広告・取材掲載

音楽の醍醐味を伝える「MPN SUMMER CAMP」を椎名和夫×松武秀樹×山本恭司が語る

インタビュー スペシャルインタビュー

左から:椎名和夫氏、山本恭司氏、松武秀樹氏
左から:椎名和夫氏、山本恭司氏、松武秀樹氏

日本のロック、ポップスを支えてきた凄腕のミュージシャンの生の演奏にふれ、指導を受けられる、そんなアマチュア・ミュージシャンにとって夢のような企画「MPN SUMMER CAMP」が8月に開催される。経験者やプロ志望のアマチュアをはじめ、ビギナーや指導者も対象として、業界の第一線で活躍中のミュージシャンや指導経験豊富なミュージシャンが直接指導にあたるというユニークな音楽キャンプだ。演奏のスキルアップはもちろん、ミュージシャンとしての醍醐味、演奏の楽しさを改めて実感できること間違いなしのこのキャンプ、公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会主催で行われる。今回は、はちみつぱいやムーンライダーズのギタリストを務め、作曲家/編曲家として活躍した椎名和夫氏(演奏家権利処理合同機構MPN 理事長)、YMOのマニピュレーターとして有名なシンセサイザー・プログラマーの松武秀樹氏(同副理事長)、そして日本が誇る世界的なギタリストの山本恭司氏の3人に、このサマーキャンプについて語ってもらった。アマチュア・ミュージシャンに大切なことを伝えたいという想いのこもった熱い対談を、じっくりとご覧いただきたい。

 

  1. 音楽文化と親しむことで生れる「絆」を広くアピールしてゆく「サマーキャンプ」
  2. 錚々たるメンバーが名前を連ねるゲストクリニックの講師陣

 

1. 音楽文化と親しむことで生れる「絆」を広くアピールしてゆく「サマーキャンプ」

——演奏家権利処理合同機構のMPNが、一般向けにサマーキャンプを企画したということで話題になっていますね。

椎名和夫(以下椎名):我々演奏家、ミュージシャンの持つ権利に著作隣接権というのがあるんですが、この管理をする芸団協という団体が、新宿にある小学校の廃校跡を稽古場や実演の場として利用する“芸能花伝舎”を運営しているんですね。これまで邦楽とか能など伝統芸能の利用が多かったんですが、ここにポップ・ミュージックも加えようというのが、今回のMPNからの提案なんです。ここを“学びの場”として、音楽業界の第一線で活躍してきた実演家ならではの知識やノウハウにふれてもらいたいと、サマーキャンプを企画しました。音楽の楽しさ、演奏の楽しさを伝えられたらいいなと思っています。

山本恭司(以下山本):ポップスやロックだって、もう長い歴史がありますよね。僕らが始めた頃は若い人たちのものだったけど、今は還暦を超えたミュージシャンだって大勢いる。音楽は人間そのものが出てくるものだから、50歳、60歳を超えてくると人生の深みも出る。ギターの音ひとつにも深みを感じられる音楽になってきたと思いますね。つまり僕らもすでに伝統音楽ということで(笑)。

松武秀樹(以下松武):MPNがこういうことをやるのは、何年か前の楽器フェア以来じゃないですか? 芸団協の構成団体であるMPNだからこそ、やらなきゃいけないことですよね。

椎名:実演芸能の分野では、歌舞伎でも能でも、伝承ということが問題になってますよね。人間が芸能とつきあっていくインターフェイスって、結局はアナログだと思うんですよ。人間の悩みや楽しみ、そんな部分が結果として出てくる、そういう面白さを伝えていく役割が、我々にはあると思います。ここから発展して今後は常設でやれたらいいと思ってます。

山本:こういうサマーキャンプって、アメリカではかなり盛んなんですよ。僕の友達のミュージシャンも毎年参加してるそうです。

松武:今回は廃校跡でサマーキャンプだから、校庭でキャンプファイアーでもやりますか(笑)。

椎名:フォークダンスとかね(笑)。

山本:そして「今日の日はさようなら」をみんなで歌って終わる(笑)。

——松武さんと恭司さんはゲストクリニックの講師として参加されますね。クリニックはどんな内容になるんでしょう?

松武:僕は氏家克典と一緒にやるんですけど、弾く技術の方は氏家にお願いして、僕は主に音作りのキモを。それも基本から順番にじゃなくて、ショートカットして音を作る方法とか、どういう発想が音を作るきっかけになるとか、あまり教科書にないようなことを教えたいですね。あと、MIDIについても少し。数年前からMIDI検定というのがあって、その中身を直接教えるわけじゃないですけど、そういう資格を持つことでゲーム音楽とかの道が開かれることもあるので。それとパソコンでの打ち込みですね。面白い打ち方っていうのもあるんです。

山本:僕は、表現のための特殊奏法を。アーミングをはじめ、僕は色々な奏法をすごく追及してきたので、他の人があまりやってなさそうなこともかなりできると思うんです。本来テクニックってこういうことではないんですけど、特殊奏法ってすごく効果的に使えることがある。一瞬のフレーズだけで“えっ?”となるような、グッと来るような、そういうことを教えようと思ってます。

椎名:オレ、そのクリニック受けよう!(笑) でもいいんですか? 企業秘密みたいなことを明かしちゃっても。

山本:こういう年齢になってくると、ある程度伝承する義務みたいなものも感じますね。培ってきたものは伝えていったほうがいいだろうと思ってるんで。

松武:僕もそれはそうですね。音の作り方の最後の決め方のキモ、これは伝えたいですね。

椎名:一般的には、音楽教室としてプログラムされたカリキュラムってあると思うけど、プロ目線というか、やってきた人だから伝えられることってありますよね。

山本:弦を煮て使うとかね(笑)。

松武:そんなの見たことないよ(笑)。

椎名:いや、あったあった。古い弦を外して煮ると1日だけ生き返るっていう。

山本:そうそう。だからライヴ前日の儀式みたいにやってました。

椎名:そういうのも今の人は知らないでしょうから(笑)。

 

2. 錚々たるメンバーが名前を連ねるゲストクリニックの講師陣

音楽の醍醐味を伝える<MPN SUMMER CAMP>を椎名和夫×松武秀樹×山本恭司が語る

——その他のゲストクリニックの講師陣もスゴいメンバーです。学ぶところが多そうですね。

椎名:それぞれの楽器を追求してきた人たちですからね。まあ、学んでほしくないところもいっぱいありますけど(笑)。広規(伊藤広規:b)と大二(岡井大二:dr)はこれまで色々なところで一緒にやってきてるんです。ドラムとベースは“グルーヴ”につきるんですが、それをどう提示していくか、ですね。体内のクロックとかパルスを、合わせるというより提示するという考え方を、彼らはきっとうまく教えてくれると思います。佐々木久美さんはいろんな人と組んでバッキングヴォーカルの仕事をされている方で、僕も山下達郎ツアーでご一緒しました。アンサンブルの構成、その維持についてプロフェッショナルなので、そういうことを伝えてくれると思います。

——恭司さんはアマチュア時代スクールに通っていて、教わる側だったこともあるんですよね?

山本:理論も色々学びましたけど、当時はそんなのどうでもいいって思ってましたね。それでもちゃんと自分の引き出しには入っていて、行き詰った時にそれがいいヒントになったりする。学ぶことは近道を知ることになりますよね。僕が40年以上もトライ&エラーを繰り返しながら身につけてきたことを教えてあげれば、若い人の近道になると思います。僕だって、たとえばハーモニックスなんか全然わからなかったけど、マウンテンのレコードのライナーで成毛滋さんがちょっと書いてくれてたことがヒントになった。実際にその音が出せたときは感動ですよね。そういう、“目からウロコ”というか、ひとつでもわかると一気に世界が広がるような、そんなヒントを僕はたくさん出せると思います。

椎名:僕らが若いころは情報がなかったから、自己流で耳コピーから初めるのがほとんどでしたよね。

山本:レコードとかカセットだったし、テープ伸びちゃうくらい聴いた(笑)。

椎名:ですよね。ピッキングのやり方だって、ある日なにかで自分と違うのを見て、なんでああやって弾けるんだろうって感動したりして、そういう蓄積で学んでいったわけで。

山本:雑誌のグラビアでギタリストがギターを持ってるのを見て、何か意味があるんじゃないか、ってその通り押さえてみたり、ホントに手探り。雑誌だってコードが書いてあるくらいで、リードなんてまったく情報がなかった。

音楽の醍醐味を伝える<MPN SUMMER CAMP>を椎名和夫×松武秀樹×山本恭司が語る

椎名:そもそもの話に戻りますが、最初はどんなところから楽器を練習していったんですか?

山本:僕はテン・イヤーズ・アフターの「LOVE LIKE A MAN」のリフ、“タタタタン、タタタタタタン”ってそれだけなんですけど、もちろんチョーキングも知らなかったし、人差し指一本で。それも最初は姉が持っていたマンドリン、そのあとガットギターで色々やってるうちに、こっちの指も使ったら楽になるぞ、とか、同じ音がこっちの弦にもある、とか、手探りでしたね。

椎名:実は僕もマンドリンからなんですよ。ギターを買いたかったけど手が届かなくて、まずフラットマンドリンを買ってコードを覚え始めた。

松武:僕はトランペットからでしたけど、電気が好きだったのでもっぱらラジオとか作ったりしてたんだけど、1970年の万博でシンセサイザーを初めて聴きましたね。なんかバッハとかやってる人がいるぞ、と衝撃を受けて。そういう出会いがなければ音楽をやってなかったかも。

——では松武さんは音楽への興味ではなくて、電気的な興味からシンセサイザーに入っていった?

松武:そうです。僕、鍵盤はまるで弾けませんでしたから。

椎名:僕らはソフトから、松武さんはハードからっていう入口ですよね。

松武:そうですね。僕は音楽理論なんてなにもわかってなかったから、トランペットとトロンボーンとサックスで練習をしたときに、みんなでドの音を出したら、みんな違う音で(笑)。管楽器ってみんなキーが違いますからね。それから譜面を持ってきて、管ごとに音域が違うことがわかって、そこからアンサンブルを知ってという。

山本:僕は、松武さんとはYMOより前に一緒に仕事してたんですよ。そのとき、“永久音階の機械を作ったんだ”って聴かせてくれた(笑)。何オクターブも永久に下がっていくように聴こえるっていう。

音楽の醍醐味を伝える<MPN SUMMER CAMP>を椎名和夫×松武秀樹×山本恭司が語る

松武:ああ、あったあった(笑)。でもそういう、音楽の入り口になったきっかけみたいなことも、今回のサマーキャンプで話してみたいなと思いますね。どうしてもシンセって鍵盤がついてくるんだけど、あんなの楽器っていうより単なる電圧コントローラ、スイッチだから(笑)。そう考えればそんなに難しくないでしょう。でもギターってアンプによっても音が違うし、エフェクターも色々あって、もちろん弾く技術でも違う。その中からある音を選び出す、自分の音を作るっていうのは難しいと思うんだけど。

山本:これはクリニックでも言おうと思ってることなんですが、結局のところ出す音の80%は右手と左手でやることで決まっちゃうんです。僕なら、ある程度歪んでいるものなら、それがテレキャスだろうがセミアコだろうが、どんなアンプでも僕の音にできちゃう。だから楽器やアンプって、自分のイメージする音をどれだけストレスなく出せるかっていうところで選ぶんですね。それはみんな違うから、友達のものを使ったりして色々試しながら近づいていけばいいと思います。

——では、今回のサマーキャンプでとくに伝えたいことってどんなことですか?

松武:僕はアナログの時代からやってきて失敗の連続でした。今のデジタル・シンセは記憶できるけど、昔はいい音ができても残せなかったし、同じ音を作るのも大変。いい音ができたらノートに書いてましたよ。

山本:初期のドラクエみたいですね。呪文をメモしなきゃいけないっていう(笑)。

松武:そのノートを見たって同じ音にならない。でもそういう失敗がいい音を作るための源になってると思うんです。そういうことをぜひ知って帰ってもらいたい。そして、一度いい音ができたからってそれを100回も200回も使うんじゃなくて、一回使ったら消しちゃえと(笑)。そのくらいの気持ちでやってもらいたいですね。

椎名:じゃあ松武さんの捨てた音色を僕がもらいます(笑)。

山本:僕は、プロの仕事ってシンプルに人をハッピーにすることだと思ってるんです。ライヴのお客さんでも、スクールに来る生徒でも、ハッピーになって帰ってもらいたい。基本的にはそれだけですね。

椎名:それ、すごく大事ですよね。今回プロフェッショナルの音に直にふれてもらえば、きっと演奏の楽しさも改めてわかってもらえると思います。

山本:今は教則DVDとか動画サイトとか色々ありますけど、目の前の至近距離で出された音を味わうことって、得られる情報が半端なくデカいですよね。

松武:そうそう、それも大事ですよ。とにかく魅力ある職業である、ということは言いたいですね。

椎名:僕ら50年もやってますけど後悔してません、みたいな(笑)。

松武:それを伝えられたらOKかもしれないですね。

——では最後に、間近に迫ったサマーキャンプに向けて、読者にメッセージをお願いします。

椎名:僕は61歳になりますが、ミュージシャンを志してから今日まで、ピッキングの方法、ハーモニクスの出し方、すべて一つ一つ好奇心の塊でした。そういう発見とか感動の積み重ねが人生を作ってるようにも思うんです。今回のサマーキャンプがそんなきっかけになってくれればうれしいです。

松武:今の世の中で鳴ってる音のほとんどがシンセ、というような状況になってますが、今回僕は、シンセサイザーの本当の姿はこういうものです、というのをお見せしたい、お聴かせしたいと思っています。

山本:アートって、音楽も含めてすべて感情表現だと思うんです。ギターでも右手の位置、左手のビブラート、押さえ方の強さだけでもこれだけ表現方法があるんだというのを知ってもらいたい。そこに特殊奏法を組み合わせるとまた何倍にも広がる。ギターというとみんな想像する音があると思うけど、それとは違うような、こんな音も出せる、こんな表現もできるっていうところも伝えたいと思っています。

MPN SUMMER CAMP

8月1日:学生 Special Day ゲスト・佐々木久美(Vo.&Key.)
8月5日:マスターコース ゲスト・今 剛(Gt.)
8月6日:マスターコース
8月7日:マスターコース ゲスト・伊藤広規(Ba.)・岡井大二(Dr.)
8月3日:ゲストクリニック Key.&Syn. クリニック 松武秀樹・氏家克典(Key.&Syn.)
8月7日:ゲストクリニック Ba.&Dr. クリニック 伊藤広規(Ba.)・岡井大二(Dr.)
8月20日:ゲストクリニック Gt. クリニック 山本恭司(Gt.)
8月22日:ゲストクリニック Gt. クリニック 今 剛(Gt.)
開催場所:芸能花伝舎(東京都新宿区西新宿6-12-30)
主催:公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会