「楽曲」の提供から「+ 楽しみ」の提供へ 〜レコチョク、Android向け新アプリ「レコチョク plus+」リリース
レコチョク 事業開発部長
島田智行氏
レコチョク サービス開発グループ
マネージャー 齊藤勇樹氏
レコチョクは、Andorid向けの音楽プレイヤーアプリ「レコチョク plus+」をリリースした。この「レコチョク plus+」は、プレイヤー機能に加え、フィーチャーフォン(従来型の携帯電話)向け音楽配信サイト「レコチョク」にて過去に購入した楽曲を、機種変更したAndroid携帯でも無料で再ダウンロードすることができる「おあずかりサービス」や、100m以内の複数人で同時に音楽再生、ゲームをすることが可能となる「レコプレイ」(2012年春提供開始予定)など様々な機能が魅力だ。
今回は「レコチョク plus+」の開発にあたった同社 事業開発部長 島田智行氏とサービス開発グループ マネージャー 齊藤勇樹氏にアプリの概要やスマートフォンにおけるレコチョクの戦略などお話を伺った。
——Android向け新サービス「レコチョク plus+」とはどのようなサービスなのでしょうか?
齊藤:レコチョクでは、これまでもAndroid搭載スマートフォン向けに「レコチョク」という楽曲を配信するアプリをリリースしていたんですが、今回スタートした「レコチョク plus+」は、主にプレイヤーとしての機能を強化したアプリになっています。
「レコチョク plus+」は三つのファンクションに分かれています。一つ目は、メインの機能である「plus+プレイヤー」機能です。これは、これまでレコチョクで提供していたプレイヤーに比べ、より便利な機能を搭載しています。通常の楽曲再生の他、「プラスボタン」をタップすると、自動で歌詞を表示する機能やイコライザーの設定など、様々な機能を無料で使用することができます。二つ目は、今春リリース予定の、これまでにない音楽の楽しみ方を提案する「plus+ワープル」機能。そして三つ目が、今回の目玉ともなる「plus+ライブラリ」機能を担う「おあずかりサービス」です。これは、フィーチャーフォン時代にレコチョクで購入した曲をスマートフォンでも引き続き聴くことができるサービスです。
島田:今回「おあずかりサービス」を展開するにあたって、既にあったストアアプリ「レコチョク」の中に「おあずかりサービス」のコーナーを作ることも考えられたんですが、それだけですとユーザーは楽しくないですし、せっかくスマートフォンでサービス展開するなら、スマートフォンならではのできることをたくさんやるべきだと思ったんですね。これまでのフィーチャーフォンでは、楽曲を売るだけになってしまっていましたが、スマートフォン、特にAndroidの場合は、聴くサービスまで作れるようになったので、そこでユーザーに対して価値を提供していくことはできないかと考えて、プレイヤーのアプリケーションという形になりました。
——フィーチャーフォンからスマートフォンへの曲の移行については、これまでもユーザーからかなりの問い合わせがあったそうですね。
島田:はい。Android搭載スマートフォンが一般層にまで普及し始めた2011年春より、非常に多くのお問い合わせをいただいておりました。「おあずかりサービス」の実施を決めたのも2011年の春くらいなので、最短ではサービスをリリースできたかなとは思っています。ただ、その間にも楽曲データを移行できないユーザーが多く発生してしまいましたので、そういった方々に対して、重複して買っていただいた分だけ補填をするようなプログラムを別途準備しています。
——それはどのような補填内容になるのでしょうか?
島田:重複して購入してしまった分のうたコードをご提供します。このうたコード1つで、1曲分を無料でダウンロードすることができます。
——購入した曲の管理は具体的にはどのようになるんですか?
齊藤:フィーチャーフォンで聴いていた曲をスマートフォンへ移す場合は「おあずかり」という機能ボタンを押して頂くと、フィーチャーフォンのレコチョクサイトで購入した着うたフル、着うたフルプラス楽曲の曲名がズラッと一覧表示されるんですね。そこからスマートフォンでも聴けるようにダウンロードして頂けます。
——「おあずかりサービス」はクラウドとは違うのでしょうか?
島田:「おあずかりサービス」自体はフィーチャーフォンからスマートフォンへの楽曲引継ぎ閉じた範囲で提供しており、所謂クラウドとは異なるサービスかと思います。クラウドサービスについては、次のステップできちんと議論して、サービス展開を検討したいと思っています。
——今後搭載予定の「plus+ワープル」とはどういった機能なのでしょうか?
齊藤:「plus+ワープル」もスマートフォンだからできる音楽の新しい楽しみ方の1つなんですが、中でも「レコプレイ」が象徴的なサービスになっています。「レコプレイ」は、近くにいる「レコチョク plus+」ユーザーが自動的にアプリ内に表示され、お互いに申請・承認をすることで、複数人で同時に音楽再生、ゲームを楽しむことができるというサービスです。
——1つのスマートフォンで再生した音源が他のスマートフォンでも同じタイミングで流れるということですね。
齊藤:そうです。これまで携帯で聴く音楽はヘッドフォンなどで、一人で楽しむことが多かったと思いますが、みんなで音楽を一緒に楽しむようなサービスを提案できないかということで、この「レコプレイ」を考えました。
島田:フィーチャーフォンのときにレコチョクがユーザーに支持していただけた理由は、身近に手に入るということと、着信設定できるという新しさだったと思うんです。一方でレコチョクがスマートフォンで展開していたサービスは、楽曲を提供することに留まっていて、あまり新しい楽しみを提供できていないと感じていました。そこで色々と企画検討していく中で、これまで一人で聴いていた音楽を「みんなで聴く」という体験にできないか、ということで作ったのが「レコプレイ」ですね。
——具体的はどのようなシチュエーションでの利用を想定されていますか?
島田:高校生などのグループがみんなで音楽を楽しむという形で使用していただけるんじゃないでしょうか。ヘッドフォン利用でも、隣のクラスの友達が「レコチョク plus+」で聴いているのがわかるので、自分のスマートフォンで試聴させてもらうこともできます。「レコプレイ」は音楽に出会う新しい方法を提供できますし、利用した後はプレイヤーに楽曲情報が残るので、購入を促す施策にもなっています。
——楽曲のプロモーションにもなるんですね。
齊藤:そうですね。そしてもう一つ「plus+ワープル」には、「レコカード」という機能があります。これは自分の好きなアーティストや音楽再生履歴をデジタルカードに表現して、それを友達と交換できるというものです。自分の音楽プロフィール名刺をデジタル化したものと考えていただければと思います。具体的な利用シナリオですが、プレイヤーで曲を再生しているときに、いま自分と同じアーティストを聴いている人が何人いるかが表示されるようになっています。その人数を表示する箇所をタップすると、いま同じアーティストの曲を聴いているユーザーが一覧表示され、それぞれのユーザーのレコカードを見たり、交換したりすることができます。このレコカードには、それぞれのユーザーの再生履歴や好きなアーティストが記載されていますので、「似たような趣味の人が聴いている曲の中に自分の知らない曲がある」といったような流れで新しい音楽に出会うことができるんですね。趣味の近い人を通して自分が知らない曲を更に知っていくという新しい音楽との出会いを「レコカード」で作っていけたらいいなと思います。
——学生には嬉しいサービスですね。
島田:そうですね。レコチョクはF1層(20歳から34歳までの女性)、ティーン層のユーザーが多いので、そういった層をターゲットとしては考えています。
——「レコチョク plus+」に関して今後の課題は何だとお考えですか?
島田:まずは品質の安定化です。Android搭載スマートフォンは機種×OSバージョンの組み合わせで不具合が発生してきますので、お客様の満足度をちゃんと満たすサービスを作るというのは非常に難しいです。当然、コストをかけて全パターンでテストを実施しているのですが、それでも他のアプリの干渉や通信環境に応じたイレギュラーシチュエーションなどがあったりしまして、うまくいかなかったりするんですね。
——以前、ソニーの「アーティストアプリ」の開発チームに取材させていただいたんですが、同じように大変だったとおっしゃっていました。
島田:本当に大変です。さらにプレイヤーなのでDRM、これまた現在4−5種類が並行で展開されているのですが、こちらも機能させなくてはいけないんです。
——Android向けに1つのパターンを作ったらそれを全部に反映できるような技術でも開発されない限り大変ですよね。
島田: 1つ1つのデバイスに自分たちで対応しなければならないので、作業範囲が相当広がったと思います。また、「おあずかりサービス」の提供にあたっては、フィーチャーフォンで買われた「着うたフル」を、スマートフォンでは「ダウンロードシングル」という別の商品の形で提供する必要がありました。その二つの、カタチの違う商品をマッチングしていかなくてはならないという作業が発生しまして、そこは当然各レコード会社の管理の仕方や、レコチョクのシステム自体の問題もあって、我々が各レコード会社に個別にご説明させていただいた上に、みなさんに本当にご協力いただいて、紐付けができたという感じですね。こちらの作業もとても大変でした。
——大変な手間と労力がかかっているんですね…。
島田:ただ、我々の自由度も広がりました。プレイヤーや「レコプレイ」のような、これまでは絶対にできなかったことができるようになり、ユーザーに価値を提供できるようになったので面白さも感じています。
——今後、レコチョク全体として目指すところはどこになるんでしょうか?
島田:スマートフォンになってできることが増える一方、海外勢含めた競合プレイヤーの本格参入もあり、ますます競争が激化します。厳しい競争の中で日本の音楽市場を拡大していくミッションがレコチョクにはあるかと思います。海外勢は日本向けのサービスローカライズに重点を置かないかと思いますが、レコチョクは日本のケータイユーザーが楽しいと思うサービスをどんどん提供していきます。結果として、競合との競争に勝ち、更に市場拡大にも寄与できればと思っています。
——プランニングの段階などではどのようなリサーチをされているんですか?
島田:「レコチョクサポーター」というものを作っていまして、レコチョクユーザーの女子高生、大学生、フリーターの女の子たちなどに、月2〜3回くらい集まってもらって、直接意見を聞いています。
齊藤:今回「レコプレイ」や「レコカード」以外にも色々な企画を考えて意見を聞いてみたんですが、中には、彼女たちに聞くと「難しい」とか「わけ分かんない」などの意見が出てきた企画も随分ありましたね。
島田:新しいものは100パーセント、ユーザーが理解してくれることはないんですけど、興味を持つかどうかまでは分かります。そこでタッピングをしている感じです。その中でも「レコプレイ」「おあずかり」はヒキが強かったですね。そういったことからも「いける!」という自信があります。
——レコチョクはユーザーの声をどんどん反映させながら、サービスを充実させていくんですね。
島田:フィーチャーフォン時代は、新しい機能はキャリアとの共同開発が主でしたが、スマートフォン時代は、サービス提供者側がイニシアチブを持って機能開発できますし、加えて、ユーザーの利用状況や反応も捉えられるので、基本的にはユーザーに使っていただいてフィードバックを見ながらどんどん短期間でサービスを進化させていきます。今は今回お話したようなサービス内容ですが、半年経ったら全然違うことをやっている可能性もありえるとも思っていますし、ユーザーのフィードバックを見ながら、サービスを進化させるサイクルをどれだけ短く回せるかが勝負ですね。
——提供側だけでなく、ユーザー側の進化もありますからね。
島田:例えば、「レコプレイ」も想定しない使い方をされることもあると思うんですよ。今後はそういったことから我々もヒントをもらいながら、次のサービスを企画していけるかどうかにかかってくると思っています。
——「レコチョク plus+」に関して今後の課題は何だとお考えですか?
島田:まずは品質の安定化です。Android搭載スマートフォンは機種×OSバージョンの組み合わせで不具合が発生してきますので、お客様の満足度をちゃんと満たすサービスを作るというのは非常に難しいです。当然、コストをかけて全パターンでテストを実施しているのですが、それでも他のアプリの干渉や通信環境に応じたイレギュラーシチュエーションなどがあったりしまして、うまくいかなかったりするんですね。
——以前、ソニーの「アーティストアプリ」の開発チームに取材させていただいたんですが、同じように大変だったとおっしゃっていました。
島田:本当に大変です。さらにプレイヤーなのでDRM、これまた現在4−5種類が並行で展開されているのですが、こちらも機能させなくてはいけないんです。
——Android向けに1つのパターンを作ったらそれを全部に反映できるような技術でも開発されない限り大変ですよね。
島田: 1つ1つのデバイスに自分たちで対応しなければならないので、作業範囲が相当広がったと思います。また、「おあずかりサービス」の提供にあたっては、フィーチャーフォンで買われた「着うたフル」を、スマートフォンでは「ダウンロードシングル」という別の商品の形で提供する必要がありました。その二つの、カタチの違う商品をマッチングしていかなくてはならないという作業が発生しまして、そこは当然各レコード会社の管理の仕方や、レコチョクのシステム自体の問題もあって、我々が各レコード会社に個別にご説明させていただいた上に、みなさんに本当にご協力いただいて、紐付けができたという感じですね。こちらの作業もとても大変でした。
——大変な手間と労力がかかっているんですね…。
島田:ただ、我々の自由度も広がりました。プレイヤーや「レコプレイ」のような、これまでは絶対にできなかったことができるようになり、ユーザーに価値を提供できるようになったので面白さも感じています。
——今後、レコチョク全体として目指すところはどこになるんでしょうか?
島田:スマートフォンになってできることが増える一方、海外勢含めた競合プレイヤーの本格参入もあり、ますます競争が激化します。厳しい競争の中で日本の音楽市場を拡大していくミッションがレコチョクにはあるかと思います。海外勢は日本向けのサービスローカライズに重点を置かないかと思いますが、レコチョクは日本のケータイユーザーが楽しいと思うサービスをどんどん提供していきます。結果として、競合との競争に勝ち、更に市場拡大にも寄与できればと思っています。
——プランニングの段階などではどのようなリサーチをされているんですか?
島田:「レコチョクサポーター」というものを作っていまして、レコチョクユーザーの女子高生、大学生、フリーターの女の子たちなどに、月2〜3回くらい集まってもらって、直接意見を聞いています。
齊藤:今回「レコプレイ」や「レコカード」以外にも色々な企画を考えて意見を聞いてみたんですが、中には、彼女たちに聞くと「難しい」とか「わけ分かんない」などの意見が出てきた企画も随分ありましたね。
島田:新しいものは100パーセント、ユーザーが理解してくれることはないんですけど、興味を持つかどうかまでは分かります。そこでタッピングをしている感じです。その中でも「レコプレイ」「おあずかり」はヒキが強かったですね。そういったことからも「いける!」という自信があります。
——レコチョクはユーザーの声をどんどん反映させながら、サービスを充実させていくんですね。
島田:フィーチャーフォン時代は、新しい機能はキャリアとの共同開発が主でしたが、スマートフォン時代は、サービス提供者側がイニシアチブを持って機能開発できますし、加えて、ユーザーの利用状況や反応も捉えられるので、基本的にはユーザーに使っていただいてフィードバックを見ながらどんどん短期間でサービスを進化させていきます。今は今回お話したようなサービス内容ですが、半年経ったら全然違うことをやっている可能性もありえるとも思っていますし、ユーザーのフィードバックを見ながら、サービスを進化させるサイクルをどれだけ短く回せるかが勝負ですね。
——提供側だけでなく、ユーザー側の進化もありますからね。
島田:例えば、「レコプレイ」も想定しない使い方をされることもあると思うんですよ。今後はそういったことから我々もヒントをもらいながら、次のサービスを企画していけるかどうかにかかってくると思っています。
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