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AWAと3COINSが“ジャケ買い”をテーマにコラボ、音楽と雑貨が融合した「3COINS MEETS AWA」発案者 石本祥恵氏×Emerald 中野陽介氏 対談インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

「3COINS MEETS AWA
中野陽介氏(写真左)石本祥恵氏(写真右)

音楽ストリーミングサービス「AWA」が300円ショップ「3COINS」とコラボレーションし今年3月に発表した「3COINS MEETS AWA」。アーティストのジャケットデザインが施されたクオリティの高いアイテムが全国の3COINSで安価に手に入る、「ジャケ買い」をテーマにした画期的な企画だった。発売と同時にSNSは賑わい、地上波の番組でも取り上げられるなど大きな反響があった。

かつてストリーミングが今ほど浸透していなかった時代に、CDショップで全ての楽曲を試聴することができなかった環境で生まれた文化「ジャケ買い」は、既に少し懐かしい響きを帯びてきている。そんな言葉をストリーミングサービスのAWAが打ち出すことに違和感を覚えたが、「音楽との出会いと再会」をテーマに掲げていたことを思えば当然の理だったかもしれない。

企画発案者であるAWA コンテンツ&プロモーショングループの石本祥恵氏と参加アーティストEmeraldのVo./Gt.中野陽介氏を招き、双方から今回の企画を振り返ってもらう中で、ジャケットとアーティスト、ストリーミングの関係について考察する対談が実現した。

編集:柴田真希 撮影:加藤春日 協力:Cafe BOHEMIA

プロフィール

石本 祥恵(いしもと・さちえ) AWA コンテンツ&プロモーショングループ マネージャー


2016年夏AWAに入社。会員獲得施策、主に企業とのアライアンス企画・営業を担当し、日本マクドナルド、ユニクロをはじめ多業界とのコラボレーションを主導。2020年よりアプリ内新コンテンツのマネジメントを担当。


中野 陽介(なかの・ようすけ)


Emeraldのボーカリストとしての活動の他、自主レーベルMaypril Recordsの代表を務める。弾き語りでのソロ演奏やPodcastでのカルチャートークも展開中。


Emerald(えめらるど)


2011年結成。ブラックミュージックやAORを軸にしたサウンドにJ-POPの要素が加わった新たなサウンドを提示する、6人組都市型アーバンポップスバンド。


 

インディペンデントでやってた自分たちが報われた感じがして嬉しかったです

石本:柴田さんから熱い取材オファーのメールをいただいて。Emeraldをジャケ買いされたことがあるんですよね。

──「Nostalgical Parade」(2014年)です。

中野:あの名盤を(笑)。

──2014年頃ジャケ買いして聴いたんですけど、当時はそこまでピンときてなくて。最近久々に実家に戻った時に聴いてみたら、今の自分にはすごくハマったんですよね。

中野:いや、めちゃくちゃ嬉しいです。それ熱いですね。

──そういう部分もジャケ買いの良さだなと思っています。しかるべきラインナップと高いクオリティを実現している今回の企画、プレスリリースが出てすぐに取材の申込をさせていただきました。どんな人が企画されたのかな、と気になりまして。

中野:石本さんが今回の企画の発案者ということなんですか?

石本:はい。

中野:神だ。

石本:(笑)ありがとうございます…(笑)。

中野:どういう流れで参加することになったのか友人たちから結構聞かれて。どこ行っても売ってるよ、と。離れたとこに住んでいる友達も買って写真をあげてくれたりとか。

石本:3COINSさん、全国にたくさん店舗があって、かつ駅前とかに多いんですよ。だから地方のファンの方でもアクセスできる場所だったのがよかったな。

中野:素晴らしい企画に参加させていただいて、まず感謝を伝えたいなと思って。こんな嬉しい企画ないですよ、普通に考えて。自分たちで作ったら今回のクオリティーであの値段って無理なんです。ましてや全国展開も難しい。みんなの手の届くところに置いてあるっていう状況がなかなか作れない。

──企画のきっかけは何だったんでしょうか。

石本:元々、3COINSさんのブランド長さんとたまに会っては何か一緒にできないか、話していたんです。ある時、私が今までずっとAWAをやってきた中で考えていた色んなパーツに3COINSさんとコラボっていう最後のパーツがはまって今回の企画を閃いたんです。

──中野さんはEmeraldとして今回参加されてみて、どうでしたか。

中野:最初、僕らみたいなバンドに声がかかったことにびっくりしたし、大丈夫??みたいに思ってました。でも売り出した時、みんなInstagramでハッシュタグとかメンションをつけてバンバン投稿してくれて、反応がすごくて。ちょうど僕らはコロナで外向けの活動が止まってた時期で、作品だけ作ってたんです。何もニュースがない状態が続いてたので相当励まされました。

「3COINS MEETS AWA

石本:ありがとうございます。発案自体はまだコロナが始まる前だったんですけど、走り出したのはまさにコロナ禍です。2020年の3月、4月ぐらいは音楽業界が最初に派手に被害を食らってしまったタイミングで、何かやりたいなと思ってたときにこの企画を思い出して。そこから大体一年ぐらいかけて、アーティストブッキングとか、グッズの製作を進めていって2021年3月に発売日を迎えたという流れですね。3COINSさんはやるとなったら大々的にやるスタンスの会社さんで、並べる棚もど真ん中の棚一択だったんですよ。

中野:生活の動線の中、日常の一部に自分が密かに好きだったバンドのジャケがあったら嬉しいですよね。ずっと僕らのジャケットを作ってくれているデザイナーも、「親に話せる」って小さく喜んでくれて。ある種紅白に出るようなことじゃないけど、頑張ってやってきたのが伝わるし、みんなを幸せにする企画だなと思いました。一円も貰えなくてもいいなと思ってたんですけど、アーティストにバックもあると聞いて驚きました。しかも、その分配の方式にも愛を感じた。

石本:どれがいくつ売れてもお戻しする金額は最初から決まっていたんです。そこはもう3COINSさんの素晴らしい気概ですね。

中野:ものもしっかりしていたし、アイデアがしっかり入ってました。

石本:アーティストが愛を持って作っているジャケットのクリエイティブを使うからには絶対可愛いものにしたいと思っていたので、クオリティへの自信がすごくおありになった3COINSさんにこの企画をプレゼンしました。みんな同じデザイン性で統一しなきゃいけない企画だったので、うまく落ち着くかなと思っていましたが、可愛く仕上がったので本当によかったです。

中野:僕はTAMTAMのグッズも一通り買ったんですけど、この値段で売って大丈夫だろうか、っていうくらい高いクオリティだったし、トートバックの箱も欲しくて二つ買ってしまいました。

石本:箱だけでもお金払いたい感じでしたね。Emeraldのグッズの中ではトートバックが一番反響がありました。

中野:あのジャケットのディレクションはいつもEmeraldのジャケットを製作してくれている友達のもので、写真を提供してくれてるのは僕らの写真をずっと撮りに来てくれてる写真家の友達のもの。そうやって作られたジャケが全国で売られているのを見て、インディペンデントでやってた自分たちが報われた感じがして嬉しかったです、純粋に。

石本:よかったです。それこそ紅白に出てて、フォロワーも何百万もいるようなアーティストさんは自前でそういうことができるかもしれないんですけど、その量を作ることがなかなか難しい、でも日々いい音楽と向き合っている人たちにこの企画をプレゼントして応援したいなという気持ちがあったので。

中野:有名なアーティストだとみんな知ってるので、ジャケ買いってことにならないですよね。

石本:まさにそうです。

 

切り取る時代と自分たちの個性の重なってる場所がちゃんと一致したものを作る作業なんです

石本:私自身サブスクを使いますけど、例えばポケットにスマホを入れたままプレイリストを聴いてると、誰のなんて曲だったかも分からないままどんどん次の曲に行って、ジャケ写を目にすることすらないこともあって。MVとかはまた違う活躍の場がありますけど、ジャケ写はどんどん活躍の場が減っていて、勿体無いと感じていました。

「3COINS MEETS AWA

中野:サブスクで目に入るのは曲名、アーティスト名、ジャケの順が多いので、なかなかゆっくりみてもらえる機会が少ないんですよね。ちょっと勿体無いなとずっと思ってました。でも今回の企画だと、みんなが気軽に手に取れる値段のものにジャケがついてる。そして音楽も聴ける。神がかっています(笑)。

石本:よかったです!

──Emeraldはレコードでもデジタルのみでもリリースされていますけど、形態によってジャケットの作り方は変わりますか?

中野:後でアナログにするかもしれないからデータはでかい方がいい、とかはあるんですけど、それくらいですね。あと、できうる限り自分たちのディスカッションの軸からブレないように作っています。

──どういった流れで作られているんですか。

中野:毎回デザインをやってくれている友達が僕の高校の後輩でもあって、今もすごく仲良くしている数少ない友達なんです。例えば「Pavlov City」のジャケットの場合は彼が撮りにいった工場夜景の上にアクリルを被せて、その上から撮影してモザイクっぽく見せてます。「パブロフの犬」という言葉からタイトルを考えたとかざっくばらんな話をしていたら、じゃあ工場夜景にアクリルを乗せてみるか、みたいなノリになって。そして最終的に色をどうするかってなった時に、ぱっと見かっこいいのはちょっと夕暮れっぽい色を入れたやつだったんですよ。それをメンバーに見せるとみんな「これいいね」とはなるんですけど、メンバー間で意見のズレもあったりして。それを飲み込んでデザイナーとまた話し合って、っていうのにめっちゃ時間がかかって。

Pavlov City

Pavlov City

中野:夜中に長電話したりもして、みんなが納得できる、第三案を出そうってことに落ち着いて。ガッて暗くして、黄色とかオレンジが一切乗ってないあの色になったんですよ。時間はかかったけど、うちはそうやってみんなで決める。時間がかかる分歩みも遅いけど、バンドの姿勢がそのまま詰まってるんですよね。毎回ジャケットっていうのは切り取る時代と自分たちの個性の重なってる場所がちゃんと一致したものを作る作業なんです。

石本:すごい幸せな現場ですね。

中野:めちゃくちゃ大変だけど楽しいです。そうやって作ってきたものがアーカイブになって並んできたり、レコードになって並んできたりすると、その時の自分たちのことを思い出すんですよね。で、新しいのを作った時に、こっからブレてないよね、一本通ってきてるよねって確かめられる。そういうのって時間がかかるけど、豊かだなって。

石本:時間がかかって豊かな営みって、非効率だと思われがちだけど本質的には効率的なんですよね。ちなみにぷにぷに電機さんがお話しされていて納得したのが、サブスクだとフルアルバムじゃなくて少ない曲数で出していくことが増えたので、その分ジャケ写もいっぱい作らなくちゃいけなくて、工数がすごくかかってるのにあまり見られていないのが勿体ないと。そういう意味でもよかったなと。

中野:ぷにぷに電機もジャケットの統一感があって、並んで見た時にちゃんとアーティスト性も伝わってくるし、いいですよね。ぷにぷに電機のことを知ったのも今回誘ってくれたダニエルが教えてくれたからだったし、okkaaa君とANIMAL HACKとかも一緒に曲作ったりしてるし、ダニエルセレクトが功を奏していますね。そこにうちらがいるっていうのが嬉しかった。(編注 ダニエル:AWAオフィシャルライターの竹田ダニエル氏。今回の企画のブッキングにも関わっている)

石本:ダニエルには、まだ3COINSさんへ本提案する前に、「こういう企画どう思う?」って相談したら、すごくいい!って後押ししてくれて。今回一緒にやれて本当に楽しかった。いずれかのアーティストのファンが「ジャケ買い企画だから」ということで他のアーティストのアイテムもあえてジャケ買いしてくれているのもSNSの反応でよく見受けられて。一番の目標はアーティストとリスナーの新たなタッチポイントを作ることだったので、知らないアーティストへも横断していってくれたのがよかったと思ってます。

「3COINS MEETS AWA

中野:いろんな意味で希望を持てた。元々楽しくてやってるので絶望してるわけじゃないんですけど、やっぱり粛々とやってたらこういうのがあるんだなと感じましたね。励みになりました、本当に。

石本:ありがたい、嬉しい。

中野:ひたすら感謝しか伝えていないという(笑)。

 

表現のために自分が手と足を使って繋がっていった人やものから得られる実感や学びは、格別豊かで幸せなんですよ

──SNSの反響、すごかったですね。

石本:「ジャケ買い」っていう言葉は企画主旨が伝わりやすく、インパクトも強かったみたいで、多くの人が「ジャケ買いしてみた」ってつぶやいてくれたんです。

──これまでのジャケ買いは、お店で中身を一部しか聴けなかったときの文化だと思うんです。でも今回の企画は、気になった音楽がサブスクですぐ聴けてしまう時代ならではの、斬新な現代のジャケ買いだと思います。

石本:フェス会場とか、CDショップとか、いわゆる音楽市場の棚に並べて、それを音楽を探しにくる人に届けるというまっすぐなルートじゃなくて、日用品を探している人にふと届くという「捻れ」を作ることは、音楽活動をしてる方が自分でやろうとしたら難しいと思うんです。

中野:難しいですね。

「3COINS MEETS AWA

石本:そういった、既存の流通の枠組みの中では起こり得なかったリスナーとの出会いに繋がるかもしれないと思っていました。

中野:今回の企画はすごいそれを感じました。音楽はいろんな人に「何か自分も始めてみよう」という気持ちを沸き起こさせる装置のような気もするんです。それを大事な資源と捉えるなら、音楽業界だけじゃなくて、もっと広い視点で回していく方がいいのかなと。一時Suchmosとかが売れてきた時って、事務所の人もみんな音楽媒体へのアプローチを減らして、ファッションブランドとかファッション雑誌とかにガンガン売り込んでたらしいです。

石本:他業界も、音楽と組み合わせたら何か良くなりそうっていう気持ちはあるんですよね。

中野:今はITの人たちとか他業種の方達の方がそういうことに体力やエネルギーを注げる。今回誰も文句言ったり、ああだこうだってならないでできたとおっしゃっていたのもある種、未知の領域を楽しめる人たちとやれたからかもしれないですね。

石本:今回最終的に参加してくださったのは二つ返事で「やります」って言ってくださった方々ばかりで。

「3COINS MEETS AWA

中野:付き合いのあるダニエルから話があったから、二つ返事でOKしました。僕はコロナ禍で意識的に、実際に自分が会ったことがある人や温度を感じる人だけを拠り所にして生活していて、テレビやTwitterはそこそこに、街のコーヒー屋さんやそこにいる人たちと話して心の安定を取り戻せていたんですよね。

石本:コロナで手触りのあるものが先にアクセスしづらくなっていったんだけど、最後はそれが残っていくというか、なんて言うんですかね。面白いですよね。

中野:情報が溢れて認知的不協和を起こしたのをフラットに戻してくれたのもそこで話してくれた人たちだったし、手触りが重要なものだという認識はすごいあるんですよね。音楽もそうでした。

──こうなってくると、自分が直接関わってる人を大切にしたいという気持ちにいろんな人がなっていると思うんです。ミュージシャンは普段からそういった意識で活動をされていることが多くて、一番今の時代に合った生き方な気がしています。

中野:名声とか人気というのは確かに眩いです。でも音楽などをやる理由はそれだけでなくても良いと思います。表現のために自分が手と足を使って繋がっていった人やものから得られる実感や学びは、格別豊かで幸せなんですよ。

──ジャケットもそうやって繋がっていった人たちが関わって作られていて、今回の企画もその延長線上にありますね。

石本:お金を目的にしたプロジェクトではなく、このコンセプトを純粋に気に入って、やったら喜ぶ人がたくさんいるからやった方がいい、という気持ちで集まった人たちでやれたのがよかったですね。温かいプロジェクトでした。

中野:そういうものに救われ続けてきている。だからコロナで大変だけど、ただ不安になったりイライラしたりするのではなく、いろいろな考え方ができるし、柔軟なイメージを持っていられるなと思います。コロナ禍で、転職者の数半端ないみたいなんです。

石本:身の回りにも多いです。

中野:ハムスターみたいにぐるぐる回る生活が一回バンと止まった時に、「これからどこ行こうか」みたいになった感じはありますよね。音楽って、そういうときにふと輝き出して道を照らしてくれる灯台の光みたいなものなんです。そういうものを作りたいと思っています。

 

学校の授業で、音楽だけ模倣しかしないんですよね

石本:ジャケットが勿体ないこと以外にも気になっていたこととして、一瞬跳ねてもすぐ忘れられちゃう、というのはストリーミングサービスをやってるとよくあることで。旧譜の活用も大きなテーマなんです。

中野:前のバンドがサブスクに載ることもなく、どっかで在庫になってることが悔しくてしょうがない身からすると、過去作を改めて聴いてもらえたりすると本当に嬉しいですね。

「3COINS MEETS AWA

石本:リスナーからすると、旧譜も新譜も本来関係ないんですよね。今回1アーティストさんに対して5タイトルくらいのジャケ写を使う企画だったので、そこに旧譜が必ず入るんです。それもあって、流行っぽいものというよりも、ずっと聴き続けられるアーティストさんに参加してもらっています。

中野:僕らは十年後とかに聴いても新しい発見があるとか、できるだけ長い時間聞かれるものを残していくことを一番大事にしているので。簡単に消費されて後ろに流れていっちゃうものはいくら作ってもちょっと寂しいなと思っています。

石本:音楽って簡単そうに見えちゃうというか。実は学校の音楽の授業って、美術や技術、家庭科と違って模倣しかしないんですよね。絵は描くけど、作曲はしないから、作り出す苦労をみんな知らないんですよ。

中野:それはクリティカルなこと言いましたね、今。

石本:そうですか(笑)。

中野:教育に音楽を作り出すっていう分野がないんですね。カラオケも誰かが作った曲を歌うだけですし、たしかに音楽そのものを作るという行為に対してはあまりフューチャーされないし、興味を持たない人も多いかもしれないですね。

石本:そうなんです。でも仮に作ったことがなくても映像は作るのが大変そうみたいなイメージがあって。単純に音だけより映像の方が情報量が多くて複雑なのに加え、映画だとクレジットがエンドロールで流れるからかもしれないです。

中野:映画だと膨大な量のクレジット見て、これだけの人が関わってるのかって作品の重みを感じやすい。AWAにクレジット、入れることできましたっけ?

石本:2年前ぐらいから、入れられるようになっていますね。

中野:クレジット文化がなくなるのはちょっと危ないなと思うので、分かりやすいところに載ると嬉しいな。歌詞カードとかのクレジットを見るのが本当に好きだから、サブスクでも録った人、マスタリングした人の名前は入れたいです。あとはフィーチャリングじゃない客演のアーティスト。そういう情報までもっと感覚的にアクセスできるようになるといいですね。

石本:音楽って作るのにすごくたくさんの人が、もちろんケースによりますけど、関わってたりするのに、良くも悪くも手軽に消費されちゃうというか。

「3COINS MEETS AWA

中野:その手軽さが良いとこでもあるんですけどね。音楽の歴史を見ていくと、手軽に作れるものにはなってきていますね。クラシックの時代はとてつもないパトロンがいないと音楽家にはなれない世界だったのが、ポップスができて成り上がれるものになっていって、インディーができたことで生活の中で音楽を作り続けられるバランスもある。

石本:インディーのアーティストのためにも、アプリの機能を工夫して作っていきたいです。

中野:マーチャンダイズと結びつけるとわかりやすいですよね。Spotifyでもレコードが買えるじゃないですか。それは流通が大変だと思いますけど、他には投げ銭ができるとか、アーティストに寄り添ったサービスができるといいですよね。あとは作り続けることでお金に限らず生活が豊かになることを可視化して、音楽家がロードムービーのようにみんなを勇気づけられるイケてる存在になっていけば、音楽をやる暮らしに自分も入っていきたいと憧れる流れもできてくると思います。それはインディーで音楽を作る人たちがやっていかなくてはいけない。

──そうすれば、いい意味で身近な、かっこいい生き方のロールモデルになりますね。

中野:実際ここにいて得られる出会いや豊かさは、何にも替え難いですね。

石本:私、自分の子供にもアーティストと接する機会を作れたらなって思うんですよ。制作っていうアウトプットをするには沢山のインプットがなきゃいけないし、歌詞を書くにもいろんなことを感じ取ってるから吐き出せる。そういう自分や社会への塾考、感受性、一つのものを作り上げる体力も根性も技術も、アーティストってすごいので。

中野:いろんなことを感じながらアウトプットするには自分を信じる力がすごく必要で、その信じる力をくれてるのは、聴いてくれてる人なんですよ、実は。この相互関係があって初めて、自分たちが作ったものには何かしらの価値があるかもしれないとモチベーションになることもある。たとえ自分が強く信じていても、街や人が反応してくれなかったら引っ込んじゃう人が多いんですよね。音楽が鳴り続け、まわり続けてる世の中になっていることがまず大事なんで、今はサブスクがそのインフラとして機能していると思います。

石本:うちは良い音楽を作っている方々がいてこそ意味のある存在なので、作り続けられるモチベーションのためにも今回のようなご褒美みたいな企画を作っていきたいです。

中野:年に何回か、こうやって選ばれたアーティストのフックアップが生まれたら新しい文化になると思います、本当に。これからもぜひ続けてもらいたいですね。

石本:そうおっしゃっていただけて光栄です。いろんなアーティストから第2弾を望む声が届いているので、次もやりたいですね。

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