完全なイマーシブ体験を提供 ー YouTubeがVR × 音楽の可能性を広げる「360度ライブストリーミング」を開始
「VR元年」と言われる2016年、「PlayStation VR」や「Oculus Rift」をはじめ、多くの企業がVRデバイスおよびコンテンツを発表。その市場規模は、2020年までに700億ドルになるともいわれている。ゲームなどのエンターテイメントや医療など、幅広い分野での活用が期待され、音楽市場でもライブを中心に実用化が進んできた。
そんな中、YouTubeが4月18日、360度ライブストリーミングに対応したことを発表した。これまでは、アップロードされた360度の再生のみだったが、今後は360度動画をリアルタイムで楽しめるようになる。
この360度ライブストリーミングとは一体どんなものなのか。Googleの担当者にメールインタビューを行った。
——360度ライブストリーミング対応へ至った経緯と狙いは?
コンサート、スポーツの試合、ユーザーが行ってみたいと感じている場所など、ロケーションにとらわれずに「実際にそこにいる」体験の実現へとより一歩近づくために、YouTubeは進化を続けています。全方位動画 (360度3D動画) は、視聴者にイマーシブな体験を提供できるため、探索や「実際にそこにいる」かのような感覚を味わうのに最適です。私たちは、完全なイマーシブ体験を場所や時間を問わず、より多くのユーザーに提供することが目標です。
——360度ライブストリーミングの特徴は?
360度ライブストリーミングはユーザーにとってその場にいるような体験を提供します。360度ライブストリーミングや3Dオーディオは、ヘッドセットや特別な技術などを使うことなく楽しむことができます。360度ライブストリーミングは利用するデバイスを選ばないため、誰でもご利用いただけます。
——「コーチェラ・フェスティヴァル」での公開テストに対してどのような反応がありましたか?
数百万を超える視聴者数を記録し、非常に良い反応を得ることができました。今後もより多くのコンサートとコラボレーションしていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZOKUySFj_jM
以下は、360度動画および3Dオーディオをサポートするイベント/コンテンツの一例です。
360度動画
認知度の向上に向けて、ジャック・ブラック主演映画「スクール・オブ・ロック」を基にした新しいブロードウェイショーが360度動画で撮影されました。この動画により、公演のチケット販売ページへのアクセス数は3倍近く増加し、舞台はスマッシュヒットを記録しました。現在、公演の週間興行収入は100万ドルを超えています。
BBCの制作チームによるこの4分間の映像では、巨匠デイビッド・アッテンボローが手掛けるコンピューターグラフィックと特撮によって、地球上で発見された最大の恐竜「ティタノサウルス」が動き回る様子を360度動画でお楽しみいただけます。
ゲーム内でお楽しみいただける360度動画による予告編です。
3Dオーディオ(playlist)
https://www.youtube.com/watch?list=PLEBAIYn_gPak-O7S75xP2zefyJXvfpr-e&v=n_81lA2YiPc
Congo: チンパンジーの足元で擦れる枯れ葉の音が、彼らの位置を示します。
https://www.youtube.com/watch?v=d7Sk5f4qIBA
HELP (Spotlight stories): 本作品は映画における3Dオーディオの例です。全方向BGMや登場人物や物体に応じた3Dオーディオが採用されています。(エイリアンの声、急ブレーキで止まる車、地下鉄駅が現実世界のように空間的広がりを持たない点、周囲の反響音が指向性を失っていく点、女性が未確認物体をエイリアンに手渡す場面等)
Fireworks: 画面を左右に動かすと、歓声の音が変化します。
今後の課題とは
——3Dオーディオはどのような機能でしょうか?
3Dオーディオは、現実と同じように全方位からの音声を体験できる技術です。360度の音場を捉えて再生することで、視聴者が360度動画を見回す動作に併せて音声が周囲を回転します。この機能を使うことで、製作者は360動画やVR動画にFirst Order Ambisonic(FOA)4チャンネルオーディオを加えてアップロードすることができます。3Dオーディオは、対応するAndroidデバイスでお楽しみいただけます。iOSやデスクトップなどといった非対応デバイスでは、ステレオにダウンミックスされた音声が再生されます。
——サービスローンチまでにどのような苦労がありましたか?
360度動画では、高画質の全方位動画をYouTube用に制作するために必要なカメラメーカーの対応や、HTML5、iOS、Androidなどといった異なるプラットフォーム上で全方位動画を再生することができるプレイヤーの開発などといった技術的な問題がありました。
3Dオーディオの開発に関する技術的な問題としては、YouTubeの3Dオーディオのアップロード仕様の設定、YouTube Andoidアプリにおけるバイノーラル レンダーの有効化、3Dオーディオ非対応プラットフォームに向けたステレオ ダウンミックスの配信などが挙げられます。
——360度ライブストリーミング配信に必要な機材や環境は?
360度ライブストリーミングには、360度カメラ(複数のモデルが発売されています)または360度動画を生成することができるゲーム機などが必要です。YouTubeは、Alliecam、Videostitch、Teradek、PanoStreamMod/CrushedPixel(Minecraft ゲームキャプチャー)などとパートナー提携を結んでいます。また、YouTubeはコンテンツ制作者と協力することで、プロダクションが放送事業者から360度ライブストリーミングの依頼を受けることができるように環境を整備しています。
▲360度カメラ
——どのような利用ケースを想定していますか?
完全なイマーシブ体験の提供においてどのような状況でもご利用いただければと考えています。
—— Oculus RiftなどのVRデバイスや製品への対応は予定されていますか?
すでにGoogleのCardboardおよび、Gear VRやOculusなどといったアプリに対応しています。今後は、メインYouTube AndroidアプリおよびVODにも提供されます。
——現在の課題は?
適切な360度動画形式で動画ストリーミングを送ることができるよう、カメラメーカーにデバイスを製造してもらう必要があります。その上で、YouTubeはストリーミングをコーディングして視聴者に配信します。視聴者は、周囲を見回すことができる360度ライブストリーミングを再生可能な特殊なプレイヤーを用意しなくてはなりません。また、素晴らしいイマーシブ体験を生み出すには、動画は高画質でなければなりません。YouTube Liveが1440p動画サポートを追加したのはこれが理由です。360度カメラは、通常の1080pHDビデオの倍近いピクセル数を送信することができます。
——日本のアーティスト、音楽業界へのメッセージをお願いします
日本のアーティストや音楽業界には、これら機能を使ってさまざまなことを試して欲しいと思います。私たちは、今後もYouTubeのパワフルなプラットフォームを活用する活動とコラボレーションすることで、ファンにその場にいるような体験(イマーシブ体験)の楽しさを提供します。
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