アーティストとファンをつなぐ電子チケットサービスを目指して ー 業界初スマートフォンにスタンプを押す「EMTG電子チケット」スタート
音楽アーティストのファンサイト運営やオークション対策を講じたチケット販売を手掛けるEMTGが、スマートフォン画面に直接スタンプを押すだけで入場が記録され、スムーズに入場ができる、今までにないユニークな電子チケットサービスを2014年6月より開始した。導入第1弾のコブクロ 大阪城ホール公演では、動員数の50%にあたる約8,000人がこの新しい電子チケットで入場し、好評を博した。現在、注目されているチケットのオークション対策についていち早く取り組んできたEMTGはどのような想いで「EMTG電子チケット」をスタートさせたのか、そして今後の展望まで同社代表取締役社長 冨田義博氏に話を伺った。
- 豊富なコンテンツを内包した「EMTG電子チケット」
- セットリストやコメント動画、ライブレポート/フォトも残せる「メモリアルコレクション」
- オークション対策も万全、様々なケースに対応
- EMTG独自の付加価値を付けた電子チケットにしたい
豊富なコンテンツを内包した「EMTG電子チケット」
── 今年6月より「EMTG電子チケット」がスタートしましたが、どのような経緯で始まったサービスなのでしょうか?
冨田:我々は2008年よりオークションでチケット取引ができないよう対策したチケット販売サイト「EMTG」を運営しており、これまでは、顔写真の入ったEMTGカードを発行して、名前入りのチケットとあわせて入場のときに確認していたのですが、携帯だったら人に譲ることや、貸すこともないだろうということで、携帯を使った方法をずっと考えていました。
現在、QRコードの電子チケットが主流ですが、QRコードですと会場に読み取りの機械を持っていかないといけなかったり、ゲートがたくさんあると、迷って別のゲートから入ってしまうお客さんもいらっしゃるので、会場にネットワークを張り巡らせて、各ゲートの入場状況も共有しないといけません。こういった問題を解決できる良い方法はないか模索しているときに、「スマートフォン画面へスタンプする」技術と出会いました。
「EMTG電子チケット」スマートフォンイメージ画像
── この技術は株式会社Leonis & Co.(以下 レオ二ス社)のシステムを採用しているそうですね。
冨田:レオ二スさんも始めたばかりで、元々はお店のクーポンのために作った仕組みだったんですが、それを半年かけてチケット用に改良しました。
── これまでにない画期的なシステムですよね。
冨田:そうですね。専用のアプリを起動して電子スタンプをスマートフォンに押すだけなので、読み取りの機械がいらないんです。このスタンプのデザインと後ろの背景は変えられるので、アーティストさんだったり、イベントによってオリジナルのデザインにすることができます。
アプリで専用画面を開き、スタンプを押すだけで入場済みのスタンプが表示される
── アナログのスタンプと同じく押すだけなので、コンサート会場のスタッフの方もすぐに使えますね。
冨田:先日コブクロさんの大阪城ホール公演で初めて導入しました。2日間で約8,300人が来場したんですが、大変好評でした。
── スタッフの方も楽になったと思いますが、その他にも色々とメリットがありそうですね。
冨田:もぎりタイプですと、ある時間になったら誰でももぎれてしまうので、お客さんが間違えてもぎってしまうということもあるんですが、「EMTG電子チケット」ですと、専用のアプリを起動して専用のスタンプを押さないと使用済みにならないようになっているので、そういったトラブルが起きません。
── オフラインでも出来るんですか?
冨田:オフラインでスタンプが押せますし、電波状態が悪くても通信が可能になったときに入場記録を送信するので、正確な入場記録を取ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=KeMdsyFXMDs
セットリストやコメント動画、ライブレポート/フォトも残せる「メモリアルコレクション」
── ライブの想い出が残せる「メモリアルコレクション」も独自のコンテンツですよね。
冨田:ファンサービスの一環として、ライブの中身も残せたら喜んでもらえるんじゃないかという考えから「メモリアルコレクション」ができました。最初はセットリストを残せるように、というところから発展していって、ライブレポートをライターさんに書いてもらって、形として残るようにしていきました。お客さんからもヒアリングをして、動画も欲しいとか、写真も欲しいとか、チケットを印刷できるようにして欲しいとか、色々な意見からコンテンツを追加していって、今のような形になりました。自分で撮った写真もアップロードできるようになっています。
── 「メモリアルコレクション」にアクセスすれば、いつでもその日のライブを思い出せるということですね。
冨田:「メモリアルコレクション」は、ライブごとに用意されたコルクボードのイメージですね。これがどんどんたまっていくとすごく面白いものになっていくと思います。あと楽曲も販売してまして、当日のセットリストの19曲をまとめて1,200円の特別価格で買えるようにしました。
── EMTGの中に、音源販売サイトがあるということですか?
冨田:ええ。独自のアプリで、スマートフォンならAndroidとiPhoneで販売できます。実際に来場者の10%くらいの人にお買い求めいただいてます。
── それは事務所やアーティスト、レコード会社と契約してやっているんでしょうか?
冨田:はい。1,200円というのは結構破格な金額で、1曲250円、1曲ずつ買うと4,300円ぐらいになるんですが、それを来場者には1,200円で販売しています。
── それはグッズ感覚になりますね。1,200円だとTシャツより安いから想い出に、というような。
冨田:そうだと思います。この電子チケットからどんどん新しいビジネスができるんじゃないかなと思いますね。あと、実験で来場者には写真も売っていたりしまして、それは15%くらいの方が買っています。
── 15%は大きいですね。そのうちライブ音源も販売できるようになるかもしれないですね。
冨田:そうですね。電子チケットだけでなく、ファンの方に喜んでいただける色々なサービスを生み出していきたいと思います。
オークション対策も万全、様々なケースに対応
── 「EMTG電子チケット」はオークション対策においても効力を発揮しそうですね。
冨田:オークション対策などのセキュリティレベルもアーティスト側で幅広く選ぶことができます。誰にも譲れないようにすることもできますし、自分の分は譲れないけど、一緒に行く人の分は別の人に譲れるとか、最近はチケットに名前を入れたりしていますが、この電子チケットにも名前を入れられるので、色んなタイプのオークション対策ができますね。
── このシステムを利用するためには、EMTGカード会員になっている必要があるんですか?
冨田:9月頃にはスマートフォンのチケット画面も顔写真を表示できるようにする予定ですので、今後はカードを作らなくてもいいようになります。
── 実際に使ってみて改善点はありましたか?
冨田:幸いなことに特にありませんでした。何人の人が事前にアプリをインストールして、どの端末でアクセスしたか、非対応がどれくらいなのかなど端末情報が分かっていたので、案内が事前にできたことも非常に大きかったのかなと思います。
── では、好評な意見が多かった?
冨田:はい。プレイガイドさんにも見に来て頂いていて、具体的に提携の話も進んでる段階ですね。
── プレイガイドと提携する他に、事務所とダイレクトに提携する場合もあるんでしょうか?
冨田:もちろん事務所さんに提案することもあるんですが、基本的にはプレイガイドさんと組みたいと思っています。プレイガイドさんが売ったチケットに対して、配券サービスの一つとして電子チケットを使って頂く。プレイガイドさんとともに電子チケットを広めていきたいと考えています。
── ちなみに、電子チケットで購入した場合どのようにチケットを受け取れるんでしょうか?
冨田:プレイガイドさんで購入されたメールアドレスと電話番号で「EMTG電子チケットアプリ」にログインして頂ければ表示される仕組みを現在は考えています。
https://www.youtube.com/watch?v=MWHRAnMd_vM
EMTG独自の付加価値を付けた電子チケットにしたい
── 本当に楽になりましたね。例えば、アーティストでも自分のライブで導入したいと思う方もいらっしゃると思うんです。そうなった場合は直接御社に相談すればいいのでしょうか?
冨田:一部ファンクラブイベントや、小規模のイベントは直接販売している場合もありますので、まず我々にご連絡していただければと思います。ただ、このサービスを普及させていくために、プレイガイドさんと共存共栄することを今は考えてます。
── 夏フェスなどは何万人と大規模になりますが、そこまで大きくなったとしても問題なく導入できるのでしょうか?
冨田:大丈夫だと思います。
入場時の様子
── 規模に左右されない上に手間もかからず自由度も大きいですよね。かなり拡がる可能性を感じます。
冨田:どんどん拡げていきたいと思ってます。夏フェスだともっと色々なことができると思ってまして、タイムテーブルを入れたり、地図を入れたり、出演アーティスト情報を入れたりと、電子チケットだけではなく、色々なコンテンツが入ったものになると思います。
── 元々EMTGではスマートフォンのファン公式サイトの運営もされていますよね。
冨田:はい。電子チケットだけではなく、どちらかというとコンテンツやライブ会場でくじ引きができる企画を作ったり、そういったことが我々の本業でもあるんです。ですから、その経験を生かして、弊社ならではの電子チケットにしたいなと思っていますね。
── 最後に「EMTG電子チケット」の今後の展望をお聞かせ下さい。
冨田:まず、この電子チケットは、現場のオペレーション費用が非常に抑えられるので、お客様から送料と同じような金額をいただくだけで運営費が捻出できるというのが一番大きいですね。
また、スマートフォンユーザーにとっては、コンサートチケットも紙じゃなく、電子チケットの方が便利だと思いますから、スマートフォン化が進んでいる今がチャンスだと思いますし、加えて、我々EMTGはオークション対策やオリジナルの付加価値も付けることができますので、事務所さんにとっても、ファンの方にとっても喜んでいただける、アーティストとファンをつなぐ電子チケットサービスにしていきたいと思っています。