公式映像を無料配信するGYAO!が動画配信で変わる新しいフェスの楽しみ方を提案
株式会社GYAO コンテンツビジネス本部
コンテンツプロデュース部 リーダー 兼 コンテンツ事業開発部 出資事業(音楽)
上野 景大氏
GYAOがヤフーと共同で運営する映像配信サービス「GYAO!」。ライブ・コンサート市場が右肩上がりで伸び、音楽フェス市場が拡大する中で、動画配信事業者としてフェスの新しい楽しみ方を提供するべく、2016年よりロッキング・オン・ジャパン企画制作の大型フェス「JAPAN JAM」「COUNTDOWN JAPAN」の映像配信を開始した。この夏には、「ROCK INJAPAN FESTIVAL 2017」の配信を行っている。フェスの映像をネット配信した経緯や、今後の展望を同社 コンテンツプロデュース担当者の上野景大氏に話を伺った。
- GYAO!がフェスの映像配信を強化する背景
- 配信のスピード感を持ちながら映像のクオリティーをいかに上げるかが今後の課題
- GYAO!のユーザー基盤はアーティストにとってもプロモーションの大きな利点がある
GYAO!がフェスの映像配信を強化する背景
――今月行われた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」の模様を翌日から配信するなど、GYAO!ではフェスの配信を強化されているそうですね。
上野:我々はライブ市場の中でもフェスが伸びている点に注目していて、映像事業者としてフェスの新しい楽しみ方をユーザーに提案したいという想いがまずありました。また、ライブ産業自体が、熱量の高いお客さんが集まっている市場なので、その熱量を映像化してGYAO!でしか観られないコンテンツとして発信していくことで、ライブに集まっている方々にもネットならではの楽しみ方を提案していきたいと思っています。
――フェス映像はその他のものと比べてもやはり人気が高いですか?
上野:配信を開始したときの瞬発力、拡散力はフェス映像の方が大きいです。また、フェスは季節に紐付いていて、夏なら「夏フェス」、冬なら「冬フェス」、そしてGWと、来場者からも会場には行っていない人からも注目度が高いので、配信やそれに付随するプロモーションの反応が通常のライブとは違いますね。
――過去のフェス映像配信ではどのような成果がありましたか?
上野:最初の取り組みは昨年のGW開催の「JAPAN JAM BEACH 2016」で、3ステージ同時生配信を行い、後日アーカイブとして1ヶ月間配信しました。パッケージされた作品の配信ではなく、そこでしか観られない生の映像であったり、たくさんのアーティストが一度に観られるということで、拡散力はすごかったですし、今までGYAO!のユーザーではなかった方々も多く訪れてくれたという実感がありました。フェスの現場の熱量をネットの中に持ってくることで盛り上がりを作れたなと思っています。
その年末には「COUNTDOWN JAPAN 16/17」を配信したのですが、このときは生配信ではなく編集した映像を翌日から配信しました。ライブ映像だけでなく、アーティスト・インタビューを追加して、こちらもしばらくアーカイブ配信しましたが、普段は見られない舞台裏やアーティストの一面を出すことによって、視聴数も上がりました。「JAPAN JAM BEACH 2016」を踏まえ、違う手法をとったことが良かったのかなと思います。フェスは季節ものなので、熱量がより高いときに継続して観られるということで、アーカイブ配信の方が、満足度が高く、GYAO!ユーザーに合っているのかもしれません。
――今回の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」の配信で新たな取り組みはありますか?
上野:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」に出演するアーティストについて、今年5月に配信した「JAPAN JAM 2017」の映像を特設ページで事前に配信しています。過去のコンテンツを配信することで、ユーザーに「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」の配信前から継続して楽しんでいただけるようにしました。また、今回もアーティストごとにクリップを分けて配信をするんですが、ライブ映像は1日ごとに映像をまとめて、ライブだけを観たい人も楽しめるように用意しています。
配信のスピード感を持ちながら映像のクオリティーをいかに上げるかが今後の課題
――今回の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」も翌日からの配信になりますが、編集作業は相当ハードなんじゃないでしょうか。
上野:そうですね。ただ、何回か経験を重ねることでノウハウも貯まってきて、効率的に作業を進めることはできています。
「COUNTDOWN JAPAN 16/17 」の後に、「JAPAN JAM 2017」の配信をやらせていただいて、これも翌日配信だったんですが、このときはやり方を少し変えました。「COUNTDOWN JAPAN 16/17 」は4日間あり、1日ごとにまとめて映像を作ったんですが、1日分のライブとインタビューを繋げると、だいたい2時間くらいになるんですね。「どこに誰の映像があるか見つけにくい」という一部のユーザーからの声もあり、アーティストごとにクリップを分けて、好きなアーティストを選んでチャプターごとに見られる工夫をしました。その方が編集作業の効率も上がりますし、実際に視聴数が伸びましたので、今回もそのやり方を踏襲しています。
――翌日配信ならではの難しさがあるんじゃないかと思います。
上野:ユーザーに届けるにも、盛り上がりを作るにも、即日配信が一番良い方法だと思っているのですが、即日配信だと映像や音の編集が十分できないなどという課題もあります。まだフェスに行ったことのないお客さんにフェスの魅力を知っていただいたり、アーティストを知ってもらうプロモーションの機会にもなると思いますので、私たちの技術で課題を解決して、よりクオリティーの高い映像配信を行う環境づくりをしていければと考えています。
GYAO!のユーザー基盤はアーティストにとってもプロモーションの大きな利点がある
――動画配信サービスについて様々な調査結果がありますが、GYAO!の利用率は上位にランキングしていることが多いですよね。
上野:全て権利関係がクリアな公式映像を配信していて、かつ無料というのは、実は国内でもあまりないサービスなんですよ。それと、有料サービスに比べたらユーザー基盤が大きくなるので、権利処理された無料の映像サービスとしてはかなり上位の方ですね。
――そのユーザー基盤は他サービスにはない特徴かもしれないですね。
上野:他にはYahoo! JAPANグループなので、Yahoo! JAPANの他サービスと連携したり、Yahoo! JAPANのサイト上で動画を紹介したりできるので、検索などをして目的を持って映像を探しにくるユーザーだけでなく、目的がないユーザーにも、様々なサービスから知ってもらうことができます。なおかつ無料なので気軽に観てもらえるというところはあるかなと思います。
――今後GYAO!としてどのような取り組みを行っていく予定ですか?
上野:過去のフェス配信でも多くのユーザーが訪れている実績があるので、継続的にフェス配信は行っていきたいと思っています。また、ユーザーに継続してGYAO!を使っていただけるような取り組みにもトライしていきたいです。例えば、フェスですと、GWの時期、夏、年末以外は間が空いてしまうので、フェスをきっかけにきてくださったユーザーに対して、フェスの映像を空いた時期にも見られるようにしたり、アニメや映画など音楽以外の映像も見ていただける仕掛けをすることで、継続的にGYAO!を使っていただきたいですね。あとフェス自体はこれから更に盛り上がっていくと思いますので、その魅力を映像を通じて伝えていき、ひいては音楽産業全体に貢献できたらと思っています。
――コンテンツホルダーの方々にはどのようにGYAO! を利用してもらいたいですか?
上野:インターネットをプロモーションの機会として積極的に活用いただければと思っています。映像配信をきっかけに、例えばYahoo! JAPANグループのチケットサービスや、Yahoo!ショッピングなどへの広がりも強化していきたいと考えていますので、映像配信だけでなくインターネットの力で何かお手伝いができればと思います。お気軽にご相談していただけたら幸いです。