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ソニーミュージックが音楽人養成クリエイティブ講座フェスを始動「Sonic Academy」 インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

音楽人養成クリエイティブ講座フェス「Sonic Academy」
音楽人養成クリエイティブ講座フェス「Sonic Academy」

 ソニーミュージックが初の音楽人養成クリエイティブ講座フェス「Sonic Academy」を9月13日より開催する。3日間におよぶ会期で行われる講座は40を超え、豪華な講師が登壇するユニークかつ現場直結な授業内容が同フェスの大きな魅力だ。ソニーミュージックのノウハウ、また、第一線で活躍する講師陣のヒットの秘訣を知ることができる貴重な機会となるだろう。“講座フェス”「Sonic Academy」の狙いや今後の展開について、ソニー・ミュージックレーベルズ 執行役員専務 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント チーフ・ゼネラルマネージャー 高木伸二氏(※高ははしごだか)にお話を伺った。
(Jiro Honda、Yuki Okita)

2014年8月22日

 

  1. レコード会社ならではのノウハウをフェス感覚で伝える
  2. 講座数は40以上、第一線で活躍する豪華な講師陣
  3. 音楽関係者も大歓迎!プロも納得の授業内容
  4. “音楽のプロ”として、これから伝えていけること

 

レコード会社ならではのノウハウをフェス感覚で伝える

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ 執行役員専務 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント チーフ・ゼネラルマネージャー 高木伸二氏
▲株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント チーフ・ゼネラルマネージャー 高木伸二氏

——「Sonic Academy」の開催を初めて知ったとき、ソニーミュージックもいよいよこういうイベントを手がける時がきたか、と思いました。

高木:実は、十数年前から教育事業にトライしようというアイデアは何度も出ていましたが実現できていませんでした。今回は、レーベルの新企画プロジェクトと、ソニー・ミュージックエンタテインメントのCPグループ(音楽制作のサポート部門)、さらにSDグループ(新人開発部門)で、ほぼ同時期にエデュケーション系の企画が持ち上がりました。去年SDで実施した、いしわたり淳治さんの講座がとても好評だったので、もっと規模を大きくしてフェス感覚で自分の好きな講座を選べたらいいよね、という話から部門横断的な企画として「Sonic Academy」に至りました。

——これまで培われてきたソニーミュージックのノウハウが開放されるといいますか、貴重な機会になりそうですね。

高木:我々ソニーミュージックは、アーティストをはじめ、作曲家、作詞家、アレンジャー、プロデューサーなど様々な才能を持った方々と長年接してきました。そして、そこで得られたノウハウというのは、やはりレコード会社ならではのものだと思います。ですので、「Sonic Academy」ではそのノウハウを学校とは違う我々なりの届け方で伝えていければと考えています。

——講師のみなさんもとても豪華です。

高木:現在も第一線で活躍されていて、今の時代の考え方や、音楽の真髄を伝えていきたいという意識を持たれている方々が揃いました。講師のみなさんも、ご自身の持っているノウハウを発信することに対し、とても興味を持っていらっしゃるようです。

——初めての開催でいきなり3日間というのは、ソニーミュージックさんの本気を感じますね。

高木:思い切りましたね、実際走り出してから大変でしたが(笑)。でも、夏フェスや文化祭のような雰囲気を出すためには、これくらいのスケール感があった方がいいですからね。タイムテーブルを見てスケジュールを考えるワクワク感ってあるじゃないですか。エンタテインメントを提供する会社なので、そういった楽しさの要素はきちんと演出したいなと思いました。

 

講座数は40以上、第一線で活躍する豪華な講師陣

音楽人養成クリエイティブ講座フェス「Sonic Academy」講師陣
▲いしわたり淳治氏、冨田恵一氏、岸田繁氏ら豪華な講師陣

——講座数は40を越えるということですが、それぞれ濃い内容ですね。

高木:作詞や作曲はもちろん、アレンジ、DTM、レコーディングなどからビジネス的な内容のものまであります。あまりオモテに出ることのないプロフェッショナルな現場の生の声が、講座というきちんとした形で聞ける機会は中々ないことだと思います。

——普段、ネットや雑誌で得るものと本物は違うでしょうね。

高木:音楽に本気で携わりたい、そして現在携わっている方にもきっと満足していただける内容になっていると思います。その上で、初心者の方も楽しめる講座もありますので、間口を広く用意させていただいています。

——それぞれ興味深い講座ばかりなのですが、その中でも高木さんが注目している講座はありますか?

高木:個人的に仕事で関わっているということもあるのですが、松井五郎さんの講座です。松井さんはいつも我々の意図を汲み取りつつ、作品にしていただける。そのクリエイティビティには、毎回本当に驚かされますし、深く感銘を受けますね。松井さんは今回担当していただく講座のためにわざわざ曲を事前に提供して、参加者の方に詞を書いてきてもらったりと、既にモチベーション高く取り組んでいただいています。

——まさに実践的ですね。

高木:あとは、須藤晃さんの講座も面白いと思います。元々弊社の社員として尾崎豊や浜田省吾を手掛けていた方で、私がA&Rの中で一番尊敬している方です。彼がなぜ浜田省吾や尾崎豊に目を付けたかというのは、制作側にとっても興味深いところですよね。彼の講座では、アーティストのどこに魅力を感じ、作品を一緒に作っていこうと思ったかを赤裸々に語っていただけると思います。須藤さん自身もこういった話をするのは初めてだそうですよ。

——貴重な講座になりそうですね。

高木:他にもCHOKKAKUさんの「楽曲ビフォーアフター・アレンジ講座」では、アレンジやエッセンスひとつでサウンドが大きく変わるということを実感させてくれると思います。楽曲が持つ無限大の可能性を学べると思います。

 

音楽関係者も大歓迎!プロも納得の授業内容

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ ソニー・ミュージックレコーズ 制作部 gr8!ルーム1プロデューサー 灰野一平氏
▲株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ ソニー・ミュージックレコーズ 制作部 プロデューサー 灰野一平氏

——灰野さんも現役A&Rとして講座を担当されますね。

灰野:例えば我々A&Rが作家さんのデモ・テープをどのような観点で聴いているかというのは普段オモテに出ない話ですよね。曲を作っている方の観点とは違う観点で、我々が曲を選んでいる場合も多々あると思うんです。ですので、こんな風に視点を変えたらもっと作家さん自身の音楽を広められるかもしれません、というお話ができると思います。実際、私自身が作家さんに近い立場で音楽制作に関わっている時の観点と、直接音にタッチしない立場で制作をお願いしている時の観点というのは、自分の中でも微妙にズレを感じたりしますからね(笑)。各サイドのこだわりがお互いなかなか伝わらないというか。きっとコミュニケーションの問題も大きいと思うので、ちょっとした相互理解で世界が広がると思います。そういった部分も上手く伝えられれば良いなと思います。

——現段階では、どのような方の申込が多いですか。

高木:幅広いですね。年代もそうですし、地方からお申し込みもいただいています。実際にプロとして活動されている方からのお申し込みもあります。

——現在音楽業界で働いている方も参加したら新しい気付きがありそうですね。

高木:そうかもしれませんね。普段仲が良い同業者同士でも、仕事の具体的な話になるとなかなか聞きづらかったりしますからね(笑)。この機会に、他所のノウハウやコツを知ることができると思います。我々自身も、今まで知らなかったことをたくさん聞けそうな気がしていますから(笑)。

——音楽は感覚的なので、言語化されたやりとりのコツというのは確かに気になります。

高木:例えばマスタリングにしても、我々でさえ今までなんとなくわかったふりしていたような部分もあると思うんですよね(笑)。エンジニアが何にどうこだわっているか、抽象的には把握できていたかもしれないですけど、そういったことを具体的に改めて知ることができると思います。

——では業界の人が講座を受けに来ることも…

高木:もちろん大歓迎です(笑)。ソニーミュージックの枠を越えた講師の方にも沢山参加していただいていますしね。音楽産業全体として、盛り上がっていければ良いなと思っています。アマチュアの方はもちろん、プロの方にも満足いただける講座だと自負しているので、騙されたと思って受けてみてください(笑)。

音楽人養成クリエイティブ講座フェス「Sonic Academy」タイムテーブル 9月13日
▲9月13日(1日目)タイムテーブル

 

“音楽のプロ”として、これから伝えていけること

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ 執行役員専務 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント チーフ・ゼネラルマネージャー 髙木伸二氏

——今ソニーミュージックさんがこういうことに取り組むというのは、音楽に関わる後進育成の必要性を感じている?

高木:今は昔に比べて色んなことのハードルが下がってきていると思うんですね。楽曲を人に聴いて貰いたかったらYouTubeやニコニコ動画などで気軽にアップできる。それは本当に素晴らしいことですし、裾野が広がっていることは確かだと思います。ただ、長年音楽を生業としてきた我々の立場からすると、才能の伸ばし方や作品の作り方などにおいて、プロだからこそできることがあると信じています。そういったノウハウを今回の「Sonic Academy」を通じて提供することが、個々のレベルアップ、ひいては音楽全体の底上げにつながると思います。ちょっとしたアドバイスで飛躍的に伸びていく方は本当に多くいらっしゃいます。ただ、その“ちょっとしたアドバイス”というのが、簡単なようで実は気が遠くなるようなプロセスを経た結果にやっと得られるものだったりするので、その部分でお役に立てればと思います。

——テクノロジーが発達して、ボトムが厚くなっている感覚はありますが、プロとアマチュアにはどうしても違いがあるので、そこを上手くつなげると。

高木:ゆくゆくはそういったノウハウを全部網羅して、”音楽教育”と言ったらおこがましいのですが、トータルで提供していけたらいいですね。

——ソニーミュージックが営々と築かれてきた叡智やプロのスタンスが、若い世代にどんどん伝わればまた面白い音楽がでてきそうです。

高木:音楽というのは実はこんなに時間とお金かけて作っていたんだというのを分かって貰えるだけでも嬉しいですね(笑)。あと、やっぱり少しでもソニーミュージックという会社のことを知ってほしいというのももちろんあります。

——「Sonic Academy」はソニーミュージックが教育事業を本気でやっていく最初の一歩になりますか。

高木:音楽って「ゆりかごから墓場まで」人生とともに歩むものというものだと思うんですよ。人間には0歳から音を聞き分けられる能力があって、老人になっても音楽とずっと付き合っていける。人生を共に歩んでいく”音楽”をどうやって生活の中でもっと有意義なものにするかを考えたときに、使命といったらおこがましいのですが、やはり音楽のプロとして我々にはそういう音楽の使い方をきちんと提案していく役割があるんじゃないかなと感じています。

——音楽を使って生活を豊かにすると。

高木:こんな音楽の使い方もありますよということを、ライフスタイルに合わせて提案できればと思います。それは、日本だけじゃなくアジアの各国をはじめ世界にも広めていきたいですね。

——「Sonic Academy」もグローバルに展開されますか?

高木:ありがたいことに、日本の楽曲制作のノウハウに対してリスペクトしてくれる方がアジアを中心にたくさんいらっしゃるので、海外の方にも、日本の音楽制作現場で蓄えられてきた知識や技術を知っていただければ嬉しいですね。

——今後も「Sonic Academy」は継続的に開催されるのでしょうか?

高木:今回を皮切りに、今後は年1〜2回は開催していきたいですね。さらに、その中から需要の高い講座も見えてくると思うので、それを独立させて別軸で展開するということも考えられると思います。あと、「Sonic Academy」は発掘の場でもあると思うので、プロとして活躍する新たな才能が育つ場所としても展開していきたいですね。