動画配信を新たなエンタメとして発展させる専用スタジオ「eplus STUDIO」オープン〜イープラス 横山大輔氏インタビュー

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横山大輔氏
イープラス映像コンテンツ事業部 統括部長 横山大輔氏

ライブ配信サービス「Streaming+」で年間6,000件以上の動画配信を行ってきたイープラスが、東京都渋谷区にライブ配信・映像収録に特化したスタジオ「eplus STUDIO」を本日11月1日にオープンした。

スペースをライブ配信や収録に特化したサイズに抑え、スペックが高く汎用性のある設備・機材を常設することで、ライブ配信を行う際にかかるプロダクション・コストを最適化し、高品質な動画配信を実現するeplus STUDIOはどのように構想されたのか? Streaming+の立ち上げに携わり、eplus STUDIO開設を主導した同社 映像コンテンツ事業部 統括部長 横山大輔氏にコロナ過以降のライブ配信について振り返っていただきつつ、eplus STUDIOが目指す動画配信の未来についてまで話を伺った。

 

月1,200件配信したライブ配信サービス「Streaming+」

──最初に横山さんご自身のことをお伺いしたいのですが、今までどのようなお仕事に携われてきたんでしょうか?

横山:イープラスに入社する前は海外の舞台作品を日本に招聘する会社にいまして、宣伝や企画をやっていました。イープラス入社後は様々な部署で仕事をしていたのですが、最初に演劇やクラシックの営業を担当した後、コンサートやイベントの企画をしていました。その後はしばらくマーケティングシステムのプロジェクトや電子チケットの開発に従事しまして、昨年から映像事業をやっています。

──昨年というのは、コロナ禍でイープラスが「Streaming+」を立ち上げたタイミングですか?

横山:そうです。まさにそのタイミングです。

──イープラスというチケット会社の中でも、横山さんのように演劇やコンサートの企画制作や宣伝まで多岐にわたってやることができる人ってそんなにいらっしゃらないですよね。

横山:そうかもしれませんが、まあ「何でも屋」的な感じです(笑)。

──逆にそういう専門的な経験を活かして、現在いらっしゃる映像事業でも映像の独自コンテンツの企画なんかもなさっているんですか? 例えばStreaming+で流す配信コンテンツとか。

横山:まだそこまでは手をつけられておりません。現状はアーティストのみなさんが作られるものを流すお手伝いといいますか、プラットフォームとして配信をするというところですね。ただ、ゆくゆくはこのeplus STUDIOでオリジナルの番組もやっていきたいなと思っています。

──1年間Streaming+を運営されて、他のプラットフォームと違う部分はどんなところだとお考えですか?

横山大輔氏

横山:弊社が長年チケット事業をやってきている中でお世話になっている事務所さんやイベント制作会社さんとの信頼関係があります。その信頼関係というのは何よりも「売れるか、売れないか」というところが重要で、配信するシステムは今多くあって、おそらく100プラットフォームぐらいはあるのですが、この「売る」ということに関して、弊社は音楽や舞台に興味のある方々のデータベースを持ち、そういった方々へ直接リーチすることができますので、「イープラスはチケットが売れる」という強みがあると思います。

また昨年Streaming+を始めたときに一番力を入れたのが、配信を始めたばかりの方々に対するサポートです。配信される全国のライブハウスさんや配信オペレーターのみなさんからの問い合わせや事故に対してオンラインや電話で対応できる相談窓口の整備を徹底してやりましたので、他のプラットフォームさんと比べて安心して任せてもらえるのではないかと思っています。

──確かにすぐに相談できると思うと配信する側も心強いですよね。

横山:電話をしてもすぐに繋がりますし、少しでも気になることがあれば我々の方からすぐに電話します。例えば、些細なフレームのずれやノイズ、送出データの状況をモニターして「直せますか?」とお伺いするようなことを日々やっていますし、トラブルシュートについては、この1年で経験を積み重ねてきていますので、信頼していただけるようになったのだと思います。

──Streaming+は取扱数が業界内でも非常に多いですね。

横山:とてもありがたいことに配信案件は1年で6,000件ぐらいあります。またバリエーションも音楽だけではなくて舞台や落語もそうですし、最近多いのはアニメやゲーム関連のイベントで、実際に声優さんが入ってその場でアフレコするようなイベントが非常に増えています。

──確かに配信のラインナップが多彩ですよね。

横山:そこはやはりチケット事業で今まで培ってきた賜物かなと思います。

──配信に関して「ライブをやるから配信もやろう」なのか、もしくは「ライブができないから配信をやろう」なのか、あるいは「今後もハイブリッドでやる」なのか、この1年半で色々なパターンが出てきて、今後どうなっていくのか、みなさん模索中だと思うんですが、横山さんはどのようにお考えですか?

横山:さかのぼってお話しますと、最初の緊急事態宣言で真っ先に配信を始めたのがライブハウスさんです。ライブハウスが普通に営業できなくなり、機材を集めて自分たちで使い方を覚え、普段使ってくれているアーティストに演奏する場所を作ってあげたいと配信を始めたのが、昨年の3月から6月ぐらいまでの間です。このタイミングではほとんどの配信がライブハウスからでした。

その後、みなさんもご存知の通り、サザンオールスターズさんなど人気アーティストが無観客配信を始めて、他のアーティストのみなさんも無観客配信を始めたのが昨夏です。そして秋口になりコロナの状況が少し緩んできて、リアルなコンサートやライブもできるようになってきたので、そのタイミングで多少お客さんを入れた会場からの配信が増えてきました。ということで配信本数が一番多かったのが昨年の11月・12月で、このときは我々でも多い月だと1,200件配信していました。

──月1,200件はすごいですね。

横山:非常に多かったですね。そのタイミングではみなさん「公演をやって配信もやる」という考えだったと思います。この裏にはJ-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)などの助成金も要因にあったと思います。やはりキャパを制限して採算がとれませんので、配信を入れて助成金ももらって、なんとか成立するようにしようという動きが盛んでした。

ただ、今年の1月・2月はその反動で一気に減少し、もしかしたらもう配信の需要は戻ってこないのではないか?というぐらいの雰囲気が実はあったのですが(笑)、3月頃からまた件数が増え始めて、今は昨年と本数的には変わらない状況です。ただ、今期は普段アリーナやドームでやられているようなアーティストがハイブリッド配信をやるというケースが非常に減っていまして、その一方でeplus STUDIOのような小さなスタジオや普段は公演を行わないような場所からの配信も含めて無観客でも定期的に配信するアーティストと、二極化している傾向があります。そのため、今期は先ほど申し上げたアニメやゲームなどのイベント系の配信を含めて売上を作っているのが現状です。

──だから音楽という側面から見ると去年より配信件数が減った印象になるんですね。

横山:ええ。みなさんそういう風におっしゃりますよね。弊社で見ますと音楽に関する配信件数は実は減っていなくて、昨年とほぼ同じです。ただ、売り上げを見ますと、配信バブルと言われていた昨夏と今年の夏、秋を比較すると今年は減っています。やはり、多くの視聴者を集める人気アーティストの配信が今年は少ないことが、減ったという印象の要因だと考えられます。

 

「どうやったら負担を少なく配信できるか」eplus STUDIOの構想

──なぜ人気アーティストはライブ配信をあまりやらなくなってしまったんですか?

横山大輔氏

横山:本当は今年ツアーを行う予定で、ハイブリッド配信を予定されている方は多かったのですが、ツアーが飛んでしまった影響は大きいですし、人気アーティストの場合、ライブがパッケージになるケースが多いですから、「それをわざわざ配信する必要があるのかな?」と、改めて考えられるケースもあったのだと思います。

その中で私が今年一番印象に残っていることがありまして、サカナクションの山口一郎さんが、ご自宅のとてもオシャレなリビングルームから優れた演出、制作チームのみなさんと共に、様々な映像技術やオンラインならでは表現を駆使した配信(今年5月22日〜5月23日「NF OFFLINE FROM LIVING ROOM」)をされました。昨年のサカナクションの配信(昨年8月15日〜8月16日「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」)でも同様のことを感じましたが、ライブ会場からのネット中継やテレビ、MVやパッケージとも違った「映像と時」が持つ独特な力を活かした新しいライブ・エンタテインメントにチャレンジされる姿に、とても勇気をもらいました。

例えば「配信は〜だとか、リアルの方が良いとか、パッケージが」といった議論ばかりではなく、シンプルかつポジティブに考えると、フェスやライブ会場では大声を出して盛り上がりたいし、好きなアーティストのBlu-rayは何度も何度でも見返したいし、お酒を飲みながらチャットや独り言をいいながら部屋で配信を見たいというのがファンの気持ちで、音楽の表現の可能性を広げるものだと思うんです。だからこそ、そういった試みに取り組むアーティストが増えることで新たなライブ・エンタテイメントが生まれますし、eplus STUDIOが実現したいことの一つでもあります。

──ツアー自体が中止になってしまったらどうしようもないですものね。

横山:そうですね。あと、去年はファンが「なんとかアーティストにライブをさせてあげたい」「応援したい」「ライブをやってくれるだけですごくうれしいし、行きたい」みたいな気持ちが強かったと思います。ただ今年に入って「今そういう場所に行くのって良くないんじゃないか?」というファンの心境の変化もあり、アーティストのみなさんが一番、当然ファンの心理を見ていますから「今ここで無理にやると、もしかしたら離れていくファンがいるんじゃないか?」と心配をされている方も非常に多かったと思いますし、「今あえてやらなくてもいいんじゃないか?」という選択をされた方も非常に多かったのだと思います。

──あと去年はリアルライブの代わりとしての配信だったのが、配信が当たり前になり、配信ならではコンテンツでないとなかなか人を惹きつけられなくなっているのかもしれませんよね。

横山:まさにおっしゃる通りだと思います。それだけ配信がスタンダードなものになったとも言えます。

──例えば、リアルとストリーミングだとチケットの売れ行きの動向は違いますか?

横山:まったく違います。リアルですとファンクラブがあって、客席数も限りがありますから、いかに早く申し込んでチケットをゲットするかというところに一番の山ができますが、配信は、アーティストさんにもよりますが、圧倒的に当日・前日に大きな山が来ます。キャパに制限がないので「まあ買えるだろう」という(笑)。そこはお客さんもわかっていますし、そういったことを踏まえてプロモーションの山を当日・前日に持って来られる方も結構増えていますし、チケットの半分以上が当日売れる場合もあります。ライブ配信の内容が良ければアーカイブでさらにチケットが売れる場合もありますので、ストリーミングならではの新たな商機になってほしいところです。

また、ファンクラブは収入源としては大きいので、これをいかに維持するかというのは重要です。今リアルの会場でフルにライブができないということは、ファンクラブが、お客さんが求めるようなレベルのサービスをなかなか提供しにくい状況であるとも言えます。やはりファンクラブに入る一番の理由は「ライブチケットが優先的にとれるから」という人が多い中、そのリアルのライブがなかなかできない、ファンクラブツアーもできないとなった場合、いかにファンクラブのお客さんを差別化するかということで、ファンクラブのお客様限定でオンライン打ち上げを配信したり、特典をつけるなど、そういった動きをするアーティストさんが今年は増えています。そうやってコアなお客様の山を維持しつつ、少しライトなお客さんも含めて、ライブ配信の当日・前日にもう一山作ろうというような動きですね。

──ライブ配信が踊り場に来ている状況で、今回eplus STUDIOを立ち上げられたわけですが、どのくらい前から構想されていたことなんですか?

横山:1年ぐらい前です。昨年Streaming+を始めた頃によく「配信ってキャパがないからチケットたくさん売れるよね?」と言われたんですよ(笑)。あと「どのくらい売れると思う?」と聞かれることも多かったのですが、夏を越えて、しばらくすると「あれ? 配信ってリアルよりも売れないんだね」ってみなさんおっしゃるようになり、また配信をやるためにかかるコストも問題になってきました。

リアルライブは、当然ですが音響も照明も映像も、会場に来たお客様のために作り込みます。ですから結局そのままその音を録って配信で流しても、あくまでも会場で聴かせるために作られた音や照明なので、配信にとって最高のものはできにくいんです。いい配信にするためには、機材も含めて配信用の音響スタッフも照明スタッフも必要ですし、カメラも会場のスケールや設置可能な場所の条件に応じた台数やスペックのものを入れる必要がありますし、結局コストのわりに「配信って儲からないね」と多くの方々がおっしゃるようになったわけです。

そこで「どうやったら負担を少なく配信できるようになるだろうか?」というのがeplus STUDIOを構想する最初のきっかけで、そうすると配信や収録に特化した場所があるべきであるという考えに至りました。そして、都内を中心に色々なスタジオをリサーチしたのですが、最近は「クロマキー合成できます」「トークライブできます」「キッチンスタジオあります」「防音完備・機材は持ち込み」というようなスタジオが多く、「ここでは良い音楽ライブ配信はできないな」と思いまして、では楽器演奏ができ、収録の機材が全て揃っていて、本当に楽器だけ持ってくればできるような環境があれば、プロダクション・コストをある程度最適化して配信できますし、無理なく収益も得られるのではないかと考えました。

──なるほど。

横山:その後「今、海外はどういう状況なのだろう?」とリサーチしていたら、イギリスのBBCラジオ等が、自分たちの撮影スタジオに作ったリビングルームのような空間や、レコーディングスタジオからビッグアーティストのライブを配信していて、「あ、これだな」と思ったんです。それはなぜかと言うと、ライブ会場からの映像ではなくて、お客さんが今までなかなか観たことないような没入感や親近感のある映像を配信できたら差別化にも繋がるだろうと思ったのです。それで、プライベート空間とスタジオをミックスした場所という空間のイメージができました。

──地下のスタジオ空間だけではなく、控え室を含めたバックヤードからも配信できると。

横山:そうです。基本的には地下のスタジオをご利用いただきますが、ライブだけではなく事前にこの楽屋でトークだけ撮っておくとか、終わったあとのオンライン打ち上げをここでやるとか、幅広くご利用いただけます。ライブのネット中継だけではない形と言いますか、新たなコンテンツが作られる場所、かつここにある設備や機材で最終的にはできるような場所を実現させたスタジオです。

 

ライブ配信やMVだけではない新たな映像コンテンツの可能性

──コストとともに今後は映像のクオリティも問われていきそうですよね。

横山:その通りです。先ほどリアルな会場のケースでお話しましたが、会場の中のために音を作っているので、配信に乗る音にあわせたミックスがされていないとか、あと配信を見ていると、トークになるとほとんど音が聞こえないケースがありますよね?

──それはよくありますね。

横山:もちろん会場では客席のみなさんには聞こえていますが、配信になるとそこが調整されていなくて、現場ではそれってPAの役割?配信オペレーターの役割?というやりとりが当初は多かったです。例えば、弊社に現場での配信業務をご依頼いただく際も、PAや配信オペレーターとは別に配信音声スタッフを入れることに関する理解が以前より広まったと感じています。映像のクオリティという面では、予算がかけられる大きな会場でたくさんのカメラが入っている現場と、それが難しい規模で台数は入れたいけれども、レンズにはそこまでお金はかけられないというリクエストなど、とても悩ましいところだと思います。やはり、お金をいただいている有料配信となれば、誰もがクオリティを上げたいと思うところですが、今後継続して観ていただくためには、コストだけでなくクオリティを最適化することも必要だと感じています。

照明についても同様にステージのアーティストが客席のみなさんにきれいに見えるように作られていますが、無観客であっても配信を観ている人のために作られている照明ではないケースも見られます。そういう意味で、このスタジオでは映像のために作られた音響と照明によって、より映像としての価値を高めることを目指しています。

──そういう意味では「Streaming+」で年間6,000件配信をやってきたものが結集したスタジオなんですね。

横山大輔氏

横山:そうですね。みなさんからお聞きした現場の課題から構想したスタジオになっています。あと、このスタジオの実現に深く関わって頂いた方が構想段階から「同じ映像や照明でもライブとテレビの世界では全然違うから、あまりどっちにも寄らず、観たい画、観たい照明をまとめてみたら」というアドバイスをいただいて、Streaming+のサービス推進をやっているマネージャーとテレビの音楽番組、MVからライブ映像まで、国内外を問わずひたすら画像をキャプチャして互いにプレゼンしていました。あまり趣味が合わなかったんですけど(笑)その結果、満遍なく痒いところにも手が届くスタジオになったと思います。それらを予算の範囲内で実現してくださった関係者の皆さんのお力によるところがとても大きいです。

──eplus STUDIOだったらライブ配信やミュージックビデオだけではない、新たな映像コンテンツの発信もできそうですね。

横山:例えば、ファンクラブ向けの色々な映像コンテンツ、5分ぐらいのちょっとした映像をここで撮りためてもいいでしょうし、色々な映像コンテンツがここから生まれたら良いなと思っています。今は新曲プロモーションも映像なしには考えられない時代になっているので、そういう意味でもうまくこの場所を使ってプロモーションの映像も撮っていただけるのではないかと思います。

──先ほどBBCの話もありましたが、世界中のスタジアムやアリーナを完売させるアーティストがスタジオライブをすることで、ファンもアーティストを身近に感じることができますよね。

横山:特に野外スタジアムがそうだと思うのですが、スタジアムに何万人ものお客さんが入っている空間の雰囲気や温度感が感動を与えたりするわけじゃないですか? ただ、映像を通して観るとその体感ってなかなかできないんですよね。逆にそういうビッグアーティストがスタジオのようなプライベートな空間から大観衆や大掛かりなセットがない素の状況で演奏した場合、スタジアムで味わえなかったアーティストの新たな魅力を感じることができると思いますし、やはりビッグアーティストって、素の状態でやると、その凄さがより強調されるんですよね。

──ビッグアーティストになるような方々はとにかく演奏が上手いですよね。

横山:大掛かりなセットや演出がない分、本当にうまさが伝わってきます。そういう映像からアーティストの新たな一面を知ることにもなりますし、シンプルな構成の中で、また違ったアレンジで聴けるというのも、ひとつの魅力だと思いますし、そういうコンテンツを配信できたらと思っています。

──家に遊びに行ったみたいな。

横山:まさに、アットホーム、アットリビングルームというような配信ができたらいいですね。

──普段はバンドでやっていて、でもギター1本でやってもすごい方ってたくさんいらっしゃるじゃないですか? そういう演奏を観ることができたらファンは嬉しいでしょうし、なによりアーティストプロモーションにもなると思います

横山:アーティストプロモーションに映像はもう不可欠ですし、最近はスマホの性能も高いので、それだけで結構いいものが撮れるんですよね。ただソーシャルメディアに短尺で上げるぐらいだったらスマホでもいいかなと思いますが、やはりお金をいただいてなにかをやろうすると厳しいものがあります。あと演奏の場合は、特に音の問題が大きいです。ただ将来的にはiPhoneだけで成り立つスタジオができるとは思います。AIでスイッチングとか含めてやってくれる、ロボットが自分を最適に見せてくれるスタジオというのがいつかできるとは思いますけどね。

──いつかできるんだったら、イープラスさんが先にやるしかないですよね。

横山:はい(笑)。スマホのよさって幅をとらないじゃないですか? だから色々なところに設置できるんですよ。そうすると今まで絶対に観られなかった角度とか画角のものが観られるようになるので、これはいつか僕らもチャレンジしたいなと思っています。

──XR等への対応はどうですか?

横山:XRの課題は、特にバーチャルの場合ですが、1からCGを作るのにものすごくお金がかかることで、多分普通にできるアーティストは限られていると思うんです。そういった意味で今、我々がやろうとしているのは、コンピューターゲームのエンジンを使って、ゲームの中で作られた色々なアセット、例えば渋谷スクランブル交差点や109とか、そういう既存のアセットを組み合わせてバーチャルの世界を作れば、全て1からCGを作る必要はないので、それを使ってコストを抑えることで誰でもバーチャルの世界でライブができるような環境作りをしようと考えています。

もうひとつは、センサー、グリーンバックやLEDを1回1回レンタルしてやると相当お金がかかりますし、その映像を処理するためのパワーPCもそれなりの値段がします。5G時代と言ってキャリアさん中心に普及活動も進んでいますが、あのコストをペイできるアーティストは限定されると思います。そういう意味ではスタジオに必要な機材や環境を用意することで、身ひとつで誰でもXR Liveにチャレンジできる環境を作りたいです。eplus STUDIOでも10月末からXR Liveに関する実験を集中的に行う予定です。

 

プロダクション・コストの最適化と高品質な配信を目指す

──eplus STUDIOを使うために、まずアーティスト側はどうすればいいんですか?

横山:公式サイトに予約フォームがあるので、まずはそこから申し込んでいただきます。ただ、みなさん既存のホールやライブハウスであればイメージできると思うのですが、eplus STUDIOのようなスタジオを使ったことがない方々もいらっしゃると思いますので、必ず1度内見に来ていただいた上で仮押さえをしていただき、具体的に日程が決まったら申し込み成立という形になります。

──eplus STUDIOを使う上で、必ずStreaming+で配信しなければいけないとか、そういった制約はあるのでしょうか?

横山:そういった制約はありませんがStreaming+で配信すると色々とお得です。Streaming+で配信する場合は、配信オペレーターや機材(エンコーダー、回線等)の使用料は一切お金をいただきません。ただ、他のプラットフォームさんに同時に配信したいという方もいらっしゃるので、その場合は1プラットフォーム35,000円(税別)を別途いただきます。

なお、11月1日のオープンから来年3月末までは10万円(税別)でスタジオ(常設機材・配信管理含む)を利用できるキャンペーンを実施するのですが、そのキャンペーンの条件は「Streaming+での配信」を条件にさせて頂いています(他プラットフォームへの同時配信可)。

──ちなみに、どこかのプラットフォームで配信するとして、個人で会場を押さえ、配信の手配をするのと、eplus STUDIOで「Streaming+」を通してやるというのとでは、予算的にどのくらい違うものなんですか?

横山大輔氏

横山:もちろん規模や演出内容によって変わってきますが、eplus STUDIOは通常時の料金が平日で1日約30万(税別)、金土日祝が約40万円(税別)となっています。この中にはeplus STUDIO内すべてのスペースの使用料と、スタジオにある機材全ての使用料が含まれ、しかも配信のオペレーションや機材も無料で30万円です。

例えば配信に特化していない会場でやろうとした場合、もちろん会場のサイズや立地によるのでなんとも言えませんが、例えば、キャパ600人くらいの会場を借りるとすると約50万、配信のオペレーター、機材で15万から20万円はかかります。それにカメラ等の機材レンタルを考えると、そこでプラス50万ぐらい乗ってくるので、すぐに100万コースにはなります。

ただeplus STUDIOも映像・照明・音響スタッフの方々には乗り込んでいただく必要がありますが、基本的に配信をやろうとなったときに、半額ぐらいでできるのではないかと思います。

──しかも相談に乗ってくれるスタッフがいると。

横山:そうですね。例えば各セクションのスタッフや必要な機材があるとして、eplus STUDIOで手配もさせていただきます。

──それにしても来年3月末まで10万とは思い切りましたね。

横山:まずは皆さんにeplus STUDIOを認知していただき、使っていただくことが大切なので頑張りました(笑)。

── 一気に予約が埋まってしまうんじゃないですか?

横山:そうなったらありがたいですね。リアルな公演ですと当然1年以上先から予定されていることが多いと思いますが、配信は1か月前、2か月前の場合もあるので、まずは12月から年末にかけて埋まるような環境にしていきたいです。是非、お気軽にご相談いただければと思います。

 

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