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“プロ基準”で話題の少数精鋭セミナーの実際 潜入!プロ作曲家育成「山口ゼミ」講座レポート ゲスト講師:鈴木daichi秀行氏

インタビュー スペシャルインタビュー

左から:山口哲一氏、鈴木daichi秀行氏

2013年1月の開講以来、受講生が120名余りとなった「山口ゼミ」。Musicman-NETの「スペシャルインタビュー」でも、主宰の山口哲一氏と副塾長の伊藤涼氏の対談を何度か掲載してきたのでご存じの方も多いだろう。多くのプロも輩出して、注目を集めている「山口ゼミ」では実際にどんなことをやっているのか、講義に潜入してみた。これは、その実録レポートだ。

山口 哲一(やまぐち・のりかず)
音楽プロデューサー/コンテンツビジネス・エバンジェリスト/(株)バグ・コーポレーション代表取締役


1964年東京生まれ。『デジタルコンテンツ白書 (経済産業省監修)』編集委員、プロ作曲家育成「山口ゼミ」主宰、「Start Me Up Awards」オーガナイザー。SION、村上“ポンタ”秀一、佐山雅弘、村田陽一などの実力派アーティストをマネージメント。東京エスムジカ、ピストル バルブ、SweetVacationなどの個性的なアーティストをプロデューサーとして企画し、デビューさせる。プロデュースのテーマに、ソーシャルメ ディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションの3つを掲げている。2011年頃から著作活動も始め、パネルディスカッションのモデレーターやコ ンテンツ系ITサービスへのアドバイザーとしても活躍している。著書に、『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ふくりゅうと共著/ダイヤモ ンド社)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(共著/小社)、『プロ直伝!職業作曲家への道』(小社)、『世界を変える80年代生まれの起業 家』(SPACE SHOWER BOOKs)がある。
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鈴木daichi秀行(すずき だいち ひでゆき)
作曲家/編曲家/ギタリスト


1994年ConeyIslandJellyFishのメンバーとしてメジャーデビュー。近年はサウンドプロデューサーとしてバンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かし活動する傍ら新たな才能を求め新人発掘、育成などにも力を入れている。
<プロデュース、アレンジ代表作>
YUI「CHE.R.RY」絢香「三日月」家入レオ「チョコレート」いきものがかり「KISS KISS BANG BANG」モーニング娘。「Do it! Now」miwa「春になったら」smap「FIVE RESPECT」ダイスケ「あなたにしかできないこと」他
鈴木daichi秀行オフィシャルサイト

 

第6期の受講生は女性の比率が高い!

2014年9月某日、高田馬場・東京コンテンツプロデューサーズ・ラボにて。

土曜日午後の高田馬場駅。駅から徒歩数分の東京アニメーション専門学校の中に、東京コンテンツプロデューサーズ・ラボがある。「山口ゼミ」は、この東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ内で開講している少数精鋭のゼミ形式のセミナーとなっている。
この日は13:00から鈴木daichi秀行さんをゲストにした第6期生講座「ヒットプロデューサー列伝」と、第5期extended講座の「プロ直伝! DAW秘伝」が行われるという(※extendedは卒業生を対象とした上級コース)。
第6期の受講生は20名。女性が目立つと思ったら、最近は女性比率が上がって、なんと7名が女性だそうだ。大学生から50代まで年齢層の幅が広いのも「山口ゼミ」の特徴となっている。
2ヶ月間全8回の講座の中で、今日は6回目に当たる。第3回では浅田祐介さんがゲストで、 既に何回か懇親会もあったとのことで、受講生同士はすでに打ち解けた様子だ。 そんな中、塾長/プロデューサーの山口哲一さんと、鈴木daichi秀行さんが登場。講義の様子を、ダイジェストでレポートしていこう。

  1. 「Bitter & Sweet」でのDAWの使い方
  2. ソフトシンセの音選びの秘訣
  3. デモ作りで気を付けるべきこと

 

「Bitter & Sweet」でのDAWの使い方

山口:皆さん、こんにちは。鈴木daichiさんをゲストにお迎えしました。

一同:(拍手)

鈴木:こんにちは、鈴木 daichiです。僕はアレンジをしたり、曲を書いたり、最近ではプロデュースということで、アーティストと一緒に曲を作ったり、あとはレコーディングやミックスもしたりしています。数としては、アレンジが多いですかね。

山口:鈴木さんはStudio Cubicという素敵な仕事場をお持ちで、CubaseとPro Toolsを使って制作を行っています。で、今日はそんな鈴木さんがかかわった作品のお話を伺ったり、デモ作りの作法を伺ったりできたらと思います。では早速ですが、Bitter & Sweet「Bitter & Sweet」について教えていただけますか? 鈴木さんはアレンジ&レコーディングエンジニアとしてかかわっていらっしゃいます。

鈴木:この曲はStudio CubicでCubaseを使って作業をした後でPro Toolsに移して、生ドラムに差し替えたり、歌も録ったりして、ミックスはまたウチでPro Toolsでやったパターンですね。

山口:いろいろな音が入っていて、かなり派手な曲です。

鈴木:アコギなんかでも、1フレーズ録ってはエディットして、みたいな感じで8トラックくらいあるのかな。リバースしたり、ボディをたたいた音だったりを切り貼りして、はめ込んで作っている感じですね。

山口:アレンジ的にはアコギはどの段階で入れたんですか?

鈴木:割と最初ですね。仮のリズムにコードを付けながら作っていくことが多いのですが、これはアコギのリフから作った曲で、リズムのガイドを入れた後にはもう入っていたんじゃないかな? ちなみに、打ち込みのリズムは波形を貼っていますね。リバースしたクラップなんかも入っている。あとはループも結構入っているし、生ドラムもある。

山口:エレクトロセットと生のセットが共存している。

鈴木:そうですね。ループはそのまま活かしたりしつつ、ドラムをレコーディングして、キックは後で打ち込みの素材を貼ったりとかしています。その共存感が、面白いかなって。ループはSPECTRASONICS Stylusだったかな。

 

ソフトシンセの音選びの秘訣

山口:ベースはどうですか?

鈴木:ベースは2種類入ってて、1つはサイドチェーンのベースで、TONE2 SAURUS Analog Synthesizerを音源にして、NICKY ROMERO Kickstartをインサートしてサイドチェーンをシミュレートしています。これは便利ですよ(笑)。あとは普通に生のベースも入っています。

山口:ソフトシンセでも、プリセットだけでも膨大な音がありますけど、音選びの秘訣はありますか?

鈴木:一番良いのは、覚えておくことですね(笑)。“こういう音はここに入っている”とか、“このシンセはこういう音が出るよな”っていうのを、記憶しておくのが一番早いと思います。もちろん、お気に入りは自分のお気に入りプリセットとして取っておく、というのも大事です。あとは、ベルとかも入っているし、この曲はいろんな音が入ってますね。

山口:音源としてはどのようなものを?

鈴木:REFX Vanguardという音源をTRANS GATEというパラメーターで、“タタタータタータ”ってさせたり。パッドはTONE2 Rayblasterで、サイドチェーンをかけているほか、フィルターも動かしているのかな。それから、リードがSTEINBERG Retrolounge。あとはREFX NexusでAR WhistlingSinesというプリセットを使ったり、6種類くらいシンセが入っていますね。ピアノはXLN AUDIO Addictive Keysで、ディレイをかなりかけている。エレピがMODARTT Pianoteq4 Proのローズ。サビでストリングス(EASTWEST Goliath)とグロッケン(Pianoteq4 Pro)、シタール(UVI Plugsound Global Collection)かな。グロッケンは好きですね。ストリングスのフレーズはアタックが無いから見えにくいので、アタックを支えるのに入れておくと結構便利なんです。CNBLUEのプロデュース山口:Bitter & Sweet「Bitter & Sweet」についてかなり詳しく教えていただきましたが、もう1曲くらい簡単にご紹介いただけますか?

鈴木:CNBLUE「Robot」はどうでしょう?

山口:イケメンの韓国バンドですね。鈴木さんは編曲とプロデュースでかかわっていらっしゃる。

鈴木:メンバーはみんな役者もやっていて、ドラマに出たり、舞台に出たりもしています。韓国ではダンスミュージック系の方が世に出やすいみたいで、バンド系はなかなか難しいらしいんですけど、CNBLUEとFTIslandは韓国でもバンドスタイルで人気が出てきていて、それを日本でもやるということで、日本のマーケットに合う形で作るというのがミッションでした。

「Robot」は本人達が作った元デモから良くできていたので、さらにそれをブラッシュアップしていった感じです。部分的にコード進行を変えたり、サビ前などにギミック的な部分を作ったりシンセで色を付けていったりと。タイトルが「Robot」なので、Aメロなんかはギターを一度サンプリングして、サンプラーに取り込み、機械的な感じにしてみました。

山口:ライブでもちゃんと演奏できる人たちですよね。

鈴木:自分たちでちゃんと演奏して、曲も自分たちで作るんですよ。やりたいことの方向性もしっかり持っているので、一緒に音楽を作っていてとても楽しいですね。歌も上手だし、アイドルのように見えて実は完全にロックバンドですね。ただ、ドラマを見てファンになった方も多いと思うので、音楽の中身でしっかりと評価してもらえるように気を付けながら作った覚えがあります。

山口:バンド出身の鈴木さんですから、これは得意分野ですよね。でも日本のバンドでいま、こういうふうにカッコつけるのは難しいでしょう。

鈴木:日本のアーティストの場合、曲や音の分かりやすさが求められますし、洋楽的なサウンドアプローチに持っていくのが難しい側面もありますね。

山口:韓国のバンドだとそれで押しきれるから、お客さんにとっても良いですよね。

鈴木:ライブもアリーナクラスで動員もすごいですし、良い形で活動できていると思います。

 

デモ作りで気を付けるべきこと

プロ作曲家育成「山口ゼミ」講座

山口:ではこの辺で、鈴木さん流のデモ作りの作法みたいなものを教えてください。新人のデモを聴く機会は、やはり多いですよね?

鈴木:多いですね。Twitter経由とかで、会社にも個人にもデモが送られてきますから。

山口:そんな中で、よく思うことなどがありましたら。

鈴木:まずは、コード感も含めた展開のメリハリですかね。自分で曲を作るときも考えるんですけど、例えばメロの譜割りを意図的にAメロとBメロと サビで全く別のものにする。流れで作っていると、どうしても音符の並べ方が似てきちゃうんで、それを意図的に崩していく。サビで転調もしているのに、Bメロとサビの音符が同じ長さだったりすると、盛り上がり感に欠けるじゃないですか? だったら、サビの音符の数を増やして“サビが来た!”っていう感じにするとか。あとはアレンジでの聴かせ方とか、音色の詰め方が今一歩ということも多いですね。聴かせたいものを、ちゃんとはっきり聴かせたい場所に置くことも意識すると良いと思います。

山口:メロディに関してはいかがですか?

鈴木:ボカロはコンペで嫌がられる場合が多いから、仮歌にした方が良いと思います。

山口:確かにいわゆる大きなコンペでは、ボーカロイドというだけで落ちる可能性があるので、一般論としては仮詞を付けて作り上げるのが大事です。コンペって“どう目立って残っていくか”ということなので、つじつまは合わないでも良いから、ところどころに良い言葉を入れて、使えるものはなんでも使って、記憶に残ることを意識するべきですね。

鈴木:日本語の歌の場合、メロディと歌詞って相性みたいなものが重要なんですよね。メロディを覚えるときに、歌詞も一緒に覚えられるものが、すごく印象に残る曲だったりする。だから仮歌詞でも、キャッチーなワードを用意しておいた方が良いと思います。あと、歌は大きめが良いですね。

山口:コンペでは、“メロディをお買い上げいただく”と考えてほしいですね。

本日は長時間ありがとうございました。曲解説や、デモ作りのノウハウなど、貴重なお話をたくさん伺えたと思います。そんな鈴木さんの、モチベーションの部分もお聞きしましょう。長く活動されていて、やる気が出ないときもあるかと思いますが(笑)、いかにモチベーションをアップしているのでしょうか?

鈴木:ちょっと気を抜くとモンハンをやっていたりするので(笑)、やる気が出るまでの時間をどうするかは大事ですよね。僕の場合は、締め切りの前は仕事で埋めてしまって、自分を追い込むようにしています。結局追い込まれないと、なかなかやらないので……。特にこういう仕事をしている人は、そんなにきっちりしていないし、どっちかと言えばちょっとだらしないんですよね。まあ、僕だけかもしれないですけど(笑)。それで、やることを入れて時間を無くして、やらざるを得ないという状況に追い込む。僕の場合はそうやって、やる気を出すというか、やらないといけない状況にする(笑)。実際、ちょっとやり始めればエンジンがかかって、回ってくるんですよ。だけど、最初の「やろう!」っていうエンジンのキーを回す作業が、意外と長くなってしまいがちなんです。

山口:面白いしリアルなお話ですね(笑)。では最後に、鈴木さんがいま持っている目標や夢を教えていただけますか。

鈴木:いろんな音楽ジャンルが好きで、仕事もアイドルからアニメから韓国のバンドもやるし、シンガー・ソングライターもやる。それでいろいろ見ていて、いまはアーティスト系に元気が無いところがあったりしますよね。いろんなものを好きだけど、やっぱり原点としてはそこだったりするので、アーティストが生きていける環境を大事にしていかないといけないなって思っています。それはメジャーのシーンの中で残るというのも大事だし、もしかしたらインディーズ界隈の中で、ちゃんとアーティストが食べていける環境を、いまのいろんな流れの中で作っていけたらよいのかもしれない。そんなことを、いまは思っています。

山口:素晴らしいですね。どうもありがとうございました。関連書籍もすでに2冊が発売中!駆け足でレポートしたが、ここでは書けないクローズドなゼミならではの話題も多かったことは付け加えておこう。このように、よりリアルな情報に触れられるほか、疑似コンペへの参加なども「山口ゼミ」ゼミ生の特権と言えるだろう。未来の作曲家・クリエイター志望者は、ぜひ「山口ゼミ」の門をたたいてはいかがだろう?

また、「山口ゼミ」での講義を元にした書籍が、すでに2冊発売されている。『プロ直伝! 職業作曲家への道』では、プロの作曲家として必要なさまざまなノウハウを多数のサウンドプロデユーサーやディレクターが披露している。また『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』では、5名のクリエイターが実際の楽曲データをひもといてDAWの使い方を解説している。「山口ゼミ」のクオリティや雰囲気を知りたい方には、オススメの2冊となっている。

山口哲一著『プロ直伝! 職業作曲家への道』
プロ直伝! 職業作曲家への道
曲作りを仕事にするための常識と戦術、そして心得
著者:山口 哲一
定価:1,944 円(本体1,800円+税)
仕様:A5判/176ページ
発売日:2013.7.12
ISBN:9784845622733
詳細:http://www.rittor-music.co.jp/books/12317323.html

 

山口哲一著『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』
DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること
著者:山口 哲一
定価:1,944 円(本体1,800円+税)
仕様:A5判/192ページ
発売日:2014.9.19
ISBN:9784845624980
詳細:http://www.rittor-music.co.jp/books/13317321.html

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