ディスクユニオン初のロック大型専門店「diskunion ROCK in TOKYO」オープン 〜店長 藤村一樹氏インタビュー
東京・渋谷宇田川町にディスクユニオン初のロック大型専門店「diskunion ROCK in TOKYO」が3月17日にオープンした。
1950年代から2020年代まで、海外のメイン・ストリームのロックを中心にハード・ロック/ヘヴィ・メタル、パンク・ロック/ハードコア、ジャパニーズ・ロックまで広義のロックを網羅。店内演奏用にプロユースとして信頼の高いJBLのスピーカーを6台インストール。CD、レコード、音楽書籍に加え、アパレル、メモラビリア、音楽酒、CD/レコードアクセサリーなど総在庫約50,000点を取り揃える。また常設のポップアップスペースや特設インストアライヴスペースを通して魅力的なコンテンツを展開する。
音楽/レコードの聖地とも言える渋谷宇田川町にオープンした「diskunion ROCK in TOKYO」はどのような想いで作られたのか、そして昨今のアナログレコード復活を現場はどう見ているのか。diskunion ROCK in TOKYO/ユニオンレコード渋谷 店長 藤村一樹さんに話を聞いた。
プロフィール
藤村一樹(ふじむら・かずき)
1978年生まれ。2004年にディスクユニオン入社。
ロック担当として都内店舗を中心に勤務し、2015年に初のレコード専門店である新宿ロックレコードストアの立ち上げに携わる。
“もの”だけではなく “こと”もできるお店
ーー「diskunion ROCK in TOKYO」のオープンおめでとうございます。この「ROCK in TOKYO」はどのような店舗なのですか?
藤村:「ROCK in TOKYO」は弊社の中で長年構想があった「広義のロック専門館」を実現化した店舗で、海外のロックから日本のロック、ハードロック、ヘビーメタル、パンクなどいわゆるロックを専門的に扱うお店が「ROCK in TOKYO」です。アイテムもCDやレコードだけでなく、アパレルなど今まであまりチャレンジしてこなかった部分も含めた総合的な専門店を目指してオープンしました。
ーーこのコロナ禍の状況で新店舗をオープンするのは大変だったんじゃないですか?
藤村:そうですね。もともと計画自体はコロナ以前からあったんですが、世の中が大変な状況になってしまい、本当は店内のライブスペースを使ったり、いわゆる“もの”だけではなくて、“こと”もできるようなお店を目指していたんですが、残念ながら今のところはイベントなどがしづらい状況ではありますね。
ーー店内にイベントスペースをすぐ作ることができるんですか?
藤村:ええ。レコードの什器が全て動くようになっており、簡易ステージを設置する形で、スタンディングで約200名、着席でも50名くらいのイベントができるようになっていまして、バンドセット用のPAなどの用意もありますので、コロナの状況にもよりますが、月に1回か2回くらいはイベントをやりながらお店の魅力を伝えていければと思っています。
ーーちなみに映像なども映せるんですか?
藤村:はい。また配信もできるようにしてありますので、新しい生活様式に適用した形でイベントをできるようにしていきたいなと思っています。
ーー今回、オープンにあたって色々なコラボもなさっていますよね。
藤村:はい。今回ポップアップのスペースなども作らせていただいているので、例えば各社様からのリリースに合わせたものであったり、色々な切り口で売り場を使っていただけますので、そういったものを通じてお客様に色々ご提案できたらいいかなと思っています。
ーー色々な企画ウェルカムという感じでしょうか。
藤村:色々な企画を持ち込んでいただけたら本当にありがたいですね。例えば、2021年はクイーンのデビュー50周年ですとか、色々なことがあると思いますので、そういったアーティスト単位の企画からレーベル特集など色々使えるスペースになっておりますので、是非気軽にお声がけいただけたらありがたいです。
ーーこの「ROCK in TOKYO」を渋谷宇田川町という場所にオープンさせた理由は何ですか?
藤村:もともと既存の宇田川町のお店があって、その再編と言いますか、よりお客様にもわかりやすいお店作りをしたいという想いがありました。また、90年代の渋谷宇田川町は音楽カルチャーにとって歴史のある場所ですし、それ以前も渋谷は百軒店に音楽喫茶があったり、音楽が根付いた街なので、そういった土地で60年を越えるロックの歴史を総括するようなお店ができることはすごく幸せなことだと思います。
ーーとても良い場所だと思います。周囲にはライブハウスもたくさんありますし。
藤村:そうですね。例えば、地方からライブを観に来て、「ついでにレコード屋さんに行ってみようかな」と寄っていただけるようなお店にしたいですし、あとインバウンドが戻ってきたら海外の方にも来てもらえる店舗になったらと思います。コロナ以前の数年間はかなり海外の方が買われていくことが多かったので。
ディスクユニオンはスペシャリスト集団であるべき
ーー「ROCK in TOKYO」に足を踏み入れてまず感じたことは、店内の広さと開放感でした。
藤村:ありがとうございます。1955年にロックが生まれたとして、もう60年近くになるわけですが、入り口の階段のアートワークはエルヴィス・プレスリーといったロック黎明期のアーティストから、最近のロックまで年代順に並べていまして、そういった面でも楽しんでいただけると思います。
ーー「若者のロック離れ」なんてことも言われる時代に「ロック」を全面に押し出した店舗ってなかなか思い切ったなと思いました。
藤村:まだオープンして日も浅いですが、意外と若い世代の方にも来ていただいていますし、90年代のロックTシャツを見て「可愛い!」なんておっしゃりながら買っていただいたり(笑)、色々楽しみ方があるんだなと実際にお店を開けてみて痛感しています。
ーー他にお客さんからはどのような声がありましたか?
藤村:多かったのが、先ほどおっしゃっていただきましたが「思っていたのより広いね」という声で(笑)、入り口を入ってすぐはそう感じないんですが、店舗に入ると広いので、皆さんびっくりされます。CDも展示量が増えていますし。
ーーディスクユニオンの店舗の中では「ROCK in TOKYO」が一番大きい店舗になるんですか?
藤村:ロックという区切りの店では「ROCK in TOKYO」が一番大きいです。お店自体の大きさはお茶の水駅前店の方が大きいのですが、あそこはオールジャンルの総合店なので、今回のようなコンセプトを絞ったお店としては最大級だと思います。
ーーユニオンさんの店舗はどこも個性的ですよね。
藤村:そうですね。ディスクユニオンの企業理念や社員の志として「スペシャリスト」というのがあります。一つのジャンルの中でも業界内で一目置かれる存在になるべきだということで、10年かけて人を育てようという理念が弊社にはあります。そういった意味では、様々なお客様にご満足いただけるスペシャリスト集団であるべきという考え方が各店舗の色として出ているのかなと思いますね。
ーー実際にお店に来て店員さんに相談をしたり、お話しするのが楽しみって方もいらっしゃいますよね。
藤村:そうですね。特に廃盤のレコードとかは、話しながら買うのが楽しいという方は結構いらっしゃいますね。
ーーそこはスペシャリストがいないとどうにもならないですよね。
藤村:ただ、色々な世代のお客様に楽しんでいただけるという意味においては、対面接客だけではなくて、お店に入りやすい雰囲気なども大事だと思っていますので、その辺のバランスをうまくとったお店にしたいですね。
「ROCK in TOKYO」は色々な可能性を秘めた店舗
ーーここ何年もアナログレコードの復活について色々言われていますが、現場から見てどう感じていらっしゃいますか?
藤村:弊社のお客様はCDとレコードが半々くらいの感じなんですね。そういう意味においては変わらずなんですが、やはりレコードのリリース量は増えてきていますし、特に若い方が気軽にレコードを聴き始める環境が少しずつ整ってきたのかなという印象があります。一方、CDはストリーミングなどの影響もあって若干お値段が手頃になったのかなと思いますので、そういう意味でももう一度ソフトの良さが出てくれば良いのかなと考えています。
ーーやはりパッケージの良さってありますものね。
藤村:ものをもつ喜びみたいなことを大事にされる方が弊社のお客様には多いので、そういう意味ではCDもレコードもそれぞれの魅力をアピールしていけたらと思います。やはり自分がレコードを買い始めたときに出会った街のレコード屋のお兄さんみたいな存在になれたら、という気持ちは根底にありますね(笑)。
ーーディスクユニオン全体でもアナログレコードの売り上げは上がっているんでしょうか?
藤村:そうですね。ここ数年はどのジャンルもアナログが上がってきていて、オリジナル盤を買われる方や、レコードを買ってみたいという方、あとCDしかリリースされていなかった作品のアナログ化も増えていて、そういったところも含めてアナログ盤の魅力が上がっているのかなとは思います。
ーーやはり音にこだわる人が増えているんでしょうか?
藤村:色々なタイプの方がいらっしゃいますからね。例えば、レコードをたくさん欲しいという方もいれば、いいものをいい音でこだわって聴きたいという方もいますし、それぞれの楽しみ方があると思います。
ーー藤村さんご自身はアナログに対してどんな魅力を感じていますか?
藤村:私はもともと60年代、70年代のロックが好きで、いわゆるイギリス盤やアメリカ盤の、プレスの違いによって音が全然違うということがのめり込んだきっかけです。特にビートルズとかプレスで全然音が違うので「今までCDで聞いていた音は何だったんだ!」「オリジナル盤はこんないい音するんだ!」みたいなのが始まりなので、そういった魅力を一人でも多くのお客様にお伝えできればと思いますね。
ーー先ほどイベントができないとおっしゃっていましたが、そのほかに新型コロナの影響はありますか? 例えば、レコードなど海外へ買い付けに行けないという話を聞いたりもするんですが。
藤村:おっしゃる通り、現在、海外へ買い付けに行けない状態です。以前は、お店でも年数回は海外に商品を仕入れに行っていたんですが、今は長年取引させていただいているディーラーさんとリモートで話をして、仕入れさせていただいたり色々工夫していますが、そういった状況でも、いかにお客様に満足していただけるかを常に考えています。当然、直接行って買ってくるのが一番楽なんですけどね(笑)。
ーーそれはそうですよね。
藤村:動画のやりとりで買ったり色々あるんですが、特に古いビンテージのものはコンディションで値段が全然変わってきますので、難しいところです。あと時差の問題もありますので、日々手探りですが、少しずつでも進めていきたいと思います。もちろん国内での買い取りは随時行っていますので、ご相談いただければと思います。
ーー一時期、実店舗が減っていった時代は寂しかったんですが、最近少し盛り返してきて、今回の「ROCK in TOKYO」のような店舗ができると正直感慨深いものがあります。
藤村:ここ数年、新しく店をオープンされる方も増えているので、また新しい流れができたらいいなと思いますね。今、ストリーミングで音楽を聴かれる方も多いですが、それも使いようで、ストリーミングで楽しんで「実際にレコードを欲しくなった」で来ていただいても全然いいですし、実際にレコードを触ってみて欲しくなったから買ってみようでもいいですし、そういう意味ではお店が担っていける部分って昔も今も実質は変わっていないのかなと思います。
ーー最後に「ROCK in TOKYO」に興味を持っている読者の方々にメッセージをお願いします。
藤村:「ROCK in TOKYO」はオープンして間もないお店ですが、色々な可能性を秘めていると思っています。若いスタッフもたくさんいますので、お客様とともに勉強させていただきつつ、いいお店にしていきますので、是非一度足を運んでいただければと思います。
店舗概要
店名:diskunion ROCK in TOKYO
住所:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町32-7 HULIC &New UDAGAWA B1
営業時間:12:00 – 20:00
休業日 :なし
TEL:03-3461-1809
売場面積:88坪
https://diskunion.net/shop/ct/rockintokyo