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企画のプラットフォームを目指して〜「レコチョクオーディション」開催

インタビュー スペシャルインタビュー

柴崎 栄太郎 氏
柴崎 栄太郎 氏

株式会社レコチョクが、初の同社主催オーディション企画「レコチョクオーディション」を開催した。このオーディションは、「10年以上、時代を超えて求められるアーティストの発掘」をテーマにアゲハスプリングスと共同で開催。携帯動画でのメール応募や「歌姫キャンプ」、ダウンロードレースなどこれまでのオーディションとは一線を画した施策が行われ、応募者は約1万人を超えた。今回のインタビューでは、オーディション開催の狙いや、様々な施策を実施した意図、グランプリを獲得した光井芙美香について、株式会社レコチョク マーケティング部 シニアマネージャー 柴崎 栄太郎氏にお話しを伺った。

▼レコチョク オーディション
http://recochoku.com/audition/
http://www.sonymusic.co.jp/recochoku_audition/
▼株式会社レコチョク http://recochoku.jp/

——「レコチョクオーディション」開催の経緯をお聞かせ下さい。

柴崎:新人ヒットを生み出すにあたって、今までは主要メディアでのタイアップ取組み等が主流だったと思いますが、最近では「着うたサイト(R)」での早期プロモーションも重要視されていますので、レコチョクでもレコード会社さんとの様々な取り組みの中で、多くの新人「着うた(R)」ヒットの輩出に成功してきました。そこである程度のノウハウが溜まってきたこともあり、次はもう一歩踏み込んでオーディションという方法でアーティスト自体を生み出す企画に挑戦してみたいと思い、「レコチョクオーディション」を開催することになりました。「着うた(R)」をよく利用する利用者の中からアーティストが生まれることで、多くの音楽ファンに支持されるアーティストになるのではないかと思います。

 また、レコチョクとしては単純な音楽配信プラットフォームにとどまらず、アーティストや楽曲のプロモーションにもつながる企画プラットフォームを目指しています。その一環として「オーディション」という企画を通じて、さらにレコチョクの音楽分野での企画可能性を広げていく、そのトライアル・ナレッジ作りというのが一番の目的ですね。

——アゲハスプリングスとはどういった経緯で共催することになったのでしょうか?

柴崎:アゲハスプリングスさんは5年、10年と長く売れるアーティストを育てていこうという考えを持っていらっしゃいますし、何よりも『「着うた(R)」の尺と同じようにその数秒で人生が変わるようなシンデレラストーリーを作りたい』という代表の玉井さんの考えに共感し、一緒に取り組んでみたいと思いました。

——募集〜グランプリ決定までのオーディションの流れを教えてください。

柴崎:全体の流れとしましては、携帯動画でのメール応募をメインとして応募を受け付けました。約1万人の応募があったのですが、その中から200名強に絞って東京・大阪・名古屋・札幌・福岡で面接し、5名のセミファイナリストを決定しました。その後、「歌姫キャンプ」を実施して、レコチョクサイトでの人気投票で3名のファイナリストが選出され、最終審査として3名各々のために制作したオリジナル楽曲でレコーディングを行い、8月18日〜8月24日の期間、その曲でダウンロードレースを実施しました。

 このオリジナル楽曲は、アゲハスプリングスさんから蔦谷好位置氏(WORKS:Superflyほか)、百田留衣氏(WORKS:flumpoolほか)、田中隼人氏(WORKS: FUNKY MONKEY BABYSほか)という豪華サウンドプロデューサー陣に制作していただき、プロのアーティストに曲を提供するぐらいの布陣で直々にレコーディングにあたっていただきました。8月25日に実施したレコチョクライブでは、ファイナリスト3名が1,000人の観客の前で歌唱し、その場でグランプリを発表しました。公には8月31日に『レコ★Hits!』とレコチョクサイトで発表しています。そして、9月1日にソニーミュージックグループから配信デビューとなり、最終的にはCDデビューとなります。

——今回のオーディションはどのようにプロモーションしたのですか?

柴崎:まずはレコチョクの利用者に知ってもらうことが第一でしたので、レコチョク各サイト内で大々的にプロモーションをすると同時に、サイトと連動する形で、F1層の視聴率が高いレコチョク提供の日本テレビ系音楽情報番組『レコ★Hits!』でオーディションの様子を取り上げました。

 また、今回の「レコチョクオーディション」は、「今までオーディションを受けたことがない未発掘の人材」を狙っていたので、音楽・オーディション寄りの媒体を極力使用せず、携帯動画で気軽にメールで送付できるという手法にこだわってプロモーションをしました。また、その応募形式とコンセプトで考えたときに一番マッチするのがmixiでしたので、mixi内で「歌のうまいマイミクいませんか?」というプロモーションも大々的に展開しました。そのほか、審査過程でも『レコ★Hits!』での取材とサイトのブログや動画等を連携させ、視聴者の方にオーディションの進捗に興味をもっていただけるよう工夫しました。

——応募数や応募者の傾向はいかがでしたか?

柴崎:携帯電話から自分で撮影した動画を添付してメールで送るという、手軽な応募方法を取り入れたこともあり、おかげさまで1万人以上の応募数が集まりました。全体の9割が携帯電話経由での応募でした。実際に面接をすると、当初の狙いどおり初めてオーディションに応募したという方が非常に多く、今まで受けなかった理由を聞くと「今までも興味はあったけど、書類を送ったり、歌を録音したりというところまでは踏み出せなかった」という答えが半数以上だったんです。あと「mixiを見た友達に薦められた」という方もかなり多かったですね。そういった意味では募集の狙い、プロモーションは大成功だったと思います。

株式会社アゲハスプリングス
YUKIのプロデュースをはじめ、Superfly、元気ロケッツ、Chara、ゆず、flumpool、中島美嘉、伊藤由奈、JUJU、エレファントカシマシ等数々のアーティストプロデュースおよび楽曲提供を行い、かかわった作品の総売り上げ枚数が1500万枚を超えるプロデュース集団。単なる楽曲提供ではなく、アーティストとしてのブランディングやビジュアルプロデュースも含め全面的なバックアップを手がける。
オフィシャルサイト

——「歌姫キャンプ」の実施は、これまでのオーディションにはない形ですよね。

柴崎:そうですね。「レコチョクオーディション」の応募条件は「年齢・性別問わず歌のうまい方」だったのですが、結果的に各会場ともに女性ばかりが残ってしまったんですね。そこで当初の「シンデレラストーリー」のコンセプトに立ち戻り、怒られてツラくて嫌な思いをするレッスンではなく、皆にうらやましがられるような貴重な体験ができるオーディションにしようとスタッフの中で話がまとまりました。実際に残った5名の候補生のレベルが高かったので、最初からアーティストとして扱って、一流のアーティスト体験、例えばレコーディングを体験させたり、写真撮影等も一流のメイク・スタイリストさんやカメラマンさんにお願いしました。

柴崎 栄太郎fumika

——今回のグランプリを獲得した光井芙美香(みつい ふみか)さんの印象はいかがでしたか?

柴崎:光井芙美香は携帯動画で応募してきました。まさに今回のオーディションのコンセプト通り、30〜40秒の動画だけだったのですが、これは相当な逸材だろうと全員が思いました。そこで実際会って歌声を聴いてみると予想以上に素晴らしかったのでほぼ即決でセミファイナリストに選ばれました。

彼女はプロ志向というかレコーディングでも妥協しませんし、レコーディング中に悔しくて涙を流したりだとか、自分を追求していくタイプですね。かといって頑固というわけではなく、オフのときは人一倍明るい子です。彼女は小柄なんですがとにかく声量があるので、楽曲は彼女の性格も踏まえたうえで前向きな歌詞、かつソウルフルなイメージの楽曲になっています。

レコチョクライブでは、物怖じしないというか、1,000人の前で歌わせて歌詞が飛んでしまったらグランプリ発表どころじゃないなと思っていたんですけども、堂々としていたので驚きました。

——今回はトライアルとして実施されたそうですが、第二回の開催の可能性はあるでしょうか?

柴崎:一般のオーディションの応募者とは違い、オーディション慣れしていない、より原石に近い人材が多数発掘され、視野が広がったと業界内からご意見をいただいています。今回のオーディションについては企画発表当初より各レーベルさんから多くの問い合わせをいただいていますので、2回目もやりたいとは思っています。ただ単純にオーディションを恒例化して回数を重ねるのではなく、今回のグランプリアーティストのデビュー後の活躍なども確認しつつ、プロデューサー・レコード会社・ジャンル等のあらゆる切り口をベースにして、企画ありきで面白い取り組みがあれば検討していきたいと思っています。

——レコチョクとしては今後どのような施策を行っていく予定でしょうか?

柴崎:音楽配信ビジネスとしては、スマートフォン等の携帯電話会社各社の戦略や新しいネットサービスを待つのではなく、先手を打って対応していくことが重要だと思います。その点でもレコード会社各社と将来を見据えて戦略を練り、どのようなプラットフォームになっても、アーティストが良い作品を生み、それを音楽ファンに広く・便利に触れてもらうという創造のサイクルを作っていくことが我々の命題だと考えています。

 平行して、ネットの世界だけにとどまらず「ライブやCDを通してアーティストの作品に直に触れていただくにはどうしたらよいか?」という課題に対しても、「着うた(R)」販売・プロモーションの視点から考えていきたいです。そのための施策として、無料会員に対する「着うた(R)」等の購買履歴をもとにしたリコメンドを強化し、CD販売や通販、ライブチケットの斡旋にも力を入れているところです。

光井芙美香

柴崎 栄太郎GA

-2010.9.1 掲載

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