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– 音楽市場に新しい可能性を – 世界最大級の音楽ビジネス国際見本市『MIDEM』インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

Reed MIDEM MIDEM担当 アン・マニュエル・エベール氏
Reed MIDEM MIDEM担当 アン・マニュエル・エベール氏

1967年の第1回開催以来、世界規模で最も大型と言われる音楽業界の国際コンベンション『MIDEM』。次回、2010年に開催されるMIDEMでは40年以上の歴史の中でも最も大きな発展を遂げる。見本市、ネットワーキング、コンフェランス、アーティストのショウケースといった基本的な要素はもちろん維持されるが、デジタル配信などについての専門的なコンフェランスとしてMIDEMとは別で開催されていたMIDEM NETがMIDEMと融合する他、会場内の仕様も大きく変わり、他にも新たな仕掛けが用意される。さらに、日本の音楽はどうすれば海外へ進出できるのか。過渡期にある音楽ビジネスの可能性についても伺った。

[2009年7月9日/文京区関口 フォーシーズンズホテル椿山荘東京にて]
Reed MIDEM オフィシャルサイト

 

——今回来日された目的は?

エベール:MIDEMの期間中はなるべくたくさんの方にお会いしたいのですが、あまり時間がないためゆっくりお話を伺うことがなかなかできません。お客様とコンタクトをとることはとても大事なことだと思いますし、日本の市場はとても特殊なのでそれを理解するためにも直接日本の音楽市場について皆さんの生の声をお聞きしたいと思い来日しました。そして、MIDEMがどのように皆さんのお役に立つことができるか、ご案内できればと思っています。

——MIDEMはこれまでに何回開催されているのですか?

エベール:2010年で44回目です。

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——MIDEMは設立当初から音楽見本市を開催していたのですか?

エベール:MIDEMができた頃はレコードの売買だったり、著作権の売買だったりと非常にシンプルなビジネスモデルだったのですが、長い歴史の中でビジネスのスタイルが大きく変わってきました。90年代は特に音楽ビジネスの調子がよく、MIDEMも参加者が多く活気のあるマーケットだったんですが、ここ10年の間にメディアもたくさん出てきて業界がとても複雑になってきたため、少なくとも欧米では昔のビジネスモデルが主な収入源ではなくなってきています。そういった色々な要素が出てきている中で何をしたらビジネスとして成立するのか、多分それが一番の問題だと思います。
 もう一つ言えるのが、アーティストがインターネットを利用して自らプロモーションや楽曲の販売もできるようになり、消費者と直接コンタクトを取るようになったことが大きく市場を変える原因になっていると思います。そういった流れの中でMIDEMも新しいビジネスモデルを開発している企業を皆さんにご紹介していくことが不可欠であると考えています。

——来年はMidemNetとMIDEMのコンセプトを合体するそうですね。

エベール:MIDEMは10年前にMidemNetを立ち上げ、コンフェランスイベントを開催してきました。そのときはまだデジタルが業界のメインプレーヤーではなく、皆さんがネットを通して新しいアイディアを探したり、勉強をしようというような時代だったので、MIDEMとはコンセプトの違う独立したコンフェランスを開催する意味もありました。
 ですが、10年経ってインターネットが皆さんの生活にも音楽ビジネスにも定着してきたので、あえて分ける必要がなくなり、MIDEMに来ていただければもれなくMidemNetにもご参加いただけるという形にすることで、取りこぼし無くこの業界への理解を深めていただけるようにコンセプトを1つにしました。

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——MidemNetもこれからはMIDEMに組み込まれる形で発展していくことになるんですね。

エベール:そうですね。MidemNetは今まで土曜と日曜の二日間だけで、いわゆるコンフェランスとして開催されていたのですが、2010年からは「MidemNet Lab」として会場の中にスペースを設けます。会場に入ってまず最初にあるのが、新しいMidemNet Labになるんですね。音楽業界のトップモデルが入ってすぐに目にとまるような会場の作りになっています。
 MidemNet Labでは、世界中から全く今までになかった新しいビジネスモデルを開発している専門の企業15社ほどをMIDEMが選び、新しいビジネスモデルをプレゼンしていただく場を無料でご提供します。これを期間中に行うというのが今度のMIDEMの新しい試みです。
 また、MidemNet Labの隣に15前後の企業の方々と来場者の方々が話をすることができる「MidemNet Academy」というコンフェランスルームのような80席ぐらいのスペースを作って、そこでワークショップをしていただいたり、話ができるようにしています。MidemNet Academyでは、例えばTwitterやFacebookなどの効果的な利用方法など、よりインターネットがビジネスに密着した話をしていただくことができます。

——MIDEMに一番多く出展されるのはどこの国ですか?

エベール:毎年違うのですが、大まかに言えばアメリカ、フランス、イギリス、ドイツが多くを占めています。

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——日本の企業にもたくさん来て欲しいとお考えでしょうか?

エベール:そう願ってはいますが、今これだけ景気の悪い世の中を見ていると、なかなか難しいのが現状でしょう。  一気に出展数が増えてほしいと願うよりも、今来てくださっている方々にまず満足していただいて、喜んでいただいて、その方たちが次の年も参加してくださることが一番大事だと思っています。そういう意味でも今のMIDEMのイメージをよくしていきたいと思います。そうは言いつつ、もう少し新しい企業の出展数も来場数も増えたほうがいいとは思っています。

——毎年参加されている方の話を聞くと、通常のブースよりMIDEM Suiteのほうが居心地が良く仕事がやりやすいと言っています。

エベール:そうですね。やはり自分の空間があってそこにゲストを招待するほうが心理的にもやりやすいかもしれません。MIDEM Suite以外にも様々な出展方法がありまして、例えば日本の場合でしたら音楽出版社協会の会員であればナショナルブースのようなものに入ることもできますし、自分でブースを出すこともできますので、ご予算に応じてといった形になります。

——予算に関しては毎年変わらない金額でしょうか?

エベール:40年前と比べても全然違いますし、10年前と比べても違うのですが、2010年に関しては、少なくとも出展ブースは変更しないことにしました。それから参加者の価格も段階で分けられているのですが、下から2番目のランクまでは変更はありません。

——「MidemNet Lab」以外に新しく始める企画はあるのですか?

エベール:MidemNetをオープンにしてどなたでも参加できるようにした分、よりお客様に満足していただくために、「MIDEM plus」というスペシャルミデムネットクラブみたいなものを作ろうということにしたんですね。MIDEM plusは有料になってしまうんですが、メンバーの方はご希望のスピーカーの方と個人的にコンタクトを取ることができます。たくさんのスピーカーの方がいらっしゃいますので、メンバーの方にご希望を伺ってマッチングをして担当者をご紹介したり、MIDEM plusの方だけを集めたランチミーティングなども行います。
 あまり多いと開催できませんので400人までと会員数の制限を設けていますが、期間中、積極的に専門的なスピーカーの方にお会いし、新しく得た情報をビジネス化して音楽業界の中に広めたいと思っている方向けの本当にパーソナライズされたクラブです。ご参考まで申し上げますとお一人様300ユーロになります。

——MIDEMに参加することでどのようなメリットがあるのでしょうか?

エベール:MIDEMは世界中の音楽業界関係者が集まる中立的で、国際的な場所だということが大きな特徴だと思うんですね。色々な方のサクセスストーリーも聞くことができますし、新しいカタログに出会うこともできます。本当にたくさんの経験をすることができる5日間なので、全く新しいビジネスの可能性にも出会えますし、マーケットの違う国と違うマーケットが出会ったりということもあると思います。

——日本の企業や参加者に対してアドバイスなどいただければと思います。

エベール:業界はどこも大変だと思いますし、すごく変化の激しい波のなかにあると思いますので、アドバイスなどおこがましいことは特別私が申し上げることではないですが、この来日中に沢山の日本の方にお会いして、「どうしたら日本の音楽やアーティストを輸出できるか。海外に出していけるか」というご質問をいただくことがすごく多かったように思います。
 一般的にフランスでは、日本の音楽を聴きたいと思っても何を聴いたらいいかわかりませんし、実際に市場の中でもそんなに目立ってはいません。日本のファッション、アニメ、ゲームは色々なところで注目されていますが、音楽はまだまだ知られていないんです。日本の音楽はもっと多くの海外の人たちに対して提供されるべきだと思いますし、そのチャンスもポテンシャルもあると思っています。
 日本でも様々なジャンルの音楽があると思いますが、例えばスカンジナビアだったらパンクに需要があるとか、フランスはエレクトリカル、イタリアはダンスが好まれるというような傾向がありますので、国にアダプトしつつ日本の商品を紹介していくことが大切だと思います。また、音楽の場合、どうしても英語が強いというイメージが付いてきます。確かに言葉というのは重要なんですが、音楽というのは言葉の問題だけで壁ができるわけではありませんし、全てが英語というわけでもないということを踏まえると、まだまだ日本の音楽市場には可能性があるのではないでしょうか。

——最近では「ヴィジュアル系」は日本のカルチャーとしてヨーロッパで受け入れられつつあるようですね。

エベール:Tokio Hotel(トウキョウホテル)というドイツのビジュアル系のバンドがいるんですが、2007年のヨーロッパの売上トップだったそうなんですね。アーティストにもよるのですが、やはり国によって人気のあるジャンルが違うので、ビジュアル系はわりとヨーロッパ向きなんです。アメリカはどうしても英語詞じゃないと受け入れられづらい面もありますが、そこはやはりケースバイケースですね。

——世界的に音楽見本市というとMIDEM以外にもSXSWやCanadian Music Weekがありますね。

エベール:そうですね。他にも見本市がある中でMIDEMの一番ユニークなところは「BtoBである」ことです。参加者がビジネスの業界の方だけなのでよりビジネスに直結した見本市ということですね。SXSWはBtoBだけではなく、ライブパフォーマンスがメインとなりますので。

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——日本ではヨーロッパの情報が少ないのですが、アメリカに比べてデジタルマーケットは大きいのでしょうか?

エベール:収入でいうとアメリカのほうが若干多いですね。しかし、収入が多いということが全てではありませんし、デジタル自体の重要性という意味ではヨーロッパが遅れているということはありません。

——日本の音楽業界は今新しいビジネスモデルを模索している最中ですが、それは世界中みんな同じなのでしょうか?

エベール:ご存じの通りデジタルマーケットは、違法ダウンロードなどいろいろな問題があって、iTunes以外はなかなかビジネスモデルを確立することが難しかったのですが、最近では新しいビジネスモデルも出てきていますので、これからはそれがだんだん改善されていくのではないでしょうか。

——世界にはiTunesに匹敵するような音楽配信サイトはあるのですか?

エベール:フランスには「deezer」というサイトがあります。サイト内で音楽が聴けて、好きなアーティストを選んで自分のプレイリストを作ることもできますし、ラジオ局とdezzerがパートナーを組んでいて、審査員が選んだ一番いい曲をラジオで流して紹介するというようなモデルになっているのですが、これが今すごく流行っているんです。あとは、スウェーデンの会社が運営している「Spotify」も注目されています。イギリスでは「last FM」とSpotifyがあり、Spotifyが得に人気があるようです。ストリーミング、ダウンロード、プレイリスト、サブスクリプションと色々な機能があり、たくさんのビジネスモデルや広告収入もあるので研究されるといいかもしれません。

——MIDEMには今挙げていただいた企業も参加されるのですか?

エベール:ええ。SpotifyはMidemNet Labに参加する予定です。

——2010年のMIDEMではこういったビジネスモデルから新たなインスピレーションを受けることができそうですね。

エベール:そうですね。「MIDEMという名前は聞いたことあるけれど、何をしているのかはよく知らない」、そういう方が多いと思うんですね。ですからこういった機会を利用してMIDEMをどんどん広げてきたいですし、MIDEM自体にも力を入れていきたいと思っています。

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MIDEMアン・マニュエル・エベールmidem4_09↑ MIDEMNET

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↑ MIDEM Talent

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↑ The MIDEM Opening & Closing Night Party

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