「おもてなし」の気持ちで運営するビクターfacebookの取り組み 〜 ビクターエンタテインメント株式会社 デジタルビジネス部 ネット技術センター 木村 玲 氏インタビュー
ソーシャル・メディアの浸透により、情報をユーザーに届ける方法が劇的に変化しつつある。限られた時間において、膨大な情報の中から、ユーザの欲する情報を適したカタチとタイミングで提供する事が、アーティストをプロモーションする側にも必然的に迫られるようになり、業界全体でもその方法の試行錯誤が日々試みられている。
そんな中、独自の姿勢で、ユニークかつユーザー・フレンドリーに情報を配信し、積極的にfacebookページ施策に取り組んでいるビクターエンタテインメントの公式facebook担当の木村 玲 氏に、具体例を参照いただきながら実際の状況についてお話しを伺った。
(取材・文・写真:Jiro Honda、Yuki Okita)
ビクターエンタテインメント facebookページ https://www.facebook.com/jvcmusic
[2012年11月9日 / 東京・渋谷区東 ビクターエンタテインメントにて]
プロフィール
木村 玲(きむら・りょう)
ビクターエンタテインメント株式会社 デジタルビジネス部 ネット技術センター
1974年生まれ。ビクターエンタテインメント入社後、グループ内にて音楽制作ディレクター、著作権管理業務を経て、現在facebookページ編集を担当。違法ダウンロード対策も担当している。
■木村 玲 facebook:https://www.facebook.com/rkimura640
——木村さんが、ビクターのfacebookページを担当されるようになった経緯というのは?
木村:ビクターのデジタルビジネス部というのは、音楽配信とネットプロモーションを行っている部署なのですが、営業、宣伝、技術と3つの部門に分かれています。facebookページ運営は2011年から開始されていましたが、2012年度のデジタルビジネス部の方針に大きく「SNS攻略」というのがうたわれ、facebook担当チームを結成、本格的に運営をはじめました。私もチームの一員でした。
ただ、チーム運営では制作部の要望や、プロダクションの意向を過剰に意識しすぎると部長が判断し、ある日突然「木村の好きに書いてみろ!責任はとる」と指示されたんです。
——それはいつですか?
木村:今年の9月頃です。最初は戸惑いましたが、まあ事故っても部長が責任をとってくれるならと、試行錯誤しながらネタを書き始めました。
——ビクターのfacebookページを拝見すると、レコード・メーカーとしては、かなり独自のスタイルで運営されていますよね。
木村:所属アーティストの情報を載せていくのが基本ですが、情報を受け取るユーザーの気持ちを考えると、宣伝っぽいポストが続くと飽きられてしまうんですね。嫌われてしまうというか。また、Aというアーティストが好きで「いいね!」をしてくれたユーザーが、Bというアーティストの情報は求めてないということもままあるわけです。更に、アーティストが好きだからといって、所属レコード会社のことも好きかというと、決してイコールではない。
そこで、いろんなアーティストのファンの集合体であるユーザーに、何を提供すれば喜んでもらえるのか、楽しんでもらえるのか、参加してもらえるのか、ということを考えた時に、まず僕たちfacebookチームのことを好きになってもらえたらいいんじゃないのかと思ったんですね。
そこから、色々な工夫を始め、単なるリリース情報以外の情報も出すようになりました。
——NHKのtwitterみたいに「ビクターfacebookの中の人、ちょっと面白いよね」というような感覚ですよね。
木村:そうですね。色々な工夫をしてユーザーと出会って、その一期一会の出会いを大切にして、ビクターfacebookページから流れてくる情報を楽しんでもらえたらと思います。それで、「いいね!」や、シェアをしてくれたり、コメントを書いてくれたり、何かしらアクションをしてもらえたら、より嬉しいです。
——画像一つとっても、何かしら手が加えられていますよね。
木村:アーティストの情報出しで使える画像って、基本的にアーティスト写真とジャケット写真の2つしかないんです。しかし、それだと2回情報を出すと弾切れになってしまう。そこから3回目以降をどうするかという部分が勝負なんです。
そこで、画像を加工をしたり、吹き出しやせりふをつけたり、複数の写真をくっつけたりしてバリエーションを出したり、またfacebookチームで独自に撮り下ろしたアーティスト写真を使ったりして、普通、メディアさんでは勝手に出来ないようなことを、自社の強みを生かしてどんどんやるようにしています。同じ画像を何度も使い回すのは極力避けたいというスタンスですね。
あと、リリース・アイテムのデータ的な情報出しが本ラインとすると、ビクターfacebookでは、そことは別のサイドラインというか、アーティスト情報とも絡めながらも、僕たち裏方の人間の仕事を垣間見せて、ニヤッとしてもらうみたいな(笑)、そういうタイプの投稿も挟み込んでいきます。
——facebook以外にも、WEB上で情報を伝える方法は現在たくさんあります。
木村:ビクターはfacebookだけじゃなく、twitter、mixi、USTREAMの配信など色々やっているんですが、2012年度はもっとソーシャルを盛り上げたいというテーマがあるんです。そこには、時代と共に人々の時間の使い方が変化してきた中で、かつて多くの方が持ってくださっていた、「音楽が好きだ」「音楽を聴くのがとにかく楽しい」といった感覚を、刺激したいという想いがあります。
もうレコードメーカー同士の兼ね合いとか、そういう小さな視点ではなく、音楽業界全体として、ユーザーの皆さんにとにかく音楽を楽しんでもらうために何ができるのか、と思っています。そういう気持ちと、facebookの担当になったことが上手くはまったところがありまして、今、自分の中ですごくやりがいを感じています。
——木村さんのブログを拝見したのですが、大切なのは情報を発信する側の「おもてなしの心」と書かれていましたね。
木村:全く興味のない情報をぽんと目の前に出されていても、あまり楽しめませんよね。これまでのやり方を踏襲するだけではソーシャルのユーザーはなかなかこちらを向いてくれないので、やはり「おもてなし」の気持ちを大切にしながら、工夫をしています。ユーザーの気持ちになって、楽しんでもらえるように、ということを常に考えていて、かっこよく言うと・・・「愛」ですかね(笑)。
——(笑)。facebookページを見ていると木村さんの温かい人柄をすごく感じます。
木村:すごく攻めているところもあるんです。「これは怒られるかな?」というギリギリのラインで書いたりもします。あるときは、情報を出したら、その瞬間に担当が飛んできて怒られたこともありますよ(笑)。
——そのバランスが難しそうですね。SNSには常に炎上のリスクもありますが、facebook編集ガイドラインなどはありますか?
木村:そこなんですけど、実は、とてもシンプルなリスク・マネージメント体制を敷いていまして、それが「事故ったら部長が謝ってくれる」というものでして・・・(笑)。
一同:(笑)。
——今井部長が出てくるわけですね(笑)。
木村:アンドレ部長(※今井部長の通称)は、僕たちのチームのヘッドもやっているんですけれど、部長本人が「レコード会社の私たち自身が物事を面白がってやらなくてどうするんだ」という強い想いをお持ちなので、「もし事故ったら俺が責任を取ってやるから思い切って書いてみろ」と言ってもらっています。なので、その言葉があって、思い切りやれているという部分はありますね。「さすがにこれはちょっと危ないかな」と、不安なときは確認しますけどね(笑)。
——基本的には個人の裁量に委ねられている。
木村:よく、「OK貰ってからアップしているんですか?」と訊かれるんですけど、実はほとんど確認せずにアップしちゃっているんですよ(笑)。
——事後承諾なんですね。
木村:例えば、この間、小泉今日子のアーティスト写真を出すときがあって、色々な切り口を考えたのですが、やっぱりキョンキョンってすごい可愛いなと素直に思ったので(笑)、「キョンキョンの最新アー写にクラっときちゃった方は、シェアをお願いしますね。」という切り口でポストをしました。すると、さすがはキョンキョンというか、その話題が2週間くらい持続して、ビクターfacebookのシェア数記録を大きく塗り替えてしまったんですね。勢いのままに投稿したことが、好結果を生んだ事例です。
——今は「癒されたらシェア」とか色々ありますもんね。
木村:ただ、やはり自ら「シェアをしてください」はあざといと思い、その手法はもう封印しています。そんなこと書かなくてもシェアしてもらえるのが理想ですよね。そのために、「投稿する内容にシェアしてもらえるだけの価値があるのか」ということを常に自問するようにしています。
数時間で忘れ去られてしまうような情報ではなく、ざわざわした感じがしばらく長持ちするような、そんな記事を狙いたいですね。
——今まで反応の良かった記事や企画には、どういうものがありましたか?
木村:最近すごく反響があったのは、漫画家の佐藤秀峰先生のお書きになった「ブラックジャックによろしく」を二次使用させていただいた家入レオプロモーション企画(※)と、特大ニッパー犬を探せ企画。あと、クイズやおみくじなども盛り上がります。(※)http://j.mp/Pe4JLc
——「ブラックジャックによろしく」を絡めようと思いついたきっかけというのは?
木村:この夏、佐藤秀峰先生が「ブラックジャックによろしく」の二次使用をフリー化された(※)ことを知ったときから、それを使って何かやりたいとは思っていたんです。このネタがコアな層だけでなく、一般の人の目に触れる段階まで来たら、ビクターでやってやろうと目論んでいました。(※)http://mangaonweb.com/creatorDiarypage.do?cn=1&dn=35039
休みの日に京王線に乗っていたところ、電車内ドア上部に「ブラックジャックによろしく」の素材を使った広告を目にしまして、「こういう場所にも使われるような状況なんだから、機は熟したな」と思いまして、その日のうちに、二人の子どもを頑張って寝かしつけて(笑)、夜中に作業をしました。
——すぐに行動に移ったんですね。
木村:ええ。そうして作ったものを、次の日の月曜朝イチにアップしたんです。そうしたら、何というか、更新ボタンをクリックした瞬間に、野球でボールが芯に当たったみたいな感じがあって、これは結構いくかもと直感しました。すると、案の定、瞬く間に反響がありまして、「よっしゃ決まった」という感じでした(笑)。
「ブラックジャックによろしく」は全13巻あるんですけど、その中から適切な素材を探して、ストーリーに合うようにするのはけっこう大変でしたね。お医者さんの物語なので、あまり使えるのがないんですよ(笑)。
——レコード会社とまったく違う世界の話ですものね(笑)。
木村:手術や病院のシーンが多いんですけど、無理矢理レコード会社のワン・シーンみたいに見える素材を探して、「この人を一応部長ということにしよう」とか考えたり(笑)。もちろん、家入レオのアーティスト戦略には迷惑がかからないように配慮しました。
——続きものになっていましたよね。
木村:家入レオの新作の売上が良くて、CDのデイリーランキングでも、iTunesでも1位、レコチョクでも上位に急浮上し、ネットのニュースにも大きくとりあげられたんです。それで後は、CDのウィークリーランキングでも、トップをとれるかも、という期待があったんです。
——最初のネタは、次への期待を持たせるふりが効いていました。
木村:そうしたら、営業の方が速報を聞いて、「2位らしいです」と(苦笑)。
——続きは作る前提だったんですか。
木村:2位の知らせを聞いて、続きを作るのはやめようと思っていたんですが、社内から「もう1回続編をやってくれ」という声が上がってきまして(笑)、そこで、次をどういう展開にするか悩んだ末に、2位でくやしいという路線にしてみようということで、それでまたすぐに作業にとりかかりました。
——お子さん早く寝かしつけて(笑)。
木村:いやそのまま会社で(笑)。結局「2位だった…」という空虚感から入るパターンで、これだけ頑張って2位というのは決して悪い結果ではないのに、なぜか部長に謝らないといけないという不条理な、よくある現場の感じにしました(笑)。全力を尽くしてやったからといって、必ずしも世の中が動いてくれるわけではない、それでもやらないわけにはいかないという、スタッフ魂がちょっと入っています(笑)。
——そんな風に、すぐに考えたとは思えないくらいストーリー性があります。宣伝対象に家入レオさんを選んだのはたまたまそういうタイミングだったからですか?
木村:ちょうどアルバムを出して、良いタイミングだったからですね。上手くハマった事例の1つでしたね。
——タイムラインを見ていると、ビクターのコーポーレート・シンボルである犬のニッパー君もよく見かけます。
木村:「店頭用 特大ニッパー犬を探せ」というシリーズをやりました。先ほどお話したように、アーティストの情報出しの際、やはり3回目以降をどうするかが課題なんですね。他社の場合、2回情報出しすれば、もう次のアーティストの情報出しに移るケースもあると思うんですが、僕たちは作品のリリースまで情報を出し続けて追っていきたいんですね。
ですから、アーティストが打合せで会社に来たときにオフショットを撮らせてもらって、それをポストしたりするんです。その写真素材は、アー写とも違いますし、ビクターfacebookページでしか見ることができないものになりますので。
ただ、せっかくのアーティストのオフショットも、社内で撮影するとどうしてもオフィス感が出てしまうんですよね。そこで、その部分を「ザ・テレビジョン」の表紙で見かけるレモンのような、何か小道具的なもので解決しようということで、思いついたのがニッパーだったんです。
それで、「どうせなら大きいニッパーを」ということで「店頭用 特大ニッパー犬を探せ」シリーズを始めました。下調べしてみると、アンティーク品として付加価値がついていたりして、オークションやアンティークショップだと、結構高かったりしたんです。
——小道具にあまりお金はかけられないですよね。
木村:そこで、まず一発目にこれを出してみたんです。
昔はどこの電気屋の前にもあったんですけど、みなさんの中で譲っていただける方いらっしゃいませんか? ということで。わりとみなさんシェアしてくれました。そして間髪いれず、次の日にコレをアップしたんです。
一同:(笑)。
木村:これが軽くブレイクポイントになって、バァーっと拡散しました。
一般のユーザーの方にも、業界まわりの方々にも面白がっていただいて、目撃情報も届いたりしたんですが、そのうち、弊社の親会社であるJVCケンウッドの方にも、探しているという動きが届いたようで、「昔、営業所などで使っていたものがあるけれど、よかったら差し上げます」と、最終的には親会社に残っていたとてもキレイなものをタダで(笑)、譲ってもらいました。
——ミッション達成ですね(笑)。
木村:思っていたよりも早くて、1ヶ月ぐらいで手に入りました。途中で、部長の手紙みたいなこともありつつ・・・。
届いたときは嬉しくて、ニヤニヤしながら会社の中で勝手に開封式をやっていたら、社内の人が集まってきて、記念撮影をしました(笑)。
こうして、届いたニッパー君は、今は晴れて会社のエントランスに置いてあります。アーティストが来社した時は、一緒に写真撮ってもらったりしていますし、それをアルバムとしてまとめていこうかなとも思っています。ニッパー君は、これからも継続的に登場させていこうと思っています。
——ただ、若い方は「ニッパー」と言われてもピンと来ない人もいたりするんじゃないですか?
木村:そうかもしれないですね。もともとの親会社であった日本ビクターにおられた方々は、ニッパー君に対する思い入れや愛情がすごいんですよ。今回の僕らの動きに対して、「ニッパーの第二の人生を任せた」、「かわいがってやってくれ」みたいな、熱い想いを託された感があります。
——よくぞやってくれたと。
木村:そうそう、そういう感じですよね。この企画を通して、そういう先輩方の熱い想いを知れて、結構感動しました。最初はわりと軽いノリで始まったんですけど、ビクターの会社の歴史とヒモづいて、連綿と続いてきたことを継承する役割を多少なりとも果たせて良かったです。
——SNSで、ある意味アナログな「想い」に辿り着くという流れは、担当者冥利につきますね。
木村:ニッパーのネタは、僕らがやろうとしているfacebookでの展開のヒントを与えてくれた気がします。あと、ニッパーについては、今後ブランド・プロモーションやキャラクター・ビジネスとして、きちんと展開していく予定になっていますので、facebookの企画もその一助になっていけばいいなと思います。
——やはりソーシャルというぐらいですから、発信する方も、純粋にうれしく思ったり、ユーザーとまさにキャッチボールすることが大事なんですね。
木村:ユーザー参加型で盛り上がった事例を紹介しますと、足だけを写した写真を載せて、「突然ですが、家入レオより問題です。私の足は何番でしょうか?答えは明日。」とやりました。
これは本当に彼女のアイデアだったんです。普通ユーザーにコメントを書き込んでもらうのって、ハードルが高いのですが、この問いかけだと、“1”とか“2”とか数字一文字入れればいいだけなので、書きやすかったみたいです。半日経ったくらいで中間報告を出したりして。
面白かったコメントを拾って、最終的に「2番でした」と答えを出して。ただこれだけだったんですけど、けっこう盛り上がりましたね。
ユーザーのアクションを引き出して、ユーザーと親密な関係性を築くのにこのクイズ形式は非常に有効でしたね。僕個人宛、というか“中の人”宛のコメントが出てくるようになったのもこの辺りからでしたね。
——他に面白かったエピソードはありますか?
木村:面白くて男気のあるアンドレ部長が、出張先からいきなり僕に写真を送りつけてくるんですね(笑)。
——「これを使って面白くしろ」ということなんでしょうか?(笑)
木村:きっとネタを振ってくれているつもりなんでしょうね(笑)。これはロンドンの写真なんですけど、HMVにニッパー君がいる写真とか、ビートルズ最後のライブが行われた屋上、あとアビーロードスタジオ前の横断歩道なんかを部長が撮ってきてくれて。「アンドレ部長の珍道中」「初めてのおつかい〜ロンドン編」みたいな感じで載せたら、ロンドンに行ったことある人とか、ビートルズの聖地を見てみたかった、というような人に楽しんでもらえたみたいなんですね。
それで気を良くした部長が、今度は台湾出張に行ったときにまた写真を送ってきまして、台湾シリーズもやったんですよ(笑)。その1枚がこれで、映画「千と千尋の神隠し」のモデルになった町「九份」(きゅうふん、ジォウフェン)という場所の写真です。
——(笑)。
木村:それもけっこう反響があって。アンドレ部長はビクターfacebookページで、けっこう人気者なんですよ(笑)。
面白い話があって、台湾の松山(しょうざん)空港から帰ってきて、次の日には愛媛県の松山空港に行くことになって(笑)。これも面白いからネタにしたんです。
アンドレ部長は桑田佳祐さんのプロモーションも担当していて、ソロツアーの松山公演を「俺が行くからにはスポーツ紙の芸能面を大きく取ってやる!」って意気込んで行ったんですけど、そんなこと言っていたわりには遊んでいるような写真ばっかり送ってくるんですよ(笑)。「大丈夫か?部長」みたいなフリも入れつつ。
その次の日の朝、本当に芸能一面ぶち抜きで桑田さんのライブの記事が出て。さすがに新聞を写すわけにはいかないので、着ぐるみを着て新聞を見ている姿を写真に撮ったんですよ。けっこう体を張るようなことをやってユーザーさんには喜んでもらえました(笑)。
——レコード・メーカーのfacebook担当が着ぐるみって多分あまり着ないです(笑)。
木村:これも面白かったんですけど、ジャンク フジヤマがウチからデビューして、それで、私の上司がジャンク フジヤマに髪型が似ているんですけど、「偽ジャンクが現れて、ジャンクフードを食べる!」という、なんだこれ? みたいな記事も作ってみたり。
まぁ、こういう肩の力を抜いたモノもユーザーさんには喜んでもらえましたね。
——和みますよね。改めてさかのぼって色々、細かいところまで見たくなりました。ところでビクターさんは2013年度採用にもfacebookページを利用していますよね?
木村:ニッパー君企画とかやっていて、ちょうどタイミングも良かったんですけど、なんとなく僕たちが、ニッパー君人形が届いて大喜びしている姿をみせていくことで、「ビクターって楽しそうだな」とか「元気がいいな」とか思えてもらえたらいいなと。
そうしたら、本気か嘘かわからないですけど、「こんな会社で働きたい」とか「雇ってください!」とか、そういうコメントもちょこちょこくるようになり、それならば人事部の協力も兼ねて、2013年度採用情報をfacebookに載せたんですね。そうしたらアーティストの情報よりも反響があってちょっと困りました(笑)。
これは僕が直接担当しているわけではないんですが、採用専用のfacebookページが立ち上がりまして、ニッパー君人形が社内やスタッフを紹介するような企画をやっています。これはまだ立ち上がったばかりで、期間限定のものなんですが、就職活動中の方が、このページによってビクターに興味を持ってくれたらいいなと思います。
——木村さんが2013年度採用facebookページにアドバイスされたりすることもあるんですか?
木村:いやないです。うちにはfacebookの「達人」が何人もいますから(笑)。女性のスタッフが女性ならではの優しいタッチでやっています。今後、様々なスタッフが登場しますので、どうぞお楽しみに。
——木村さんが、facebookネタを仕込むときの、コツというか、こだわりとかありますか?
木村:うーん、特にこれといったことはないんですが、個人的な直感というか、なんとなく「これはきっと面白いだろうな」と思ったことをやっているだけなんですよね。あえていうなら、フォトショップやイラストレーターなどのソフトを触るのがすごく好きなので、写真や画像もそのままペタっと出すだけではなく、少し手を加えてみたり、組み合わせてみたりしますね。
あと、足でかせぐというか、フットワーク軽く動くというのもありますね。この間も、渋谷のタワーレコードさんとTSUTAYAさんに「ビクターのfacebookチームなんですけど売り場の写真を撮らせてください」とお願いして、許可をきちんともらって、すごいクローズアップして撮らせていただいたり。
カメラは、いつも持ち歩いています。
CDショップ関連で言えば、家入レオの新譜の店着日にそれぞれのお店のtwitterの担当の方がつぶやいたものをキャプチャしてまとめてみました。お店や担当者によって、切り口や紹介のされ方がそれぞれ違っていて、工夫したつぶやきがたくさんあって、とてもありがたくて、興味深かったんですよね。それで、リコメンドコレクションというか、そういう雰囲気で集めてみたりしました。
——つぶやいたお店の人もここに載ることで嬉しかったでしょうね。
木村:「今からUSTREAM始まります」とかもよく告知するんですけど、その1時間くらい前に「ワイヤレスが8個もあって、スタッフがすごく頑張ってセッティングしてます」とアップすると、本来の告知よりもそっちの方が反響があったりとかして(笑)、ユーザーってやっぱり裏側の面白さとか、宣伝ではないものを求めているんだなと思います。
——では、最後に今後の目標をお願いします。
木村:ビクターエンタテインメント公式facebookページでは、みなさんに楽しんでいただけるような試みをたくさんやっています。最近ようやく、いくつか成功例が出てきました。これからもやってみたい企画が沢山あります。だから是非ビクターエンタテインメント公式facebookページに「いいね!」を押して読んでみてください。
あと、今日は自分の事をたくさん語ってしまいましたけど、私がこんなに自由にやれる裏には、実は他のスタッフの助けというのがすごくあるんです。
私は思いついたことをパッとやっていますけど、そのベースはチームプレーとなっていて、デジタルプロモーショングループのスタッフが「アーティストのこんな面白い情報があった」「これはネタになるかな」「このライブ面白そうだから、絶対に木村も現場まで観に行った方がいいよ」「アーティストが今来たから、今カメラを持っていけば撮れるよ」とか、色々バックアップしてくれるんです。
情報発信の「書き手」の部分は私に任せてくれていますが、ウチの部のスタッフによる影の支えと、部長の思いきりの良さが根底にはあるんです。今日も私がこうして喋っていますけれど、部署全体として取り組んでいること、チームワークの結晶なんだということをお伝えしておきたいです。
最後に、レコード会社同士で比べたときにビクターのfacebookページはちょっと頑張っているという自負はあるんですけど、世間一般の企業のfacebookページだと「いいね!」の桁が1つも2つも違うところがたくさんありますからね。自分たちもやはりそこと戦えるくらいの競争力を持ちたいと思っています。今後はfacebookページとして日本のトップ100に入っていけるくらいの実力をつけたいですね。