作ったもの、若い人たちの興味があるものと僕ら(プロのクリエイター)がこだわっているもの・興味のあるものを共有して、お客さんに楽しんでもらえるようなギャラリーができたらいいなと思っています。

また、今年からアートに感心が強く、盛り上がっている大阪でのギャラリー開催も決まって、こちらもとても楽しみにしています。

——具体的にはどのようなことを企画していますか。

音楽の面白さだけでなく、実際に、普段なかなか皆さんが見ることのないジャケット制作にこだわるデザインの舞台裏を見せたいと思っています。特に東京では、こだわりの固まりのような業界の裏側を知る<岩本晃市郎 氏(ストレンジ・デイズ編集長)、篠崎 弘 氏(朝日新聞・編集委員)、信藤三雄 氏(アート・映像ディレクター)>をゲストに迎えてトークイベントを行うほか、デザイナーが実際に会場で作業して、その様子をモニターに映して、日頃はシークレットなデザイン過程を見せたりと。面白くなるかつまらなくなるかはわからないけれど、チャレンジしてみたいと思ってます。

——フライヤーのハートがかわいいですが、展示テーマは『愛を感じるジャケット』なんですね。

時期的にバレンタインに向けて、心が温まるような『愛を感じるジャケット』を沢山集めました。ここで見て気に入ったジャケットのCDを誰かにプレゼントするなんていうのも、いいんじゃないでしょうか。フライヤーのデザインは、C2designの若手デザイナーが消しゴムはんこを使って作ったデザインなんですよ。手仕事ならではのぬくもりが出てますよね。

Music Jacket Gallery & epa2

——また、ここでしか見られない貴重な展示もあるとか。

そうですね。過去・現在・未来と時代にそって、世界に何枚もないという貴重なアナログジャケットから、最近の面白いCDジャケットまで。さらには、次代のクリエイターによる「未来型ジャケット」の展示を行います。これには通常のCDジャケットの概念を取り払った、あっと驚くような新しい提案が沢山あって、若い力を感じますよ。また、このギャラリーのために、特別に作られたプロのクリエイターによる面白い作品も展示する予定です。

——全部で何点くらい展示されるんですか?

東京では、愛を感じるジャケットが150点、特殊なものが 40〜50点、アナログ盤80点(立体形も含む)、未来型ジャケット50点、全部で300点くらいを予定しています。大阪ではスペースの関係で少し減るかもしれませんが、話題のガラス製のCD(1枚約10万円!)の試聴もできたらと思っています。通常のCDとどれだけ違いが感じられるかこれも楽しみにしています。

——トークイベントは、どのような内容になりそうですか?

ジャケットに関する裏話、制作秘話が中心になると思いますが、とにかく超個性派の方々なので、どんなところに話が転がるかは想像つかないですね(笑)。本当に制作現場からの生の興味深いお話が聞けるのでは、と私も楽しみにしています。さらにモデラーの植村和紀さん(現:T&Mクリエイティブ)は、オリコンの元編集長で、音楽についての知識や個人のレコードコレクションも凄い方ですから、面白くなると思いますよ。 次はぜひ大阪でもやりたいと思っています。

——ビクターデザインセンターには、アートディレクションを行うプロデューサーがいるそうですが、作業的な違いは。

他のメーカーは、基本的にディレクターがアートディレクションも行うのですが、うちではディレクターと基本コンセプトを決めてから、直接アーティストとビジュアルに特化したプロデューサーが打ち合わせをして、アートディレクションを進めます。その結果、より幅広いビジュアルに関する情報をもとに、こだわりを持ってパッケージを制作していく環境があるのではないかと思っています。その後は、テイストにあわせて、社内のデザイナーまたは外部のデザイナーに頼んだりとまちまちですが。その辺りは他社さんと同様の流れです。

音楽業界でのジャケットのデザイナーは、広告業界等のクライアントあっての請負仕事と違いソフト作品をクリエイターとしてデザインできるんです。だから、作品との関わりも密だし、責任を含めて、できたものへのこだわりも大きいですね。それだけ入り込めるからやりがいもあって面白い仕事だと思います。

——配信やパッケージを含め、これからのデザインの方向はどうなっていくと思いますか?

音楽コンテンツにとって、ビジュアルがどんどん重要になってきて、逆にビジュアルのないアーティストというのは、いなくなったとも言える状況です。配信もパッケージもビジュアルをどう作るかが更に重要になっています。これからは、どれだけのノウハウ、センス、アイデアを活かして、総合的なビジュアルを作り上げるかが課題です。

グラフィックだけに特化したデザイナーやアートディレクターはこれから減っていくでしょうね。WEB、ステージ、その人の立ち方・見え方など、トータルのビジュアルをこれからどうやってクリエイトしてスタッフを育てていくかがソフト会社にとって、重要なポイントになると思います。

——最近のCDパッケージについてはどうですか。

機能に走りすぎたと思いますね。業務が拡大して、売上も上がったら効率的にしないといけないのは、当然だけど。本質的にはレコードのように趣味的なものは、もっとめんどくさくて壊れやすいものであるべきだったと思うんですよ、だからこそ愛着が湧いたわけですし。便利だからとパッケージをプラスチックケースにはめてしまったことで残念ながらCDになって音楽ソフトのメディアとしての価値感は大幅に変わってしまった気がします。

——また、今後パッケージはどうなっていくと思いますか?

これからパッケージは二極化すると言われてますね。一つは、アイドル・アニメなどの作品に付加価値(特典)をつけて豪華パッケージ仕様にすることや、食玩のようなおまけ付きCDというもの。以前、インディーズのビジュアル系バンドが、CDに自転車をつけて、売ったことがあって、それが1,000枚ほど売れたそうで。それはCDを買ったのか?自転車を買ったのか非常に微妙なところなんだけど(笑)。そういうやりかたもありますね。

もう一方は、パッケージを含めトータルで簡素化して廉価でアルバムをリリースしていくといった流れです。

——中間はないと。

いずれにせよ、どんなものも売れにくくなってきた今、これまでの概念を取り払い、ものを売るのではなくお客様が求める環境を充足できるソフト作りをいかに提供できるかが課題となってきています。何か目的を持った時、欲しいというソフトの要望に的確に対応していかないといけないのでは、と思っています。

——本日は、幅広く語っていただきありがとうございました。音楽ファンの一人として「Music Jacket Gallery & epa」とても楽しみにしています。(M)

「epa」とは、
株式会社金羊社が、音楽業界を担う人材や、未来のパッケージデザイナーを目指す若手の育成を目的として行っている学生(アマチュア)対象のジャケットコンテスト。第7回目となる今回は、ユニバーサルミュージック株式会社より夏に発売予定の「I♥R&B presents Ocean Groove」CDジャケットを公募。
http://www.kinyosha.co.jp/epa/

-2007.1.12掲載