第191回 株式会社メロディフェア 代表取締役 加藤信之氏【後半】
今回の「Musicman’s RELAY」はカクバリズム代表取締役 角張渉さんからのご紹介で、メロディフェア代表取締役 加藤信之さんのご登場です。大学在学中に、クラブ・カルチャーの魅力に目覚めた加藤さんは、働き出したクラブで多くのDJやアーティスト、そして感度の高いオーディエンスたちと交流していきます。
その後、音楽制作を志しグリオへ入社。マネージメントやレーベル運営などを経て独立。メロディフェアを設立し、スチャダラパー、SLY MONGOOSE、サイプレス上野とロベルト吉野、岩崎太整、CMJK、川辺ヒロシのマネージメントや、ドラマ・映画などの音楽制作、阿蘇ロックフェスティバルなどコンサートやイベントの企画・制作など幅広くご活躍中です。そんな加藤さんにご自身のキャリアからメロディフェアの今後まで話をうかがいました。
(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦 取材日:2022年4月19日)
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第191回 株式会社メロディフェア 代表取締役 加藤信之氏【前半】
スチャダラパー30周年記念アルバムリリース日に緊急事態宣言
──マネージメントを始めて、加藤さんはまずどのようなことに取り組んだんですか?
加藤:スチャダラパー、SLY MONGOSE、TOKYO No.1 SOUL SET共に、しっかりとした実績のあるアーティストなので、それを担当するにあたり、ライブが重要と考えイベンターさんのところに相談に行きました。フェスを持っているイベンターさんには、あわせてフェスに出たいという話も同時に。
フェスに出ることはステータスになってきた時期でもあったので、単独でツアーを回ることも重要ですが、フェスに出ていくことも同時に重要視していました。あと都内のライブハウスさんも挨拶に回ったりするのもやりました。
──この2年間でかなりのライブが中止になりましたか?
加藤:スチャダラパーに関してはデビュー30周年が2020年で、コロナど真ん中だったんですよね。一番しんどかったのが、30周年記念アルバムという大義で4月8日に発売したアルバム「シン・スチャダラ大作戦」が、ちょうどその日に緊急事態宣言に伴い、タワーレコードの主要店が全部閉まったんです。で「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスターをRHYMESTERと一緒に撮っていたんですが、主要店舗が閉まっちゃったんで、そのポスターを店舗で見られてないという…。
──最悪なタイミングですね…。
加藤:アルバムをリリースし、30周年記念公演を東京・大阪でやって、そこからフェス回ってとか、本の出版とか、いろいろ計画していたんですが、メンバーとも相談し、これは強引に進めてもしょうがないなと思って1回全部止めて、ちょっと時期を待ちました。結局、なんとなく動き出したのは去年の秋ぐらいからですかね。
「阿蘇ロックフェスティバル」や音楽イベントをチームで制作
──メロディフェアのウェブサイトを拝見すると、いわゆるイベント制作や映像制作から何からいろいろな業務をしていますね。今もそういう仕事は多いんですか?
加藤:多いですね。イベントもやってますし。今うちの会社だと、去年もやりましたが阿蘇ロックフェスティバルという、熊本でやっているフェスティバルをキャスティングも含めて制作をやらせてもらったりとか、あとサンリオピューロランドさんと共同主催という形で組んで、サンリオピューロランドの会場で音楽イベントをやっています。
また、リリー・フランキーとやっているザンジバルナイトという歌謡ショーみたいなイベントを毎年、中野サンプラザでやっていたり、比較的イベント制作はやっております。
あと、岩崎太整という音楽家が所属していて、彼が所属してくれてからは、映画やドラマなどの音楽制作も行っています。岩崎は、映画『竜とそばかすの姫』の音楽で先日、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しました。
──メロディフェアにはスタッフは何人いらっしゃるんですか?
加藤:5人です。マネジメントが中心にはありますが、たとえばイベントをやるとしたら舞台監督さんとか外部で協力してくれる方々はたくさんいらっしゃるので、企画ごとにそれぞれのチームを作っていくという感じですね。
──みなさん在籍期間は長いんですか?
加藤:そうですね。基本的に変わらないメンバーでやっています。外部で一緒にやっていただいているスタッフの方もあまり変わってないですね。お付き合いが長い方が多いです。
どれだけ真面目に面白がれるかで勝負する
──メロディフェア代表として今後の目標や新たにチャレンジしたいはありますか?
加藤:やってみたいと思うことよりは、とにかく続けるというのが最大の目標ですね。どんな形でも今いるアーティスト、スタッフや関わって頂いている方たちと続けるだけ続けてみたいなというのがやっぱり一番に思うことです。
あと新しいアーティスト・クリエーターにどんどん出会いたいなというのもありますし、音楽だけではなく、それこそ役者さんだったりデザイナーさんだったり、エンターテイメントを作る人たちとどんどん一緒にやっていきたいですね。
──自然に広がりが生まれたらいいですよね。
加藤:あまり無理して違うこともしたくないというのはあります。
──自分たちが面白がれることをやり続けていく。
加藤:どれだけ真面目に面白がれるかで勝負したいなという感じです。うちは縁とか流れとか偶然が必然になって成り立ってきたチームだと思っているので、狙って「これを仕掛けよう!」というよりは、面白いと思ったものをアーティスト、スタッフみんなでやってきた感覚があるので、そういうことをこれからも大事にしたいです。
──アーティストもスタッフも良い出会いが続いていると言いますか、有機的に繋がっていますよね。
加藤:とにかく人に助けられているというか、人の縁でここまで来た会社なので、それだけは大事にしていこうと思います。全部が全部できているかどうかはわからないですが、一番大切にしているのはそれですかね。やはりものを作る、特に音楽とかエンターテイメントと言われるものって、人がいないと作れないですし、とにかく人の縁とかつながりを大事にすることが今に繋がっているのかなと思いますね。
──最後になりますが、音楽業界で働きたい人や、すでに業界のどこかにいて、次のステップを考えている人たちに何かアドバイスはありますか?
加藤:好きだなと思うことをやったらいいんじゃないでしょうか?そもそも音楽を生業にしようと思っているわけですし。
──無理せずに。
加藤:そうですね。「疲れてまでやらなくていいんじゃない?」みたいな感覚ですかね。楽しいと思えなくなったらやめてもいいと思いますし、エンターテイメントってしんどくても楽しいと思えるからみんなやっているんだと思います。
──加藤さんも「苦労したな」という感覚はあまりない?
加藤:無かったといえば嘘になりますが、しみじみ振り返って「あの時は苦労したな。」ということを思ったことは結果的に無いかもしれないです。瞬間的に「シンドイ!」って思うときは多々ありましたけど(笑)。結果、ずっと楽しかったんだろうなって思いますね。