シンクパワーに対するソケッツの不正競争行為差止請求棄却の判決を受けて〜シンクパワー 代表取締役社長 冨田雅和氏に聞く
シンクパワーは、ソケッツから、2018年11月9日、不正競争行為差止請求の提起を受けたが、東京地方裁判所は、2020年10月29日、ソケッツの請求を棄却する判決を下した。今回の判決について、シンクパワー 代表取締役社長 冨田雅和氏に話を聞いた。
――この度、ソケッツの訴えが棄却され全面的に勝訴されたわけですが、そもそも何が争点だったのですか?外部から見ていて今一つわかりにくい…いや正直よくわかりません。そのあたりをお話しいただければ。
冨田:本当にわかりづらい内容ですよね。元々の問題としては、レコチョクが当社の同期歌詞データを流用したのではないかという問題がありました。その問題については、レコチョクが起こした仮処分事件の決定において、レコチョクによる当社データの流用を推認させる事実があるから、シンクパワーの代表者である私の発言が虚偽であるとはいえないという判断がなされました。これは、既に説明したとおりです。
その裁判の過程において、レコチョクに歌詞データを提供しているソケッツが、「同期歌詞自動生成システム完成」のリリースを出し、仮処分裁判の中でも、システムが完成しているのであるから流用はしていない(するはずがない)、という反論をしてきた経緯があります。
当社としては、そもそも、ソケッツのシステムの完成とレコチョクの流用との間に直接の関係がないこと、また当社も長年同期歌詞データを制作し自動化の研究を続けてきており、同様のシステムが完成したというためには、その精度が重要であることを、以前のMusicmanさんからのインタビューの中で説明しました。ソケッツは、その発言が、同社のシステムの完成を否定する発言であって、「虚偽の流布」に当たり、不正競争防止法違反であると主張して2年前に訴訟を提起しました。
今回の訴訟の争点は、ソケッツが完成したと主張する同期歌詞自動生成システムにつき、当社が完成していないとの事実を述べたかどうか、にありましたが、判決は、当社の発言は、(レコチョクからの)仮処分事件の当事者として、上記のシステムが完成していると判断することはできないとの意見を述べたものにすぎず、「虚偽の事実」の流布に当たるとは認められない、と明確に判断しました。
――今回の一連の騒動を整理したいのですが、シンクパワーからかつて最大の顧客であったレコチョクに対するデータ流用疑惑の表明、それを受けてのレコチョクからの差し止め請求から始まり、次にソケッツからと続け様に訴えられ、ずいぶんと長い時間を費やしましたね。
冨田:はい、当社なりに、流用疑惑が生じてから約半年間、レコチョクには善処のお願いを直接行いましたが全く進展がなく、やむなく当社HPで流用の疑義につき表明したわけですが、その後、レコチョクからの仮処分裁判では約5か月、そして今回のソケッツからの裁判には、約2年もの時間がかかりました。
――そもそもはシンクパワーがデータ流用の疑いがあると表明したわけでシンクパワーがレコチョクを訴えるのかと思っていたら、先に先制攻撃を受けるように訴えられてしまった…。それに勝ったと思った瞬間に今度はソケッツから訴えを起こされたわけです。第三者として傍観していた立場として、非常に不自然なものを感じています。ソケッツが今回の裁判を起こした本来の目的は何だと考えられますか? 本来ならシンクパワーが訴えを起こし、それにレコチョクが反論、反証する立場にいると思うのですが何故向こうから先に? 何かやましいことでも? とつい疑ってしまいます。
冨田:ソケッツは、平成30年6月5日に「同期歌詞情報自動生成システムの開発について」というニュースをリリースしています。仮処分事件ではそもそもシステムが完成していたかどうかは直接裁判とは関係のない事項ではあったのですが、当社は、そのニュースリリースで使われている画像が他社製品の操作画面の画像であることなど、いくつかの矛盾点を裁判の中で指摘した経緯があります。
ソケッツは、上場会社としてリリースを行った以上、システムの存在を疑義のないものにしておきたかったのかもしれません。しかし、ソケッツが原告として提起した今回の訴訟は、いずれにしても、元々の歌詞データ流用疑惑をめぐる仮処分事件とは直接関係のない訴訟であり、最終的に裁判所は当社の主張を認めた判決を出したので、少しほっとしています。
――本来、レコチョクとの結論が出た段階で返す刀で反訴するのではと思っていました。しかし現実は…内心大変驚いていました。それでは最後に、今後の展開、方針、予定はどのようになっているのですか?
冨田:レコチョクに対し、流用の疑義を感じてから既に3年が経過しようとしており、当社HPでそれを表明してからでも2年半が経過しつつありますが、2つの裁判には勝っても、事態は何も変わっていません。今後につきましては、現在弁護士とも相談し検討中ですので、具体的な方向性が決まり次第、また当社ホームページでも、お伝えして参ります。引き続き、今後の動向を見守って頂けると幸いです。
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