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真のレコメンデーションを目指して 〜音楽配信アプリ「music Chef」リニューアル

インタビュー スペシャルインタビュー

左から:山村弘樹氏、高野幹男氏
左から:山村弘樹氏、高野幹男氏

ETスクウェアが運営する音楽配信アプリ「music Chef」が、8月2日にリニューアルし、無料配信と定額制配信を組み合わせた新しいプランを導入し、メジャーレーベルの邦楽・洋楽合わせて約100万曲がフル再生できるようになった。同時に、あらゆる角度からユーザー特性を機械的に解析する音楽情報解析サービスを提供する米国The Echo Nest(エコー・ネスト)社と日本初のパートナーシップを結び、レコメンデーション機能を大幅に強化。新機能「ミュージックレシピ」では、音楽趣味の似たユーザーがフォロワー候補にリストされるので、音楽友だちの「ミュージックレシピ」を再生すれば、新たな音楽と出会うこともできるという。今回のリニューアルと今後の展開について、ETスクウェア システム企画開発グループ プロデューサー山村弘樹氏、グループリーダー 高野幹男氏に話を伺った。

 

山村 弘樹(やまむら・ひろき)
株式会社ETスクウェア システム企画開発グループ プロデューサー


昭和47年12月13日生
平成3年10月 株式会社ジー・アイ・ピー入社
平成12年2月 Zepp Tokyo運営(SME業務委託)
平成13年6月 株式会社ライフ入社
平成16年9月 有限会社ナイントーン転籍
平成18年4月 株式会社ドリームボート(現 株式会社Skeed)入社
平成22年11月 本プロジェクトへ参画(豊通エレクトロニクス業務委託)
平成25年6月 株式会社ETスクウェア入社

 

高野 幹男(たかの・みきお)
株式会社ETスクウェア システム企画開発グループ グループリーダー


昭和43年6月2日生
平成6年4月  日本テキサス・インスツルメンツ株式会社入社
平成19年8月 株式会社豊通エレクトロニクス入社
平成25年4月  株式会社ETスクウェア出向(現任)

 

——「music Chef」はどのようなサービスなのでしょうか?

山村:「music Chef」は、もともと自動車向けの配信サービスとして一昨年の10月にスタートしていたんですが、日本は海外と違って車の中にいる時間が限られているので、ユーザーに長い時間使ってもらうという意味では訴求できなかったんですね。ここ最近になって海外だけでなく日本でもレコメンド型の配信サービスが始まり、市場が立ち上がってきましたので、我々としても勝負するタイミングだと思い、この8月にリニューアルしました。その際、よりたくさんのシチュエーションで利用してもらえるように、車内限定も解除して車の外でも使えるようにしました。

これまでは車の中で聴くということから、高い安全性が求められていたので、コンテンツを選んで聴くだけという非常にシンプルなサービスでした。しかし、車の外に出たときに、今度は聴くだけではなくて、色々な形で音楽と出会ってもらいたいということと、サービス自体を楽しんでもらいたいという想いがありまして、今回のリニューアルでレコメンドエンジンを大掛かりに作り直しました。

music Chef エントランス
「music Chef」エントランス画面

music Chef 再生
「music Chef」再生画面

——The Echo Nest社とパートナーシップ提携を締結したのは、日本では御社が初めてとなりますね。

山村:そうですね。The Echo Nest社は、楽曲の解析ですとか、最終的にユーザーに届けるプレイリストの組み立てとか、そういったところが非常に長けているので、ここは我々にとって非常に大きな武器になるんじゃないかなと思っています。

——なぜThe Echo Nest社とパートナーシップを結ぶことになったんでしょうか?

山村:音楽配信サービスは、やはりレコメンデーション・エンジンの精度が命なんですね。ユーザーが自分で選んだ曲が聴けないサービスで、流れてくる曲に納得できなかったら、そのサービスは使わなくなってしまいますから。それで、調べれば調べるほどレコメンデーション・エンジンというものは奥が深くて、例えば、 Pandora(パンドラ)であれば「ミュージックゲノム」とか、それこそ自分たちでミュージシャンを雇って解析したりしていますが、我々の体力や日本の市場を考えると、Pandoraと同じことをやるのはあまり現実的じゃないと思いました。

では、Gracenote(グレースノート)社などからメタデータを買ってくればいいのかというと、それでは差別化など全然できない、と。幸いなことに我々は、車の中でユーザーに操作をさせずにいい音楽を聴かせたいという想いから、ユーザーの趣向性やシチュエーションなどのデータはすごく蓄積していたので、そういったデータを加味すると非常に精度の高いレコメンドが実現できるのでは、と考え、最終的に楽曲の持っている情報や、楽曲の繋がりみたいなところで、精度をよくするために何を使うのが最善かというところでThe Echo Nest社に行き着きました。

——The Echo Nest社との契約はどのような形なのでしょうか?

山村:普通に音楽サービスが「The Echo Nestを使いたい」というと、月額使用料を払う形になるんですが、それはあくまでも海外だけの世界であって、今回は彼らも日本に来るのが初めてということで、日本に最適化しないといけなかったんですね。

——日本の楽曲は把握していないと。

山村:はい。かつ日本における音楽の聴かれ方について、彼らには想像がつかなかったようです。彼らは、シチュエーションとかユーザー属性を使って、今ユーザーがいる環境に合わせて音楽を配信するということをあまりやっていなかったんですね。そこが彼らにとっては面白いと。お互いにあるものとないものとがあって、であれば日本の市場に向けてマッチしたものを一緒に作りましょうということで、今回は彼らのものをそのまま使うのではなくて、技術提携という形でパートナーシップを結んでいます。

——新機能として「ミュージックレシピ」が追加されましたが、再生中の楽曲を「ミュージックレシピ」に登録すると、シード再生(※)に影響するんですか?
※楽曲再生中に新機能「シードボタン」を押すと、その楽曲を主とした雰囲気の似た曲をレコメンドエンジンが自動的に選曲して再生する機能。

山村:そうです。例えば、100曲登録していただいたら、その100曲を解析して似た楽曲をおすすめしていくんですね。それによって、そのユーザーの指向性に非常にマッチした新しい音楽と出会えるというようなサービスを提供しています。

高野:あとは「ミュージックレシピ」から似た音楽が好きなユーザーがフォロワー候補にリストされるので、自分のレシピと交換し合ったり、ユーザー間でコミュニケーションが取れるような仕組みにもなっています。

music Chef シチュエーション設定
「music Chef」シチュエーション設定画面

music Chef ミュージックレシピ
「music Chef」ミュージックレシピ

山村:こういった音楽配信サービスは比較的配信する方からの一方的なサービスが多いと思うんですが、我々としてはヒエラルキーみたいな構造にしたいなと思っているんです。一番上には音楽をおすすめする奥田民生さんとか、小室哲哉さん、浜崎あゆみさんのような著名人シェフ(レコメンダー)がいて、その下の”特集”という年代やジャンルで分かれているチャンネルがあるんですが、ここにもレコメンダーがいてシチュエーションに合わせた楽曲を選曲してくれています。その下は通常は音楽を聴く一般ユーザーになってしまうと思うんですが、「ミュージックレシピ」を作ることによって、自分が好きな楽曲、聴いてほしい楽曲をリスト化して公開することができるので、3人目のレコメンダーとして参加することもできます。

高野:ただ、「ミュージックレシピ」とプレイリストはあくまでも違うもので、リストで選んだ曲が流れるわけではなくて、選んだ曲からユーザーの好みを解析して、似たような好みの楽曲が流れるという機能になります。

——今回エイベックスも楽曲を提供しているようですが、非常に珍しいケースですよね。オンデマンドではないというところで許諾が得られたのでしょうか?

山村:一番大きな要因は我々が自動車からスタートしたというところなんですね。車は本当に安全・安心に対して本当に厳しくて、日本自動車工業会が定める非常に細かい規定をクリアしないといけなんです。ですから、スマートフォンと繋いでアプリも楽しめるようなカーナビもたくさん出ているんですが、ここに入り込むにはかなりハードルが高くて、他のベンダーが車の中でサービス展開できるかと言うとなかなかできないんです。我々はそこに関してのノウハウをずっと構築してきているので、そういった意味で期待を持っていただけたことで、エイベックスさんだけではなく、各レーベルさんに参加していただけたんじゃないかと思います。

高野:自動車メーカーもこういったサービスをずっとやりたがってはいたんですが、各カーナビメーカーの仕様が違うので、全ての仕様を吸収しないと、結局一社でしか展開ができないという結果になってしまいます。それではアプリの制作側もモチベーションが上がりませんし、搭載する側も作ってもらっても広がりがない。というところで実現していなかったんですが、「music Chef」はサービス開始当初から各車載器メーカーの仕様をアプリ側に吸収しているので、カーナビからスマートフォンのアプリを操作することができます。こういった仕様がちゃんと入っているサービスはなかなかないんですね。

——ちなみに「music Chef」が標準装備されているカーナビはあるんですか?

高野:それは次のステップですね。現状ではスマートフォンがBluetoothや有線で繋がっていないとダメです。

山村:そこが各社バラバラで厄介なんです。Bluetoothで繋ぐものもあれば、USBだったり、専用ケーブルだったり、専用ケーブルもiPod / iPhone / Androidとか色々あるので、アプリを提供する側が全てに対応しようとすると、とんでもないコストと労力になってしまうんですね。それを我々はこの1年で各自動車メーカー、各カーナビメーカーの接続仕様に対応したものを作ったんですよ。

——すごい熱意ですね(笑)。

高野:(笑)。メーカーからお金をもらってやっているわけではないので、ある程度こちらがイニシアチブを取れたことも大きかったですね。お互いの意思が合致して良い方向に進んでいるので、結果的にはコストと労力を割いてよかったと思っています。

——後発のサービスということもあって、日本の各社の音楽配信サービスもずいぶん研究されたんじゃないでしょうか?

高野:研究は相当しました。後発ですから色々な情報は当然入ってきましたが、我々はそこに勝たないといけないので、とにかくありとあらゆるデータを集めて、企画を練ってここまで来ました。

——「music Chef」は他のサービスと比較しても、色々特徴がありますよね。

山村:我々のサービスは「シェフ」というアーティストや著名人の方が参画して、そこから音楽がレコメンドされるというところが、他にあまりない形式だと思うんですね。例えば、ある楽曲やアーティストをシードにして再生するためのアーティストチャンネルを持っている会社は何社かあると思うんですが、我々は実際にアーティストの方々に選曲して頂いているので。

music Chef シェフ
「music Chef」シェフ

music Chef 特集
「music Chef」特集

ファンの方々からしてみると、例えば、奥田民生さんのチャンネルを何も知らずにタッチすると奥田民生さんの曲が流れると思っちゃうんですよね(笑)。でも、奥田民生さんの曲は流れず、70年代のアメリカン・ロックとか流れて来ちゃうわけですよ。そこで「これは奥田民生さんが、今あなたがいるシチュエーションで聴いて欲しい曲が流れているんです」と説明すると、逆に皆さん喜ぶんですね。ユーザーはそれを喜んだ上で、今度は「シード再生」という、「この曲をすごく気に入ったから、この曲を起点とする楽曲を聴く」ということができるんですね。

——それが醍醐味ですよね。音楽の世界が拡がると言いますか。

山村:そうですね。でも、まだまだ我々のサービスをユーザーに十分に伝え切れていないところもありまして、ユーザーからは、「なぜGPSが必要なのか」、「ユーザー情報をこれだけ入力しないといけないのか」等々、厳しい意見も含め色々なご意見を頂きます。

——やはりGPSは必須なんでしょうか?

山村:ええ。GPSの情報を基に、場所と動くスピードで今高速道路を走っているとか分かるんですよ。しかも高速道路で快適に走っているのか、渋滞にはまってしまっているのかで流れる音楽は変えるべきだと我々は思っているんですね。また海とか山とか、都市部とか郊外とかで流れる音楽を変えるようにしています。

ETスクウェア システム企画開発グループ プロデューサー山村弘樹氏

——今後、新たな機能追加はあるんでしょうか?

高野:今後も色々な機能が入ります。我々は今「第一フェーズ」という形で、8月2日にリリースしたんですが、数ヶ月単位でヴァージョンアップしていこうと考えていますので、開発は続けています。

山村:そして今回のもう一つの特徴として、無料のプランと350円のプランに広告を入れるようにしているんですが、ユーザーに合った広告が入る仕組みもすでにできています。例えば、商品のターゲットが何歳以上でどういう気分の人に聴かせたいCMですと。暗い気分の人にこのCMを聴かせたくないといったときには、我々の提供しているシチュエーション・セッティングを活かすことができるんですね。

——サービス開始当初と比べると、レーベルとの交渉はスムーズに進みましたか?

山村:私たちも「どうにか車の中だけ」と言って、許諾をいただいてやっていたんですが、本当にこの1年くらいでメーカーさんの反応が変わりましたね。

——時代の転換期に足を踏み入れた感はありますよね。

山村:ただ、我々は完全なるフリーミアムモデルを目指していたんですね。今回は2ヶ月の無料期間を設けてサービス提供しているんですが、Spotify(スポティファイ)やPandoraも含めて、海外でもフリーミアムモデルで事業が成り立っているので、こういったサービスが音楽業界にちゃんと寄与している、という結果も出てきていると思います。

——フリーミアムモデルは国内における最大の壁ですよね。

山村:壁です。だからこそ我々はそこを目指したいんです。

ETスクウェア システム企画開発グループ グループリーダー 高野幹男氏

——でも、本当にフリーミアムにならないとサブスクリプションは広がらないですよね。

山村:そうですね。ですから今回は最後まで「フリーミアムで行きたい」というお願いをレーベルさんにしました。「フリーで提供するんだったら、試聴ファイルで」という提案もメーカーさんからいただいたんですが、私たちは「試聴ファイルは絶対にやらない」と最初から決めていました。この2ヶ月の期間であっても、楽曲をフルで聴かせたい。そこにはこだわりました。そういう意味ではこういったサブスクリプション型のサービスで、楽曲を無料でフルに聴けるサービスって、まだあまり存在していないと思うんですが、まだ全然満足していなくて、やはり最終的にはフリーミアムにしたいですね。

——1年後にはまた大きく変わっているかもしれませんし、可能になるかもしれませんね。

山村:私は40代前後の人間なのでエアチェックの時代に育ったんですね。雑誌、ラジオ、テレビから情報を得て、その情報から自分の気に入ったものを探して聴いて、最後にお金を貯めてレコードを買いに行っていたわけです。つまり、色々な音楽の聴き方を、ディスカバリーを、自分でやっていたと思うんですね。でも、今の若い人たちの音楽の聴き方って、そういうのがなさすぎるのではないかと。

——「音楽好き」という人はいるんですが、“音楽ファン”が減っているんですよね。

山村:良い曲だなと思っても、YouTubeで聴いて終わっちゃうんですよね。そうではなくて、本当に良いと思ったら、「このアーティストってどういう音楽に影響を受けているんだろう?」とか、「このアルバムを作る前のアルバムってどういうことをやっていたのだろう?」ということを、私たちは知りたくて、音楽を探して聴いていたんですね。もし今そういうきっかけがないのであったら、「music Chef」のようなサービスが、きっかけになれば良いなと思っています。それはまさにレコメンデーションだと思うんです。

——だいたい日本で始まったサービスについて話を聞くと、作られた方々はそういう情熱のある方が多いです。

山村:やはりそうですよね(笑)。毎日編成会議で話しをしていますし、通勤やデスクワーク中に「music Chef」を聴きながら「ここだったら、こういう曲が流れないとおかしい!」「何でこれが入ってないの?」と喧嘩になることも多いです(笑)。

——(笑)。次の若い世代にその思いを伝えていかないと、日本から音楽ファンがいなくなるので、とても大切なことですよね。

山村:本当にそう思います。私たちはこの「music Chef」で、今度はレコメンドしている中身をユーザーがちゃんと見られる仕掛けを作りたいなと話をしています。何で繋がったのかが分かると興味が湧くのではないかと思っていて、それを見せられるような仕組みを作ることによって、音楽により興味を持って頂けたらと思っています。

music Chef ロゴ

「music Chef(ミュージック・シェフ)」
対応言語:日本語 サービス地域:日本
販売方法:スマートフォンアプリ(iOS/Android)
価格:2ヵ月無料体験実施中※、350円/月、900円/月
【invitation(無料体験)】300曲/月まで再生可能。曲と曲の間に音声広告が入ります。
【full(350円)】再生曲数無制限。曲と曲の間に音声広告が入ります。
【ful-full(900円)】再生曲数無制限。音声広告はありません。

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