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利用者の約7割が「CD / DVDを購入するきっかけになる」と回答 パッケージの価値を高める「プレイパス」サービスが拡大

インタビュー スペシャルインタビュー

株式会社レコチョク マーケティング部 担当部長
熊谷 鉄郎(写真右)
株式会社レコチョク 配信事業部 新規事業グループ グループ長
斎藤 勇樹(写真左)


 CDやDVD/ Blu-ray Discに封入されているパスコードを入力することで、リッピングなしに専用スマートフォンアプリから音楽や映像を楽しめる「プレイパス」が今年3月にスタートした。年内に約80タイトル、さらに来年3月にかけて約200タイトルへの対応が決定しており、着実にサービスを拡大している。「プレイパス」はパッケージ売上回復の次の一手になりえるのか。サービスを運営する株式会社レコチョク担当者にお話を伺った。

2016年12月14日掲載
  1. 「プレイパス」サービスへの反応
  2. 71%がCD購入のきっかけになったと回答、視聴時間も増える傾向に
  3. ライブの来場特典、マーケティングなど様々な展開も

 

「プレイパス」サービスへの反応

——「プレイパス」のサービス開始から約9ヶ月経ちましたが、業界内の反応はいかがですか?

熊谷:レコード会社が共通で抱えている“CDが売れない”という問題に対して、配信サービスを提供している我々も重要な課題として、何か打開策を講じていかなければならないと考えていました。その1つとして今年3月にスタートしたのが「プレイパス」です。「プレイヤーは持ってないけどCDが欲しい」というユーザーにリーチするための、新たな手法としてご期待をいただいています。

——デジタル市場が注目されがちですが、やはりパッケージへの期待は変わらず大きいということでしょうか。

熊谷:もちろんパッケージ以外の市場や商品もみなさん考えてはいるでしょうが、やはり日本の音楽市場においてパッケージ市場は重要なシェアを持っていますので、そこをちゃんと維持していく、伸ばしていくというのは業界全体として重要な取り組みだと思っています。

——実際に採用されたアーティストの反応はいかがですか?

熊谷:大変好評でして、ありがたいことにリピーターになっているアーティストさんも増えてきていますね。やはりCDを購入したファンの方のリアクションが良いんですよ。それを見るとアーティストさんも「やって良かった」と思っていただいたのか、次も実装しようとなる。そういうサイクルが徐々にできつつあります。

——ユーザーからはどのようなリアクションがありましたか?

斎藤:Twitterなどですとファンの反応がダイレクトに分かるんですが、「便利」とか「使い勝手がいい」という評価をいただいてます。今回サービスを開始してみて初めて感じたのが、CDを聴けない環境の人が想像よりも多く、リッピングもできないのでスマートフォンで聴けない人も結構いたんですね。「プレイパス」を使うことで、「朝学校に行くときに聴ける」「聴く機会が増えた」というリアクションがあるので、それはかなり良い傾向だと思っています。

——「プレイパス」のユーザー層はどのあたりなのでしょうか?

斎藤:サービス利用者の居住エリアや年齢、性別がデータで把握できるのですが、タイトルによってバラバラなんですよね。若い層にも利用していただいていますが、意外だったのが40代50代の方も使ってくれているんですよね。

——年齢に関わらず使いやすい設計になっているんですね。

斎藤:サービスを開発するときに、あまりネットを使い慣れてない人達も使うサービスになるだろうという想定があったので、そういう方達にも簡単に使えるように、極力シンプルにサービス設計をしました。

 

71%がCD購入のきっかけになったと回答、視聴時間も増える傾向に

——「プレイパス」を実装したことでアルバムの売上が上がったということはありますか?

斎藤:CDの売上については、私どもが正確に把握し分析することができないのですが、我々が独自にユーザーにアンケート調査をしたところ、「プレイパスが付いていることでCD購入のきっかけや動機付けになりましたか」という質問に対して、71%が「なった」と答えています。また、「プレイパスが付いていることによって、そのCDを以前と比較してよく聴くようになったか」という質問に対しても70%が「よく聴くようになった」と回答しているので、ある程度CDの販売に影響しているかなという感触はありますね。

レコチョク「プレイパス」
——第1弾はいきものがかりの作品でしたが、どういった経緯で実装されることになったんですか?

熊谷:我々としても第1弾は幅広い世代から注目されるような作品で「プレイパス」を実装したいという想いがあって、レコード会社さんに相談している中で、いきものがかりさんから「是非」というお話がありました。そこから氷室京介さんやT.M.Revolutionさんなど、徐々にタイトルを増やしていきました。

斎藤:いきものがかりの水野さんはTwitterで「プレイパスみんな使っていますか?」とアンケートを取ってくださったり、「PCはどんどん使われなくなってきてるし、CDプレーヤーなんてほんとなくなってきてるし、一度、入れてしまえば速度制限の恐怖も軽減する…みたいな笑?『便利です!!』みたいなリプライが、けっこうたくさん来てますよ。」というような発言をTwitterでしてくださったんですよね。アーティストの方々も我々が意図しているところを感じてくれたからこそ、実装してくださっているのではないかと期待しています。

——そして、映像の第1弾で採用されたのはFlowerさんですね。

熊谷:サービス開始当初はCDだけが対象だったので「早く映像にも対応してほしい」という声が大きかったんですね。そのときにFlowerさんは映像も「プレイパス」に実装したいという考えがあったようで、僕らも開発を合わせました。こちらもかなり反響が良かったです。

——メジャーアーティストのカタログが中心のようですが、インディーズから利用したいという問合せもありますか?

熊谷:徐々にお問い合わせをいただいています。現状ではレコチョクと契約いただいているレーベル所属のアーティストさんからになってしまっていますが、今後はインディーズにもサービスを拡大していきたいと思っています。

 

ライブの来場特典、マーケティングなど様々な展開も

——「プレイパス」を利用するためにはどのようなプロセスが必要なんでしょうか。

熊谷:まず、リリースが決まった作品の音源をいただければ、あとは我々のほうでCDの中に入れる、オートリッピングに必要なコードのカードを印刷してレコード会社さんに納品するので、レコード会社さんはそれをパッケージングしてもらうだけですね。

——対応コストはどのようになっているのでしょうか?

斎藤:先ほどの封入カードと、プレイパス対応を表示するCDのパッケージに貼るシールの制作費は原則としてレコチョクが負担しているので、レーベルさんが負担するコストは実質なくて、封入する費用とシールを貼るという部分だけですね。我々としても音楽を聴く人をきちんと維持していきたいという想いがありますし、それがレコチョクのメリットに繋がる部分も多いので、ソリューションに対する対価は今のところいただいていません。

——なぜレコチョクが「プレイパス」をやるのか、という部分に繋がってくるんですね。

斎藤:そうですね。「プレイパス」を利用することで誰がどういう音楽をどれくらい聴いているかが全部マーケティングデータとして把握できるんですね。このデータから過去にダウンロードしたアーティストの新作が出るときにオススメするとか、ライブをお知らせするとか、新しいプロモーションにも活かしていけますし、ファンクラブの加入促進とか、そういったところまでお手伝いをすることもできるので、今後の音楽市場の活性化のために活用していくところが、実はこのサービスの狙いであり、役割としては非常に大きいのではないかと思いますね。

恐らく日本の音楽業界において、CDを買っている人のデータも、アラカルトダウンロードしている人のデータも、定額制音楽サービスを使って聴いている人のデータも全部把握できている会社はほとんどないと思うんです。日本での音楽の聴かれ方を、一番知っているのは我々レコチョクじゃないかなという自負はあります。

——現状で抱えている課題はありますか?

熊谷:プレイパスコードの利用率をもっと上げたいと考えています。CD購入者にとって非常に便利なサービスですので是非使っていただきたんです。そのために、サービスの認知度をもっと上げる、CDにプレイパスカードが入っていることに気づいてもらう、サービスメリットをしっかりとお伝えして「使ってみよう」という気持ちになってもらう、など、まだまだ我々が努力しなければならないことは多いと思っています。

斎藤:サービスの安心安全については我々も自信のあるところで、レコチョクは長期にわたってダウンロードや配信ビジネスをやってきているので、そこのノウハウはかなり持っています。ですから、この手のサービスで起きがちな障害に関してはかなり迅速に対応できるのではないかなと思います。再生用のアプリの制作もずっとやってきて、音楽プレイヤーの制作にも慣れていますので、我々がこのサービスをやる意義があると思いますし、ユーザーの方々にも安心して使っていただけると思います。

——今後の展開を教えて下さい。

斎藤:年内に約80タイトル、さらに来年3月にかけて約200タイトルの対応が決まっています。また、映像のみですが近日中にストリーミング再生にも対応します。さらに新しい試みとして、ライブ会場でその日のライブ音源やアーティストのコメントが視聴できるような応用展開を予定しています。実際に今年℃-uteさんのライブで実施したんですが、配布した「プレイパス」のカードの50%以上が利用されていて、お客さんも非常に喜んでくれました。また、グッズの特典など、音楽に関わらず使うことができますので、様々なアプローチでアーティストを支援しつつ、アーティストとファンの接点を増やしていくことで「プレイパス」の利用範囲を広げていきたいですね。

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