人気作品を接点に潜在的なハイレゾユーザーを掘り起こす ビクターエンタテイメント「ハイレゾ音源プレゼント・キャンペーン」がスタート
ビクターエンタテインメント
JVCネットワークス株式会社
セールスプロモーショングループ・ゼネラルマネージャー
遠藤 泰
ハイレゾ音源専門の配信サイト「VICTOR STUDIO HD-Music.」を設立するなど、ハイレゾマーケットの拡大を積極的に進めているビクターエンタテイメントが、対象CDアルバムから指定の1曲をハイレゾ音源で楽しめる無料ダウンロードクーポンを封入する「ハイレゾ音源プレゼント・キャンペーン」を6月29日よりスタートした。12月まで実施される今キャンペーンは、大原櫻子「V」、家入レオ「WE」、柴咲コウ「続こううたう」、ワルキューレ「Walkure Attack!」など、幅広い年代に人気のあるアーティストの作品が対象となっている。今回の施策の狙いからハイレゾの今後まで、ビクターエンタテインメントの関係会社、JVCネットワークスでサイトの運営を行っているセールスプロモーショングループ・ゼネラルマネージャー遠藤泰氏に話を伺った。
ハイレゾマーケットの拡大は第2段階に
——「ハイレゾ音源プレゼント・キャンペーン」はどのような経緯で実施することになったのでしょうか?
遠藤:2年ほど前からハイレゾ対応ウォークマンなどのハイレゾ機器が発売されたり、スマートフォンへの対応が進んだこともあり、「ハイレゾ」という言葉はずいぶん認知度が上がってきました。時期を同じくして提供楽曲も増え、気軽にハイレゾを聴く環境は整いつつあります。
しかし、それを実際に体験した人はまだまだ少なく、まずはハイレゾの音を体験してもらうことが重要なんじゃないかと常々感じていました。そこで、以前くるりやBUCK-TICKの限定盤アルバムで実施して好評だった、同様の特典施策を参考にして、今回の企画に至りました。
——昨年は「ハイレゾ元年」と言われ、メディアでも頻繁に取り上げられましたが、今年は一般ユーザーに浸透させるための第2段階に入ったという印象がありますね。
遠藤:我々もそのように捉えています。当初はジャズやクラシックのニーズが高かったですが、昨年からはアニメ系の音楽が売れ始めて、今ではJ-POPやロックを始め、幅広いジャンルの作品がランキングに入ってきています。売れ筋に合わせて、カタログもだいぶ充実してきました。
——キャンペーン開始時の対象作品を拝見して、若いユーザーをターゲットにしている印象を受けました。
遠藤:音楽ファンの一般層に向けた、という感じですね。年内に発売予定のビクター商品の中で、ハイレゾニーズが高そうな作品や、主力アーティストの作品などをピックアップする形でターゲットを広げていこうと思ってます。
▲キャンペーン開始時の対象作品
左上:家入レオ「WE」 右上:大原櫻子「V」
左下:柴咲コウ「続こううたう」 右下:ワルキューレ「Walkure Attack!」
——普段ヒットチャートを聴いているようなユーザーにもハイレゾを浸透させていきたい、ということですね。
遠藤:はい。今まではある程度ハイレゾに興味を持っている方に対して、ハイレゾがどんなものかを知ってもらう時期だと考えていましたが、今年は配信だったりCDだったり様々な音楽のひとつに、高音質の音源が含まれているようなフェーズに入ってきたんじゃないかと思っています。ハイレゾを特別なものではなく、音楽の聴き方の選択肢のひとつとして捉えてほしいですね。
——確かにハイレゾで聴くことが普通になれば、音楽の楽しみ方もさらに豊かになりますよね。
遠藤:音源のデジタル化によって、サブスクリプションなど、音楽をいつでも自由に楽しむことができるサービスができました。その一方で、デジタル化によって、CDに収まり切らない高音質の音源を提供できるようにもなってきました。音楽の楽しみ方はいろいろなので、我々はあらゆるフォーマットで音楽を提供していって、ユーザーに自分のライフスタイルに合わせて選んでもらえればいいのかなと思っています。
——音楽ライフスタイルの多様化に合わせていくと。
遠藤:そうですね。フィジカルもデジタルもそれぞれに良い面があるので、一つのフォーマットにこだわる聴き方もありですし、アーティストや作品ごとに別々のフォーマットで楽しむ聴き方もありだと思います。今回のキャンペーンは、まずは「こんな良い音で聴ける方法もあるんだよ」と知ってもらい、体感してもらうためのサポートという意味合いで考えています。
——ビクター全体がハイレゾを推してる印象があるのですが、やはりハイレゾ売上が急激に伸びているということでしょうか?
遠藤:2年前は売り上げが3倍に跳ね上がりましたし、去年は少し足踏みしたような印象もあるのですが、それでも前年比で言うと2倍近くの伸び率は示していました。その上で冒頭お伝えしましたように、ハイレゾを実際に体験した人が少ないということは、潜在的なユーザー数はまだ相当いるだろうな、と思っています。例えば、音楽ファン100人のうち80人くらいが体験したうえでの現状であれば、もうあまり伸びしろはないかな、とも思いますが、実感で言うと、100人中10人とか、まだそれくらいだと思っているので。
——まだまだ十分な接点が作れていない?
遠藤:はい。ですからまだハイレゾに接していない人に対して、定期的に仕掛けを作って、体験する機会が得られるようなことを継続していく必要があると思っています。
レストランやクラブでも? 「良い音」を知ってもらう接点を作る
——ハイレゾは体験してくれさえすれば、満足してもらえる環境も整ってきていますよね。
遠藤:そうですね。我々だけでなく他社も含めて、最近は新譜リリースと同時にハイレゾ配信されるようになってきたので、ハイレゾの品揃えという意味では充実してきています。また、過去のカタログについても掘り起こしは進んできています。今ハイレゾ配信サイトに行くと、ある程度、年代を超えた時代ごとの代表曲は揃っています。ですから一旦、本企画のような形でハイレゾを体験してもらい、そこからハイレゾの世界に入って来たときに、曲数が少なくて満足してもらえないということはないと思います。普通の音楽配信のひとつとして、楽しんでいただけるような環境というのはだいぶ整っているんじゃないでしょうか。
主要なハイレゾ配信サイトの担当者とは時々会って情報交換をしているんですが、みなさん、ハイレゾはまだ普及しきった感じは全然なくて、伸びしろがまだまだあると認識されています。ですから、今はサイトごとのユーザー獲得も大事だけど、みんなで一致団結してできるような施策もやりたいね、という話はよく出ています。
——まずは市場全体の底上げから、ということですね。
遠藤:世界の中でも日本とドイツはパッケージ大国として独特なマーケットで、その中でパッケージを買う人はもの凄くアーティスト熱の高い人だと思います。アーティストと熱の高いユーザーというエンゲージメントを考えたときに、まずはその層にハイレゾを体験してもらうことが入り口としては一番接点を作りやすいのではないかと。今回のキャンペーンの原点はそういうところにあります。
——ビクターは自社でハイレゾ専門の配信サイトも運営していますし、一気通貫にできますよね。
遠藤:レコード会社があり、スタジオがあり、サイトもある、とそこは我々にしかない特徴であり、強みですよね。この三者で一体となって新しいハイレゾマーケットを広げていくことで、みんながプラスになるというように一本筋を通せるのは、やはりビクターグループでやる強みですね。
▲ビクタースタジオが運営するハイレゾ音源専門の配信サイト「VICTOR STUDIO HD-Music.」
——今後のサービスの展望とハイレゾの発展についてお聞かせください。
遠藤:ハイレゾをもっと聴いてみたいと思う人のすそ野を広げるのが、今年の課題だと思っています。本キャンペーン自体は年内いっぱい続けますが、このタイミングでより多くの人にハイレゾを体験してもらいたいですね。もちろんこのキャンペーンだけではなくて、他にも施策を次々と打っていきたいと思っています。
——このキャンペーンをきっかけに、多くの音楽ファンがハイレゾの魅力に気づいてくれたらいいですね。
遠藤:とにかく「良い音がある」ということを知ってもらいたいです。もうそろそろダウンロードから音楽を聴き始めた人たちが成人する頃だと思いますが、その人たちに「良い音」と言ってもピンとこないんですよ。「何が良い音なんだろう?」と。ですから、ハイレゾを通じて音楽の魅力のひとつとして「アーティストに一番近い音」と言えるレコーディング現場で生まれた音楽が限りなくそのままの形で聴くことができる「音の魅力」を知ってもらえたらいいなと思いますし、我々はそういう良い音で聴くチャンスをどんどん提供していくべきで、そういう楽しみ方を分かってくれる人が増えてくれれば音楽業界にとっても喜ばしいことだと思います。
——「良い音は楽しい」と思わせたら勝ちですね。
遠藤:そうですよね。ひょっとしたら喫茶店やレストラン、ホテルのロビーだとか、そういうところでハイレゾを流して、「この場所に行くと凄く気持ちいい音が流れている」と感じてもらうのもひとつの手かもしれません。また、意外なところではクラブも可能性があると思います。クラブで聴いている音は良ければ良いに越したことはなくて、今でもアナログでかけているDJは多いですから、実はハイレゾと親和性が高いのはクラブ好きの若者じゃないかとも思います。
音楽を嫌いな人っていないですし、音を聴くタイミングって実は色んなところにあるんですよね。そのどこにピンを当てて、どういうアプローチでハイレゾに気付かせるかが重要で、そのために今後も色々な角度から積極的に施策を打っていきたいと思っています。
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