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新時代の音楽ビジネスを担う人材を育成 第3期『ニューミドルマン養成講座』がスタート! 山口哲一氏 インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

山口哲一氏

音楽プロデューサー、アーティストマネジメント業から活動領域を広げて、変動期の音楽ビジネスの枠組みそのものに関わる活動で活躍される山口哲一氏。エンタメ系スタートアップを支援するアワードや、音楽家とプログラマーがチームを組むハッカソンなど新時代に即したユニークなプロジェクトを企画されている。さまざまなセミナーや書籍の出版など、これまでの「コンテンツビジネス・エバンジェリスト」としての活動と、音楽プロデューサーとしての経験を集大成した書籍『新時代ミュージックビジネス最終講義』の出版、第3期となるニューミドルマン養成講座について、お話を聞いた。

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山口 哲一(やまぐち・のりかず)
音楽プロデューサー/コンテンツビジネス・エバンジェリスト/(株)バグ・コーポレーション代表取締役


1964年東京生まれ。「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動も始める。エンタメ系スターアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズ。プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど次世代の育成にも精力的に取り込んでいる。異業種横断型のプロデューサー。 著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『世界を変える80年代生まれの起業家』(SPACE SHOWER BOOKs)、『とびきり愛される女性になる。』(ローソンHMVエンタテイメント)『最先端の作曲法・コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
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  1. ニューミドルマン養成講座3期のテーマはサブスクリプション型音楽ストリーミング
  2. 経験を集大成した書籍『新時代ミュージックビジネス最終講義』を出版
  3. 「クリエイターズ・キャンプ」「START ME UP AWARDS」など実践的な企画で若い才能をサポート

 

ニューミドルマン養成講座3期のテーマはサブスクリプション型音楽ストリーミング

——書籍の出版、ニューミドルマン養成講座3期の開催決定、おめでとうございます。どちらも日本についに上陸したサブスクリプションについて扱われている部分が目を引きますね?

山口:ありがとうございます。サブスクリプション型音楽ストリーミングは、新しいサービスなので、誤解や思い込みによる言説も多く見られるようなので、俯瞰した視点から、できるだけわかりやすく書いたつもりです。様々な考え方があってよいのですが、基本的にはユーザーが音楽に触れる機会が増える、アーティストにとっては選択肢が増えるという意味でポジティブな気持ちから捉えていくべきだと思っています。

——ニューミドルマン養成講座でも、Google Play Musicの鬼頭さん、AWAの小野さん等をゲスト講師に招かれています。どのような講座内容を考えられていますか?

山口:僕がセミナーをやる時はいつもそうなのですが、実業のリアリティを受講生に感じてもらうのが目的です。お二人とも、実際にサービスの開発、権利者との交渉、調整をして、ユーザーの近いところにいる方なので、貴重なお話が聞けると、僕自身楽しみにしています。

——たしかに、これだけ注目されている中、現場の方の話を聞く機会は少ないです。

山口:11月だと、ちょうどApple Musicの初期の無料期間も終わって、ストリーミングサービスについて、最初の総括をするタイミングになりますから、時期的にも良いかなと。

ニューミドルマン養成講座
第2期「ニューミドルマン養成講座」の様子

——サブスクリプションと既存の音楽業界の共存は可能だとお考えですか?

山口:もちろんです。そのためには、既存の音楽業界がサブスクリプションサービスも含めて、ビジネスモデルを再構築する必要があるのでしょうね。

——そのために必要なことは何でしょうか?

山口:ユーザーの立場に立って、「デジタルファースト」の考え方で、音楽ビジネスを見つめ直して、自分たちの役割や価値を再定義することだと思います。

——「デジタル」に取り組むことで「パッケージ」や「ライブ」も、活性化するということでしょうか?

山口:アメリカ市場は極端に振れていくので、CD⇒iTunes⇒Spotifyと主役が変わっていきますが、ヨーロッパでは、パッケージとデジタルがバランスよく市場を形成している国も多いです。CD市場が残っているドイツがストリーミングサービスの普及で音楽業界売上が上向いた例などは日本にとって示唆的ですね。

 

経験を集大成した書籍『新時代ミュージックビジネス最終講義』を出版

——「ニューミドルマン」についてお聞かせください

山口:まさに新時代の音楽ビジネスを担う人材だと考えています。田坂広志さんがおっしゃっているように、「情報革命」でユーザーが主役になった時に、従来の中間会社の役割が変わるわけです。

僕が、この言葉を使うのは2つの意味があります。一つは、A&Rとかマネージャーとかプロモーターとかのこれまでの職域の区別が溶けていって、「ユーザーとアーティストの間の仕事」という風に一つに捉えたほうが適切だということ。もう一つは、ネットビジネスで言われがちな、「すべて中抜きされて、アーティストとユーザーがプラットフォーム上で完結する」という言説へのアンチテーゼで、そこにプロフェッショナルは必要ですよ、ということです。

——新しい時代にこそスタッフの力が必要とされるわけですね。

山口:レディ・ガガのマネージャーとして、彼女を成功に導いたトロイ・カーターが、スタ―トアップのサービスを支援するエンジェルになっているのが目を挽きますね。

日本の音楽業界でもヒット作を出すA&Rやマネージャーは、優秀なマ―ケッターとしてのセンスを持っているものでしたが、環境の変化で、デジタル時代への対応する知見がこれまで以上に求められていますね。

——音楽ビジネスについて、網羅した内容となる今回の書籍を書こうとしたきっかけは?

山口:正直、葛藤はありました。自分の本業について本を書くというのは。批判されることも覚悟しないといけませんし。ただ、音楽業界を改革するためには、こういう書籍が必要だという使命感が上回りました。僕は「音楽ビジネス評論家」みたいになるつもりは全く無いので、音楽プロデューサーとしてのリアリティで、これから音楽ビジネスに関わって、変えてくれるだろう新しい人に向かって、知っておくべきこと、基本的な考え方をまとめたつもりです。

山口哲一 著書『新時代ミュージックビジネス最終講義 新しい地図を手に、音楽とテクノロジーの蜜月時代を生きる!』
山口哲一 著書『新時代ミュージックビジネス最終講義 新しい地図を手に、音楽とテクノロジーの蜜月時代を生きる!』

——今回の著作では、アニメ会社ゴンゾ代表の石川真一郎さん、金融系シンクタンク日本総合研究所の東博暢さんといった、世界を舞台にビジネスされている方と、国内外の音楽ビジネスについて語られています。業界外の方と日本の音楽ビジネスについて語るということは珍しいのではないでしょうか?

山口:僕の本はいつもそうなのですが、友人たちの助けがあって成立しています。いろんな業種に優秀な友達がいるのが僕が自慢できる数少ないことなんです。

第二章では、PANDORAの時価総額が高くなっていることや、Google、Apple、FacebookなどのグローバルIT企業の音楽サービスに対する姿勢が、日本で音楽ビジネスをする時に無関係では無い時代になっているということを伝えています。

これまでの業界はタコツボ的で、内向きでもやっていけましたけれど、これからは、できるだけ視野を広く、俯瞰して見られることが、成功の鍵だと思っています。

——日本の音楽ビジネスが遅れているとお考えですか?問題点はどのようなことだと考えますか?

山口:デジタル配信への対応という意味では欧米に比べて3〜4年遅れているのは事実ですね。ただ、今年は、LINE MUSICもAWAもApple Musicも始まって、動き始めているので、期待しています。

——日本の音楽ビジネスの優れている点はどういうところだと思いますか?

山口:たくさんありますよ。CDビジネスを幹にした従来型スキームは、そもそもは、とてもよい仕組みだったと思います。再販制度と特約店制度で、ヒット作が産む資金が、新人育成にも回される生態系を形成していました。

——新人アーティストの育成が困難になっている事が、日本の音楽業界の問題と指摘されていますよね。

山口:それに、音楽を愛する人達が、アーティストを大切にするという文化が日本の音楽業界にあるのは素晴らしいと思っています。パーツとして捉えれば優れている仕組みもたくさんあります。日本は地方の小さなライブハウスで可能性のあるバンドが出てきたら、その情報が東京のレコード会社や事務所に届いて、メジャーデビューへの道が拓かれますが、アメリカでは考えられない現象です。

——こういった優れた仕組みをデジタルなサービスが破壊すると考える人もいらっしゃいます。

山口:ストリーミングサービスの普及がCD市場を置き換えるものと捉えるのは間違っていると僕は思います。むしろラジオなどのメディアの発展形で、ユーザー間のコミュニケーションを促進するのがストリーミングサービスです。一方で、好きなアーティストの作品をコレクションしたいという「所有欲」が、それでは満たされません。実際、デジタル配信が主流になったらアメリカではCD売上は激減する中、アナログレコードの生産量がすごい勢いで伸び始めています。デジタルサービスとパッケージは補完して相乗効果を産むと捉えるのがニューミドルマン的な感覚です。

——まさに「共存」ですね。

山口:そうです。脳みそを柔らかくして、変わるべきところは変わらないと、日本の良い部分も守れないです。

また、これからは国内市場だけでは成長できないので、海外市場を取りこんで行かないといけないのですが、既にJポップやアニソンなどのコアファンが世界中にいてくれるのは、すごいチャンスですよね。

 

「クリエイターズ・キャンプ」「START ME UP AWARDS」など実践的な企画で若い才能をサポート

——新しい取り組みとしては、先日開催されたクリエイターズ・キャンプ真鶴はいかがでしたか?

山口:クリエイティブな環境の中で音楽を中心にオールジャンルのクリエイターが集まって、新たな出逢いがあって、作品が産み出される、そんなクリエイターが主役のフェスティバルをやりたいと思って始めました。真鶴町の役場や地元の方々が親身になってくださって、本当にありがたかったです。

——素晴らしい盛り上がりでした。

山口:今回は、昨年から始めた音楽家がチームに必ずいるハッカソンと、プロ作曲家が3人一組になって0からデモを完成させるコーライティング・セッション、それに一般向けにコーライティングのワークショップの3つをやりました。 ミュージシャンズハッカソンは、一流の音楽家と優秀なプログラマーが一緒にアイデアを出してサービスやプロダクトを具体化していくので、近くにいるだけでワクワクします。コーライティングは最終日の試聴会のデモがどれも素晴らしくて感動しました。これからプレゼンをしていくのですが、採用曲はたくさん出るでしょうね、ヒット曲になることを期待しています。
次回以降、映像クリエイターなども巻き込めるような企画を増やしていきたいです。

「Creators Camp in 真鶴」開催、国内コーライト&ハッカソンの新しい形を提示
「Creators Camp in 真鶴」開催、国内コーライト&ハッカソンの新しい形を提示
「Creators Camp in 真鶴」開催、国内コーライト&ハッカソンの新しい形を提示

——これからの時代の音楽スタッフ、音楽ビジネスに携わる人に伝えたいことは?

山口:時代が変わるということは、新規参入する人にチャンスがあるということです。僕は2013年に若手起業家を紹介する書籍(『世界を変える80年代生まれの起業家』/Space Shower Books)を出版したり、音楽に関係するITサービスの起業家を支援してきています。彼らは音楽を非常に愛しているし、新しい音楽の楽しみ方を生み出してくれます。

——「音楽愛」を持った起業家に期待したいですね。

山口:昨年からは、エンタメ系のスタートアップを支援するSTART ME UP AWARDSをコンテンツ業界の有志の方々と一緒に始めました。1年目の内容が評価されて、今年からは、経産省主催のデジタルコンテンツEXPOの中で、最終審査会をやらせてもらうことになっています。「ニューミドルマン養成講座」でも、音楽を愛する優秀な若者をたくさんサポートしています。