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ジャンルを超えて空間にストーリーを描く〜クリエイティブカンパニー NAKEDインタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』
『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』

映像やインスタレーション、プロジェクションマッピング、音楽などで空間演出するクリエイティブカンパニー NAKED(ネイキッド)が、年々その存在感を増している。

映画制作に始まり、TV、MV、広告、空間演出、地方創生、教育プログラムなどジャンルを超えた活動を続けるNAKEDは、これまで東京駅でのプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISON』、大阪・泉広場の新モニュメント『Water Tree』、花の体感型イマーシブアート展『FLOWERS BY NAKED』などを展開。

そして2020年1月には「伝統と革新」をテーマに、横浜IR産業展のセガサミーブースで展開された、生け花、和楽器、食の体験とプロジェクションマッピングをコラボレーションさせたライブパフォーマンスショー『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』で、美しく繊細かつインパクトのある新しい形のパフォーマンスを披露した。

この魅惑的な空間を演出するNAKEDとは一体どんな会社なのか? どのような想いで作品作りを続けているのか? NAKEDのディレクター 西村祥氏、サウンドディレクター 堤聖志氏、プロデューサー 西村有人氏に話を伺った。

1. どんなものを作るにしてもストーリーが核にある

NAKEDインタビュー

左より西村有人氏、西村祥氏、堤聖志氏

──まずお伺いしたいのですが、NAKEDという会社はどんな会社だとお考えですか? 作品を制作することにドライブをかけているのは何なのでしょうか。我々から見るとPassionをとても感じます。

堤聖志(以下 堤):Passion。それはすごくありますね。一方でおしゃれっぽさを演出しているところもあるのですごく洗練されたイメージを持たれることが多いのですが、NAKEDにはかなり泥臭い部分もあるんですよ。

西村祥(以下 西村(祥)):東京駅のプロジェクションマッピングをやった2012年より前は、自社製作の映画、テレビ番組や広告映像を制作していて、会社の文化として、「制作会社」やテレビのADさんのイメージに近いような部分も根幹にはあります。ですから僕や堤はまだそういった血というか泥臭さが残っているんです。

堤:我々の世代がギリギリでしょうね。20代のスタッフはスマートにやる部分もありますし、最近は法律的な部分でも厳しくなっていますので、折り合いをつけなくてはいけない部分は増えているんですが、根っこは昔と同じと言いますか、あれこれ指示されているわけではなくて「何をやったら面白いか?」という部分をどれだけ突き詰められるかということを泥臭くギリギリまで追求する会社だと思うんですよね。そういう社風は今後も伝えていきたいと思います。

西村(祥):映画をやっていたというのはあるんですが、我々はストーリーが重要だと思っていて、どんなものを作るにしてもストーリーが核にあり、音楽なり映像なり人の動きなり全てが、そのストーリーに繋がっているのが美しいという考えは昔から変わっていないですし、作り方も映画を作っていた頃と変わらないんですね。ですから、ただ「きれいなもの」「おしゃれなもの」というものもあっていいんですが、我々はそれが社会に対してどのような価値を提示することができるのかという部分と、それだけでは堅苦しいので、意外性やエンタメ性の両立をいつも考えています。その結果、派手になったりするんですが(笑)。

──やはり派手なものというのは求められますか?

堤:そうですね。例えば、ご覧になっていただいた『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』では、特に華やかさと同時にアート性も求められたりするわけで、その両方をやる、あるいはどの表現方法も突き詰めていくというのは、ネイキッドの持つ泥臭さのなしえる技でもあると思いますし、それをみんな自然にやっているのかなと思いますね。

西村(祥):さらに派手さとともに最近は「新しいもの」がどうしても求められるので、それが何なのかはよく考えますね。僕は古い映画が好きでよく観るんですが、これはその当時において新しかったり革新的だったりしたものですよね。今デジタル音楽とか映像を突き詰めると一歩先なら見えます。しかし『スターウォーズ』みたいな3Dホログラムとかそういうところにもっとレベルアップすることになるわけで、「音楽のこの先って何なのだろう?」とか必然的に考えることになりますね。

サウンドディレクター 堤聖志氏

サウンドディレクター 堤聖志氏

堤:「音源を売る」というコンテンツビジネスは、数字の上ではキープしていると思いますが、産業的には伸び悩んでいるのはみなさん実感されているかと思います。「では、今後どうするか?」というときに、たくさんアイデアが生まれてきていると思うんですね。

例えば、スピーカーに歌詞が表示されたり、ヘッドフォンでバイノーラルをやってみたり、フィールドレコーディングを取り入れてみたり、いろいろな面があると思うんですが、我々はそういった方法論を積極的かつ自然に取り入れていった傾向にあります。自分たちは音楽産業のど真ん中にいるわけではないですが、そちらと混ざっていくことが必然的にあったんだなと、今は思いますね。

2. 映像と音楽を並行して演出する

──NAKEDさんのお仕事を拝見すると、作品のストーリーが映像や音楽など多方面から伝わってくるなと感じました。その中でも音楽が際立っていたので「凄いな」と感動したのと同時に、「どうやって作り込んでいるのかな?」という興味があったんですよね。

西村(祥):やはり音楽という要素がなかったら、作品としての魅力が半減すると思うんですよね。映像的にはそんなに展開はないけれど、音楽にストーリー性を持たせて展開してほしいみたいな要求は、音楽のクリエイターチームに結構あったりするんです。普通は映像ありきで、それに音をつけますが、我々はその逆と言いますか、並行しながらやっていくことは結構多いんですね。

堤:もちろん映画音楽も並行しながらやってはいるんですが、最終的には監督が前もって作られた音楽を映像に当てはめていくことが多いと思います。しかし、我々の場合はストーリーを核に、映像と音楽が同じ土俵に立って、絡み合わせながら進めていくことができるのがワンチームであることの強みかもしれません。その分スケジュールもシビアなのですが(笑)。特にセガサミーさんの演目は、音楽を提案することで「こういう演出をしようか」とリアルタイムで演出が変化していく感覚が強かったですね。そういったリアルタイム感みたいなものを感じていただけたなら嬉しいですね。

西村(祥):セガサミーさんの演目は生演奏というところもチャレンジしたところで、生演奏ですとある程度、演奏を伸び縮みさせられますので、生け花のパフォーマンスで何かトラブルがあったとしても対応できるように演出しました。それでも怖かったですけどね(笑)。

西村有人(以下 西村(有)):この演目は制作期間が1ヶ月とかなり短かったので、楽器演奏者含めて合わせたのは最後の現場なんですよね。私が心に残っているのは、民謡の「どっこい、ヤレヤレ」というボーカルからジャズへ移行するところで、身内なのに「凄いな」と鳥肌が立つ思いでした。

『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』

『SEGASammy presents NAKED, INC. × 池坊 collaborated with 京都𠮷兆 Live performance show』

──京都𠮷兆、池坊といった伝統文化、和のイメージでショーが展開していく中で、民謡とジャズを次に持ってこられたのには驚きました。「これは計算し尽くしてやったんじゃないんだろうな」というのも一方で強く伝わってきました。会場が横浜でしたから納得する部分もあって。

西村(祥):そう感じてもらえたのは嬉しいですね。元々はパシフィコ横浜でIR展を行われることや、演目のベースとしてすでに京都𠮷兆さんという日本料理の老舗のおもてなしに生け花をコラボレーションさせるということは決まっていたものですから、生命が成長し最後に綺麗な花を咲かせるという核は早い段階でありました。そこにどのようなストーリーを展開させるかを考えたときに、横浜だからジャズと色々なことが起こるような雰囲気を伝えたかったんですよね。

抑圧されていた黒人の解放のための音楽であるジャズと、サウンドチーム側から提案のあった女性労働者の苦難を歌った横浜の民謡が運命のように出会って、最後は「スペイン」というスタンダードナンバーになりつつ、和楽器の生演奏へと切り替わることで伝統と革新を表現できたかなと思います。

堤:今回の音楽は弊社の社員である音楽監督の平原がバンドマスターと編曲をやっていたのですが、調べていくと、民謡というのは、メロディはさして重要ではなく、歌う人によって変わることもあるくらい大雑把なもので、とにかく歌詞が大事なものだったらしいんですね。そこで「なるほど、崩していいんだな」ということがわかったので、ジャズと融合させてもらいました。

また、平原自身、プロジェクトが大変だったときに、自分で「どっこい、ヤレヤレ」を歌っていたら、その瞬間に『テイク・ファイブ』のイントロが降りてきたそうで、そのひらめきから『テイク・ファイブ』をつけることになったそうです。平原もプロジェクトの苦しみをジャズで解放したいと思ったからこそ、その一瞬のひらめきが出てきたんでしょうね。

西村(有):「伝統と革新」をテーマに、苦難を乗り越えて未来に発展・進化していくストーリーを表現しています。横浜が開港し欧米文化が入ってきた繁栄の歴史から、IR開業によって横浜がさらに華やかに発展していくというところにリンクされてまとまったわけです。

写真右のベース演奏者は今回の音楽監督でもあるサウンドチームの平原慎士氏

写真右のベース演奏者は今回の音楽監督でもあるサウンドチームの平原慎士氏

──やはりこれまでNAKEDさんが企画・演出してきた『FLOWERS BY NAKED』の経験も大きかったですか?

西村(祥):そうですね。これまでやってきた『FLOWERS BY NAKED』での経験がありますから「いける」という確信はありましたし、できあがりに対する不安はなかったですし、他にはない日本ならではの独自性が出せたかなと思いますね。

西村(有):セガサミーさんとの交流の中で、これまで我々が作ってきた「伝統と革新」に基づいたパフォーマンスショーを観てくださっていたんですよね。それで「こういうのいいですね」みたいなお話はいただいていて、そういったことが結びついて今回のオファーとなりました。「準備期間が短いのですが」と言われて「なんとかします」と (笑)。

西村(祥):その「なんとかします」ってウチのマインドかもしれないです(笑)。「なんとかなる。なんとかする。」って代表が常に言っているワードの1つで、すり込まれているんですよ(笑)。

でも、本当に「なんとかしないとなんとかならない」んですよね。なんとかしようとするからなんとかなるのであって、偶然ではそうならない、それは意味のあることなんだよという話をみんなでしています。

3. NAKEDと一緒にやる意味を作る

──NAKEDさんはクライアントさんや一緒にやられる方々と一緒に作っていこうという感覚が強いのかなと感じました。その中で一番良いリズム感やスピード感を選択していくと言いますか。

西村(祥):そうですね。ゲームやキャラクターの権利をもっているクライアントさんと仕事をすることも多いのですが、そういったものはすでにしっかりとした世界観がありますので、それでもウチとやる意味を作りたいと、と思っています。そうでないと相手方の世界観をこちらがただ表現するだけになって、一緒にやる価値がないし、もったいないと思うんですよね。我々がやったからこそ新しいものが生まれたんだとクライアントさんには常に思ってもらいたいです。

西村(有):もちろん最初はクライアントさんの強力な世界観があるもの、例えば『機動戦士ガンダム』や『進撃の巨人』での取り組みに果敢に挑戦して、その実績が積み重なることで、だんだんと「NAKEDさんならではのものを出してください」という要求に変わってきたんです。ですから今は「コラボレーションしている」というところをすごく大事にしてやっています。我々はクライアントさんとしっかり話し合い、NAKEDならではのものが作れるというのが強みだと思っています。

──「NAKEDならではのもの」と言われたときに、一番大事にしていることは何ですか?

西村(祥):「インパクトがある」「新しいものである」ということですね。そして、「どれだけお客さんの心を動かせるか」というところでしょうか。

西村(有):あと、冒頭にもありましたがストーリー、物語性ですね。一方的に物語を押しつけるようなことはしませんが、展開があることで観客の心に残る瞬間を作っていくというのは大事なので、結果的にNAKEDの個性になっているのかなと思いますね。ですから、単純に目新しいデジタルアートをやっているということではないんですよね。そもそもは伝えたいメッセージがちゃんとあり、それを実現するためにそういった手法を使っているに過ぎないわけです。プロジェクション・マッピングをしたいわけではなく、それは我々にとっては筆みたいなもので、あくまでも表現するときの手法として向いているから結果的に使っているということです。サイネージやビジョンではできないですから。組み合わせたりもしますけどもね。

──プロジェクション・マッピングのような手法が一般化してくると、求められるのはその根幹にある表現力になるわけですよね。手法はどんどん進化していきますし、技術も発展していくわけで、よりよい表現ができる手法が新しく出てくれば今度はそれも使っていく、ということですね。

ディレクター 西村祥氏

ディレクター 西村祥氏

西村(祥):その通りです。我々が求めるものを一言で言うと「驚き」や「感動」で、それをどう作れるかということですよね。最新の技術を使って作り出せるならばやりますしね。

堤:また、NAKEDならではの規模感というところも1つポイントかなと思っていまして、やはり様々な要素をまとめあげて大きく表現することでインパクトを残すことができるのは、我々の持ち味でしょうね。あと、これは最近、代表にも言われますが、メジャー感みたいなものはすごく意識しています。大人数を相手にするということももちろんなんですが、場のクオリティ、作品のクオリティとして期待を裏切らない、裏切るとしてもプラスの意味で裏切ると言いますか、とにかく「外さない」意識を学んで欲しいと代表には言われますね。

──「外さない」意識…なるほど。

西村(祥):「ただやっても面白くない」とはよく言われることで、どこに意外性や驚きを持ってくるかみたいなことだと思います。

──それはクライアントさんから言われるんですか?

西村(祥):割とこちら側から言う方が多いかもしれないですね。「普通にやるとありきたりなんで」みたいな(笑)。

西村(有):クライアントさんは、そこまで踏み込んでこないと言いますか、結構任せてもらうことが多いので、表層的なお題があってこちらが解釈して応えていくということが増えているんですよね。

西村(祥):特にここ2,3年はその風潮が強いですね。

4. グローバルの中でNAKEDだけにしか作れないシーンを生み出したい

──近年、NAKEDさんの作品が目立ってきている中で、クライアントさんもNAKEDさんの作品を観て「こう言っておけば、きっと何かやってくれるんだな」という信頼感が増しているからそうなっているんじゃないでしょうか。

プロデューサー 西村有人氏

プロデューサー 西村有人氏

西村(有):そうかもしれないですね。ポスターなどのヴィジュアルとアウトプットを見て、言語にするのは難しいですが、みなさん頭の中にフワッと「NAKEDらしさ」みたいなものがあるんですよね。逆に僕らの方がそれを分かっていないというか「なんだろうな、それ…」って話は社内でよくするんですよ(笑)。外から見ると綺麗だとか繊細だとか色々なイメージがあるようなので、「多分そう思っているんだろうな」ということには応えないとなと思いますね。

西村(祥):そして、その想像を超えるのもNAKEDらしさかと思います。期待値が年々高まっている分、それを超えないと「うまいと聞いたけど、あんまりだな」って思われてしまいますから。ですから我々も日々表現の幅を拡げていかなくてはいけないと強く感じています。

堤:社外のアーティスト、作曲家、演奏家の方々とコラボレーションすることもありますが、そういう方々にとっても我々と一緒にやることで新しいオーシャンが生まれればいいなと思っていまして、その可能性を感じながら、その中で新しいこと、クオリティの高い作品、インパクトや面白さもある作品を一緒に作っていく船の仲間、クルーを今後も増やしていきたいですし、おこがましいですが、そのことによって音楽産業の活性化や可能性を少しでも開くことに貢献できればと日々思っています。

──狭い領域の中で集まって考えているだけでは、だんだん疲弊したり枯渇してきたりすると思いますが、音楽分野に関しても、例えばライブやイベントにおいてどういう表現ができるか、もっと良いものを作りたい、ということで別分野の方々にヒントを求めたい方もたくさんいらっしゃると思います。音楽をやっている方々で意外と別領域との接点や拡がりがなかなかないということはよくありますものね。

西村(有):それは映像の世界でもそうです。例えば、CGを勉強している人の受け皿がどうしてもゲームやアニメが多くて、学生さんも盲目的に信じている節があるんですが「そればかりでもないよな」と気づく方々も増えてきているんですよね。そういった新しい可能性を求めている人たちや表現を求めている人たちがNAKEDに入ってきて、我々の表現者としての可能性も拡げてくれているように感じています。

西村(祥):僕もあんまりイベントとかは行かないんですよ。映画を観ることの方が圧倒的に多くて。ライブにたまに行くぐらいですね。あとは山とか海に行ったりすることが多いので。

──自然からももらえますよね。

西村(祥):自然からはもらいますね。自然は大事ですね。

──最後になりますが、NAKEDは今後どこへ向かっていくのでしょうか?

堤:映画をやっているときから我々は「海外で」という強い思いで作品を作ってきました。実際に海外の映画賞でノミネートしたり受賞したりもしています。

西村(祥):やはりグローバルで活躍していきたいですね。我々にとって東京も「グローバルの中にある東京」という捉え方なんです。そんなグローバルの中で我々だけにしか作れない「シーン」を生み出すことができるかが今後のテーマであり、挑戦であると思っています。

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